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2022/05/14
<5月のまんが> 三勇士? 所詮開けぬ突撃路 鈴木 彰
コロナ禍とロシアのウクライナ侵略が世界に脅威を与えているが、日本政府とその追随勢力は、これに便乗して、とんでもない政治反動を国民に押し付けようと、不気味な動きを見せている。自民党の安全保障調査会が4月27日に、「反撃能力」=敵基地攻撃能力の保有や軍事費の対国内総生産(GDP)比2%など、大軍拡を求める「提言」を岸田文雄首相に提出したが、この提言は、安倍晋三元首相などの主張に沿って、「敵基地攻撃能力」という言葉を「反撃能力」と言い換えて国民を欺きつつ、「攻撃」の対象範囲を「相手国のミサイル基地に限定せず、相手国の指揮統制機能等も含む」と、攻撃を受けそうになったら相手国の中枢を先制攻撃するという。これは歴代政府が建前としてきた「専守防衛」と矛盾し、憲法9条に全面的に違反する。自民党国防部会関係者の一人が「敵基地攻撃能力保有は、まさしく安保法制の第2弾。国民の危機意識を醸成し、防衛装備の拡大も9条改憲も進めるチャンスだ」と述べたというが、まさしくこれはウクライナ危機に便乗して、安倍政権以来どうしても果たせなかった「大軍拡・核保有・敵基地攻撃・憲法改悪」を一気に果たそうというものではないか。新自由主義とアベノミクスは、医療・介護・年金・社会保障などの「公助」を徹底的に破壊して、大企業のための経済成長に明け暮れた結果、コロナ禍に対する虚弱さを暴き出され、国民に「自粛」を強制して急場をしのごうとした安倍・菅政権はたちまち失速・破綻し崩壊した。そして岸田政権は、これらを反省するかと思いきや、「聞く耳」などのごまかしをくり返しながら、結局は安保法制の第2段である「敵基地攻撃」への意欲を隠さなかった。そこに襲いかかった「核戦争の脅威」をはらむロシアのウクライナ侵略だ。「渡りに船」と見たのだろう、岸田政権は5月11日、「経済安保」法を成立させた。採決で自・公両党のほか、立憲・国民・維新などの野党も賛成したというのだが、「経済安保」は経済や研究分野を政権の統制下に軍事力として組み込むものであり「安保法制の第3弾」に他ならない。一部の野党の中で「市民と野党の共闘」への確信が揺らいでいることは軽視できないが、人間といのち、自然と地球が生き残る大道からみれば、岸田政権が仕組む安保法制の第2弾・第3弾を抱えて突撃する「爆弾三勇士」は、けっして突撃路を開くことはできない。その悲劇を描いてみたのだが・・・
2022/04/14
<4月のまんが> 日本ではシンゾーすでに過去の人 鈴木 彰
安倍元首相が「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」とプーチン露大統領に語ったのは19年9月のことだが、その1年後に安倍政権は崩壊し、またその1年後に菅政権も崩壊し、さらにその半年後にプーチン大統領は破滅的なウクライナ侵略戦争を開始した。コロナでつまずき、自助の押しつけで挽回しようと謀った菅政権も破綻しては「未来」どころではなかろうに、安倍氏が「歴史戦」や「核共有」を煽っているのも異様だが、無辜の市民と児童を無差別に殺戮するプーチン氏の異様さは予断を許さない。この2人が見た「同じ未来」はいま、「3つの災い」を日本と世界にもたらしている。第1がコロナの災い。福祉破壊・経済成長優先の新自由主義が破綻し、2つの政権が倒れたのに、「市民と野党」が先の総選挙で勝利を逸したために、無為無策のコロナ対策が継続している。第2はロシアによる戦争の無惨な災い。この開戦が核抑止論の無力を証明し、世界中に即時撤退を求める声が広がっているのに、無辜の市民のいのちが奪われ核戦争の危機が深まっている。第3がこれらの惨事に便乗する災い。破綻した悪政がゾンビのようによみがえり、自粛強制・公助破壊、軍拡・敵基地攻撃・核共有・憲法改悪を強行しようとしている。
これら「3つの災い」は、半年前に良い所まで行った「市民と野党の共闘」が、手段を選ばぬ保守反動勢力の妨害と分断を許し、政治を変えるに至らなかったために生じた。保守反動勢力は勝ち誇って、「共闘」が誤りで「敗北」したかのように「かく乱」しているが、医療のひっ迫、核戦争の危機など一瞬も放置できない。到達点を確信し、「市民と野党の共闘」を堂々と強化・発展させなければならない。そこにこそ、人間といのち、自然と地球が生き残る大道があるのだから。こういう視野を描きたいのだが・・・
2022/03/13
<3月のまんが> ムリでしょう武器で平和は守れない 鈴木 彰
な、何と! プーチン大統領がウクライナへの侵略戦争を始めてしまった。侵略ではなく、国連憲章が認めた集団的自衛権の行使だと主張しているが、ウクライナ東部で「独立」を宣言していた2つの地域を2月に突然「国家」として承認してこれを守るために攻めたのだというが、地球上で最も強大な軍事大国の一つであるロシアが、大軍を出して「武力による威嚇」を繰り返し、ついに病院・保育所まで攻撃し、市民や子どものいのちを奪う行為は決して許されない。当然のことだが、「侵略やめよ!」「国連憲章を守れ」「ロシアはウクライナから即時撤退せよ」の声が世界中に拡がっている。ところが、自民党の安倍元総理大臣が、ウクライナが核共有を実施しているNATO=北大西洋条約機構に加盟していれば、ロシアの侵攻はなかったのではないかと言い、日本も「アメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する『核共有(ニュークリア・シェアリング)』について検討すべきだ」と言いだした。日本維新の会がこの尻馬に乗って、「核共有」「軍事を含めた体制整備」「防衛費の増額(当面GDP比2%)」「自衛力の抜本的見直し」などの検討を開始せよとの「緊急提言」を外務省に提出した。 ロシアの態度もさることながら、これを口実に蠢いている議論は「核抑止論」に過ぎないということだ。「核兵器禁止条約」を非現実的と決めつけ、アメリカやロシアをはじめとする「核兵器保有国」のもつ核兵器にこそ、現実的に戦争を抑止する力があるというのが「核抑止力」論だが、この間の新型コロナウイルス対策で全く無力であることを証明されたこの「核抑止力」は、ロシアが「核の使用」をちらつかせてもウクライナを屈服させることはできなかったし、アメリカの超巨大な核兵器があってもロシアの侵略戦争を防ぐことはできなかったという事実によって完全に破綻していることを確認したい。コロナも戦争も、「国連憲章」と「日本国憲法」によってこそ「抑止」できるのだ。今月は、「核抑止」論に縋りつく諸勢力の蠢動に、「コロナも戦争も抑止できない核兵器」「武器ではくらしも平和も守れない」と諭してやろうと描いてみた。
2022/02/09
<2月のまんが> 耳も手もアベノミクスに憑りつかれ 鈴木彰
コロナ禍が3年目に入り第6波の感染爆発が続いている。長年猛威を振るった「アベノミクス」は、コロナ禍でその無為・無策・無力ぶりが立証され、アベ・スガ2代の政権が一気に崩壊した。自民党総裁選で「新しい資本主義」と称して行き過ぎた新自由主義を是正すると表明して登場した岸田文雄首相は、「聞く耳」と「リベラル色」を売りに、安倍氏の天敵である林芳正氏を外務大臣に起用し、在庫管理に6億円を浪費する「アベノマスク」の処分や山」のユネスコ世界文化遺産への登録に韓国への慎重な配慮を見せるなど、変化を強調してきた。ところが、総選挙での奇襲作戦が与党の凋落をやや抑えたとみるや、何と安倍晋三元首相が自民党の最大派閥の会長に就任し、幽界からさまよい出た怨霊のようにその怨念を高らかに語り始めた。曰く。①ミサイルを発射する北朝鮮、台湾に軍事的威圧をかける中国に対して「外交安全保障」を強化せよ、②敵基地に限定せず打撃力を持ち、米軍が攻撃を受けた時は相手を殲滅する「敵基地攻撃能力」を持て、③維新・国民民主党とともに「憲法改正」を行なうチャンスだ、④佐渡の金山を「申請しないのは間違っている」「歴史戦を挑まれて避けることはできない」などなど・・・。これに憑りつかれたように岸田首相の態度が一変した。①「新しい資本主義」は「成長と分配の両方が大事」という「アベノミクス」と同じもの、②「あらゆる選択肢を排除せず、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化」、③佐渡金山の世界遺産への「推薦」を閣議了解し、官邸内に「歴史戦チーム」をつくる。岸田首相は次から次に、政治の私物化(モリカケ桜の利権隠し)を擁護し、経済・軍事の安全保障でいのちと暮らしを食い物にし、憲法改悪で批判と人権を抑圧する「アベノミクス」の推進者の本性を現している。「アベノマスクの有効活用」のために「配送料10億円」を負担するなどの支離滅裂な政策を見ると、聞く耳ばかりか全身が「アベノミクスの怨霊」に憑りつかれていると言うほかはない。今月はそれを描いてみた。
2022/01/16
<1月のまんが> 化けたって大きなシッポが見えている 鈴木 彰
首相就任3カ月を迎えた1月4日、岸田首相は記者会見でこう語ったそうだ。「一度物事を決めたとしても、状況が変化したならば、あるいは様々な議論が行われた結果を受けて、柔軟な対応をする。こういったことも躊躇(ちゅうちょ)してはならないと思っている」と。岸田首相は、先々代の安倍首相が7年8か月の長期政権を誇り、先代の菅首相が1年余りそれを継承したが、両首相が「官邸主導」の強引な政権運営で世論の批判を呼び、コロナ対策の多くの局面で後手に回り、急速に求心力を失って、立て続けに崩壊したことを「反面教師」としているのだという。自民党総裁選のときには「金融所得課税の見直し」と「四半期決算開示の見直し」など新自由主義と決別する政策を打ち出していた岸田氏は、首相になるとこれを「新しい資本主義」の名であっさりと投げ捨てた。「聞く力」と「先手」を金看板に掲げ、就任後最初にぶち上げた目玉政策=子育て世帯支援の現金給付問題でも、受験生の受験機会確保の方策でも、オミクロン株の水際対策でも、批判を受ければ「ためらうことなく」あっさりと方針を転じた。内閣官房参与に任命した元自民党幹事長で盟友の石原伸晃の雇用調整助成金受領問題が批判されると、わずか1週間でクビを切り、高額な保管費用が批判された「アベノマスク」は自ら記者会見で年度内に廃棄を発表した。野党の言い分を時には丸のみする岸田内閣の「朝令暮改」「融通無碍(むげ)」は、世論調査での内閣支持率を向上させているのだが、実は肝心なところで「アベ・スガノミクス」を頑なに継承していることを見落とすわけに行かない。オミクロン株への水際対策では「米軍由来」の感染という大穴が明らかになったが、これを許している「日米地位協定の見直し」に着手しようとしない。「アベ・スガノミクス」が固執し続けた政治の私物化(モリカケ桜の利権隠し)には決してメスを入れず、国民のいのちと暮らしを食い物にする経済・軍事の安全保障、国民の批判を強権的に押し付ける憲法改悪を積極的に推進する。これはつまるところ、新型コロナウイルスがオミクロン株に変異して生き延びようとしていることと同じで、「新自由型アベ・スガウイルス」の変異株すなわち「キシダクロン株」となって国民に襲いかかっているということではないか。今月はここを描きたい。