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2022/07/04
京都新聞記者が、自社の大株主らを刑事告発
関西新聞合同ユニオンが告発状提出
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「京都新聞記者らの会見の様子」=NHKのニュースより
 参院議員選挙が迫るなか、選挙戦を報じる新聞社で深刻な問題が生じている。
 京都新聞ホールディングス(HD)が大株主の元相談役に長期間、支払った報酬など総額約19億円が違法支出に当たると第三者委員会から指摘された問題で、傘下の京都新聞社の記者2人が6月29日、元相談役と支出に関与したといわれる当時の役員計2人を、会社法違反(利益供与)の疑いで京都地検に告発したのだ。
 京都新聞の日比野敏陽(としあき)記者と、曺澤晨(チョウ・テクシン)記者が告発し、2人が個人加盟する労働組合「関西新聞合同ユニオン」の名で、告発状を提出した。
 告発状では、HD取締役、白石京大(きょうた)氏(48)が代表取締役だった2019年7月~21年2月、京大氏の母で元相談役の白石浩子氏(81)に、年3550万円を不正に支出したことを問題視。浩子氏は「オーナー家」と呼ばれる白石家の一族で絶大な影響力を持ち、「経営に口出ししない」ことへの対価だったと指摘している。
 この母と息子は、京都新聞社の経営に長年関与してきた白石家の一族だ。故・白石古京(こきょう)氏は1946年から長い間、社長を務め、浩子氏は古京氏の義理の娘にあたる。第三者委は、人事を握る大株主としての浩子氏を、HDが過剰なまでに優遇し、大阪国税局などから再三、指摘があったにもかかわらず、改善を図らなかったため「法令遵守(じゅんしゅ)意識が欠如していた」と厳しく批判した。ところがHD側は、関係者の刑事責任は追及しないと明言し、現経営陣の責任を認めることもなかった。
 京都市内であった記者会見で日比野記者は、「不正に流れた資金は本来、読者や働く人に還元されるべきものだ」と主張。「我々は新聞を愛している。誰も告発しないなら、やるしかない」と発言した。
 一方、HDはこの日、株主総会と取締役会を開き、京大氏が6月29日付で退任し、山本忠道社長が退いて取締役になる役員人事を決定した。さらに、浩子氏を相手取り、報酬などの一部、約5億1000万円の返還を求める訴訟を28日付で京都地裁に起こしたと発表した。だが、今回の告発については「記者個人が起こした行動なので、申し上げることはない」という態度だ。
 報道機関の記者が、自社の大株主らを刑事告発するという異例の事態。新聞やテレビなどのマスメディアは、報道、言論の自由を保つための大きな役目を担っており、それを支えているのが、紙面や番組づくりに関わる記者、従業員、スタッフらだ。不正が判明しても「関係者の刑事責任は追及しない」というHDの態度こそ、報道機関にあるまじきことではないか。
 今年5月に発表された国境なき記者団(本部・パリ)による「報道の自由度ランキング」(対象は180の国・地域)で日本は前回より四つ順位を下げて71位。ちなみに首位はノルウェーだった。
2022/06/28
参院選、期日前投票に行ってきました
世論調査に惑わされないで…
 7月10日の参院選投開票を前に、期日間投票が始まりました。
 早速、投票所に行ってみると、結構列ができていました。前の人、後ろの人、ここに来た人たちは、どういう投票をしているのでしょうか? 
 気になったのは、27日夜7時のNHK「ニュース」が報じた世論調査結果です。抜粋を紹介しながら、考えました。

▼重視するのは「経済」が圧倒的
 それによると、「投票する際に最も重視する政策課題は?」という問いには
 「経済対策」が43%、続いて「社会保障」16%、「外交・安全保障」15%、「新型コロナ対策」5%、「憲法改正」5%、「エネルギー・環境」5%…。問題の「物価高騰対策・消費税は?」と聞くと、「引き下げるべき」34%、「引き下げるべきでない」が47%、でした。
 消費税は、引き下げ、据え置きが相半ば。「消費税は社会保障の財源」という自民党の嘘の宣伝がしみこんでいるんでしょうね。

▼防衛費の倍増、調べてみました…
もう一つの重要な争点、「防衛費」について、調査はどうすべきか聞いています。ところが、「今のままでよい」30%、「ある程度減らす」5%、「大幅に減らす」2%、に対し、「大幅に増やす」12%が、「ある程度増やす」40%、でした。
 しかし、いまでも、防衛費は当初予算で5兆4005億円、補正予算を合わせると6兆1744億円。564兆6000億円とされている今年度の国内総生産(GDP)の1.09%、額では既に、世界9位です。これを「5年間で倍増する」と言うことは、毎年1兆円を増額。倍増すれば、米、中に次ぎ、「世界第3の軍事大国」になるはずです。
 この増額、「国を守る」ためといいますが、財源も、使い道も不明確。要するに米国と軍需産業の利益をはかるだけの軍事化。困ったことに、この話になると、維新、国民、そして立憲までが、よくわからないまま「必要な軍備増額を図る…」などと言っていることです。
ウクライナ戦争が始まって以来、「日本も防衛力を強化しないと危ない」とか言ういい加減な宣伝がはびこって、それに惑わされている人が少なくありません。「軍拡は戦争への道」―認めるわけにいきません。

▼そして憲法、3分の2を取らせてはならない…
 「重視する政策課題」で「憲法」はわずか5%でした。しかし、調査で、「憲法改正」について聞くと、「必要」53%、「必要ない」30%でした。アナウンサーは、「憲法については各党とも公約にもりこみ争点の一つ」「憲法改正に前向きな勢力が、衆議院だけでなく参議院でも改正発議に必要な3分の2の議席を確保するかどうかが焦点となっています」とコメント。自民党.茂木幹事長は「参院選後、憲法改正案を国会に提出したい」と公言。3分の2を獲得すれば、「本当にやる気」です。

▼やればできる…
 6月20日に開票された東京都杉並区長選。興奮しました。無所属で新人の公共政策研究者・岸本聡子さん(47)が、4選を目指した現職区長を破って当選、その差187票です。各党揃って投票率が5%アップした結果でした。やればできること、一票の大切さが実感されました。
 「俺一人が入れなくても…」「私一人が棄権しても…」と気楽に棄権している人がいるとしたら、あなたのその一票は当選させたくない候補への一票になっています。今回の参院選は、これからの日本の針路を決める大事な大事な選挙です。声かけ合って、投票は早めに…。
 「物価高は困る」「戦争はイヤだ」―いまならまだ言えるのです。
(了)

2022/06/20
世論と世の中の空気をただしたい
 加藤陽子教授の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」に、1931年(昭和6年)の満州事変(柳条湖事件)の2カ月前の7月に行われた東大(東京帝大)の学生の意識調査の結果が紹介されている。竹内洋著「丸山真男の時代」(中公新書)からの引用というが、「満蒙に武力行使は正当なりや」との問いに、「然り」(はい)が88%だったという。

 内訳では「直ちに武力行使すべき」が52%、「外交手段を尽くした後に武力行使をすべき」が36%だったという。武力行使をしてはダメだ、と答えた学生は12%で、加藤教授は「いろいろな知識を持っていたと思われる東大生の88%が武力行使を『是』としていたということに、私は驚きました」と書いている。

▼作られていた戦争のムード

 日本の中国侵略は、満州事変から始まったとされ、当時の新聞が軍部批判から一転、「戦争協力」に「転向」したことが指摘されている。しかし、ここに紹介された東大生の意識は、実はそれまでの間に、世論、つまり世の中のムードは、戦争に傾き、息を潜めて情勢を見るという感じになっていたことを示しているのではないか、と思った。

 この時代の空気…。それは、柳条湖事件が起きたときの現地の新聞の反応に見ることができる。当日、事件勃発の瞬間、朝日の武内文彬・奉天支局長は入浴中だったが、ガラス戸が破れ家を揺るがす大音響と大砲の爆音や機関銃の銃声に事態を知り本社に打電した。駆けつけてきた支局員のK記者に「『いよいよやりよったネ』と話しかけると、『とうとうやりましたネ』とK君も顔を真っ赤にして興奮していた」という。(前坂俊之「太平洋戦争と新聞」講談社学術文庫)

 つまり、近現代の戦争は、様々な手立てで、戦争勃発の「空気」を作り出し、そこに、何か全く違う火ダネを放り込んで発火させるのだ。いま、そこに乗ってはならない。

▼譲った一歩は大きな一歩と

 ウクライナ戦争で自民党は、アベノミクスと新自由主義による物価高や生活困窮を覆い隠し、「9条では国を守れない」「同盟強化と防衛費増額を」とキャンペーンし、防衛費倍増などを進めている。これに乗せられ、世論も防衛費増に傾き、「大幅に」26%、「ある程度は」50%の増額を認める意見が計76%に達し、「増やす必要はない」17%、「減らすべきだ」6%の計24%を大幅に上回っている(毎日新聞5月24日)。

 また、読売と日本テレビの10代、20代以上の調査によると、「防衛費の増額」の答えは77%が賛成、反対は19%で、賛成の内訳は「GDP2%以上の増額」11%、「1~2%の範囲で」42%ということだった。

 満州事変前の東大生の意識と、いまの世論を同じに論じるつもりはない。ただ考えてみたいのは、「場合によっては…」の前提を付けながら「武力による解決もあり得る」と考える心証はいまも昔も変わっていない、のではないか、ということだ。

 しかし、原爆のむごたらしさ、ただ命を失うだけではない地球の危機、脳細胞を狂わせるようなサイバー攻撃の「発展」…。そんな中で人類は、「この時代、もう戦争は問題解決になり得ない」と悟ったのではなかったのか。私たちは、日本国憲法の決意を国民の「覚悟」にしていかなければならないのではないか。

 「非武装では不安だから、警察予備隊。警察力だけでは難しいから、専守防衛。何かあったら自衛のために戦うのは当たり前。世界情勢から言えば核戦力。1%枠などと言うのは古い、世の中は2%、それで3大強国に入る。ややこしいから、9条などやめてしまえ…!」。
 「防衛費倍増も仕方がない、景気が悪いんだから武器輸出も、ウクライナならいいだろう」。…一歩ずつ譲ってきた結果が、いま、ここまできたのではないか。

 いましなくてはいけないことは、防衛力を強化しなくてもいいようにするために、なにをするか、である。

 今週、核禁条約の第1回締約国会議が行われ、参院選が公示される。
 軍拡反対、防衛費倍増は民生に回せ、軍備のない世界こそ、戦争がない世界。核禁条約はその第一歩!! 簡単な論理が庶民の主張になるよう、世論の「間違い」、世の中の「空気」を正したい。
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