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2024/06/16
政策論争できるのか
東京都知事選 6月20日告示、7月7日投開票
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小池百合子都知事の都知事選への立候補表明を伝える各紙
 東京都知事選の告示が20日に行われる。これまで40人余が立候補の意向を示しているが、有力候補は立憲民主党に離党届を出した蓮舫(れんほう)参院議員(56)と現職の小池百合子知事(71)になるだろう。少子高齢化、首都直下地震にそなえる防災、神宮外苑など都心の再開発に伴う自然破壊――。都が直面する課題は山積するが、この二人がどんな公約を掲げるのかはいまだにあいまいだ。
 2期8年続いた小池さんの都政運営に関しては、待機児童の解消など「七つのゼロ」をめぐる評価が争点の一つになる。ところが、小池さんが立候補を表明したのは12日。その後、「選挙公約は大安の18日に」と会見で述べたが、選挙戦術だとしてもこれだけ遅いと、公約の準備や作成に影響が出るのは必至だ。しかも学歴詐称問題がきちんと解決していない。一方、「小池都政をリセットする」を合言葉にする蓮舫さんも、公約については、「小池さんの政策を見てから。出すのは同時期になる」といい、政策論争を深める状況になっていない。
 都は今年から、東京都庁舎を「キャンバス」に巨大な「プロジェクションマッピング」の通年上映を始めた。「東京の夜を彩る新たな観光スポット」と銘打つが、その実施のために昨年度、計上された予算は7億円。「そんなお金があるのなら、福祉や失業対策に使ってほしい」と言いたい。
 東京都の有権者数は全国最大の約1150万人(3月現在)。都の動向は国政に影響を与える。少なくとも、次の都知事には、いま、苦しんでいる人々のための施策を充実させ、未来の東京をみすえた政策を遂行してほしい。そして有権者は、立候補者に「公約をきちんと掲げて」と声を上げ、内容を見極めたうえで投票に行こう。
 投開票は七夕の7月7日だ。
(M・M)
2024/05/29
「修正協議」というごまかしに妥協するな 
 終盤国会で、政治資金規正法の改正が問題になり、「与野党協議」なるものが行われる。何でも、「政策活動費」の扱いや、パーティ券の大量購入を5万円にするのか10万円にするのかなどが焦点なのだそうだが、最初から問題にされ、野党が要求している「企業、団体献金の禁止」と、国民の税金から強制的に取られている「政党助成金の廃止」は、論点にもならないらしい。しかし、それを抜きにした政治資金規正法改正などはありえない。適当に「修正」し、「改正」を通してしまおう、というのが、自民党のハラ。野党の一部も、「変えないより変えた方がいい」という理屈で「妥協」を模索。しかし、これだけ騒いでおいて、またも「ごまかし決着」というのは許せない。

▼3年目の「裏金」騒ぎ
 もともとの経過を振り返ってみよう。問題の発端は、一昨年11月の赤旗報道。自民党・派閥の政治資金報告書が政治資金パーティなどで過少申告なのを発見して報道した。一年間、じっくり捜査したのか、放っておいたのか分からないが、昨年10月、東京地検特捜部が捜査を始めた。神戸学院大学の上脇博之教授が刑事告発した中でのことだった。
 「自己流軍拡」を進めるのに、問題すり替えに使えると考えたのか、岸田内閣もこれに乗って、ときの松野博一内閣官房長官、西村康稔経産大臣などを更迭して、「清和会」=元安倍派=を追い詰めた。
 首相は自派については、早々と「解散」を宣言してやる気を見せたが、これが「自民党の危機」であることに気づくと、「派閥解散」や「政倫審」に逃げ、自ら最初の出席者になり、衆院80人、参院30人に及ぶ出席要請者が、頬被りして逃げようとするのを放置したままだ。

▼「不可解な憲法論」―最高裁判決
 もともと、この問題は1990年代の「政治改革」からの流れがある問題。このときの「改革」では、企業・団体献金を廃止し、その代わり、政党助成金制度を創設してきた結果。この「企業・団体献金」は、現在も結局「野放し」になっている事実にあえて目をつぶって、ここまで来たのだ。
 2月17日付本欄でも紹介したが、そもそも問題は、企業の政治献金は、本来、利益を追求するのが「会社・企業の論理」であることから、「できない」(違法)とされていたものを、1970年6月、「企業に政治資金寄付の自由がある」とする論理を最高裁がとって、現在まで続けられていることだ。
 石村修専修大名誉教授は、雑誌「法と民主主義」(日本民主法律家協会・発行)5月号で、最高裁(石田和外裁判長)が争点ではなかった「法人の権利能力」にまで踏み込んで「憲法上は公共の福祉に反しない限り、会社といえども政治資金の寄付の自由を有する」と判示したことについて、「不可解な憲法論」と指摘している。

▼企業献金の見返りで政治が歪む
 しかし考えてみよう。確かに、営利企業が非営利事業にカネを出すのは、慈善や文化活動を除けば、何かの賄賂か役員の使い込み、背任以外にない。会社、企業の存在も、現在は、戦後まもなくの時期とは大きく変わっている。実は見直しのチャンスである。
 「週刊ポスト」5月17日、24日号は、「岸田(自民)が”集票組織”に補助金バラ撒き 内部報告書入手!」と題する記事を掲載。自民党には、各種企業団体の要望と、献金額、それに対する自民党の回答、そして、選挙に組織動員する票数を記録した文書があり、記事には、「令和6年版」の「要約版」からつくった一覧表を掲載している。
つまり、献金と動かせる「票」をもとに、政策が、企業団体の「ご希望通り」実行される。カネに「票」と見返りの「政策」がついてくる仕組み。これが「ワイロ」でないなら、それと「紙一重」。企業によって歪められている自民党政治の実態を示している。
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<週刊ポストより>
(S.M)
2024/05/12
「予測不能」の岸田を倒すときだ
 前回稿で「自民の今年度方針は(9月の岸田総裁任期まででなく)今年中の改憲」と書いた。少し引いたのかと思ったら、岸田は4月の国会答弁で「9月まで改憲という方針は変わりない」と答弁した。どこまで不真面目な党なのか。

 今年の憲法記念日にあたっての各紙世論調査で国民の憲法への「大きな流れ」は出ていたといっていい。朝日「憲法9条を変えないほうがよい」76%、「今の憲法9条があることで日本は戦争をしないですんできた」に「共感する」76%。共同通信「国会で憲法改正をめぐる議論」は「急ぐ必要はない」65%などである。

 これを気に入らない読売は、憲法改正「賛成63%」を1面見出しにもってきた。が、設問を見て首をひねった。今日の政治の「軍拡かどうか」「経済状態はどうか」「裏金など政治腐敗は」などに一切目をつぶり、超一般的に「憲法は変えた方がいいか」を聞いているだけなのだ。

 しかしこの読売調査でも「改憲に前向きな政党で条文作成を進める」は44%、「進めるべきでない」が51%。また改憲派が「9条の前にまず」と1点突破を狙う「大災害などで衆院議員が不在のときは」に対しても「改憲せず参院緊急集会で」58%と、国民はおおむね冷静だ。

 そもそも、今の裏金腐敗の自民党に改憲をいう資格、大義があるのか。多くに人の胸に落ちる一種のキャッチコピーは「汚れた手で憲法触るな」だろう。「裏金触った手で憲法いじるな」という発展形もある。

 さて改憲ノーのわれわれにとっては、今の自公政権をやめさせるのが大目標だ。そのために「解散・総選挙を」というのはそうなのだが、これを「岸田の手で解散」とだけ考える必要はないと言いたい。そうまず悪政の権化・岸田をやめさせればいいのだ。

 実は自民の一部にも(逆の立場からだが)そう考える向きはある。自民党の元宿仁事務総長は岸田訪米前に一つの選択肢として「9月の任期満了前の退陣、総裁選前倒し⇒総選挙」があると提言したという(情報誌『選択』5月号)。同記事はなかば岸田を見放しているとさえいえる。「思いつきで動き、先々を考えない岸田の予測不能性は国内だけでなく、国際情勢にも混乱をもたらす恐れをはらんでいる」。

 同じ言い方を前にもしたが、憲法でも、岸田政治でも、われわれはいま「押せ押せ」だ。解散・総選挙の前に岸田退陣もありうるのだ。
(寺)
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