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2022/07/25
安倍元首相の国葬に異議あり
 こんなことから書きはじめていいのだろうか。この数週間、さまざまなことが頭の中を駆け巡っている。

▼ まずは、安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者のこと
 「山上」という名を目にしたのは二度目である。
 最初は映画界の大先輩につれられて世田谷の成城にあった映画監督・マキノ正博邸を訪ねたときである。話好きの監督は(映画創成期の)マキノ映画のことを話し始めた。「散歩中の神社でよれよれの羽織をまとった青年に出会ったのだ」「大事そうに懐に脚本を持っていた。タイトルは“浪人街”」「無声映画時代の代表的な作品になった。その青年の名は山上伊太郎」だという。
 マキノ映画で連作になっている。内容は庶民を泣かせる悪旗本を懲らしめる浪人たちのはなしである。なにかで読んだがラストシーンに「浪人街の白壁に いろはにほへとと書きました」という文字が映し出されたという。斬り合いが終わって穏やかな日常に戻った様(さま)を描こうとしたのだろうか。山上伊太郎・・・忘れられない名である。山上伊太郎は京都生まれ。映画史に残る人物である。

 検察は山上徹也容疑者を精神鑑定するとか言っています。まさか「精神異常者」にでもするつもりではないだろうね。目が離せません。

▼ 次は統一教会
 労働組合の役職を降りて現場復帰(ワイドショープロデューサー)して間もなく出くわしたのが韓国で行われた「合同結婚式」。有名タレントが参加するというので各局とも大騒ぎ。取材許可がいるという。統一教会広報部と連絡とり合うのはプロデューサーの役目。当時は「霊感商法」が問題視されていた。弁護士の紀藤正樹さんや(当時評論家だった)有田芳生さんにコメンテーターの役割をお願いしたものだ。
 ご両人はあらためて番組に登場して世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)会長の発言に対して「誠実さを欠く」「大事なことについてきちんと説明していない」と鋭く批判している。ご両人の出演に横槍が入る可能性は十分ある。報道関係の皆さん、一過性の報道で終わらないようにしてほしい。

▼ 統一教会の名称変更は下村文科相(当時)下の認証だった
 しんぶん「赤旗」によれば、霊感商法など反社会的活動が問題になってきた
 旧統一教会が2015年に正式名称を「世界平和統一家庭連合」に変更した問題で、下村大臣は事前説明を受けていたという。文科省の外局である文化庁は「教義など団体の実態に変化がないと名前は変えられない」と申請を拒否してきたのにだ。その下村氏の選挙区支部は統一教会から献金を受けていた。統一教会の支援を受けている自民党議員は少なくない。

▼ 安倍元首相の国葬に 異議あり
 神戸学院大学教授(憲法学)上脇博之さんは言っています。
 いま国をあげてやるべきなのは、安倍氏の安保法制=戦争法の強行や「モリ・カケ・桜」の政治の私物化問題の総括と真相解明のほか、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の広告塔として被害を拡大させてきた責任の追及です。安倍氏の「国葬」はそれに蓋をすることになりかねません。と

疑惑の真相解明にふたをさせてはなりません
2022/07/19
ひとりぼっちの「青年」をなくそう
―― 安倍暗殺犯の周辺を考える

 もともとは優秀な技術者の息子だった。安倍元首相を撃った山上徹也容疑者(41)のことだ。幼いころから頭が良く勉強もよくできた。しかし、幼いころ父親が亡くなると、悲劇が始まった。
 母は、統一教会に走り、子どもたちはネグレクトされた。母は父親(徹也にとっての祖父)が経営していた会社を引き継いだが、献金して破産させた。献金額は1億円に達し、母の兄の弁護士が、仲介して取り戻した5000万円さえ再度献金してしまった。

 母に見放された徹也は、親族の応援で高校を卒業、02年海上自衛隊の任期制自衛官になったが、任期満了を前に05年、自殺を図った。自分にかけた生命保険で、兄や妹を助けたいと考えたためだったとも言う。
 回復後、任期満了で退官すると、測量会社でのアルバイトなどをしながらいくつかの資格をとった。15年11月、病気で片目を失いながら頑張っていた兄が自殺したときは、「生きていればいいこともあるのに…」と悔やんだ。生きて頑張ろうとする彼の姿に親戚は安堵した。

しかし、仕事は定着しなかったようだ。20年10月、派遣会社から派遣された京都の工場でも、黙々と働いていたが、同僚とうまくいかず、結局、この5月、退職した。
 母を奪った統一教会については、ずっと恨み続けていたが、昨年、統一教会のフロント組織「天宙平和連合」の集会に安倍元首相が登場しているのを見て襲撃を考え、銃の製作などを始めた、という。

 仕事も面白くない、同僚ともうまくいかない、家族も居ない。本当にひとりぼっちになった。仲間もいない。仕事にも希望は持てない。自分の将来が描けない。生きていても仕方がない。どうしてこんなことになったのか。自分でも解決が付かなかった。ただひたすら、深夜の武器製造に心を砕いた。

週刊誌などの報道を総合すると、山上徹也容疑者の半生はこんな具合だったようだ。

       ×     ×     ×

 「政治的テロ」だったのか、単なる「個人的怨恨」だったのか―.選挙中でもあって議論が広がった。しかし、「個人的怨恨」と片付けられない社会性を帯びた事件は、容疑者の主観を超えて極めて政治的だ。

「自己責任」と「効率化」の「新自由主義」イデオロギーの中で、家庭でも仕事場でも「集団」より「個」が問題にされる社会に急速になった結果、個々人の責任や抱える問題は、放置されるようになった。「個の尊重」というと格好はいいが、実は「個の孤立」が進み、心理的にも経済的にも追い詰められた若者も目立つようになった。

 2008年6月、秋葉原の繁華街で起きた無差別殺傷事件の26歳の加害者は、「生活に疲れた。自分の人生を終わりにしたかった」「誰でもいいから殺したかった」と話した。
 2019年5月、川崎市の登戸で通学バスを小学生と、見送りに保護者を死傷させ、自らもその場で自殺した51歳の容疑者も、同居の伯父、伯母とのコミュニケーションがない引きこもりの中年だった。

 自分はどう生きるか、あすは何のために…? そんな中で、生きる希望を失い、「もういい、全部終わりにしたい」と考え、凶暴な事件を起こした人が他にもいる。
 山上容疑者もその例外ではなかった。職を辞め、経済的にも追い詰められた容疑者は、銃を自分で造り、犯行に及んだ。

 事件で考えなければならないことは、数多くある。

 まず、彼の家庭を崩壊させた「統一教会」という、カルト集団の行動。犯罪か、それに近い財産巻き上げの方法は糾弾されなければならないし、その「広告塔」になったり、その支援を受けている政治家は、当然責任を追及されなければならないだろう。

 そしてさらに、その被害を受けている家族に対する救済、支援の問題。事実の把握からして容易ではないが、山上容疑者のケースでいえば、伯父が相談に乗っていても、1人ですべて難しかった。
 ここはや社会と行政の援助が求められていたのではなかったか。

 「消費者センター」の活動もある。「全国霊感商法対策弁護士連絡会」や「全国統一教会被害者家族の会」、「宗教2世ホットライン」など、被害者自ら、助け合い、闘っている組織もある。献身的に闘っているこれらの人たちと、だれかが、どこかで、そんな組織に接触させるようになっていれば、こんなことにならなかったかもしれない。
 
 また、容疑者に、もっと踏み込んで相談できる友人がいたらどうだったか。市民同士、社会の連帯感が失われて来ている中で、少しでもそうした具体的な運動にまで手が届いていたら、彼の人生も変わってきたのではなかったか。

        ×     ×     ×

 生き方を悩むのは、あらゆる年齢で共通し、人間が人間である限りなくならない問題だ。だから「ひとりぼっちの『青年』をなくそう!」も、青年の固有の問題ではない。社会全体で考えなければならないことだ。 

 英国では、こういう個人の孤独の問題は、医療費が無料であることから、医師のところで問題がわかることが多いといわれる。
 そうした精神疾患を重視し、問題は「孤独」にある、と認識した政府は、当時のメイ首相が18年1月「孤独は現代の公衆衛生上、最も大きな課題の一つ」として、「孤独担当大臣」を置くことを宣言、既に動きだしたという。

 当面、「友だちを作れない子ども」「初めて子どもを持つ親」「友人や家族に先立たれた高齢者」などの孤独対策に、経済問題と医療問題からアプローチする体制が出来つつあるらしい。

 日本の「孤独」は、英国よりずっと高い率で報告されている。人は独りでは生きられない。誰もが抱える「悩み」を、聞き、共有し、できることは応援する。こころに「ゆとり」を持てる社会を何としても創っていかなければならない。

 この際、そうした議論が生まれ、連帯し、助け合い、絆を育てていく社会に進むことは、安倍元首相にとっても、何よりの「供養」である。
                 (了)
2022/07/08
ノーパサラン! 奴らを通すな! 
   参院選投票日 問われる「憲法」、「9条」 

★ 参院選。たしかに「平和と暮らし」が焦点なのだが、その土台としての「憲法」が大きく問われている。9党党首が出席した3日のNHK日曜討論は、最後のテーマが憲法だった。自民党は改めて「4項目」を持ちだし、複数の野党は「改憲反対、9条を生かした日本に」と主張した。「9条2項(戦力不保持)」廃止をと主張する特殊部隊(NHK党党首)もいた。

★ そういうもとで朝日1日付オピニオン&フォーラムの佐伯啓思「『普遍的価値』を問い直す」を読む。保守論客といわれる人だが、正直いつもよくわからない。

 今回の論は、アメリカ、ロシア、中国、そしてEUでさえ「一種の帝国化」と指摘する。そういうもとで「日本はどのように国を守ればよいのか」と問う。
 氏は憲法前文から2カ所を引く。「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」。だから世界平和のためにも悪とたたかう必要がある、と。それはいい。もう1カ所前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」を引いて「だが今日の世界でもはやこの条件は成立しない」と断じる。

 佐伯氏よ待ってくれ。戦後翌年にできたわが憲法は、各国単位のことを言ってない。あくまで「諸国民」なのだ。いま世界の諸国民は「平和を愛」してないというのか。そうではなかろう「平和を切望」してるのだ。前文の読み誤りから悲観主義におちいってはならない。前文のこの箇所は「成立していない」どころか、ますますわれわれが依拠しなければならないフレーズだ。

★ 同じ朝日が今年の憲法記念日に発表した世論調査を、世論調査部記者が分析している(5月16日付)。「『改憲必要派」は56%、比較できる2013年以降で最多」。だが改憲必要派でも「9条を変える」は53%どまり。全体では「変えるほうがいい」33%に対し「変えないほうがいい」59%である。私の感覚とも合っている。
 同記事はいう。「最優先の政治課題に憲法をあげるのはわずか2%。国会は慎重な議論を」。

★ 3日のNHK番組に戻る。改憲諸党は、国民の2%しか「最優先課題」だと思っていない改憲問題になぜこうまで前のめりになるのか。「岸田首相はなぜそんなに急ぐのか」という問いをだして、次のように解明した野党党首がいた。日本共産党の志位委員長だ。
 「いま(政府・自民党が)やろうとしていることが、憲法9条との関係で説明がつかなくなっているからだ」。「軍事費を2倍にする」、また日本が攻撃されてないのに「敵基地攻撃」を加えるとなると,これまで言ってきた「専守防衛」では説明できなくなるからだ、と。正鵠をついた指摘だと思う。

★ 10日は参院選投票日。これまで以上に「憲法」とくに「9条」が問われている。
 「奴らを通すな! ノーパサラン」ということばが頭をよぎる。1936年7月、ナチスとたかったスペインでの「マドリード包囲戦」で使われた。さらに10月4日、ロンドンでのファシストのデモに対して労働者・住民10万人以上が集結してこれを阻止した。
 このときのスローガンも「ノーパサラン」だった。今日の日本、「改憲派を通すな」。

×      ×      ×

 本稿は、投票日より少し前にと思って8日(金)アップしたが、「安倍元首相、銃撃され死亡」という事件が起きてしまった。改めて考えたが、ここでは、いくつかのことを確認しておきたい。

1)私は「暴力・テロ」反対という点では人後に落ちない。
2)安倍氏は改憲論の先頭に立った人物ではあるが、心から哀悼の意を表する。
3)私は、それでもやはり「改憲論者」に対して「ノーパサラン」と声をあげる。

2022/07/04
京都新聞記者が、自社の大株主らを刑事告発
関西新聞合同ユニオンが告発状提出
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「京都新聞記者らの会見の様子」=NHKのニュースより
 参院議員選挙が迫るなか、選挙戦を報じる新聞社で深刻な問題が生じている。
 京都新聞ホールディングス(HD)が大株主の元相談役に長期間、支払った報酬など総額約19億円が違法支出に当たると第三者委員会から指摘された問題で、傘下の京都新聞社の記者2人が6月29日、元相談役と支出に関与したといわれる当時の役員計2人を、会社法違反(利益供与)の疑いで京都地検に告発したのだ。
 京都新聞の日比野敏陽(としあき)記者と、曺澤晨(チョウ・テクシン)記者が告発し、2人が個人加盟する労働組合「関西新聞合同ユニオン」の名で、告発状を提出した。
 告発状では、HD取締役、白石京大(きょうた)氏(48)が代表取締役だった2019年7月~21年2月、京大氏の母で元相談役の白石浩子氏(81)に、年3550万円を不正に支出したことを問題視。浩子氏は「オーナー家」と呼ばれる白石家の一族で絶大な影響力を持ち、「経営に口出ししない」ことへの対価だったと指摘している。
 この母と息子は、京都新聞社の経営に長年関与してきた白石家の一族だ。故・白石古京(こきょう)氏は1946年から長い間、社長を務め、浩子氏は古京氏の義理の娘にあたる。第三者委は、人事を握る大株主としての浩子氏を、HDが過剰なまでに優遇し、大阪国税局などから再三、指摘があったにもかかわらず、改善を図らなかったため「法令遵守(じゅんしゅ)意識が欠如していた」と厳しく批判した。ところがHD側は、関係者の刑事責任は追及しないと明言し、現経営陣の責任を認めることもなかった。
 京都市内であった記者会見で日比野記者は、「不正に流れた資金は本来、読者や働く人に還元されるべきものだ」と主張。「我々は新聞を愛している。誰も告発しないなら、やるしかない」と発言した。
 一方、HDはこの日、株主総会と取締役会を開き、京大氏が6月29日付で退任し、山本忠道社長が退いて取締役になる役員人事を決定した。さらに、浩子氏を相手取り、報酬などの一部、約5億1000万円の返還を求める訴訟を28日付で京都地裁に起こしたと発表した。だが、今回の告発については「記者個人が起こした行動なので、申し上げることはない」という態度だ。
 報道機関の記者が、自社の大株主らを刑事告発するという異例の事態。新聞やテレビなどのマスメディアは、報道、言論の自由を保つための大きな役目を担っており、それを支えているのが、紙面や番組づくりに関わる記者、従業員、スタッフらだ。不正が判明しても「関係者の刑事責任は追及しない」というHDの態度こそ、報道機関にあるまじきことではないか。
 今年5月に発表された国境なき記者団(本部・パリ)による「報道の自由度ランキング」(対象は180の国・地域)で日本は前回より四つ順位を下げて71位。ちなみに首位はノルウェーだった。
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