/ 

2023/04/13
<4月のまんが> 支持率を上げる為ならエンヤコラ   鈴木 彰

39-s-1.jpg

 岸田首相がウクライナのキーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と首脳会談を行なった。5月に広島で開くG7の議長国としての訪問だった言うが、ヒロシマ出身を名乗る岸田首相らしく、戦争終結のための和平を提案したかというとそうではない。NATOと同じ立場でウクライナを支援する、つまり軍事支援をするとの決意を示し、何と「必勝しゃもじ」をプレゼントして大統領を激励したというのだから情けない。それもその筈、岸田政権はいま、昨年末から今年初めにかけて相次いで閣議決定した「安保3文書」と「原発3文書」の具体化に余念がない。ロシア・中国・北朝鮮が「安全保障危機」と「エネルギー危機」を深刻にしていると大宣伝し、フクシマの復興予算、コロナ対策や物価・少子高齢化対策のための予算、医療・年金・介護・社会保障予算を徹底的に削って、エネルギー・軍事産業の育成と軍事費倍増に横流しする。予算を「敵基地攻撃能力保有」や「同志国軍の能力強化」に湯水のように注ぎ込む。その一方で、予算の手当て抜きの舌先三寸で「賃上げ」「異次元の子育て・少子化対策」を歌いあげる。これらに釣られて野党の一部が動揺し、4月の「統一地方選・前半戦」で野党共闘の足並みが揃わず、与党・翼賛勢力を利する場面も生まれていることは軽視できないが、戦後史を「新しい戦前」に後退させる「安保・原発・憲法」政策の大転換をやすやすと受け入れるわけに行かない国民は、一直線とは行かないけれど着実に内閣支持率を長期低迷に追い込んでいる。今月は、軍事対軍事に熱中する「必勝しゃもじ」と国民を欺く「異次元の打ち出の小槌」で奮闘する岸田首相の「雄姿」を描いてみた。
2023/03/13
<3月のまんが> 大見得の二番煎じは効くかしら?  鈴木 彰

38-s-1.jpg

 3月2日に小西洋之・立民参議院議員が、2015~16年に磯崎氏の働きかけで放送法の政治的公平性をめぐり解釈が変更された経緯そ示す総務省の内部文書を公表した。当時の総務大臣としてこれに関わった高市早苗経済安保担当相がこれを「捏造だ」と言い切った。昨年末から今年初めにかけて、アメリカとの約束を先行させ、国会での審議も国民世論への説明も行なうことなく、戦後安保政策の大転換を宣言する「安保3文書」と、フクシマ以降の原発依存度低減政策を転換する「原発3文書」という「2つの閣議決定」を行なった岸田内閣は、フクシマの復興予算もコロナ・物価・少子高齢化の対策費や医療・年金・社会保障費も、エネルギー・軍事産業の利益と軍事費倍層に流用することへの国民世論の批判の高まりに苦しんでいる。これをかわそうと4人の閣僚の首を切ったが内閣支持率は2割台に落ち込んでいる。そこに襲いかかった放送法解釈をめぐる「検閲疑惑」と、これを「捏造だ」と大見得を切ってあくまでも強情を張り続ける高市経済安保相。問題は、故安倍首相と磯崎陽輔首相補佐官、高市総務相が放送法解釈を変更して民間放送の特定番組に権力介入した事実を検証することなのだが、総務省の記録文書が捏造かどうかという問題に捻じ曲げて、そうでなければ「私は議員を辞める」と脅して担当者に忖度を押し付ける高市氏のやり方は、かつて「モリカケ桜疑惑」を棚上げするために安倍元首相のやり方の二番煎じに他ならない。だが、安倍氏ではなく、旧安倍チルドレンの1人だっただけの高市氏に誰が忖度するだろうか? 困り果てた岸田首相と自民党はどうするのだろう? 今月は、こんな野次馬根性で描いてみた。
2023/02/12
<2月のまんが> 閣僚の首のようには斬れないぞ!   鈴木 彰

37-s-1.jpg

 福島第一原発事故発生から12年目の春を迎えたが、強制避難地域だけでもまだ8万2千人余が故郷に戻れず、小・中学校の通学生徒は10分の1に減少している。ところが岸田内閣は2月10日、これまで「可能な限り依存度を低減」としてきた原発政策を「再稼働・新増設」「60年超の運転容認」「積極推進」に転換する「閣議決定」を強行した。23年度の政府予算案は再生可能エネルギー関連予算を261億円に抑え、原発推進には22年度第二次補正予算と合わせて合計1・6兆円、将来は20兆円を投じるという。これは昨年末に国会での審議を避けて「閣議決定」し、今年早々に国民より先に米大統領に報告した「安保3文書」が、憲法九条も「専守防衛」も何のその、敵基地を攻撃できる軍事能力を持つため、軍事費を5年間で43兆円増やして2倍にするというのと一体の「乱暴狼藉」だ。これら「2つの閣議決定」による大軍拡と原発推進は、福島の被災地・被災者にも、コロナ禍・物価高騰・差別・貧困にあえぐ国民全体にも、核汚染と戦争の惨禍を押し付けるもの。今ほんとうに必要とされているコロナ・物価対策、少子・高齢化対策、医療・年金・社会保障対策などの財源は徹底して削られ、足りない分は国債や大増税で国民のふところに押し付けられる。しかし、国民が戦後78年にわたって築き固めてきた「平和と民主主義」、76年にわたって育ててきた「憲法9条」は、決してヤワなものではない。政権・利権を維持するために反社会的団体との癒着、政治と権力の私物化を重ねてきた政権への国民の批判は高まっており、岸田内閣もこれをかわそうとすでに4人の閣僚の首を切ったが、内閣支持率は2割台に落ち込んでいる。戦後、憲法9条を掲げて平和と民主主義を求めてきた歴史はしっかりと根を張っている。これを「2つの閣議決定」によって「大変革」できるわけはない。こういう確信と若干の祈りを込めて今月は描いた。
2023/01/14
2023年1月のまんが まだ何も決まってないのにべらべらと   鈴木 彰

36-s-1.jpg

 昨年末の12月16日に「戦後の安全保障政策の大転換」を唱える「安全保障3文書」を閣議決定した岸田首相は、年頭早々からこれを世界中に吹聴している。戦後の歴代政権が少なくとも建前として尊重してきた「専守防衛」と「軍事費のGDP1%枠」を投げ捨てて、「敵基地攻撃能力の保有」と空前の軍拡に踏み込もうというのだ。これに関連して岸田内閣は、福島での原発事故後に各政権が掲げざるを得なかった「原発依存の低減、新規の原発建設の抑制、運転期間の原則40年への制限」などの政策も一気に転換し、「原発の最大限活用、再稼働・建設・推進」を宣言した。ウクライナ侵略戦争とエネルギー危機、中国の軍事力拡大の脅威などを利用して国民の不安をあおりながら推進されようとしているこれらの「大転換」は、国民に、コロナ危機・気候危機への無為無策、医療・介護・年金・社会保障の大抑制、大増税をおしつけ、いのちとくらしを踏みにじる「大暴走」だ。
 ここで重大なことは、これらの「大転換・大暴走」は、この間の総選挙・参院選で議席の多数を獲得できたのを良いことに、国民への説明も国会での審議も行なわないまま「閣議決定」によって推進されていることだ。これらの危険な転換と暴走をこのまま放っておいていいのか? 保守系の人びとも含む全国民が「いくら何でも許せない」という思いを抱いていると思う。この思いを、各分野・全世代の人びとと共有し、この数年間、妨害され苦戦を強いられてきた「市民と野党の共闘」を建て直す必要性と可能性を、何としてもつかみとりたい。今月は、国民の合意も国会の審議もないままで、閣議決定の中身を欧米諸国に声高に吹聴している岸田首相の「おしゃべり外交」を笑ってやることにした。
2022/12/13
<12月のまんが> おい世論、揺れてる時じゃないだろう!  鈴木 彰

35-s-1.jpg

 12月10日、臨時国会が閉会した。数十年にわたって強権政治を進めてきた自民党の「新自由主義」が破綻し、コロナの感染拡大にも、デフレにも物価狂乱にも無力であること、しかもこの間の強権政治が実は自民党と旧統一協会=勝共連合の癒着によって推進され岸田首相自らを含む政治家も汚染されていることなどが明らかになる中での国会だった。これらを徹底的に究明し、いのちと暮らし、人権と福祉を抜本的に回復することが世論の流れであり、内閣支持率の大幅低下を背景に3閣僚更迭に追い込まれた岸田政権は息絶え絶えの状態にあった。ところが岸田首相は、旧統一協会に関わる疑惑の解明を「被害者救済法」の審議で棚上げし、ロシア・北朝鮮・中国・台湾の動きを「安全保障の危機」と騒ぎ立てて「軍事費倍増・敵基地攻撃・基地拡充・原発推進・9条改憲」への世論誘導に終始した。誘導は、5月23日のバイデン米大統領との会談で、①日米同盟の抑止力・対処力の強化、②沖縄県辺野古新基地の建設強行、③中国を念頭とする軍事費の「相当な増額」、④原発の輸出促進など「革新原子炉・小型モジュール炉」の開発・世界展開などを誓約した岸田首相による防衛費2%指示(11月30日)、5年間で43兆円の防衛予算指示(12月5日)、年1兆円の防衛増税指示(12月8日)や、経産省審議会の原発新増設・建て替え・再稼働・運転期間60年への延長指針(8日)など、開催中の国会を無視した閣議主導で立て続けに垂れ流された。
 ここで重大なことがある。これらの動きをマスメディアも碌に批判しない、野党の足並みも揃わない。その結果、世論にも揺らぎがつくられていることだ。「防衛費増額に『賛成』5割超、中露への対抗姿勢を『評価』74%、防衛力強化に『賛成』70%、『反対』24%」(6月の読売新聞調査)、「防衛費増額に対する賛否、『賛成』55%、『反対』29%」(10月のNHK調査)、「日本が敵基地攻撃能力(反撃能力)を持つことに『賛成』60.8%、『反対』35.6%」(11月共同通信調査)。
 おーい世論、揺れてる場合じゃないだろう! 「撃ちてし止まむ」「進め一億火の玉だ」「欲しがりません勝つまでは」と煽られて「一億玉砕」に追い込まれた暗黒の時代が終わって78年。その反省から憲法9条を掲げ、反戦・平和と民主主義を求めつづけてきた世論が「戦争」を選ぼうというのか? 今月はその世論に問いかける。

管理  

- Topics Board -