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2022/02/25
ウクライナ市民救援の連帯を
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 恐れていたことが現実となった。ロシア軍が2月24日、ウクライナに侵攻し、首都キエフを含む複数の都市を攻撃した。新聞の1面には、顔を血で赤く染め、頭に包帯を巻いた女性の写真が掲載され、一般市民にも多数、犠牲が出ているとみられる。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとの外交関係を断絶すると表明。国際社会はあらゆる手段を講じて、核保有国であるロシアの軍事攻撃を止めさせなければいけない。
 報道によると、ウクライナ北部ベラルーシとロシアの国境と、ロシアが2014年に「併合」した南部クリミアとの境界で、ロシアの地上部隊の攻撃があった。キエフや北東部ハリコフなど複数の都市がミサイル攻撃を受け、南部オデッサ、東部マリウポリでは死者が出た。西部の都市でも攻撃によるとみられる爆発音が聞かれたとの報告があった。
 ロシアの国防省は、ウクライナの軍事、防空施設対象の攻撃で、都市部は狙っていないと弁明。一方で、負傷した市民らの被害を伝える画像、映像が次々に発信されている。
 侵攻前、ロシアのプーチン大統領は国営メディアのテレビ演説で、親ロシア派の住民がウクライナの東部で「ジェノサイド(集団虐殺)を受けている」と主張した。北大西洋条約機構(NATO)の脅威から、人命を守るには「ほかに方法がなかった」といい、今回の「特別軍事作戦」を正当化した。
 米国のバイデン大統領は、「米国と同盟国らは結束して断固とした対応を取る。世界はロシアの責任を追及する」と表明した。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は記者会見で「独立した主権国家に対する前例のない侵攻」と非難した。
 緊張が高まっていたヨーロッパの主要国、日本などは、在ウクライナ大使館の機能をキエフから、西部のリボフに移した。隣国ポーランドへの脱出を模索する市民もいるという。
 遠い日本に住む私たちも看過できない。ウクライナといえば、思い浮かべるのが、チェルノブイリ原発事故(1986年)。被ばくした子どもたちの保養活動など日本でも支援の輪が広がった。東日本大震災による東京電力福島第1原発事故(2011年)が起きた後は、ウクライナの医師らが、日本の被災者のため医療のアドバイスをした。
 そしていま、チェルノブイリの原発施設は再び、危険信号を発している。ウクライナの政府関係者は、ロシア軍がチェルノブイリを占拠したことを認め、放射性物質が漏れる危険性に触れたという。事故で廃炉になったものの、内部では処理作業が続いているからだ。
 東西の冷戦終結後、軍事同盟であるNATOは一定の役割を終えたはずだった。以後は平和共存のための組織に移行すべきだった。ところが、その体制は維持され、ポーランドなど旧社会主義国圏の国々が、ロシアと対立するNATOに相次いで加盟した。米国主導の拡大策は文字通り、ロシアにとって「脅威」になった。
 NATOに加わっていないウクライナを、プーチン氏は「ロシアとは不可分の関係」と位置づけていた。ウクライナに干渉してクリミアを「併合」したのは、欧米、NATOへの積年の不満が背景にあり、その延長線上に今度の攻撃がある、とみる専門家がいる。それは権力者の「事情」であり、軍事攻撃に巻き込まれる市民のことは意識の外だと言わざるを得ない。
 日本は、もうすぐ3月10日、東京大空襲のメモリアル・デーを迎える。むごい攻撃の報道に接し、高齢の体験者は何を思うのか。
 これ以上の攻撃、反撃を止めさせるための外交政策を政府に求める。そして戦火にさらされる子ども、人々の命を守るために、各国の市民と連帯を強める。私たち市民も行動を起こそう。
2022/02/18
ジェンダー2題
 二つのことを取り上げる。

【詩織さん事件】
 ジェンダー問題とは少し違うと思うが、「望まない性行為の強要」が問われたという点で、伊藤詩織さん裁判はやはり重視されるべきものだ。
 事件は2015年に起こった。被害届は9日6日後に出されている。当時TBS記者の山口敬之氏に地元警察の逮捕状がでていたが、それが警視庁幹部の判断で執行されなかったことは関係者が認めている。検察庁が16年に不起訴としたことに対し、伊藤さんは損害賠償裁判を起こした。19年1審でも、今年22年1月の控訴審でも伊藤さんが勝利した。性暴力が断罪されたのだ。
 大手メディアの記者が、「就職相談」を入り口に、意識を失ったに近い女性に性暴力を行使した。裁判所が山口氏の言い分が「事実と明らかに乖離」「信用できない」と断じた。
 メディアはどう受け止めたか。各紙の扱いの対照を紹介する(いずれも東京地域)。朝日第3社会面3段、東京社会面3段、毎日2社3段/読売2社1段(ベタ)、産経3社1段。
 判決ベタ扱いの2社には明らかに「性暴力への決定的軽視」が読み取れる。同時に山口氏への忖度、擁護の姿勢がみてとれる。山口氏は事件の翌16年に当時の安倍首相にどれだけ近かったかを誇示する『総理』(幻冬社)という本を出している自他ともに認める政権寄り記者である(この年にTBSを退社)。
 あえて言う。両社の編集局には、「政権側にたてつく者の勝訴? ベタでいい」。そんな雰囲気がただよっていたのだろう。

【憲法14条】
 法学部があるわけでない地方国立大学で学生が「同性婚」をテーマにした模擬裁判を上演-ときくとやはり驚く。山形大学でのこと。この2月に知ったが、模擬裁判上演は昨年12月のことだった。
 昨年3月の札幌地裁判決は「同性婚禁止は違憲である」という画期的内容だった。山形大人文社会学部の学生を中心とした研究サークルは、毎年実施してきた模擬裁判劇のテーマに「同性婚」を選んだ。それほど札幌地裁判決の影響は大きかった。
 地裁判決は憲法14条(法の下の平等)をよりどころとした。婚姻の法的効果が同性婚で認められないことは差別であり、憲法14条に違反する、と。 
 では憲法24条「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」との関係についてはどうか。判決は「同性婚を認めていない現在の民法などは24条に違反しない」とした。ここでの「両性」は「男女」というわけだ。どうして14条違反なのに、24条違反でないのか、この点だけでも山形大の学生約100人の実行委員会メンバーたちは大いに悩み、議論しただろう。模擬裁判にはそんな学生たちの葛藤がにじみ出ているようだ。
 この公演を私が知ったのは2月の「赤旗」地方版だった。しかしさすがというか地元山形新聞は学生たちの準備の大詰め段階の昨年11月に大きく報じていた。地元さくらんぼテレビも公演後に報じた。
 実行委員長は公演体験を通じて、札幌地裁判決についてこう述べている。
 「個人の尊厳にもとづく性の多様性は地道な積み重ねによってこそ実現されるものであることを体感した」(「赤旗」2月2日付)。「体感」ということばがいい。
(了)
2022/02/11
フェイク報道 NHKさん あなたもか
 記憶している人も多いだろう。2017年1月2日放送の東京MXテレビ『ニュース女子』。沖縄の基地反対運動について特集した「沖縄リポート」で、「反対運動の中の高齢者の映像に「逮捕されても生活に影響がないシルバー部隊」とか反対派は日当をもらっている!?」と疑問を呈した極端な偏向番組を放送した。「反対運動への資金援助」は大衆運動攻撃の常套フェイクだからだ。大問題になった。BPO(放送倫理・番組向上機構)は「重大な放送倫理違反」という判断を示した。番組『ニュース女子』はなくなった。
▼ 「日当をもらって」というフェイクは、またいずれどこかでと思っていたら、起きた。こんどはNHK。
 12月26日に放送されたNHK・BS1スペシャル『河瀬直美が見つめた東京 五輪』。NHKはここで「五輪反対デモの参加者」という人物をインタビューし、「金をもらって動員された」と字幕で表示した。ウソだった。
▼ 制作したNHK大阪放送局・堀岡淳局長代行は「(担当者の)思い込みによるもので事実を捏造するやらせではない」と釈明。正籬聡・放送総局長も「ジャーナリストとしての基本の事実確認が不十分」と謝罪した。
▼ はいそうですかと引っ込むわけにはいかない。
 2月7日、NHKとメディアの今を考える会、NHKとメディアを語ろう・福島、放送を語る会が連名で NHK宛てに以下の要望書を提出した。

 踏み込んだ調査と納得できる説明で視聴者の信頼回復を
―BS1スペシャル虚偽字幕問題に対して-

 NHKは、昨年12月26日放送のBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」で、五輪公式記録映画製作チームの映画監督・島田角栄氏が取材対象の男性にインタビューするシーンに「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕をつけて放送しました。
 この字幕について角秀夫専務理事・大阪放送局長は1月12日に経営委員会で、「一部に不確かな内容があった」とお詫びしました。そのうえで「制作担当者は取材の後、男性が五輪反対デモに参加したと思い込んで事実関係の確認が不十分なまま、不確かな内容の字幕を付けて放送してしまいました」「事実確認とチェック体制が不十分だったことが原因です」と説明しています。13日の記者会見でも同様の説明を行いました。

 五輪反対運動に取り組んできた市民団体は、「デモ参加者にお金を払うなどありえない」「字幕は事実に反し、市民運動を貶めるものだ」と抗議の声を上げました。字幕情報が「不確か」であったことを認めたNHKの謝罪は、市民団体のこうした主張の正しさを裏付けるものと理解されます。
 今回の問題で、制作担当者も試写に立ち会った管理者も、「デモにお金をもらって参加している」という字幕を付けることに違和感を覚えず、事実関係を厳正に確認する必要性を軽視したのは、番組制作現場に「デモは、お金をもらって動員される“プロ市民”の行動」という考え方、五輪に反対する市民への偏見があるのではないかと疑わせます。
 また、同番組中では「プロの反対側もいてるし」という島田監督の発言も挿入されています。島田監督によれば、問題の男性は島田氏が取材中に探し出し、インタビューを設定したとのことです。島田氏が何を根拠に「プロの反対側」なる言葉を用いたのか、この島田氏の市民運動に対する歪んだ見方と男性へのインタビュー設定、虚偽字幕とは関係があったのか、NHKは何を裏付けとして島田氏のこのインタビューを敢えて入れ込んだのか、字幕のチェックの「甘さ」にとどまらない根深い背景を憶測させます。
 番組には、河瀬監督がデモの現場に立ち会っているカットは登場しますが、デモの参加者・主催者へのインタビューはありません。字幕や島田監督のインタビューについても、デモを企画した市民団体は「NHKからの取材・確認は一切なかった」と言明しています。「金でデモ動員」という重大な問題について当事者に事実関係や見解を確認しないのは、取材・報道の基本を蔑ろにする、あってはならないことであり、放送法第四条の三「報道は事実を曲げないですること」、あるいは「意見が対立している公共の問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱う」とした国内基準にも大きく違反しています。
 さらに、記者会見でも河瀬、島田両監督や視聴者にはお詫びしたものの、偏見を流布され最も傷つけられた五輪反対運動の人々への直接の謝罪はありませんでした。また「不確か」という説明は、「確認できないだけで、男性は本当に反五輪デモに金をもらって参加していたかもしれない」という含みを残しており、「事実無根」を正面から認めたものとは言えません。このようにNHKの対応は、「市民の反対運動を極力無視・否定する」姿勢に貫かれています。
 1月24日、NHKはこの問題で「BS1スペシャル調査チーム」を設置したと発表しました。私たちは、調査チームに対し以下のように要望します。
  1. 調査チームは、通り一遍の事実経過の調査や原因分析でおわらせることなく
    • 製作者が十分な事実確認も行わないまま字幕を付けた「思い込み」の原因は何か
    • 「思い込み」は映画製作チームにも共有されていたのか
    • 管理者が試写で、強く事実確認を求めなかったのはなぜか
    • 担当ディレクターが、上司の指示を受けながら、男性本人や島田監督に字幕の確認をしなかったのは事実か。だとすればそれはなぜだったのか
    • 「プロの反対側」という島田監督のインタビューはなぜノーチェックで使われたのか
    • なぜ反対運動の側に一度もきちんとした取材・確認をしなかったのかなど、踏み込んだ調査で視聴者の疑問に応え、視聴者に納得のいく報告を行うことを求めます。
  2. 調査チームには第三者を加え、視聴者から「身びいき」「真相隠蔽」との疑義を持たれないよう、公平性・公開性を担保したメンバー構成を求めます。
  3. 事実経過と汲み取りべき教訓、再発防止策を視聴者に丁寧に説明する検証番組を制作することを求めます。
以上

2月10日 舞台は回った・・が

▼2月10日、NHKニュース
 NHKは取材・制作の基本的な指針を定めた「NHKガイドライン」を逸脱していた」として、いずれも大阪拠点放送局に所属する30代ディレクターと40代のチーフ・プロデューサーを停職1か月、二人の上司で50代の専任部長を出勤停止14日の懲戒処分にすることを決めました。
 このほか大阪拠点放送局の局長代行ら幹部3人をけん責の懲戒処分としました。
 また大阪拠点放送局長の角英夫専務理事が役員報酬の10%を2か月自主返納することになりました。

 今回の問題を受けてNHKは再発防止策として
▽ 取材、制作時に事実の確認が十分にチェックするルールをてっていするとともに
▽ 番組制作にかかわるすべての部局に、リスクマネジメントを含めた品質管理を担う責任者を配置し
▽ 全国の放送現場で勉強会を実施することにしています。

 NHKは「関係者や視聴者のみなさまにおわびいたします。チェック体制の強化や研修の徹底など再発防止に取り組み4,信頼回復に努めてまいります」とコメントしています。

これで「信頼回復」ができる?

 今回の問題はコロナ禍の最中にありながら「まずオリンピックありき」の方向がもたらしたものではないか!
最優先すべきは 官邸からの独立だ!

 BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理憲章委員会は10日、この番組について放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯などについて検証する必要があるとして審議することを決めた。

2022/02/06
都立病院、公社病院の独法化計画
    今夏にも法人設立
 新型ウイルス、COVID-19の感染再拡大のさなかに、東京都が都立病院、公社病院の独立行政法人化を進めている。「法人化されれば民間が参入しやすくなり、医療に市場原理が持ち込まれる」「黒字化のために人件費が削減され、正規雇用から非正規雇用への切り替えが増える」など医療関係者らから反対の声が上がっている。
 外部の有識者による経営委員会の提言を受け、都が独法化の方針を打ち出した。8つの都立病院、6つの公社病院・がん検診センターの運営を一体化することで、柔軟な人事、医療機器の迅速な整備などを目指すという。7月をめどに100%都が出資の地方独立行政法人を設立する準備が進んでいる。
 独法化の問題点の一つに、民間企業が経営に入りやすくなることが挙げられる。財政を黒字化するために人件費の削減、ベテラン看護師、スタッフらの離職、正規雇用から非正規雇用に切り替えることなどが懸念され、患者の立場から言えば、病院の個室の料金が値上されるなどの負担増が心配される。
 公立病院が独法化された例はこれまで40ほどあるが、新型ウイルスの感染拡大で対応に追われ、通常の医療に支障が出ているときに、独法化問題がのしかかれば、都立病院、公社病院などで働く人々の心労が増すことになるのは想像に難くない。
 日本は国際的にみて医師数が少ないことはかねてから指摘されている。
 OECDの調査(2019年発表)では、1000人あたりの医師数は2・4人で、G7では最下位。OECDの加盟国の平均(3・5人)よりも少ない。
 労働環境はどうか。全国の勤務医の4割(約8万人)が「過労死ライン」といわれる年960時間(月80時間)以上、残業し、約1割が過労死ラインの2倍を超えているというデータがある。24年からの「医師の働き方改革」は医師の労働時間の短縮が主な目的だが、いまの医療を維持するため、地域医療を担う勤務医に、残業は年1860時間までという特例水準を設けることになった。
 慢性的な医師不足に悩む都立病院の院長は、独法化によって人事や会計が法人の裁量になれば「優秀な医師を招くことができる」と賛成するかもしれない。けれども、医療や福祉に、収益や採算、黒字化という言葉は似合わない。足りないところは公的資金で補てんする仕組みにすることが必要だ。
 物事には優先順位がある。ここは、いったん白紙に戻して感染防止や患者の治療、医師や看護師の労働環境の整備に全力を注ぐことが重要だ。そしてウイルス禍が終息した後、改めて医療従事者、市民、患者の声を聞き、望ましい病院経営のあり方を考えるべきだ。
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