点描
2023/06/05
震洋隊の悲劇を舞台化
劇団桟敷童子 東京・墨田で6月11日まで
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「海の木馬」の1場面
俳優の小野武彦さん(前列右から2人目)らが特攻隊員役で出演

 敗戦の翌日、高知県であった特攻艇の爆発事故で111人が犠牲になった「震洋隊」の悲劇を題材にした、劇団桟敷童子の新作「海の木馬」が東京都墨田区の「すみだパークシアター倉」で上演されている。
 特攻艇「震洋」は、トラックのエンジンを搭載したベニヤ板づくりのボートだ。戦争末期、海軍は米軍の本土上陸に備え、高知県の太平洋岸を守備範囲に第23突撃隊を編成。同隊に所属する第128震洋隊には特攻隊員と補充兵を中心とした整備員らが配属されたが、燃料不足から震洋を格納する防空壕(ごう)の穴掘り作業に終始して1945年8月15日の敗戦の日を迎えた。ところが、翌16日の午後、司令部から「敵機動部隊が本土上陸の目的をもって土佐沖を北上中」「直ちに撃滅すべし」と突然、出撃準備命令が下された。兵士らは防空壕から震洋を運び出し、海岸沿いに並べて爆薬を装着したが、爆発事故で111人の命が奪われた。
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東憲司さん(左)と斉藤とも子さん
 舞台では、出撃を待つ特攻隊の若者たちの葛藤、彼らの世話をする宿泊先の旅館の人々や地元住民ら戦時中の庶民の生活が描かれる。
 同劇団では敗戦後の惨事として、福岡県添田町の「二又トンネル爆発事故」(45年11月)を舞台化した「飛ぶ太陽」を2年前に発表している。旧日本軍が極秘に貯蔵していた火薬などを米軍がトンネル内で焼却処理したのが原因の事故で、作業にかり出された147人が亡くなるなど多数の死傷者が出た。「この作品のことを知った高知県の高齢の女性から電話があり、震洋の爆発のことを聞いた。敗戦後も戦争に関連する事件や事故で多数の命が失われた」と同劇団を主宰する劇作家、演出家の東憲司さんは語る。「飛ぶ太陽」に続いて「海の木馬」に出演する俳優の斉藤とも子さんは「こうした史実を、表現者としても伝えていきたい」と話す。上演は6月11日まで。
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