点描
2021/09/25
「権力と新聞記者」「言葉と人間」――。
演劇で今を問う
「ファクトチェック」の1場面(宿谷誠さん撮影)
39-s-1.jpg
 劇団「青年劇場」の新作「ファクトチェック」が東京・新宿の紀伊國屋ホールで上演中だ。「新聞は政府の判断にもっと批判的になるべきだ」と社会部から政治部に異動した新聞記者が主人公。政権の中枢に近づくも、マスコミを希望する娘の就職活動を機に「家族を守ろう」とする気持ちが強まり、それに自身の出世欲などがからまって、気がつくと権力の手のひらの上で踊らされている自分がいた――。作・演出は劇団「TRASHMASTERS」を主宰する中津留章仁さん。報道の現場を舞台にした「ザ・空気」シリーズ(永井愛さん作)など近年、「権力とメディア」を題材にした芝居が相次いで登場している。中津留さんは、マスメディアへの批判をちりばめつつ、「家族」というエッセンスを加えた。
 一方、劇団「こまつ座」が、東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演している「雨」は、井上ひさしさんの江戸三部作の一つ。江戸で暮らす金物拾いの男が、失踪中の東北の紅花問屋の当主が自分と「瓜二つ」と聞き、その当主になりすます。江戸の言葉を捨て、東北の方言の世界にくら替えした男の「言葉と人間」の関係、「中央と地方」の格差などが描かれる。いずれも現代の日本が抱える問題を内包する意欲作だ。
 両作品とも26日まで。
管理  
- Topics Board -