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2021/03/10
<3月のまんが> コロナなど上の空なり大接待   鈴木 彰

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 安倍政権の7年8か月は、森友学園との交渉に関する決裁文書の改竄、1年間存在が伏せられていた自衛隊イラク派遣時の日報、加計学園をめぐる「首相案件」というメモ、桜を見る会の領収書などの疑惑もみ消し、河井選挙買収、黒川検事長、国民置き去りで後手後手のコロナ対策など、政治の「私物化」と退廃のオンパレードだった。省庁の人事権を内閣人事局に集めて「官邸主導の強権政治」のもとで、官僚による官邸への「忖度」が常態化し官僚機構の権威も地に落とされた。これを継承した菅政権は、深刻化する「コロナ対策」には上の空で、総務省・外務省・農林水産省の幹部らが国家公務員倫理法に違反する利害関係者からの接待を繰り返し受けている事実のもみ消しに追われている。農水省は贈収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛元農水相と鶏卵生産会社「アキタフーズ」の前代表の会食に同席していた事務次官ら6人を処分。元総務相だった菅首相の強い影響力のある総務省は13人の幹部が5年も前から菅首相の長男が勤める衛星放送関連会社「東北新社」幹部らと延べ39回も会食(内21回は首相長男が同席)し、飲食代、手土産、タクシー券を受け取っていたとして、「断らない女」を名乗る山田真貴子内閣広報官を辞職させ、菅IT戦略の懐刀=「ミスター携帯」と異名をとる谷脇康彦総務審議官ら11人を処分した。菅首相は「長男とは別人格」とシラを切ったが、その後、谷脇総務審議官が巻口英司国際戦略局長や外務省の金杉憲治審議官らとともにNTTの澤田純社長とも会食を繰り返していたことが判明し、これらの接待が、菅首相の目玉政策=IT戦略・放送通信改革の推進にからむ官僚たちの「忖度」を利用した贈収賄だったことがごまかせなくなった。わが身と政権を守るためには、長男だろうと懐(ふところ)刀だろうと切り捨てざるを得ない。累々たる使い捨ての山の向こうに、やがて「アベ・スガノミクス」の残骸も横たわるのだろうが・・・。描いているうちに、「ただ酒」を呑んだ揚句に使い捨てられた官僚たちの悲哀を感じてしまう今月であった。
2021/02/14
<2月の漫画> わきまえぬこの人たちに明日はない  鈴木 彰

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  東京オリ・パラ組織委員会の森喜朗会長が2月12日、女性蔑視の発言への内外の批判に追い込まれて会長を辞任した。「#わきまえない女たち」の抗議行動、ボランティアや聖火リレーのランナーたちの抗議の辞退。オリンピックのスポンサー会社の製品不買運動、スポンサー会社70社の中で36社が「森会長の発言は容認できない」とアンケートに答え、朝日新聞、毎日新聞も社説で批判した。一旦は不問に付す発言をしたIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長も、世界の流れを見て「完全に不適切」と断罪した。完全に追いつめられた辞任なのに森氏は、次の会長を自分で選ぼうとしたり、組織委の臨時会合で「不適切な発言が原因で混乱をきたし、申し訳ない」と謝罪したのに、女性蔑視について「解釈の仕方でそういう意図じゃない」「多少意図的な報道があった」「誰かが老害と言ったが、老人が悪いと表現されるのは極めて不愉快」などと語ったりした。菅首相も森会長発言は「不適切」としつつ辞任を求めず、二階自民党幹事長もボランティア辞任の動きには「また募集すればよい」、世の中の批判も「瞬間的なもの」と言って森氏をかばった。これらによって彼らは、批判された女性差別を自覚も反省もしない、まったくわきまえていない自らの姿を天下に知らせた。今月は彼らの黄昏への予感を描いてみた。
2021/01/13
<1月の漫画> ガースーと媚びても消せぬゴーツー罪   鈴木 彰

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 2021年は新型コロナウイルスの感染拡大「第3波」の中で明けた。コロナ禍で身に着けた「自粛はしても萎縮はしない」の合言葉を当分のあいだ手放さず、したたかに歩むとしよう。昨年7月に安倍首相が開始した観光支援事業「GoToトラベル」は、コロナ禍で全戸に配布したアベノマスクと1人10万円の定額給付金を取り戻そうと、感染対策を度外視して「経済を回すことを最優先する景気対策」だった。9月の総裁選で「政策に反対する官僚は異動してもらう」とまで言ってアベノミクスの継承を掲げた菅首相は、この「ゴーツー」を、秋以降の「第3波」到来後も推進し続けた。感染の広がりは国民の責任だと言わんばかりに「5人以上の会食を控えよう」と国民に呼びかけたかと思うと、その数日後には8人での「ステーキパーティ」に興じる。のらりくらりと「ゴーツー」の時間を稼ぎ、崩壊に瀕している医療とケアを放置し、いのちと暮らしを見殺しにしてきたうえで、ついに2回目の「緊急事態宣言」を発せざるをえない事態を招いた。その「宣言」もまた、自ら破壊してきた医療とケア、いのちと暮らしを補償するものではなく、罰則付きの「飲み会禁止令」でしかない。12月11日に出演したインターネット番組で「こんにちはガースーです」と緊張感のないあいさつで若者に媚びたが、今も景気対策優先に固執する「ゴーツー罪」はどんなに媚びても消えるものではない。都議選と総選挙が必ず行われる年を迎えて「菅政権の罪を許さない」との思いを描いてみた。
2020/12/05
<12月の漫画> そこそこの期待にスガる独裁者  鈴木彰

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 菅首相が「国民の政権への期待もそこそこにある」と述べた10月29日の衆院本会議答弁について、「国民の政権への期待もそこにある」と議事録を訂正した。無表情・無感情で原稿を朗読するのがこの首相の答弁の特徴だが、それが内容も考えずに読んでいるのであることが明らかになってしまった。7年8か月の安倍長期政権の官房長官として、「批判には当たりません」「承知していません」「まったく問題ありません」などの決まり文句を繰り返して「モリカケ桜」の疑惑を反らし、アベ゛悪政を推進してきた菅さんの本心がこの「読み違い」にこぼれ出たのではないのか? いよいよ権力の頂点に成り上がった菅さんは、就任早々から辺野古新基地建設、日本学術会議への人事介入など、アベ政権を凌ぐ強権的な独裁政治への野心をむき出しにしている。「私がめざす国の基本は、自助・共助・公助、そして絆」と称してコロナ対策・社会保障を犠牲にするGoToトラベル・経済対策に走り、「世界のCO2ゼロを主導する」と称して原発再稼働を推進し、「核保有国との懸け橋になる」と称して核兵器禁止条約を妨害し、「敵基地攻撃能力」保持と称して改憲・軍拡を準備するこの政権には、国民の口をしっかりとマスクで覆って静かにさせたい、国民に「政権へのそこそこの期待」を持たせたいとの「すがる思い」があるに違いない。うまく行くかどうかは西村経済再生大臣の言うように「神のみぞ知る」ところだが・・・
2020/11/10
<11月のまんが> 「鬼滅」とは逆方向に「全集中」  鈴木彰

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 「自助」の強調、コロナ対策より経済対策、「敵基地攻撃能力」保持や改憲案の検討開始、辺野古新基地建設ごり押し、日本学術会議への人事介入など、アベ政権を凌ぐ極悪・非道の動きを見せていた菅義偉政権は10月26日から始まった臨時国会でその姿を国民の前に現した。11月2日の衆院予算委員会の開幕早々に首相は大ヒット中の劇場版アニメ「鬼滅の刃」の決めゼリフに便乗して「『全集中の呼吸』で答弁させていただく」と受けを狙い、議場を一瞬シーンとさせたが、この「全集中」が「鬼滅」とは逆方向を向いていることがやがて明らかになった。衆参の予算委員会は11月6日、計4日間の日程を終えたのだが、野党が菅義偉首相との初の本格的な国会論戦に「日本学術会議」の任命拒否問題を主要テーマに据えて挑んだのに対し、首相は質問が核心に迫ると「人事に関することなのでお答えは差し控える」を連発。後ろに控えた官僚が手渡す答弁メモを繰り返し読み上げるだけの答弁は白々しく矛盾だらけで「支離滅裂」。首相の「受け狙い」に応えて「官僚の答弁ばっかり読まずに、全集中の呼吸で答えてくださいね」と訴えて質問に立った立憲民主の辻元清美副代表に対しても同様の態度の繰り返し。辻元氏は「鬼滅の刃」の黒幕の「全ての決定権は私にあり、私の言うことは絶対である」というセリフを持ち出し「こうならないようにくれぐれもご注意いただきたい」と皮肉を込めて質問を終えた。野党の質問責めにしばしば「答弁不能」「茫然自失」に追い込まれた首相の姿は閣僚席にまで苦笑いを拡げた。この窮状を救おうと自民党の伊吹文明元衆院議長が「『学問の自由』と言えば水戸黄門の印籠の下にひれ伏さなくてはいけないのか」(5日、派閥の会合で)と「学問の自由」攻撃を仕掛けたが、この発言そのものが菅首相を「印籠を突き付けられた悪代官」と認めていて面白い。今月はここを描いてみた。

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