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2022/01/16
<1月のまんが> 化けたって大きなシッポが見えている    鈴木 彰

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 首相就任3カ月を迎えた1月4日、岸田首相は記者会見でこう語ったそうだ。「一度物事を決めたとしても、状況が変化したならば、あるいは様々な議論が行われた結果を受けて、柔軟な対応をする。こういったことも躊躇(ちゅうちょ)してはならないと思っている」と。岸田首相は、先々代の安倍首相が7年8か月の長期政権を誇り、先代の菅首相が1年余りそれを継承したが、両首相が「官邸主導」の強引な政権運営で世論の批判を呼び、コロナ対策の多くの局面で後手に回り、急速に求心力を失って、立て続けに崩壊したことを「反面教師」としているのだという。自民党総裁選のときには「金融所得課税の見直し」と「四半期決算開示の見直し」など新自由主義と決別する政策を打ち出していた岸田氏は、首相になるとこれを「新しい資本主義」の名であっさりと投げ捨てた。「聞く力」と「先手」を金看板に掲げ、就任後最初にぶち上げた目玉政策=子育て世帯支援の現金給付問題でも、受験生の受験機会確保の方策でも、オミクロン株の水際対策でも、批判を受ければ「ためらうことなく」あっさりと方針を転じた。内閣官房参与に任命した元自民党幹事長で盟友の石原伸晃の雇用調整助成金受領問題が批判されると、わずか1週間でクビを切り、高額な保管費用が批判された「アベノマスク」は自ら記者会見で年度内に廃棄を発表した。野党の言い分を時には丸のみする岸田内閣の「朝令暮改」「融通無碍(むげ)」は、世論調査での内閣支持率を向上させているのだが、実は肝心なところで「アベ・スガノミクス」を頑なに継承していることを見落とすわけに行かない。オミクロン株への水際対策では「米軍由来」の感染という大穴が明らかになったが、これを許している「日米地位協定の見直し」に着手しようとしない。「アベ・スガノミクス」が固執し続けた政治の私物化(モリカケ桜の利権隠し)には決してメスを入れず、国民のいのちと暮らしを食い物にする経済・軍事の安全保障、国民の批判を強権的に押し付ける憲法改悪を積極的に推進する。これはつまるところ、新型コロナウイルスがオミクロン株に変異して生き延びようとしていることと同じで、「新自由型アベ・スガウイルス」の変異株すなわち「キシダクロン株」となって国民に襲いかかっているということではないか。今月はここを描きたい。
2021/12/14
<12月のまんが> コロナより軍事費増に走り出し   鈴木 彰

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 岸田内閣は11月26日、軍事費が過去最大を更新している21年度当初予算の5兆3422億円と合計して6兆1千億円を超える補正予算案を閣議決定した。沖縄辺野古の米軍新基地建設費801億円など、米軍再編関係経費も盛り込んだ軍事費は、初めて6兆円を突破し、GDP比も歴代内閣が目安としてきた1%枠を超えて約1・09%となった。 
 くどいようだが、7年8か月続いた安倍政権は一昨年8月に政権を投げ出し、その13か月後に菅政権も政権を投げ出した。これは、医療・介護・社会保障の抑制と、大企業・富裕層優遇の「新自由主義」政策、これを推進する大軍拡と改憲、政治とカネの私物化などの腐敗と強権を振り回してきたアベ・スガ政治がコロナ禍でその矛盾を露呈して破綻したものに他ならない。この破綻を克服する道は、いのち・くらし・人権を最優先する経済・社会への転換以外にはなく、先の総選挙での「市民と野党の共闘」は、道半ばに終わったとは言え、その転換を実現するものだった。
 奇襲と反共宣伝で野党共闘に競り勝った岸田政権は、先代の破綻を克服するものとして「新しい資本主義」という看板を掲げてゴマカシてきたが、はしなくも軍事費突出の補正予算は、この政権が「アベ・スガ政治の枠内での転換しかなしえない政権であることを天下に示してしまった。補正予算を閣議決定した翌日の27日に岸田首相は、陸上自衛隊朝霞駐屯地での観閲式に出席し、駐屯地内で「10式戦車」に軍装で搭乗し、満面の笑みを披露したが・・・
2021/11/15
<11月のまんが> 岸田さん、地盤沈下が見えますか?  鈴木 彰

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 総裁選のメディア・ジャックに続く奇襲ともいうべき解散総選挙。まさに短期決戦を強いられた第49回総選挙に、立憲・国民・共産・れいわ・社民の野党5党は野党共闘で臨んだ。小選挙区の7割以上=213選挙区で候補を一本化し、62選挙区で勝利した。加えて53選挙区で惜敗率80%以上という接戦・激戦を繰り広げた。比例区も含む5党の議席は公示前議席対比で差し引き11減となったが、自民・公明の差し引き13議席減を考慮すれば、野党5党が「政権交代」に肉薄したことは間違いない。4年前の議席数対比でみれば自民は23議席減でその「地盤沈下」は急激に進んでおり、立憲の41議席増を軸に野党共闘は、「政権交代」には届かなかったがめざましい前進を積み重ねている。
 ところで、日本維新の会の「大躍進」が騒がれているが、これは7年前に41議席あったものが、4年前に希望の党に喰われて11議席になり、希望の党が消滅した今回41議席に戻ったものであって騒ぐほどのことではない。維新は今回、与党と野党共闘を批判する「与・野党斬り」という便宜的な手法で票の「政権交代」に流れる票を堰き止めて議席を増やしたが、もともと自民と癒着して改憲をめざす維新と自・公の議席合計が議席の3分の2を超えるという、憲法にとっては「緊急事態」が生まれてしまった。補償抜きで自助・自粛を押し付ける「コロナ対策」、いのちと暮らしを犠牲にする金権・腐敗・政治とカネがもたらす被害への国民の怒りは待ったなしだから、自・公・維の癒着が国民をとらえ続ける普遍性はないと思うが、国会議席の多数を良いことに強行採決を繰り返す安倍・菅・岸田政権とその癒着勢力は、早く議席数を減らしておかないと何をするかわからない危険な勢力だ。いのちと暮らしの破壊、改憲・軍拡を許さない国民的な運動を飛躍させること、来年7月に行なわれる参院選では、衆院が強行採決してもこれを抑止できるようにすること、などが緊急に求められる。
 7年8か月続いた安倍政権をコロナ禍のたたかいで倒し、その1年後に菅政権を潰し、さらにいま岸田政権を奇襲解散に追い込み、そのうえで第二次岸田内閣を迎えているという流れの中でとらえれば、野党共闘の歩みはとどまるものではない。いまこそブレずに九条を守り、「政権交代」を迫る運動を広げたいものだ。
2021/10/13
<10月のまんが> 「新しい」と言って再びウソ・改ざん  鈴木 彰

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 政府は「新型コロナ対策」そっちのけで、菅首相の政権投げ出し、自民党内の権力闘争である総裁選、その結果総裁となった岸田文雄前政調会長の国会での「首班指名」に明け暮れた。従来は非アベ派と目されていた岸田首相は、総裁選でのアベ・スガ政治への忖度・すり寄り合戦を通してすっかりカドがとれ、「モリカケ桜の再調査はしない」「当面は原発再稼働」に変わり、総裁選で語っていた「予約不要の無料PCR検査所の拡大」は8日の所信表明で「予約不要の無料検査の拡大」へとトーンダウンし、11日の代表質問への答弁にいたっては「新自由主義からの転換」や「成長と分配」「金融所得課税の強化」もあっさりと引っこめ、かつて二階幹事長に「説明責任」を直談判していた河井事件の1億5000万円問題も「必要なら説明する」に後退した。「声を聞くのが特技だ」「新しい資本主義をめざす」などと、これまでの自・公の腐敗と悪政を隠蔽・改ざんするだけの、抽象的な大風呂敷を広げるばかりだ。そのうえこの内閣は、20人の閣僚の内17人が「靖国」派の改憲・右翼団体と一体の二つの議員連盟のいずれかに加盟してきた人びとだというから、この内閣は、押しも押されもせぬアベ・スガ直系の歴史修正主義・改憲・右翼政治推進をめざす攻撃的な内閣だ。ようやく開かれた国会で、コロナ対策を審議するどころか、驚くべき短期間で「解散総選挙」に逃げ込み、国会と国民世論の批判が定まらぬ内に自・公政権の退勢を挽回しようとの野心を露わにしている。10月31日の総選挙で、「これは何とかしなければ」という当たり前の国民の声を「市民と野党の共同」に束ねて、姑息かつ無展望なあがきに、しっかりとどめを刺してあげる他あるまい。
2021/09/16
<9月のまんが> 変異株?「コップの中」でバカ騒ぎ   鈴木 彰

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 菅義偉首相(自民党総裁)が9月3日、臨時役員会で自身の任期満了に伴う総裁選(17日告示、29日投開票)に立候補しないと表明した。記者会見などではいつも「出馬は時期が来れば当然のことだ」と述べ、再選をめざし、二階俊博幹事長や下村博文政調会長など党幹部人事の一新について、この日の会議で一任を取り付けると言っていた菅首相だが、これらの思惑は片っ端から崩れた。補償は小出しの自助・自粛押し付け、コロナ対策よりGoToキャンペーン・オリパラ開催・経済対策優先、緊急事態宣言の延長・追加を繰り返したが。頼みのワクチン供給も後手後手で弾切れを多発し、ついにコロナ感染を爆発局面にいたらせてしまった。首相の説明不足や発信力不足も手伝って、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が8月21、22両日に実施した合同世論調査での内閣支持率は32・1%となり、今年1月以降の最低を更新した。不支持率は61・3%で、4カ月連続で50%を超えた。このままでは10月21日に任期満了を迎える衆院選で自民党に勝ち目はない。そこで、彼の好きな「私自身」の退陣も含めた人心一新が必要と判断せざるを得なかったのだろう。総裁選不出馬の理由は「新型コロナウイルス対策に専念するため」と説明したが、国会を開かずに有効な対策を打てるわけもない。結局スガ氏がやったことは、バイデン大統領に招かれて、軍事協力の大きな土産をもって「卒業旅行」を準備する程度のようだ。首相の総裁選不出馬を受け、自民党は総裁選で選出した総裁を臨時国会で首相指名し、衆院選に臨むことになる。総裁選には、早速名乗りを上げた下村博文政調会長はスガ氏に叱られて断念、石破茂元幹事長も時間をかけて断念した。結局、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎ワクチン担当相が「コップの中の権力闘争」えお演じているが、ももとアベ氏直系の高市氏のサナエノミクスには大笑いだが、岸田・河野などの非アベ派と目された面々が、「モリカケ桜の再調査はしない」とか、「原発再稼働も結構」などを表明。忖度・すり寄り合戦の様相だ。自民党が代表を選ぶ内輪の権力闘争だから、どうでもいいことだが、こういう面々の誰が総裁になっても、次の時代の総理大臣をまかせるわけにはいかない。今月はとりとめないがこんな気持ちで描いてみた。 

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