/ 

2022/06/28
参院選、期日前投票に行ってきました
世論調査に惑わされないで…
 7月10日の参院選投開票を前に、期日間投票が始まりました。
 早速、投票所に行ってみると、結構列ができていました。前の人、後ろの人、ここに来た人たちは、どういう投票をしているのでしょうか? 
 気になったのは、27日夜7時のNHK「ニュース」が報じた世論調査結果です。抜粋を紹介しながら、考えました。

▼重視するのは「経済」が圧倒的
 それによると、「投票する際に最も重視する政策課題は?」という問いには
 「経済対策」が43%、続いて「社会保障」16%、「外交・安全保障」15%、「新型コロナ対策」5%、「憲法改正」5%、「エネルギー・環境」5%…。問題の「物価高騰対策・消費税は?」と聞くと、「引き下げるべき」34%、「引き下げるべきでない」が47%、でした。
 消費税は、引き下げ、据え置きが相半ば。「消費税は社会保障の財源」という自民党の嘘の宣伝がしみこんでいるんでしょうね。

▼防衛費の倍増、調べてみました…
もう一つの重要な争点、「防衛費」について、調査はどうすべきか聞いています。ところが、「今のままでよい」30%、「ある程度減らす」5%、「大幅に減らす」2%、に対し、「大幅に増やす」12%が、「ある程度増やす」40%、でした。
 しかし、いまでも、防衛費は当初予算で5兆4005億円、補正予算を合わせると6兆1744億円。564兆6000億円とされている今年度の国内総生産(GDP)の1.09%、額では既に、世界9位です。これを「5年間で倍増する」と言うことは、毎年1兆円を増額。倍増すれば、米、中に次ぎ、「世界第3の軍事大国」になるはずです。
 この増額、「国を守る」ためといいますが、財源も、使い道も不明確。要するに米国と軍需産業の利益をはかるだけの軍事化。困ったことに、この話になると、維新、国民、そして立憲までが、よくわからないまま「必要な軍備増額を図る…」などと言っていることです。
ウクライナ戦争が始まって以来、「日本も防衛力を強化しないと危ない」とか言ういい加減な宣伝がはびこって、それに惑わされている人が少なくありません。「軍拡は戦争への道」―認めるわけにいきません。

▼そして憲法、3分の2を取らせてはならない…
 「重視する政策課題」で「憲法」はわずか5%でした。しかし、調査で、「憲法改正」について聞くと、「必要」53%、「必要ない」30%でした。アナウンサーは、「憲法については各党とも公約にもりこみ争点の一つ」「憲法改正に前向きな勢力が、衆議院だけでなく参議院でも改正発議に必要な3分の2の議席を確保するかどうかが焦点となっています」とコメント。自民党.茂木幹事長は「参院選後、憲法改正案を国会に提出したい」と公言。3分の2を獲得すれば、「本当にやる気」です。

▼やればできる…
 6月20日に開票された東京都杉並区長選。興奮しました。無所属で新人の公共政策研究者・岸本聡子さん(47)が、4選を目指した現職区長を破って当選、その差187票です。各党揃って投票率が5%アップした結果でした。やればできること、一票の大切さが実感されました。
 「俺一人が入れなくても…」「私一人が棄権しても…」と気楽に棄権している人がいるとしたら、あなたのその一票は当選させたくない候補への一票になっています。今回の参院選は、これからの日本の針路を決める大事な大事な選挙です。声かけ合って、投票は早めに…。
 「物価高は困る」「戦争はイヤだ」―いまならまだ言えるのです。
(了)

2022/06/20
世論と世の中の空気をただしたい
 加藤陽子教授の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」に、1931年(昭和6年)の満州事変(柳条湖事件)の2カ月前の7月に行われた東大(東京帝大)の学生の意識調査の結果が紹介されている。竹内洋著「丸山真男の時代」(中公新書)からの引用というが、「満蒙に武力行使は正当なりや」との問いに、「然り」(はい)が88%だったという。

 内訳では「直ちに武力行使すべき」が52%、「外交手段を尽くした後に武力行使をすべき」が36%だったという。武力行使をしてはダメだ、と答えた学生は12%で、加藤教授は「いろいろな知識を持っていたと思われる東大生の88%が武力行使を『是』としていたということに、私は驚きました」と書いている。

▼作られていた戦争のムード

 日本の中国侵略は、満州事変から始まったとされ、当時の新聞が軍部批判から一転、「戦争協力」に「転向」したことが指摘されている。しかし、ここに紹介された東大生の意識は、実はそれまでの間に、世論、つまり世の中のムードは、戦争に傾き、息を潜めて情勢を見るという感じになっていたことを示しているのではないか、と思った。

 この時代の空気…。それは、柳条湖事件が起きたときの現地の新聞の反応に見ることができる。当日、事件勃発の瞬間、朝日の武内文彬・奉天支局長は入浴中だったが、ガラス戸が破れ家を揺るがす大音響と大砲の爆音や機関銃の銃声に事態を知り本社に打電した。駆けつけてきた支局員のK記者に「『いよいよやりよったネ』と話しかけると、『とうとうやりましたネ』とK君も顔を真っ赤にして興奮していた」という。(前坂俊之「太平洋戦争と新聞」講談社学術文庫)

 つまり、近現代の戦争は、様々な手立てで、戦争勃発の「空気」を作り出し、そこに、何か全く違う火ダネを放り込んで発火させるのだ。いま、そこに乗ってはならない。

▼譲った一歩は大きな一歩と

 ウクライナ戦争で自民党は、アベノミクスと新自由主義による物価高や生活困窮を覆い隠し、「9条では国を守れない」「同盟強化と防衛費増額を」とキャンペーンし、防衛費倍増などを進めている。これに乗せられ、世論も防衛費増に傾き、「大幅に」26%、「ある程度は」50%の増額を認める意見が計76%に達し、「増やす必要はない」17%、「減らすべきだ」6%の計24%を大幅に上回っている(毎日新聞5月24日)。

 また、読売と日本テレビの10代、20代以上の調査によると、「防衛費の増額」の答えは77%が賛成、反対は19%で、賛成の内訳は「GDP2%以上の増額」11%、「1~2%の範囲で」42%ということだった。

 満州事変前の東大生の意識と、いまの世論を同じに論じるつもりはない。ただ考えてみたいのは、「場合によっては…」の前提を付けながら「武力による解決もあり得る」と考える心証はいまも昔も変わっていない、のではないか、ということだ。

 しかし、原爆のむごたらしさ、ただ命を失うだけではない地球の危機、脳細胞を狂わせるようなサイバー攻撃の「発展」…。そんな中で人類は、「この時代、もう戦争は問題解決になり得ない」と悟ったのではなかったのか。私たちは、日本国憲法の決意を国民の「覚悟」にしていかなければならないのではないか。

 「非武装では不安だから、警察予備隊。警察力だけでは難しいから、専守防衛。何かあったら自衛のために戦うのは当たり前。世界情勢から言えば核戦力。1%枠などと言うのは古い、世の中は2%、それで3大強国に入る。ややこしいから、9条などやめてしまえ…!」。
 「防衛費倍増も仕方がない、景気が悪いんだから武器輸出も、ウクライナならいいだろう」。…一歩ずつ譲ってきた結果が、いま、ここまできたのではないか。

 いましなくてはいけないことは、防衛力を強化しなくてもいいようにするために、なにをするか、である。

 今週、核禁条約の第1回締約国会議が行われ、参院選が公示される。
 軍拡反対、防衛費倍増は民生に回せ、軍備のない世界こそ、戦争がない世界。核禁条約はその第一歩!! 簡単な論理が庶民の主張になるよう、世論の「間違い」、世の中の「空気」を正したい。
2022/06/11
日本は降伏すべきではなかったのか
―篠田英朗教授に問う

  日本は降伏すべきではなかったのか  ―篠田英朗教授に問う

 ★篠田英朗氏という東京外大教授がいる。国際政治学が専門とのこと。朝日4月15日付の「オピニオン」欄「戦うべきか、否か」に登場。ウクライナに「降伏」「妥協」を求める議論に対してこう述べた。「ウクライナでは大統領の方針を9割の国民が支持しています」「当事者が苦悩の末にそういう選択をした以上、それに対して敬意を払うべきでしょう」。妥当な意見だと思った。その後も氏はこの観点から橋下徹弁護士の「妥協・降伏」論に反論している。

 ★この篠田氏の名を今度は6月3日の産経「オピニオン」の「正論」欄で見た。冒頭、「ロシア・ウクライナ戦争」で「印象深いのは、左派系の方々の『絶対平和主義』の劣化である」とある。ん? 何を言ってるのかな。氏によると「絶対平和主義者」は「ウクライナにも非がある」として「『どっちもどっち』論」になっている、これはダメだという。だれのことをなんだろう。
 氏のいう「絶対平和主義者」とは、たとえば上記の朝日オピニオン欄で「非暴力抵抗こそ民を守る」と主張した映画監督の想田和弘氏あたりか。想田氏は「国の指導者が一切交戦しないことを決断」して「徹底的な非暴力・不服従の抵抗」を言ってるのであって、そもそも「どっちもどっち」論とは無縁だ。

 では「どっちもどっち」論の一典型といわれる、やはり映画監督の河瀨直美氏はどうか。彼女は東大入学式の祝辞で「「ロシア」という国を悪者にすることは簡単である」「『悪』を存在させることで、私は安心していないだろうか」と問いかけた。一種の観念論・不可知論だが、「絶対的平和論」ではない。篠田氏はいったい誰を批判しようとしているのか。

 ★産経文を追うと、篠田氏は「1945年の日本も早く降伏するべきだった」と主張する人々が気に入らない。つまり氏は「ウクライナは降伏を」論も「かつての日本も早く降伏すべきだった」論も批判する。後者は論証抜きで「イデオロギー的な歴史観」だという。要するに第二次世界大戦と、今回のロシアのウクライナ侵略の「正邪」が見えていないのだ。

 侵略国日本がもっと早くポツダム宣言を受諾していれば、何十万の日本人の命が失われずにすんだかは、歴史の真実だろう。まさか氏は「降伏反対」をキーワードに今回のウクライナの事態と第二次大戦の日本を見ているわけではないでしょうね。

 氏は最後に、日本の絶対的平和主義者は「ウクライナと改憲を結びつけるな」と言っていると論難する。「ロシアのウクライナ侵略に乗じて憲法9条をなくせというのは筋違いだ」という声は「絶対的平和主義者」を含む少なくない国民の声だ。

 氏が4月の朝日で「『法の支配』によって国際社会の秩序を維持することは、二度の世界大戦の教訓を踏まえて、人類が取り組んでいる壮大な実験です」と言ったのはいったい何だったのか。「二度の世界大戦の教訓」は国連憲章と日本国憲法に結実したのではなかったか。

 氏にとっての教訓は「9条の否定」なのか、改めて氏に問いたい。
管理  
- Topics Board -