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2022/08/02
ミャンマー国軍による弾圧に抗議
日本人男性の釈放を求めて集会
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外務省前で行われた抗議集会=7月31日(保芦宏亮さん提供)
 ミャンマーの最大都市ヤンゴンで7月30日、国軍に対する抗議デモを撮影していた日本人男性が治安当局に拘束された。ミャンマーメディアの報道によると、フリーランスでドキュメンタリー制作をしている久保田徹さんだと見られる。昨年2月に国軍がクーデターで実権を掌握してから1年半。ミャンマー市民の自由や人権、日本人男性の早期解放を求めて、日本でも集会やデモが行われている。
 東京都千代田区の外務省前で31日、日本人男性の拘束に抗議する緊急集会が行われ、在日ミャンマー人を含め約100人が、「日本政府はすぐ解放されるよう、ミャンマーの軍部に圧力をかけろ」などとシュプレヒコールを上げた。集会は、ミャンマー料理研究家で僧侶の保芦宏亮さん(52)がSNSを通じて呼びかけた。クーデター当時、ミャンマーに滞在中だった保芦さんは「軍による抑圧の状況を目の当たりにした」といい、帰国後はミャンマー人らの支援活動に力を注いでいる。集会にはクーデター後の昨年2月と4月、やはりヤンゴンで拘束されたジャーナリスト、北角裕樹さん(46)が駆けつけた。2度目の拘束時、「虚偽ニュースを拡散した」として逮捕、訴追され、約1カ月にわたって収監された北角さんは、「どうしてデモや取材をしたことが罪になるのか」「誰一人、命を落とさないように願いたい」などと力を込めた。
 ミャンマー国軍は、クーデターの強行に伴い、1年間の期限で発令した非常事態宣言を、来年2月1日まで6カ月延長すると発表し、司法、立法、行政の全ての権限は、ミンアウンフライン最高司令官が握っている。現行憲法では、非常事態宣言の期間は原則1年で、延長は最長2年まで。その後は6カ月以内に総選挙を実施すると規定され、国軍は2023年8月1日までに総選挙を行う必要がある。日本政府やASEAN諸国がこの問題にどう対処するかを注視しなければいけない。
 ウクライナではロシア軍の侵攻により、多数の命が犠牲になり、生活が破壊されている。日本国内では、核兵器の廃絶、脱原発、反基地など、課題は山積しているが、どれか一つでもいい。それぞれが、こうした問題に関心を持ち、行動を起こすことで、社会は変化する。そのためには、紛争地や戦地を訪れ、果敢に報道するジャーナリストらを、市民社会が後押しし、時には守ることが重要だ。
 今夏で敗戦から77年。平和は市民が創るものだということを改めて肝に銘じたい。
2022/07/25
安倍元首相の国葬に異議あり
 こんなことから書きはじめていいのだろうか。この数週間、さまざまなことが頭の中を駆け巡っている。

▼ まずは、安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者のこと
 「山上」という名を目にしたのは二度目である。
 最初は映画界の大先輩につれられて世田谷の成城にあった映画監督・マキノ正博邸を訪ねたときである。話好きの監督は(映画創成期の)マキノ映画のことを話し始めた。「散歩中の神社でよれよれの羽織をまとった青年に出会ったのだ」「大事そうに懐に脚本を持っていた。タイトルは“浪人街”」「無声映画時代の代表的な作品になった。その青年の名は山上伊太郎」だという。
 マキノ映画で連作になっている。内容は庶民を泣かせる悪旗本を懲らしめる浪人たちのはなしである。なにかで読んだがラストシーンに「浪人街の白壁に いろはにほへとと書きました」という文字が映し出されたという。斬り合いが終わって穏やかな日常に戻った様(さま)を描こうとしたのだろうか。山上伊太郎・・・忘れられない名である。山上伊太郎は京都生まれ。映画史に残る人物である。

 検察は山上徹也容疑者を精神鑑定するとか言っています。まさか「精神異常者」にでもするつもりではないだろうね。目が離せません。

▼ 次は統一教会
 労働組合の役職を降りて現場復帰(ワイドショープロデューサー)して間もなく出くわしたのが韓国で行われた「合同結婚式」。有名タレントが参加するというので各局とも大騒ぎ。取材許可がいるという。統一教会広報部と連絡とり合うのはプロデューサーの役目。当時は「霊感商法」が問題視されていた。弁護士の紀藤正樹さんや(当時評論家だった)有田芳生さんにコメンテーターの役割をお願いしたものだ。
 ご両人はあらためて番組に登場して世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)会長の発言に対して「誠実さを欠く」「大事なことについてきちんと説明していない」と鋭く批判している。ご両人の出演に横槍が入る可能性は十分ある。報道関係の皆さん、一過性の報道で終わらないようにしてほしい。

▼ 統一教会の名称変更は下村文科相(当時)下の認証だった
 しんぶん「赤旗」によれば、霊感商法など反社会的活動が問題になってきた
 旧統一教会が2015年に正式名称を「世界平和統一家庭連合」に変更した問題で、下村大臣は事前説明を受けていたという。文科省の外局である文化庁は「教義など団体の実態に変化がないと名前は変えられない」と申請を拒否してきたのにだ。その下村氏の選挙区支部は統一教会から献金を受けていた。統一教会の支援を受けている自民党議員は少なくない。

▼ 安倍元首相の国葬に 異議あり
 神戸学院大学教授(憲法学)上脇博之さんは言っています。
 いま国をあげてやるべきなのは、安倍氏の安保法制=戦争法の強行や「モリ・カケ・桜」の政治の私物化問題の総括と真相解明のほか、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の広告塔として被害を拡大させてきた責任の追及です。安倍氏の「国葬」はそれに蓋をすることになりかねません。と

疑惑の真相解明にふたをさせてはなりません
2022/07/19
ひとりぼっちの「青年」をなくそう
―― 安倍暗殺犯の周辺を考える

 もともとは優秀な技術者の息子だった。安倍元首相を撃った山上徹也容疑者(41)のことだ。幼いころから頭が良く勉強もよくできた。しかし、幼いころ父親が亡くなると、悲劇が始まった。
 母は、統一教会に走り、子どもたちはネグレクトされた。母は父親(徹也にとっての祖父)が経営していた会社を引き継いだが、献金して破産させた。献金額は1億円に達し、母の兄の弁護士が、仲介して取り戻した5000万円さえ再度献金してしまった。

 母に見放された徹也は、親族の応援で高校を卒業、02年海上自衛隊の任期制自衛官になったが、任期満了を前に05年、自殺を図った。自分にかけた生命保険で、兄や妹を助けたいと考えたためだったとも言う。
 回復後、任期満了で退官すると、測量会社でのアルバイトなどをしながらいくつかの資格をとった。15年11月、病気で片目を失いながら頑張っていた兄が自殺したときは、「生きていればいいこともあるのに…」と悔やんだ。生きて頑張ろうとする彼の姿に親戚は安堵した。

しかし、仕事は定着しなかったようだ。20年10月、派遣会社から派遣された京都の工場でも、黙々と働いていたが、同僚とうまくいかず、結局、この5月、退職した。
 母を奪った統一教会については、ずっと恨み続けていたが、昨年、統一教会のフロント組織「天宙平和連合」の集会に安倍元首相が登場しているのを見て襲撃を考え、銃の製作などを始めた、という。

 仕事も面白くない、同僚ともうまくいかない、家族も居ない。本当にひとりぼっちになった。仲間もいない。仕事にも希望は持てない。自分の将来が描けない。生きていても仕方がない。どうしてこんなことになったのか。自分でも解決が付かなかった。ただひたすら、深夜の武器製造に心を砕いた。

週刊誌などの報道を総合すると、山上徹也容疑者の半生はこんな具合だったようだ。

       ×     ×     ×

 「政治的テロ」だったのか、単なる「個人的怨恨」だったのか―.選挙中でもあって議論が広がった。しかし、「個人的怨恨」と片付けられない社会性を帯びた事件は、容疑者の主観を超えて極めて政治的だ。

「自己責任」と「効率化」の「新自由主義」イデオロギーの中で、家庭でも仕事場でも「集団」より「個」が問題にされる社会に急速になった結果、個々人の責任や抱える問題は、放置されるようになった。「個の尊重」というと格好はいいが、実は「個の孤立」が進み、心理的にも経済的にも追い詰められた若者も目立つようになった。

 2008年6月、秋葉原の繁華街で起きた無差別殺傷事件の26歳の加害者は、「生活に疲れた。自分の人生を終わりにしたかった」「誰でもいいから殺したかった」と話した。
 2019年5月、川崎市の登戸で通学バスを小学生と、見送りに保護者を死傷させ、自らもその場で自殺した51歳の容疑者も、同居の伯父、伯母とのコミュニケーションがない引きこもりの中年だった。

 自分はどう生きるか、あすは何のために…? そんな中で、生きる希望を失い、「もういい、全部終わりにしたい」と考え、凶暴な事件を起こした人が他にもいる。
 山上容疑者もその例外ではなかった。職を辞め、経済的にも追い詰められた容疑者は、銃を自分で造り、犯行に及んだ。

 事件で考えなければならないことは、数多くある。

 まず、彼の家庭を崩壊させた「統一教会」という、カルト集団の行動。犯罪か、それに近い財産巻き上げの方法は糾弾されなければならないし、その「広告塔」になったり、その支援を受けている政治家は、当然責任を追及されなければならないだろう。

 そしてさらに、その被害を受けている家族に対する救済、支援の問題。事実の把握からして容易ではないが、山上容疑者のケースでいえば、伯父が相談に乗っていても、1人ですべて難しかった。
 ここはや社会と行政の援助が求められていたのではなかったか。

 「消費者センター」の活動もある。「全国霊感商法対策弁護士連絡会」や「全国統一教会被害者家族の会」、「宗教2世ホットライン」など、被害者自ら、助け合い、闘っている組織もある。献身的に闘っているこれらの人たちと、だれかが、どこかで、そんな組織に接触させるようになっていれば、こんなことにならなかったかもしれない。
 
 また、容疑者に、もっと踏み込んで相談できる友人がいたらどうだったか。市民同士、社会の連帯感が失われて来ている中で、少しでもそうした具体的な運動にまで手が届いていたら、彼の人生も変わってきたのではなかったか。

        ×     ×     ×

 生き方を悩むのは、あらゆる年齢で共通し、人間が人間である限りなくならない問題だ。だから「ひとりぼっちの『青年』をなくそう!」も、青年の固有の問題ではない。社会全体で考えなければならないことだ。 

 英国では、こういう個人の孤独の問題は、医療費が無料であることから、医師のところで問題がわかることが多いといわれる。
 そうした精神疾患を重視し、問題は「孤独」にある、と認識した政府は、当時のメイ首相が18年1月「孤独は現代の公衆衛生上、最も大きな課題の一つ」として、「孤独担当大臣」を置くことを宣言、既に動きだしたという。

 当面、「友だちを作れない子ども」「初めて子どもを持つ親」「友人や家族に先立たれた高齢者」などの孤独対策に、経済問題と医療問題からアプローチする体制が出来つつあるらしい。

 日本の「孤独」は、英国よりずっと高い率で報告されている。人は独りでは生きられない。誰もが抱える「悩み」を、聞き、共有し、できることは応援する。こころに「ゆとり」を持てる社会を何としても創っていかなければならない。

 この際、そうした議論が生まれ、連帯し、助け合い、絆を育てていく社会に進むことは、安倍元首相にとっても、何よりの「供養」である。
                 (了)
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