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2024/10/04
「戦争する国」づくり改憲に対決する大きな運動を
石破政権の誕生で、「九条の会」事務局は10月5日、次のような声明を発表しました。◎石破政権のねらう「戦争する国」づくり改憲に対決する大きな運動を
10月1日の国会指名により石破茂政権が誕生し、4日の所信表明演説で、石破首相は「私が総理に在任している間に発議を実現していただくべく」と、在任中の改憲発議を公約しました。改憲策動は新たな重大な局面に入りました。
岸田前首相は、就任以来「任期中の改憲」を繰り返し表明し、その意を受けて自民党は、公明党、日本維新の会、国民民主党などと結託して、選挙実施不可能な緊急事態時に国会議員の任期を延長する「任期延長改憲」を画策してきましたが、市民の運動と憲法審査会での立憲野党の頑張りにより、挫折を余儀なくされました。
しかし、改憲に固執する岸田氏は、その戦略を、自民党の本命である「戦争する国」づくり改憲を前面に掲げてその実現を急ぐ方向に転換し、議員任期延長改憲に加え、9条への自衛隊明記、緊急時に政府の命令で国民の自由を制限する緊急政令改憲を重要テーマに盛り込むよう指示しました。
岸田氏は、党憲法改正実現本部に対し、新たに加えた2つのテーマの論点整理を急がせ、9月2日の実現本部の会合でこの論点整理の承認を取り付けた上、総裁選に立候補する9人の候補者に対しても、この路線の継承を求めたのです。
石破新首相は、年来のタカ派の改憲推進派で、2012年の自民党憲法改正草案の策定にも深く関わり、「9条2項の削除」と国防軍の保持を主張してきた人物です。最近でも、アジア版NATOの創設、「国家安全保障基本法」の制定、集団的自衛権の全面的行使を前提にした日米地位協定改定、アメリカとの核共有の提唱など、憲法9条に真っ向から背く思想の持ち主です。
ところが、その石破氏も総裁選では持論を引っ込め、論点整理の打ち出した路線の継承とその改憲案の「首相在任中の発議」を明言したのです。
岸田氏が「戦争する国」づくり改憲に転換し、石破首相もその路線の継承を謳うに至った背景には、2022年の「安保3文書」の閣議決定以降の岸田政権の大軍拡政策や武器輸出の拡大、日米軍事協力の強化、経済安保法制の策定などにより、自衛隊の「戦争する軍隊」化、「戦争する国」づくりが進行し、実態と憲法との矛盾が極限まで高まったことが挙げられます。
9条への自衛隊明記により自衛隊の合憲化を図り緊急政令を含む緊急事態条項を作ることが、「戦争する国」づくりを加速する上でも待ったなしの課題となったのです。
9条の会はじめ市民の運動、そして2015年の安保法制に反対する大運動のなかから立ち上がった「市民と野党の共闘」が、安倍、菅、岸田の3政権が相次いで公約とした改憲を挫折させた原動力でした。この力に確信を持ちましょう。
しかし、石破新政権が「戦争する国」づくり改憲を掲げて登場した現在、私たちは、改憲を許すのか、これを阻んで「戦争する国」づくりにストップをかけるかの正念場に立っています。
全国の9条の会の皆さん!改憲に反対する市民の皆さん!
今こそともに行動に立ち上がって、地域で、街頭で、あらゆる生活の場で、集会・署名・デモ・スタンディングなどの取り組みを抜本的に強化し、改憲反対の世論をおこし、石破政権による「戦争する国」づくり改憲の策動を打ち破る大運動を展開しましょう。
来るべき総選挙では、市民の頑張りと市民と野党の共闘の力で、改憲NO!の議員を一人でも多く当選させるため、頑張りましょう。
2024年10月5日 九条の会事務局
2023/01/02
明を発表している。
順次、紹介しよう。
敵基地攻撃能力の保有などを新方針とする安保関連三文書改定の閣議決定に抗議する
法律家6団体の声明
2022年12月27日
改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター 共同代表理事 海渡 雄一
自由法曹団 団長 岩田 研二郎
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 笹山 尚人
日本国際法律家協会 会長 大熊 政一
日本反核法律家協会 会長 大久保 賢一
日本民主法律家協会 理事長 新倉 修
自由法曹団 団長 岩田 研二郎
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 笹山 尚人
日本国際法律家協会 会長 大熊 政一
日本反核法律家協会 会長 大久保 賢一
日本民主法律家協会 理事長 新倉 修
1 日本の安全保障政策を大きく転換させる安保関連三文書改定
本年12月16日夕刻、政府は、安保関連三文書(国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画)を改定することを閣議決定した。改定は、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を容認し、軍事費が5年間で計43兆円の大幅増が明示されるなど、憲法9条に基づく専守防衛を改め日本の安全保障政策を大きく転換するものである。
改憲問題対策法律家6団体連絡会は、今回の閣議決定に対し強く反対し抗議する。
改憲問題対策法律家6団体連絡会は、今回の閣議決定に対し強く反対し抗議する。
2 敵機地攻撃能力の保有は憲法9条に違反し、戦争への危険を高める
(1) 敵基地攻撃能力の保有は憲法9条に違反する
日本は先の大戦において、中国などを侵略し、真珠湾への奇襲攻撃により泥沼のアジア太平洋戦争に突入し、自国及び他国に対し多くの惨禍をもたらした反省から、2度と政府の行為によって戦争の惨禍を繰り返さないと決意して(憲法前文1項前段)、憲法9条が、戦争放棄(1項)、戦力不保持(2項前段)、交戦権の否認(2項後段)を定めた。
敵基地攻撃は、相手国の武力行使の着手の認定が困難で、国際法上違反とされる「先制攻撃」に繋がる現実的危険性が十分にあり、「自衛のための必要最小限度」を超えた武力行使を認めるものであり、憲法9条1項に反する。加えて、仮に日本が敵基地をミサイルで攻撃すれば、敵国もミサイルで日本を反撃することになり、全面戦争に発展する蓋然性が高い。このような事態を招来する敵基地攻撃能力は、「自衛のための必要最小限度」を超えた武力行使を認めるものであり、「国際紛争を解決する手段」として戦争を放棄した憲法9条1項、「国の交戦権は、これを認めない。」とした憲法9条2項後段に違反する。
さらに、戦力不保持に関して、政府は、「他国に侵略的攻撃的脅威を与えるような装備」については憲法上保持できないと説明してきた(1988年4月6日参議院予算委員会、瓦力防衛庁長官)。今回の閣議決定は、まさに「他国に侵略的攻撃的脅威を与える」装備の導入を認めるものであり、憲法9条2項前段の戦力不保持に反する。
日本は先の大戦において、中国などを侵略し、真珠湾への奇襲攻撃により泥沼のアジア太平洋戦争に突入し、自国及び他国に対し多くの惨禍をもたらした反省から、2度と政府の行為によって戦争の惨禍を繰り返さないと決意して(憲法前文1項前段)、憲法9条が、戦争放棄(1項)、戦力不保持(2項前段)、交戦権の否認(2項後段)を定めた。
敵基地攻撃は、相手国の武力行使の着手の認定が困難で、国際法上違反とされる「先制攻撃」に繋がる現実的危険性が十分にあり、「自衛のための必要最小限度」を超えた武力行使を認めるものであり、憲法9条1項に反する。加えて、仮に日本が敵基地をミサイルで攻撃すれば、敵国もミサイルで日本を反撃することになり、全面戦争に発展する蓋然性が高い。このような事態を招来する敵基地攻撃能力は、「自衛のための必要最小限度」を超えた武力行使を認めるものであり、「国際紛争を解決する手段」として戦争を放棄した憲法9条1項、「国の交戦権は、これを認めない。」とした憲法9条2項後段に違反する。
さらに、戦力不保持に関して、政府は、「他国に侵略的攻撃的脅威を与えるような装備」については憲法上保持できないと説明してきた(1988年4月6日参議院予算委員会、瓦力防衛庁長官)。今回の閣議決定は、まさに「他国に侵略的攻撃的脅威を与える」装備の導入を認めるものであり、憲法9条2項前段の戦力不保持に反する。
(2) 「抑止の虚妄」 敵基地攻撃能力の保有は、東アジアの緊張関係を強めるだけ
敵基地攻撃能力の保有によって、スタンド・オフミサイルなどの長距離攻撃 が可能な兵器を保有し、東アジアを攻撃の射程内に入れることになる。中国、朝鮮をはじめとする東アジア諸国は、日本を警戒し、東アジアにおける緊張関係はさらに高まる。
安保関連三文書改定を受けて、中国外務省の報道官は、「中日両国関係で日本が約束したことや合意を無視して中国を中傷し続けている。断固として反対する」と述べ、外交ルートを通じて日本側に抗議をした。韓国メディアは、日本のことを「事実上戦争が可能な国家に変貌した。東アジアの軍備競争をさらに激化させ、緊張を高める」、「憲法9条を完全に無力化する内容」と警戒し、韓国も自らを強くする努力が必要だと主張する。
日本が、東アジア諸国に対して軍事的圧力を高めていくことは、決して戦争の抑止にはならず、むしろ果てしない軍拡競争を招くなど、軍事的衝突の危険を高めるものであり、安全保障上も失策であると言わざるを得ない。
敵基地攻撃能力の保有によって、スタンド・オフミサイルなどの長距離攻撃 が可能な兵器を保有し、東アジアを攻撃の射程内に入れることになる。中国、朝鮮をはじめとする東アジア諸国は、日本を警戒し、東アジアにおける緊張関係はさらに高まる。
安保関連三文書改定を受けて、中国外務省の報道官は、「中日両国関係で日本が約束したことや合意を無視して中国を中傷し続けている。断固として反対する」と述べ、外交ルートを通じて日本側に抗議をした。韓国メディアは、日本のことを「事実上戦争が可能な国家に変貌した。東アジアの軍備競争をさらに激化させ、緊張を高める」、「憲法9条を完全に無力化する内容」と警戒し、韓国も自らを強くする努力が必要だと主張する。
日本が、東アジア諸国に対して軍事的圧力を高めていくことは、決して戦争の抑止にはならず、むしろ果てしない軍拡競争を招くなど、軍事的衝突の危険を高めるものであり、安全保障上も失策であると言わざるを得ない。
(3) 安保関連三文書改定は、日本が戦争する危険を飛躍的に高める
日米同盟における米国と日本との関係は、これまで「矛と盾」との関係と説明されていた。しかし、近年米国が、自国の負担を減らし日本のさらなるコミットメント(矛の役割)を求めていることは周知の事実である。バイデン政権は、本年10月に公表した「国家安全保障戦略」の中で、「唯一の競争相手」と位置づける中国への対抗措置を最優先課題に掲げており、日本の安保関連三文書改定も、アメリカの対中戦略に基づいて改定されたことは明らかである。改定された三文書は、中国を「深刻な懸念」「強い懸念」と位置づけ、日本が矛の役割を積極的に担い、攻撃兵器の保有・配備により中国を抑止し、抑止が破れた場合には、日米共同軍事計画に基づき、南西諸島や九州地方をはじめとする我が国の本土を軍事拠点とし、自衛隊が米軍の指揮のもとに米軍と一体となって中国と戦争をすることを想定している。また、核を含むあらゆる能力によって裏打ちされた米国による拡大抑止の提供を含む日米同盟の抑止力と対処力を一層強化するとして、平時から日米同盟調整メカニズムを「発展」させ、日米のより高度かつ実践的な共同軍事訓練や日米の基地の共同使用の増加に努めるほか、空港、港湾等の公共インフラの軍事利用体制整備、産学連携の軍事研究開発に取り組むとしている。
2015年9月19日、国民の反対の中で成立した安保法制の下では、台湾有事をめぐり米中に武力紛争が起きれば、政府は「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した」として存立危機事態を認定し、自衛隊が集団的自衛権に基づき米中の戦争に参戦することとなる。そうなれば、真っ先に南西諸島や九州のみならず日本本土が中国の反撃を受けて取返しのつかない甚大な被害を被ることとなる。安保法制に加えて、敵基地攻撃能力保有の政策の大転換は、日本が米中戦争の当事国となる危険を飛躍的に高めることとなる。
日米同盟における米国と日本との関係は、これまで「矛と盾」との関係と説明されていた。しかし、近年米国が、自国の負担を減らし日本のさらなるコミットメント(矛の役割)を求めていることは周知の事実である。バイデン政権は、本年10月に公表した「国家安全保障戦略」の中で、「唯一の競争相手」と位置づける中国への対抗措置を最優先課題に掲げており、日本の安保関連三文書改定も、アメリカの対中戦略に基づいて改定されたことは明らかである。改定された三文書は、中国を「深刻な懸念」「強い懸念」と位置づけ、日本が矛の役割を積極的に担い、攻撃兵器の保有・配備により中国を抑止し、抑止が破れた場合には、日米共同軍事計画に基づき、南西諸島や九州地方をはじめとする我が国の本土を軍事拠点とし、自衛隊が米軍の指揮のもとに米軍と一体となって中国と戦争をすることを想定している。また、核を含むあらゆる能力によって裏打ちされた米国による拡大抑止の提供を含む日米同盟の抑止力と対処力を一層強化するとして、平時から日米同盟調整メカニズムを「発展」させ、日米のより高度かつ実践的な共同軍事訓練や日米の基地の共同使用の増加に努めるほか、空港、港湾等の公共インフラの軍事利用体制整備、産学連携の軍事研究開発に取り組むとしている。
2015年9月19日、国民の反対の中で成立した安保法制の下では、台湾有事をめぐり米中に武力紛争が起きれば、政府は「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した」として存立危機事態を認定し、自衛隊が集団的自衛権に基づき米中の戦争に参戦することとなる。そうなれば、真っ先に南西諸島や九州のみならず日本本土が中国の反撃を受けて取返しのつかない甚大な被害を被ることとなる。安保法制に加えて、敵基地攻撃能力保有の政策の大転換は、日本が米中戦争の当事国となる危険を飛躍的に高めることとなる。
3 軍事費の大幅増額は許されない
(1) 軍事費を2倍にしても安全にはならない
安保関連三文書改定によって、軍事費が5年間で計43兆円の大幅増が明示された。この大幅増が実現すれば、軍事費はGDP比2%の水準となり、日本の軍事費は米国、中国に次ぐ第3位の規模となる。
かつて日本は、平和主義憲法に基づき、軍事大国とはならないことを示すために軍事費をGDPの1%内としてきたが、それが近隣諸国に安心を与え平和の構築に寄与してきた。この制約を根本的に取り払いGDP比2%の軍事費を捻出したとしても、中国の現状の軍事費とはまだ3倍近い差がある。他方、中国は日本の5倍程度のGDPを有しているため、日本が軍事費を増額するならそれに対抗して、容易に自国の軍事費を増やすことができる。
軍拡は、相手国のさらなる軍事の拡大を招くだけであって、軍拡によっては永遠に安全を得られない。
安保関連三文書改定によって、軍事費が5年間で計43兆円の大幅増が明示された。この大幅増が実現すれば、軍事費はGDP比2%の水準となり、日本の軍事費は米国、中国に次ぐ第3位の規模となる。
かつて日本は、平和主義憲法に基づき、軍事大国とはならないことを示すために軍事費をGDPの1%内としてきたが、それが近隣諸国に安心を与え平和の構築に寄与してきた。この制約を根本的に取り払いGDP比2%の軍事費を捻出したとしても、中国の現状の軍事費とはまだ3倍近い差がある。他方、中国は日本の5倍程度のGDPを有しているため、日本が軍事費を増額するならそれに対抗して、容易に自国の軍事費を増やすことができる。
軍拡は、相手国のさらなる軍事の拡大を招くだけであって、軍拡によっては永遠に安全を得られない。
(2) 軍事国家化は、福祉国家と基本的人権の尊重の原則にも影響を与える
安保関連三文書改定によって、今後5年間の軍事費の総額がこれまでの1.6倍にあたる43兆円程度とされた。この莫大な軍事費は、経済成長が大きく見込まれない日本においては、増税、国債、文教・福祉予算等の歳出削減によって賄う以外に方法はない。
前代未聞の軍事費拡大は、福祉国家を崩し、国民に貧困と苦難を強いる。まさに「軍栄えて民滅ぶ」という事態を招きかねないものである。
安保関連三文書改定によって、今後5年間の軍事費の総額がこれまでの1.6倍にあたる43兆円程度とされた。この莫大な軍事費は、経済成長が大きく見込まれない日本においては、増税、国債、文教・福祉予算等の歳出削減によって賄う以外に方法はない。
前代未聞の軍事費拡大は、福祉国家を崩し、国民に貧困と苦難を強いる。まさに「軍栄えて民滅ぶ」という事態を招きかねないものである。
4 実質改憲を閣議決定で行うような国は立憲民主主義国家とはいえない
今回の安保関連三文書改定は、「専守防衛」を名実ともに完全に破棄する安全保障政策を大転換するものであり、前記のとおり敵基地攻撃能力の保有は、憲法9条に違反する。本来ならば、憲法改正手続きに拠らなければ変えられないことであり、今回の閣議決定は、実質的改憲にほかならず、立憲民主主義の基本に反する暴挙である。
また、軍事費の大幅増額によって国の財政の在り方も大きく変更し、国民生活に現実的かつ大きな影響を与えるものである。そうであるならば、国民生活の実態を踏まえた上で、少なくとも国会での十分な審議が必要であることは明らかである。
また、軍事費の大幅増額によって国の財政の在り方も大きく変更し、国民生活に現実的かつ大きな影響を与えるものである。そうであるならば、国民生活の実態を踏まえた上で、少なくとも国会での十分な審議が必要であることは明らかである。
5 まとめ
憲法の平和主義、憲法9条に反し、近隣諸国との緊張を高め、戦争のリスクを増大させる今回の安保関連三文書改定閣議決定は、撤回されるべきである。
平和主義憲法に基づく独自の安全保障政策を展開し、東アジアの平和構築に積極的に貢献するとともに、社会保障費、教育予算、物価対策、子育て関連費用等を充実させて、国民(市民)の命と生活を守ることこそが、政府の使命である。
平和主義憲法に基づく独自の安全保障政策を展開し、東アジアの平和構築に積極的に貢献するとともに、社会保障費、教育予算、物価対策、子育て関連費用等を充実させて、国民(市民)の命と生活を守ることこそが、政府の使命である。
以上
2022/09/14
安倍元首相の「国葬」に反対する ――世界の人たちに向けてJCJアピール
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、12日、安倍元首相の「国葬」について反対し、国葬が法的な根拠がなく、市民に弔意を強制する行事であり、思想信条の自由など民主主義のルールに反する」だけでなく、「平和路線を捨てて、憲法条文の勝手な解釈によって集団的自衛権の行使を法制化し、アジアや中東で米国と一緒に『戦争ができる国』へと変容させ」、「米国との『核共有』にも言及するような、危険な道を開いた政治家の遺志」を持ち上げ、継承しようとする」ものだとして、国葬反対を「世界の人々に知ってほしい」と訴えるアピールを発表しました。各国政府には、「民主主義のルールに反した『国葬』の実情を確認し、賢明な判断を」と呼びかけています。
安倍元首相の「国葬」に反対する
――世界の人たちに向けてJCJアピール
――世界の人たちに向けてJCJアピール
私たち、日本ジャーナリスト会議(略称JCJ)は第2次世界大戦後、「再び戦争のためにメディアは協力してはならない」と決意して生まれた、ジャーナリストとそれを支持する市民の組織です。
私たちはいま、安倍晋三元首相の「国葬」を日本政府が実施することに反対しています。「国葬」に法的な根拠がなく、市民に弔意を強制する行事であり、思想信条の自由など民主主義のルールに反するからです。
しかも安倍晋三元首相は、極右の反社会的団体である旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と濃密な関係にある人物でした。霊感商法などで人々を苦しめた旧統一教会。それに関係した政治家を国が多額の公費で顕彰することに、違和感を抱く人たちは数多くいます。
私たちは以下の4点を世界の人たち、ならびに世界のジャーナリストに知っていただきたく、声明をまとめました。この声明は日本外国特派員協会、国境なき記者団ならびに関係する各国在日大使館あてに送るほか、在京の日本メディアにも送付します。
- 「国葬」は、明治憲法下において天皇の勅令「国葬令」に基づき実施されてきました。敗戦後、日本国憲法成立に伴い、「国葬令」は1947年に失効しました。現在、国葬を実施することにも、その経費を全額国費から支出することにも法的な根拠はありません。「国葬」は立憲主義に反します。
- 「国葬」の最大の問題は、国民に対して特定の個人に対する弔意を事実上強制することにあります。国費でまかなうため、国民は税負担も強制されます。法的根拠があいまいなまま行われた吉田茂元首相の国葬(1967年)では、全国でサイレンが鳴らされ、娯楽番組の放送が中止されました。悪しき前例があります。
- 安倍元首相の政治は、日本国憲法を壊すことに力を注いだ約9年間でした。私たちの日本国憲法は、アジア太平洋地域で2000万人とも推計される犠牲者を出した日本の侵略戦争の反省から生まれました。同第9条は、国際紛争解決のための「戦争を放棄」し、「陸海空軍その他の戦力」の不保持と、「交戦権」の否定を定めています。この平和路線を捨てて、憲法条文の勝手な解釈によって集団的自衛権の行使を法制化し、アジアや中東で米国と一緒に「戦争ができる国」へと変容させたのが安倍元首相です。米国との「核共有」にも言及するような、危険な道を開いた政治家の遺志を「国葬」を通じて持ち上げ、継承しようとする岸田政権に反対します。
- 安倍元首相の「国葬」については、日本国民の世論も否定的です。共同通信の調査では、国葬に賛成45.1%に対し、反対は53.3%、毎日新聞調査でも賛成30%に対し反対53%。読売新聞調査では国葬実施を「評価しない」が56%を占め、「評価する」38%を上回り、NHK調査も「評価しない」が50%で、「評価する」が36%です。世論は国葬実施を支持していません。
日本ジャーナリスト会議は、「国葬」が上記のような問題をはらんでいることを世界の人々に知ってほしいと願っています。各国政府には、民主主義のルールに反した「国葬」の実情を確認し、賢明な判断をされることを訴えます。
2022年9月12日
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
We Oppose the State Funeral for Former Prime Minister
An Appeal by the JCJ to the World
An Appeal by the JCJ to the World
The Japan Congress of Journalists (JCJ) opposes the Japanese government’s decision to hold a state funeral for former Prime Minister Shinzo Abe. The JCJ was established in 1955 as an organization of journalists and citizens determined that media must never cooperate with any war effort.
The former prime minister had strong ties with the Unification Church, one of the antisocial organizations, presently known as the Family Federation for World Peace and Unification. Many citizens in Japan are strongly opposed to the idea of honoring him through the use of public money.
Listed below are four points we would like to convey to the world.
- In Japan of the past a State Funeral had been held based on “the state funeral decree” issued by the emperor. In 1947, after the defeat in World War II the “state funeral decree” was declared null and void. Today no legal basis to conduct a state funeral exists.
- The biggest problem of a state funeral is to oblige people to hold a sense of mourning for a specific individual. The people are to be forced to shoulder the tax burden as well.
- The politics by former Prime Minister Abe for nine years had been to destroy the Japanese Constitution. He abandoned the road of peace diplomacy, legalized the right of collective self-defense through arbitrary legal interpretations, and altered Japan into “a nation which can fight a war” with America in Asia and the Middle East. We oppose the Kishida administration that praises and carries on such a dangerous desire through the holding of a state funeral.
- Public opinion in Japan has been negative about a state funeral for Mr. Abe. According to the survey by Kyodo News Service, while 45.1% supported a state funeral, 53.3% were against it. The survey by The Mainichi Shimbun showed that 30% favored the state funeral while 53% said they were against it. The survey by The Yomiuri Shimbun found 56% of the respondents said it is not appropriate, exceeding the 38% who said it is appropriate. According to the NHK survey, 50% of respondents said they "do not appreciate" and 36% said they "appreciate." Public opinion does not support the implementation of a state funeral.
We sincerely hope people of the world will understand that the planned state funeral for Abe has such problems. We call on the governments of other nations to understand that the funeral violates the rules of democracy and ask them to make a wise judgement.
Sept. 12, 2022
Japan Congress of Journalists (JCJ)
2022/08/22
安倍元首相の国葬問題訴訟・住民監査請求
安倍元首相の国葬問題について、国に中止を求める訴訟と、その国葬に関して自治体の首長らが出席しないことを求める住民監査請求が始まっている。代表的な訴訟の訴状と、監査請求の請求書を掲載する。いずれも、日本国憲法下で「安倍国葬」がいかに問題なのか、が整理されてわかりやすく書かれており、問題を考える上で有益だ。原告や請求人らは、こうした声を全国に広げたいと訴えている。
国葬問題では、9日、ジャーナリストや大学教授ら231人による「岸田政権による安倍元首相の国葬強行を許さない実行委員会」が東京地裁に訴えたほか、12日にも市民による「安倍『国葬』やめろ実行委員会」が、国葬実施の閣議決定取り消しと、予算執行の差し止めを求める訴訟を横浜、さいたま両地裁に起こした。東京地裁には7月21日にも、国葬差し止め仮処分請求が出され、却下されている。
もう一方で始まったのは、首長が国葬に出席するなど、公費の支出をやめさせようとい
うもので、北海道、大阪、兵庫、京都で、安倍国葬差止の住民監査請求が行なわれた。いずれも、国葬は公権力が閣議決定だけで一方的に実施するのは、思想・良心の自由を保障する憲法19条に反しているなどと主張している。
住民監査請求は、自治体の財務会計行為について、具体的な処分行為がなくとも、相当の確実さをもって予測される場合には、請求ができるため、2020年11月8日に行なわれた国事行為「立皇嗣の礼」などに準じて知事や議会議長に案内が来て出席する蓋然性が高いことから、請求が行われた。今回は、葬儀まで日数がなく、執行されてしまうと被害回復が困難なので、勧告手続が終わるまでの間、同法242条第3項に基づく暫定的停止を求めた。監査結果が出る前に、国葬出席が行なわれると、「差止」から「支出費用の返還に変更することになっている。特に、この請求の場合、請求書に、住民が自分の住所と名前を自署して提出すれば足り、住民票などの添付書類も不要で、負担なく取り組めるとして、「請求書汎用版」を作成した。
訴状は、前田朗・東京造形大名誉教授のブログから、また住民監査請求は、佐藤博文弁護士の提供によるものです。
訴状: 安倍晋三元首相国葬差止等請求事件訴状
2022.8.19 国葬 措置請求書(別紙代理人、請求人目録なし)【公表用】.pdf (664KB)
2022.8.19【提出版】国葬 暫定的な停止勧告の申立て【請求者代表者名 略】.pdf (81KB)
2022/08/08
メディアは明確に反対を 安倍国葬Ⅲ
国葬問題について、新聞各社は、国葬が法的に根拠を持たないものであること、その決定の仕方が非民主的だったこと、安倍元首相が国葬にふさわしいのか、といった議論をしている。しかし、国葬に『反対』と明確に打ち出したのは、琉球新報だけではなかったかと思われる。JCJは、こうした問題を議論して、声明を発表した。▼戦前の遺物「国葬」にメディアは明確に反対を
安倍晋三元首相が銃撃を受け死去した。これに対し岸田文雄首相が「国葬」を実施すると閣議決定したことに、批判が強まっている。だが主要メディアの「国葬」に対する姿勢はあいまいだ。「国葬」は天皇主権の明治憲法体制の遺物であり、国民主権・民主主義とは相いれないという立場を、報道機関は明確にし、人々に伝えるべきではないか。「国葬」とは何か歴史を踏まえて検証し、国民の「知る権利」に応え、「国葬」を実施するなと主張することを強く望みたい。
「国葬」は、明治憲法下において天皇の勅令「国葬令」に基づき実施されてきた。敗戦後、日本国憲法成立に伴い、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」第1条により1947年に失効した。日本国憲法の思想信条の自由、内心の自由、政教分離の原則と相いれないからだ。
現在、国葬を行うことにも、その経費を全額国費から支出することにも法的根拠はない。政府は内閣府設置法で内閣府の所掌事務とされている「国の儀式」として閣議決定すれば可能とするが、「国の儀式」に「国葬」が含まれるという法的根拠はない。
1967年10月に吉田茂元首相の国葬が行われた。この時も当時の佐藤栄作首相が閣議決定だけで実施した。翌年の衆議院決算委員会で根拠法がないことについて質疑があった。その後議論が深まることはなく、「国葬」ではない合同葬や「国民葬」が行われてきた。それが今なぜ唐突に「国葬」なのか。
今回の「国葬」に対する主要メディアの批判は、国会で説明していないこと、故人の業績への評価が分かれていることなどに重点を置いている。安倍元首相と旧統一協会との深いつながりが明らかにされてきた今、それらも重要な問題として追及しなければならないのは当然である。
しかし何よりも、「国葬」の最大の問題は、国民に対して特定の個人に対する弔意を事実上強制することにある。国費で行うため、国民は税負担も強制されることになる。「弔意を強制することはない」と政府は言う。しかし、吉田元首相の国葬では、全国でサイレンが鳴らされ、娯楽番組の放送が中止された。
近年でも「日の丸・君が代」を法制化した際、国民には強制しないと政府が説明したにもかかわらず、学校現場などで強制された例は数多い。教員らの処分が横行した。それと同様に、「国葬」への抗議行動が監視や取り締まりの対象になる恐れがないと言えるだろうか。また今後、「国葬」に類する政治的行事が乱発される危険はないだろうか。
「国葬」強行は、戦前回帰、異論封殺、国民総動員につながりかねないという危機感を持って、報道機関は取材に当たってほしい。戦後ジャーナリズムの原点に立ち返って「国葬」にきっぱり反対の論陣を張ることを呼びかける。
以上
2022年8月8日
日本ジャーナリスト会議(JCJ)