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2021/02/19
密室・非公開での新会長選出
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 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長を辞任した森喜朗氏(83)の後任に18日、五輪担当相から転身するかたちで橋本聖子氏(56)が就任した。2月3日の「女性蔑視発言」から16日間に及ぶ混乱の中で、ジェンダー格差はもとより、「密室」「非公開」の問題があぶり出された。
 国際オリンピック委員会(IOC)の元マーケティング部長、マイケル・ペイン氏は「オリンピアンの女性を選出したことは正しい判断で、社会にインパクトを与える」とSNSに投稿。AP通信は「日本では意思決定や政治の場に女性が少ない。女性を指名することによって男女の不平等を打破することができるかもしれない」と発信した。
 とはいえ、女性を会長にすればいいわけではない。橋本氏は、日本スケート連盟会長だった2014年にフィギュアスケートの男子選手にキスを強要したと週刊誌で報じられており、韓国のメディアは「女性蔑視の森に代わり、強制キスの橋本」と反応した。
 選出までの過程も、ごたごたが相次いだ。森氏から直接の後継指名された元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(84)は当初受諾し、森氏に相談役として残ることを要請したという。会長は理事の互選で決められるため、「密室人事」と反発や不信感が社会に広がると、川淵氏は一転して辞退した。
 組織委は男女8人による検討委委員会を設置し、さらに新会長に求める五つの資質を公表した。だが、座長を除いて検討委の名前は、選出まで非公開。委員も外部有識者は入れなかった。また、橋本氏の過去の行動のこともあってか、候補者の名が漏れないよう徹底させた。
 こうした密室の議論をしておいて、組織の透明性が確保できたとは思えない。公正な組織に生まれ変われるかどうか、引き続き、注視する必要がある。いま、組織委が取り組むべきは、最も重要な課題、すなわち新型コロナウイルス禍の下で、オリンピック・パラリンピックを開催すべきかどうかということだ。新しい体制で、根本から話し合ってほしい。

2021/02/14
2月11日を
「学問の自由」を守る決意を新たにする日に

【その1】建国記念の日
 2月11日は「建国記念の日」。1966年、佐藤栄作内閣が広範な国民の反対を押し切って祝日法を改悪して戦前の「紀元節」を復活させた。
 忘れもしないのが紀元2600年。ぼくが小学校に入学して間もなくだった(齢がばれますね)。日の丸の小旗を持たされて歌わされた国民歌
  ♪金鵄(きんし)輝く日本の
   栄えある光身にうけて
   いまこそ祝えこの朝(あした)
   紀元は2600年
   ああ一億の胸はなる

 いまも諳んじて歌える。当時は善良な「小国民」だった。

 日中戦争長期化にともなう戦費調達の一環で、たばこが一斉に値上げされた。
 そのときの替え歌がある
  ♪金鵄(ゴールデンバットという名の庶民のたばこ)上がって十五銭
   栄えある光 三十銭
   朝日は昇って四十五銭
   紀元は二千六百年
   ああ一億の金は減る

 庶民はひそかに怒っていたのだ。
      
 2月11日しんぶん赤旗の「主張」から引用させてもらうと
 「“紀元節”自体に科学的・歴史的根拠はありません。明治政府が1873年、天皇の専制支配を権威づけるために、天照大神の子孫とされる架空の人物・神武天皇が橿原宮で即位した日として“紀元節”をつくったのが経過です。(略)1892年には久米邦武帝国大学教授の“神道は祭天の古俗”という論文が発禁処分をうけ、大学を追われる事件が起きました」
 「1940年には“古事記”“日本書紀”の神話や初期の天皇の記述を実証的に分析し、神武天皇から仲哀(ちゅうあい)天皇までの実在性に疑問を呈していた津田左右吉早稲田大学教授が、出版法26条の皇室の尊厳冒涜(ぼうとく)の容疑で起訴され、大学を辞職せざるを得なくなりました」
(略)「“紀元節”は戦後、国民主権や思想・学問の自由、信教の自由と政教分離を定めた日本国憲法のもとで、1948年に廃止されました。自民党政権が“紀元節”を“建国記念の日”として復活させたのは、“学問の自由”を保障する23条をはじめ憲法に対するあからさまな挑戦です。
 菅義偉首相が昨年9月、日本学術会議の新会員6人を任命拒否したことが、憲法にも日本学術会議法にも反する暴挙として大問題になっています」
(略)「政権の意に沿わない学者の排除は、戦前の“学問の自由”への弾圧を想起させます。それは国民の表現の自由、思想・良心の自由の圧殺に道をひらくものです。
 日本学術会議への人事介入は、菅政権の強権政治の危険性を浮き彫りにしています。きょうを、菅政権の暴挙を許さず“学問の自由”を守る決意を新たにする日にしようではありませんか」。大賛成だ!
 この日、各地で「建国記念の日」反対集会が開かれている。
 東京大学名誉教授の小森陽一さんがオンラインで「日本学術会議会員の任命を菅政権が拒否し人事介入したことは、「学問の自由」を定めた憲法に違反し国民主権にも反すると抗議。「政権交代で“人事独裁体制”を倒そうと呼びかけたという。大賛成だ!

【その2】森喜朗という人物
 そして東京五輪・パラリンピック。
 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言の責任をとって辞任表明した。辞任する人が後任まで指名した。これがまた騒ぎになった。後任は白紙に戻った。この稿が出る頃、会長問題は決着しているのだろうか。この問題、ただ会長を代えればいいということではない。日本オリンピック委員会(JOC)の在り方が問われてきている。
 森喜朗という人は(短期間だが)内閣総理大臣をやったことがある。総理大臣時代、2000年(平成12年)5月15日、神道政治連盟国会議員懇談会の席で「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国ぞ ということを国民の皆さんにしっかりと承知していただく。そのために我々(神政連関係議員)が頑張ってきた」としゃべって物議を醸したことがある。なんともおどろおどろしい。
このような人に組織委員会を任せてきたのが不思議である。
 森会長辞任は東京五輪・パラリンピック「中止」のはじまりなのかもしれない。

【その3】地元の話で恐縮
 2月7日、久しぶりに鎌倉自治研センターの集まりに参加した。主な議題は東海道線の藤沢駅と大船駅の間につくろうとしている「村岡新駅」問題だ。
 藤沢の場合、市内に二つの駅ができることになる。鎌倉市長は「新駅」に近い深沢という地域の再開発とセットにして新駅建設に前のめりである。藤沢も鎌倉も市民グループが活発に反対運動を強めている。
 この日の話し合いの中で「あす(8日)藤沢市長が新駅問題で記者会見するらしい」という報告があった。「その記者会見。期待できそうだね」と発言した。なぜ期待したのか・・・。2月7日現在、鎌倉の感染者は555人である。普通の日でも混雑していた小町通りはいま閑散。商売されている人々の不安は察するに余りある。藤沢だって同じだろう。「コロナ禍の先行きが不透明な中、市民のいのちとくらしのことを考えれば“新駅”なんかに関わる暇も金もない。“新駅計画”は見直す」と計画中止の会見になるはずだと思ったのだ。普通の感覚ならそうなるはずだと思ったのだ。
 ところが、おどろいた。9日の東京新聞横浜・神奈川版は「藤沢にJR“村岡新駅” 市長“歴史的一歩” 地元では反対論“説明尽くす”」という大きな見出しで鈴木藤沢市長が「新駅計画決定」したことを報じた。ええッ!である。「この時期、新駅建設ではないでしょう」と発言するに違いないと思いこんでいたぼくがバカだった。鎌倉の松尾市長のコメントも載っていた「きめ細かな情報提供と意見聴取をして、丁寧に調整をしたい」だと。
 藤沢・大船間、わずか4分そこそこの間に「新駅」。いったい「何のための」「誰のための」新駅?・・・国政も 地元市政も もう変え時だ。

2021/02/07
問われる日本社会
── 森喜朗会長の女性蔑視発言 ──

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相は、3日、JOC臨時評議委員会で挨拶、女性理事の増員に関連して、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。ラグビー協会は今までの倍、時間がかる」「女性は優れているところだが競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、みんな発言される。女性を増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制をしておかないとなかなか終わらない」「私どもの組織委員会にも、女性は7人くらいいるが、みんなわきまえている」などと発言した。
 発言が報道された4日朝から、批判が広がり、4日から5日夕方までに都庁にあった抗議電話は約500件、CHENGE・ORGで始まった「森会長の処遇検討・再発防止」を求める署名は5日夕までで7万9000に達した。ツイッターでは「わきまえろと言われても、声を上げ続けるのが私たちのやり方です」という「#わきまえない女」のツイートが共感を呼んだ。

 この状況に、森会長は4日、釈明会見を開き、「発言を撤回する。不愉快な思いをされた皆さまには、お詫びを申し上げたい」と述べ、「辞任」について聞かれ、「私は一生懸命、献身的にお手伝いして7年やってきたわけですので、自分からどうしようという気持ちはありません」と、「自分から辞任する考えはない」ことを表明。「辞めさせられるなら辞めさせてみよ」という「居直り姿勢」が強調された形になった。しかし、7日の毎日新聞によれば、森氏は5日「いったんは辞任する腹を固めたが、武藤敏郎事務総長らの強い説得で思いとどまった」と話したという。
 IOCのバッハ会長は、橋本聖子・五輪担当相からの電話に「よく理解した」と伝えたというが、批判は収まらず、国際的に広がっている。目立っているのは、欧州各国の駐日大使館などがツイッターで投稿、「#Don't Be Silent」(沈黙しないで!)、「#Gender Equality」(ジェンダー平等)=EU代表部=などのハッシュタグが広がっている。国連広報センターも「沈黙を打ち破ろう。誰かが一線を越えたら声を上げよう。家父長制への無言の迎合は受け入れてはいけません」とツイートした。

 なぜ、森発言が大問題になるのか。それは、単に女性が会議で発言するかどうか、という問題ではない。構成員の中の女性の数から、ポストや発言機会まで、スポーツ界の組織が、結局、「男性社会」に牛耳られてきた歴史やそれを認める風潮が今なおあるからだ。しかも、それを代表する日本政治の「ドン」、首相経験者で今なお自民党の有力派閥「清和会」(細田派)のボスで、政財界に隠然たる力を持った人物の発言は、日本社会の遅れた一面を見せることになったからだ。
 事実、菅義偉首相を初めとして、各閣僚とも発言は批判しても辞任を求めず、進退については「最後まで全うしていただきたい」などと擁護。「五輪強行」を諦めない姿勢。森会長問題は、日本社会がこれからの世界にどう向き合っていくか、の試金石にもなってきている。
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