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2023/05/22
軍事支援の合意に染まったG7
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<G7について報じる新聞各紙>
 広島市で行われた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、ウクライナのゼレンスキー大統領の来日で「対ウクライナ支援」に色濃く染まった。
 報道によると、バイデン米大統領は、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの米国製のF16戦闘機を供与に向けて、欧州各国と共にウクライナ軍パイロットの訓練を支援する意向を示した。米国はこれまで、F16の供与に慎重だったが、姿勢を転じた。英国のスナク首相はツイッターを通じて「F16の訓練を容認する米国の判断を歓迎する」と応じ、オランダ、ベルギー、デンマークとも協力して、同軍パイロットの訓練の支援を表明した。
 「核兵器を永久になくせる日に向けて共に進もう」(バイデン大統領)▽「平和のために行動することが私たちに課せられた使命だ」(仏マクロン大統領)――。G7サミット初日の19日、各国首脳は原爆資料館を訪れ、それぞれ芳名録にメッセージを残した。2日目は、異例の前倒しで首脳宣言を発表し、核軍縮について「現実的かつ実践的な方法で核兵器のない世界を実現することに関与する」と強調。そして武器供与や軍事訓練の支援を「合意」して3日間のサミットは閉幕した。
 ロシアが参加していたG8サミットは1997年にスタートし、プーチン大統領がクリミア半島を一方的に編入した14年に終わりを告げた。ロシアのウクライナ侵攻は、冷戦終結後の「G7最大の危機」といわれる。だが、被爆地、広島でのサミットが、武器の供与など軍事支援の話し合いの場になっていいのか。戦争や紛争でこれ以上、命を犠牲にしてはならない。平和的解決のために、核保有国のロシアともチャンネルを持ち、戦争終結へと外交努力をすることが本来の役割ではないのか。
 この間、各市民団体は「核廃絶のための具体策を示していない」など核の問題や気候危機に関する討議の曖昧さを指摘し、シンポジウムや記者会見を通じてG7を批判した。
 国際社会が「平和のために共に進む」ための道筋は、核廃絶であり、それをリードするのが日本の役目。私たち市民も、各国の人々と連帯して、核廃絶の声を上げ続ける必要がある。
2023/05/16
日本テレビとNHK ともに開局70年
放送は誰のためのものか・・・
開局当時をふり返ってみるのも一興でしょう
 今年は日本テレビとNHK、共に開局70年です。1952年(昭和27年)7月31日、NHKその他に先駆けて予備免許を手にしたのは日本テレビでした。開局は翌年(1953年)の8月28日です。
 日本にテレビが登場するきっかけはアメリカの上院議員カール・ムントの演説でした。時あたかも朝鮮戦争。ムントは、台頭する共産主義勢力に対抗するため「ラジオのVOA(ボイス・オブ・アメリカ)をテレビ化したビジョン・オブ・アメリカを世界中に設置せよ」と提案したのです。
 この構想は、言ってみればテレビネットワークによって「日本を反共の防波堤」にするというものです。「その最も適切な国はドイツと日本だ」と。

 ここで登場するのが正力松太郎周辺の人物でした。「この時期、ビジョン・オブ・アメリカ構想が持ち込まれたら、国内世論はかえって左傾化する恐れがある」「あなた(ムント)の計画は極めて魅力的だが、これは日本人の手で行われてこそ権威と信頼を勝ちうる。主権回復(講和条約)の前夜に立つ日本で、あなたの計画がそのまま実現されることになれば、せっかくの政治的意図が逆効果になるだろう」と。ムントは「計画を日本人自らやってくれるなら、それが何よりも望ましい」と。やがて正力の公職追放解除、開局に向けて技術も設備もドルも心配してくれることになったのです。日本テレビの正式な社名は日本テレビ放送網株式会社。「網」の字が今も気になっています。言論・報道の自由のネットワーク(網)であってほしい。
 「ジャーナリズムとは権力が報じられたくない事を報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない」といったイギリスのジャーナリスト、ジョージ・オーウェルの言葉を改めて噛み締めています。
(仲)
2023/05/03
「改憲]の課題と岸田首相
――「24年9月」をめぐる攻防・再論
 連休中、岸田首相はアフリカ訪問、帰国するとすぐ韓国訪問だ。いうまでもなく19~21日は「広島サミット」。そのあとはとなると、いつ解散があってもおかしくない。
 3日は憲法記念日だ。各紙の5月の記事ともあわせ、改めて整理する。岸田首相の頭の中は「24年9月の自民総裁任期切れ=総裁選」でどう再選を果たすかがほとんどだろう。
 しかし彼には「もう一つの課題」がある。「総裁任期中に改憲にめどをつける」、いいかえれば「改憲案を国民投票にかける」ことができるかどうかだ。21年総裁選時の「公約」だ。
 首相は聞かれるたびにいう。「総裁任期中の改憲という公約はいささかもかわらない」。3日付「産経」は、4月19日の岸田首相の憲法インタビューが1面トップだ。やはり首相はこの「いささかも…」せりふを繰り返している。

 ただ24年9月までは1年4カ月。政治には行程表と一定のリアリズムが求められる。首相は「1年4カ月で改憲ができるのか」に答えを出す必要がある。
 岸田首相は「再選」と「改憲」の連立方程式を解くことができるのかが突きつけられる。自民党のなかにも「(総裁任期の)1期3年では憲法改正などすべての課題は解決できない」(遠藤利明総務会長、3月,『選択』4月号)という声はある。上記のリアリズムの一形態だろう。

 わが改憲反対運動に目を移そう。自民の改憲への執念に目を凝らしつつ、岸田改憲は「時間足りずに窮地に」とみる論に注目した。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動委員会共同代表」の高田健氏である。『週刊金曜日』3月24日号で言う。氏はまず20年8月、それまで改憲の執念をあらわにしていた当時の安倍首相が病気を理由に突然辞意を表明したことにふれる。

 高田氏はいう。「任期中〈21年9月まで〉の改憲が不可能になって追い詰められたことこそ、安倍辞任の隠された日真の理由なのではないか」。そのうえで今の岸田首相は「当時の安倍元首相がおかれた条件とほとんど変わりがない」と指摘する。
 高田氏によると、改憲国民投票の周知期間は「常識で考えて180日だ。とすれば来年3月末までに衆参両院の本会議で改憲案を発議しなくてはならない」「これを可能と考えるのか」と突きつける。改憲阻止運動における攻勢的リアリズムといえるだろう。

 「毎日」3日付は、「改憲反対47%、賛成35%」」は昨年の「賛成47%、反対37%」を逆転したことを1面見出しにしていた。この1年、むだではなかったかと、いささか励まされる。同日「朝日」は同社調査で、憲法9条を「変える方がよい」37%は「13年以降2番目の高さ」を1面見出しにとった。同紙なりの危機感と受け止めたい。

 興味深い「72%」「70%」という数字があった。共同通信が2000人に調査して5月1日に発表した(「東京」など2日付)。改憲の必要「ある」24%、「どちららかというとある」48%で計72%。
 しかし一方、国民の間で改憲の機運が高まっていると思うかについては「思わない」22%、「どちらかといえば思わない」48%で計70%。72%の「改憲」の思い(かなり漠然としている)を、反対の「機運」が大きく押し戻しているのが「70%」だ。これも「改憲反対運動の持つリアリズム」だろう。

 ただ最後に言わねばならない。安倍的妄信に支えられた改憲勢力の反動的瞬発力を軽視してはならない。

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