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2022/04/16
国か、いのちか
前回書いた「命が一番大切なのだからウクライナは降伏を」論がずっと引っかかっている。★「それを言うなら、侵略者に100倍言え!」
テレビ朝日モーニングショーの玉川徹キャスター「どこかでウクライナが引く以外に市民の死者が増えるのは止められない」(3月4日)、橋下徹・前大阪市長「もう政治的妥協の局面」(3月21日、フジ「めざましテレビ」)などが代表例か。私がまず叫んだのは次の二点だ。「それをいうなら侵略者の側に百倍の声で叫べ」「侵略に対し、どんな方法でどう対応するかは第一義的には侵略された側が決めることだ」
★「武力を頼む国は自滅する」
加藤陽子・東大教授(政府が学術会議委員への任命を拒否した)は、この種の議論を意識していたのではないか。
毎日新聞3月18日付「近代史の扉」はこう展開する。日中戦争が始まる2年前の1935年、北京大文学院長だった胡適(こせき、こてき)は言う。日本と戦争になれば、中国は米ソの支援を招来したい。しかし簡単に参戦してくれるはずもない。「ならば方法は一つ。中国自身が犠牲を払い、単独で数年間耐えるしかない」。「その犠牲を甘受して初めて」米ソの応援もあるのだ、と。覚悟とでもいおうか。加藤論評の表題はずばり「武力をたのむ国は自滅する」と。
毎日新聞3月18日付「近代史の扉」はこう展開する。日中戦争が始まる2年前の1935年、北京大文学院長だった胡適(こせき、こてき)は言う。日本と戦争になれば、中国は米ソの支援を招来したい。しかし簡単に参戦してくれるはずもない。「ならば方法は一つ。中国自身が犠牲を払い、単独で数年間耐えるしかない」。「その犠牲を甘受して初めて」米ソの応援もあるのだ、と。覚悟とでもいおうか。加藤論評の表題はずばり「武力をたのむ国は自滅する」と。
★「先制攻撃はしない…」
同じく毎日3月27日の藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)論評も玉川所論を踏まえている。
「人命を守るために降参すべきだ」とは筆者は言わない、と明言したうえで、憲法論に入り、「憲法9条改正で国を守ろう」論に反論する。「憲法は、自国の政府権力を規制するものであり、どう改正しても外国をけん制しない」。「先制攻撃」論にも容赦ない。「ウクライナで死ぬロシア兵を見てもわかる通り、自国が先制攻撃をすることは、これまた無駄に国民を危険にさらす行為である」。氏の所論は、ロシアへの経済制裁の徹底に加えて何が必要か、さらに言う。「攻撃されれば死を賭して反撃するが、先制攻撃はしない」国を一つでも増やすこと。なるほど「憲法9条を世界に」の精神だ。
「人命を守るために降参すべきだ」とは筆者は言わない、と明言したうえで、憲法論に入り、「憲法9条改正で国を守ろう」論に反論する。「憲法は、自国の政府権力を規制するものであり、どう改正しても外国をけん制しない」。「先制攻撃」論にも容赦ない。「ウクライナで死ぬロシア兵を見てもわかる通り、自国が先制攻撃をすることは、これまた無駄に国民を危険にさらす行為である」。氏の所論は、ロシアへの経済制裁の徹底に加えて何が必要か、さらに言う。「攻撃されれば死を賭して反撃するが、先制攻撃はしない」国を一つでも増やすこと。なるほど「憲法9条を世界に」の精神だ。
★「選択に敬意を払う」
篠田英朗東京外大教授(国際政治学者)は朝日4月15日付で、橋下、玉川氏らに呼び掛けているかのように語る。「ウクライナでは、大統領の方針を9割の国民が支持しています。多くの一般市民が命を懸けて、自分の国と国際社会の秩序を守っている。当事者が苦悩の末にそういう選択をした以上、それに対して敬意を払うべきでしょう」。氏の結論は次のくだりか。「『法の支配』によって国際社会の秩序を維持することは、二度の世界大戦の教訓を踏まえて、人類が取り組んでいる壮大な実験です」。ここには日本国憲法の精神への賛意が読み取れる。
★日本は何を学ぶ?
玉川氏についていえば3月18日の東京新聞コラムで「失われようとしている数十万の命を救う」ために「侵略を受け入れる」ことまで言及していた。1カ月でいろんな議論、ときには批判があり、氏は4月15日の同コラムでは「降伏」論は口にしていない。
自民党などの「改憲」「軍事費倍増」の主張について、「他国の不孝をテコにして長年の野望を実現しようという魂胆」が「ないとは言い切れません」と指摘する。さらにウクライナ問題から日本が何を学ぶか、「それは軍備増強や軍隊の創設なのでしょうか」と問い、「そうではない」と否定する。
彼の心中に変化があったか、この方向性は大事にしてほしいと念じる。
自民党などの「改憲」「軍事費倍増」の主張について、「他国の不孝をテコにして長年の野望を実現しようという魂胆」が「ないとは言い切れません」と指摘する。さらにウクライナ問題から日本が何を学ぶか、「それは軍備増強や軍隊の創設なのでしょうか」と問い、「そうではない」と否定する。
彼の心中に変化があったか、この方向性は大事にしてほしいと念じる。
(了)
2022/04/10
歴史は繰り返さない!
そんな歴史のはじまりの「目撃者」でありたい
ウクライナ問題はいま、新しい歴史を刻もうとしています。
{その1} ウクライナの「我慢」
ウクライナ侵略から2か月が経とうとしています。ウクライナのゼレンスキー大統領は(ロシアの蛮行に)「ジェネサイド(集団虐殺)だ」と訴えています。かんにん袋の緒が切れてウクライナがロシア領に砲弾を撃ち込んだとしたら・・・「第3次世界大戦」になる可能性大です。ウクライナは踏みとどまっています。ウクライナのこの「態度」は、歴史に深く刻み込まれるでしょう。新しい歴史のはじまりを予想させる「態度」です。その「態度」を支持し、支援する必要をあらためて強く決意させられています。
{その2}国連総会の「役割」発揮
ロシアがウクライナ東部に侵攻してきた2月24日。国連総会は直ちに「ロシア非難決議」を141ヶ国の賛成で採択しました。つづく3月2日。国連総会緊急特別会合は、ロシアの侵略を「国連憲章違反」と断定しました。そして3月7日(日本時間8日未明)再招集された国連特別会合は、国連人権理事会(ロシアは理事国)の理事国資格停止決議(賛成93、反対24)が採択されました、3度もの国連決議がなされたのは初めてではないでしょうか。この国連の臨機応変の決議は、あたらしい「国連の姿」として記憶されることになるでしょう。
日本はどうでしょうか
自民党を中心に「自衛のために軍拡が必要」「軍事には軍事で対抗」などと平和に逆行する議論が行われています.アベ元首相にいたってはウクライナ危機に乗じて、米国の核兵器を配備する「核共有」まで言い出しています。高市早苗政調会長も「議論を封じ込めるべきではない」と呼応。維新の会なども同調しています。許せますか!?昨年の総選挙の時のNHK調査。憲法「改正」を優先課題とすべきはたったの3%でした。ここに民意と自民・維新らの改憲勢力との大きな矛盾があります。
あらためて確認しましょう。そもそも憲法は政府の権力を規制するものです。戦争を国際紛争解決の手段として使わないというのが日本の憲法ですよ。「自衛」というなら日本の平和憲法を世界に広める努力をすることこそ本当の「自衛」行為ではないでしょうかね。
改憲の中身は
- 九条に自衛隊を明記するといいます。
↑アメリカの戦争に参加することのための改憲ですよ。 - 緊急事態条項の創設。
↑国家緊急権を規定する憲法上の条項。憲法が一時的に停止され、政府に独裁権が与えられる。基本的人権を制限することができる というものです。 - 参議院の合区解消
↑一人区を温存する党利党略ですね - 教育の充実
↑教育の無償化をいうなら、まずは財政支援ですよ。
(仲築間 卓蔵)
2022/03/27
ウクライナ便乗・改憲策動
ウクライナのゼレンスキー大統領が、国会でオンライン演説した。これを受けた参院議長の山東昭子議員は「閣下が先頭に立ち、また貴国の人々が命をも顧みず、祖国のために戦っている姿を拝見して、その勇気に感動しております」と挨拶した。
東京新聞3月25日付「こちら特報部」は、「『個』の犠牲いとわず 危うい『愛国』」と問題にしたが、ウクライナ情勢に便乗して、自民党、維新など改憲派勢力が、「憲法九条」や「非核三原則」を批判し、「愛国心」や「戦争支援」を広げる中で、参院選での改憲勢力3分の2獲得と日本を「戦争する国」にする策動を図っていることが目立っている。
ロシアのウクライナ侵攻が、一方的な他国への武力攻撃で,どんな理由があるにせよ、許されない暴挙であることに疑いはない。
▼「悪乗り」から「ウクライナ侵攻利用改憲策動」
日本国内で、ロシア批判が広がり、大衆的な運動が起きてきたのも、余りもあからさまな攻撃だったことから当然だったが、その中で、義勇兵の募集や武器供与論が出て来たのは、「悪乗り」と言うべきだった。義勇兵参加は刑法93条で禁止されている刑法の定める私戦予備・陰謀罪に当たるし、武器供与論は、「武器輸出禁止」に抵触し、まして交戦国への輸出であれば、「参戦」だ。しかし、政府は「防弾チョッキなら問題はない」とあっさり決めて、3月4日、防弾チョッキをウクライナに贈った。
さらに、このウクライナ紛争を、「核武装」「九条否定」など日本の平和原則を否定し、軍拡に結びつける議論も出てきた。
日本維新の会の松井一郎代表は、2月25日、「『力による現状変更』はあってはならないこと」と批判。「対岸の火事ではない。自国はしっかりと自分たちで守る決意と覚悟が必要だ」と述べた。「共産党はまた九条でどうのこうの言ってるけどあの人たちはロシアの味方かな」ともいう。
安倍晋三元首相は2月27日午前のフジテレビ番組で、「日本は核拡散防止条約(NPT)の加盟国で非核三原則があるが、現実を議論することをタブー視してはならない。米国の核兵器を自国に配備して共同運用する核共有(ニュークリア・シェアリング)を日本も議論すべきだ」と発言。松井代表が「非核三原則は昭和の価値観」と述べた「維新」は「核共有の議論」などを盛り込んだ提言を政府に提出した。
▼武力にも武力で対抗しない
国際世論を味方にしたいウクライナは、ゼレンスキー大統領が先頭に立って、各国国会に訴え、米国、英国などに続いて、日本にも打診があり、野党を含めて、国会演説に応じることにした。交戦中の国のトップに演説させることについての疑問も、どういう位置づけでこれを受けるのかも明らかでないままの「決定」だった。
しかし、設備の都合などから国会議事堂は避け、セットされたのは、議員会館の会議室。日本の憲法や世論を意識して抑制的だった大統領に対し、山東議長の発言は、その配慮をも台無しにする政治利用だった。
無差別攻撃を受けているウクライナ市民への支援に異論はない。しかし、重要なのは「武力にも武力で対抗しない」、「国際紛争を武力で解決しようとする風潮にあくまで反対する」という国家としての姿勢だ。いま、日本国民には、この覚悟が求められている。