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2024/08/15
敗戦の日に思う
「劣化」が進む日本
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慰安婦問題について「被害女性の尊厳の回復を考えた真の解決を」と話す池田恵理子さん
=アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」で
 日本は8月15日、敗戦から79年を迎えた。日本の植民地政策とそれに続く戦争への突入。戦争の時代、自身の尊厳を傷つけられた女性が、アジアはもとより国内にもいたことを記しておきたい。
 敗戦の日を前にした8月14日、東京の西早稲田にあるアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)で追悼のつどいが開かれた。
 韓国の故金学順(キム・ハクスン)さんが初めて「慰安婦」の被害を名乗り出たのが1991年8月14日。それにちなんでこの日を「日本軍『慰安婦』メモリアル・デー」と名づけ(2012年12月に決定)、毎年、世界各国でさまざまな行事が行われている。韓国では18年、「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」として法定記念日になったという。
 同ミュージアムでは17年から追悼のつどいを開催し、この1年の間に亡くなった被害女性の冥福を祈っている。今夏は中国やフィリピンの女性たちの遺影が飾られ、参列者が花を手向けた。
 無念のうちにこの世をさった女性たち。年を経るごとにその遺影の数が増えていく。
 日韓両政府は2015年、慰安婦問題について合意した。その内容は、日本政府による元慰安婦支援財団への約10億円の一括拠出▽慰安婦問題での相互非難の抑制▽ソウルの日本大使館前にある慰安婦の少女像の撤去に韓国政府が努力する――などだ。
 「戦時性暴力」に視点をあてた同ミュージアムは05年に設立された。元館長の池田恵理子さん(74)は「女性たちが求めてきたのは事実認定と賠償であり、自身の尊厳の回復だった。だが、日本政府はその声に真摯(しんし)に応えなかった。メディアも萎縮し、人々の意識からこの問題を消し去るような流れに乗ってしまった」と指摘。「wamのような活動をはじめ、私たちはあらゆる手段でこの史実を伝えて行かなければいけない」と言い、「10代、20代の若い世代の中に、戦時性暴力の問題に興味を抱く人がいることに希望を見いだす」という。
 舞台の世界では、劇団青年座が、敗戦直後、東京を中心に各地に設置された「特殊慰安施設協会」(RAA)に光を当てた。
 RAAは「レクリエーション アンド アミューズメント アソシエーション」の略。敗戦による占領で不安にかられた日本政府は、進駐軍の米兵らの相手をする慰安施設を設置するよう警察などに指示した。「特別女子従業員」「進駐軍サービスガール」などの名称で従事する女性を募集した。生活のために応募した女性たちは、性的慰安と知らされないまま施設に送り込まれた。
 「RAA―進駐軍特殊慰安所―」と題して8月初旬、東京で上演された朗読劇では、慰安施設で過酷な日々を過ごした女性たちの悲痛な叫びが語られる。連合国軍総司令部(GHQ)が日本の公娼制度の廃止を決定したのを受け、RAAは46年3月下旬に閉鎖され、女性たちは何の保障もなく放り出された。
 台本と演出を手がけた伊藤大さん(62)は「国体護持の名の下で行われたゆがんだ国策が、いまの日本の劣化と結びついている」と語った。
 貧困問題が深刻化するなかで、防衛費の倍増を打ち出す日本政府。平和憲法はまさに瀕死(ひんし)の状態だ。
 パリ五輪の好成績に浮かれていられるのも平和があってこそ。「劣化」が進むこの国の未来を真剣に考えなければいけない。
(M・M)
2024/08/14
改憲の「大音響」とのたたかいだ
(岸田退陣表明にもふれて)
 「通奏低音」という音楽用語がある。バロック音楽に端を発し…などと説明されるが、比ゆ的に使われると「物事の根底にあって知らない間に全体に影響を与えるような雰囲気」(日本国語大辞典)となる。この秋の自民総裁選、誰にせよ新総裁の下で今年中にある可能性がある総選挙(そこで自公を少数に追い込みたいのだが)への通奏低音になっているのが「改憲」だと、少し前までは思っていた。

 今年の通常酷寒中に改憲派は発議できなかった。われわれはひとまず「岸田総裁任期中(24年9月まで)に改憲」を阻止した。まずは勝利した、と私も書いた。

 もちろん岸田も改憲派も自民党全体も黙っていない。最重要ラインは岸田と3年前はそれを後押しした麻生の関係だ。情報誌『選択』8月号が興味深い話を紹介している。国会終盤直前、「岸田は6月18日の麻生との会食で『私の手で憲法改正をやりたい』と伝え、麻生も「いいんじゃねぇか」と賛意を示した」というのだ。改憲は麻生をつなぎとめる重要な環なのだ。

 これを裏付けるような記事があった。「岸田氏再選へ改憲利用?」(毎日新聞7月13日付)。7月11日に改憲に向けた自民党ワーキングチームの第2回会合を開いた。「保守層のつなぎ留めができる政策はいま、憲法ぐらいしかない」という閣僚経験者の発言も紹介している。

 8月に入り事態は急激に動き出す。広島・長崎原爆の日に挟まれた8月7日、岸田は自民党改憲実現本部(古屋圭司本部長)の会合に乗り込み、「9条への自衛隊明記」をより前面に出し、災害時などの議員任期延長とともに大号砲を放った。もちろん総裁選、その後の解散・総選挙時の一大争点化も意図している。改憲と言えば、もちろん岸田だけではない。石破も小泉進次郎も高市早苗も負けてはいない。一斉に改憲の太鼓を打ち鳴らす。

 ここで冒頭の通奏低音に戻る。もはや「低音」ではなくなった。われわれは改憲勢力の流す「大音響音」とたたかっていかねばならぬ。

 われわれの依拠するものはあるか。ある。何よりも「改憲必要なし」の世論だ。さまざまなデータがあるが、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」が出した声明からいくつか引く。*JNN8月の世論調査で「次の総理に最も重点的に取り組んでほしい課題」に「憲法改正」は最小の1.7%*今年5月の朝日世論調査では、憲法9条があるから「日本は戦争をしないですんできた」8割。あとはこの世論を基盤にそれを決定的に大きくしていく運動だ。

 とここまで書いてアップしようと思ったら14日午前11時半の岸田総裁選不出馬会見だ。ただこの原稿を変える必要はないと思う。今後の何人かの立候補表明の中でいやがおうにも高まる「改憲大合唱・大音響」に立ち向かい、押しつぶしていこう。その先の総選挙は遠くはない。
(寺)
2024/07/22
都心の選挙難民
 いまさら気づいたわけではないが、日本国憲法は「日本国民は、正当に選挙された国会の代表者を通じて行動し」で始まる。「選挙」がこんなにすぐ出てくる。ことほど左様に大事なのだ。

 なぜこんなことをいうか。都知事選から半月以上もたつのに、ある新聞投書がいまだに頭のすみにこびりついている。投票日前日6日の朝日くらし欄「ひととき」だ。

 タイトルは「投票に行きたい」。港区の86歳女性で内容は以下。投票所は近くの小学校だが、行き帰りの坂道が急で、腰の悪い私と膝を痛めている91歳の夫は非常に負担。区役所に相談したら期日前投票はといわれた。しかしそこは小学校よりなお遠く、タクシーを頼まざるをえない。こうして5年ほど投票に行けてない。なんとか郵便投票を。

 痛切。哀切。憲法の冒頭にある「選挙」の権利が極めて行使しにくくなっている一つの例だ。

 いろんなことを考えた。①この夫婦は政党やその機関紙に縁はないのだろう②選挙に熱心な宗教団体とも無縁③老人会、趣味のサークルなどに不参加④車出そうかと言ってくれる親族や知人がいない。区在住の4人の知人にこの投書を知らせたが、町名までは書いてなので、それ以上は…ということだ。

 ただ気になる点もある。この夫婦は日常の買い物はどうしてるのだろう。スーパーは小学校より近い、生協・宅配など利用、というあたりだろうか。

 では朝日新聞暮らし部に思いを転じる。「どこの人かわかれば今後は私が車をだすなりするが」という申し出が手紙やメールでそれなりにあったとは思う。なにか動いたかな。「希望者に郵便投票を」(これは高齢者・障害者だけでなく施設入所者にとっても重大課題だ)というキャンペーンに進まないかな。

 冒頭の参政権に戻る。憲法15条は「公務員を選定し及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とある。学生時代に憲法の授業をとらなかったので、今回初めて知ったことがいくつかあった。、「参政権は『国家への自由』」であること、選挙権は「個人の人権であるとともに、公務員の選定に参加することを意味する」。結局、思いはまた冒頭の高齢夫婦に戻る。なんとかしたい。なんとかしよう。
(寺)

追記=朝日新聞には「住所を教えてくれれば車を出す」などの申し出がかなり寄せられたと思う。一読者としてそうした声がどのくらいあったかを知りたいと思ったが、朝日についていえば「〇〇部に」という電話はつながず、お客様窓口にいく。意見・質問は「伝えるが、返事があるかはわからない」。これでいいのか。
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