2021/05/24
「施策チェック」への非難に抗議
新聞労連は21日、新型コロナウイルス禍のワクチン接種トラブルについて報道機関各社が取材した方法について、岸信夫防衛相がした非難に抗議する声明を発表しました。

公権力によるメディアの取材手法への非難に抗議する

                                     日本新聞労働組合連合


 新型コロナウイルス禍を巡り、全国各地でワクチン接種の状況、予約に関するトラブルなどについて報道機関各社が取材を行っています。感染が終息しない状況の中、国民の命を守る上で重要なものです。

 その一環として、毎日新聞や朝日新聞出版の「AERA dot. (アエラドット)」など複数のメディアが、政府が東京、大阪に設置し、自衛隊が運営する大規模接種センターの予約システムの運用について、重大な欠陥があることを報じました。防衛省のサイトから架空の市町村コードや接種券番号でも予約できるというシステムの脆弱性を実際に試した上で、防衛省やシステムを委託された会社に取材し「実際の接種券に記載されていない架空の番号でも予約が可能になっている」と指摘しました。岸信夫防衛相は予約システムを早急に改修する考えを示した上で、取材手法を非難し、防衛省から当該メディアに抗議の申し入れがなされました。メディア側は「情報に基づいて真偽を確かめるために不可欠な行為」「公益性の高さから報道する必要があると判断」などと説明しています。

 メディア、ジャーナリズムの重要な社会的役割は、行政の監視や施策のチェックです。今回の件を報じたメディアは、システムの脆弱性の検証後、すぐにキャンセルした過程を報道し、架空予約をしないよう防衛省のコメントも掲載しています。重大な不正行為が行われる可能性や重大な欠陥を見つけた時、独自に事実を確認し、速やかに報道するのは、メディアに求められるものです。ジャーナリズムの倫理に基づいた行動と言えます。

 日々メディアは、権力側の発表報道をうのみにせず、情報の真偽を確かめ、権力の意向に左右されない取材と報道を重ねることに努めています。国民にとって不利益になりうる施策の欠陥を指摘された行政機関や行政機関の長が、メディアが取り得る取材手法を一方的に非難することは、自由な言論活動や公権力に対する監視を威圧し、否定することにつながりかねません。取材手法の是非を巡っては、メディアが絶えず自発的に検証し、議論すべきもので、公権力から制されるものではありません。また、今回のように行政機関が、施策の欠陥を指摘したメディアの取材手法を非難することは、当該メディアのみならず、取材や報道の萎縮を招きかねず、容認できません。

 公権力は、取材や報道の否定・圧力が、メディアや市民の言論活動の阻害につながりかねないことを自覚し、厳に慎むべきです。今回、公権力である防衛省からのワクチン予約の脆弱性を指摘するためにメディアが実施した取材手法への非難について、強く抗議するとともに、防衛省のみならず政府や行政機関など公権力は、同様の行為を繰り返さないよう、強く求めます。
2025/5/16
改憲手続法採決に反対
 コロナ禍、日米会談、オリンピック、デジタル法など、ニュースに追われる陰で、憲法審査会で改憲手続法を強行してしまおうという策動が動いている。この問題に取り組んできた法律家6団体が緊急に声明をまとめ発表しました。「手続法なら仕方がない」などという問題ではありません。憲法の基本原理に関わる問題です。

この法律家の声明などを尻目に、改憲手続き法は、5月11日、衆院を通過、参議院に送られた。いい加減な議論で押し切られた衆院と違って、参議院ではきちんとした論議がされるのか? 法律家6団体は衆院塚後に、あらためて声明を発表した。

「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」の
       衆議院憲法審査会における採決に強く抗議し廃案を求める法律家団体の声明

2021年5月10日

改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター   共同代表理事 宮里 邦雄
自由法曹団            団長 吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 上野  格
日本国際法律家協会        会長 大熊 政一
日本反核法律家協会        会長 大久保賢一
日本民主法律家協会       理事長 新倉  修

1 衆議院憲法審査会での採決に強く抗議する

 本年5月6日、衆議院憲法審査会において、日本国憲法の改正手続きに関する法律の一部を改正する法律案」(以下「7項目改正案」という。)が、立憲民主党が提出した改正法施行後3年後を目途に、広告規制、資金規制、インターネット規制などの検討と措置を講ずるという附則をつける修正案(以下「修正案」という。)とともに、賛成多数で可決された(なお、共産党は、原案修正案のいずれも反対、日本維新の会は修正案に反対)。これにより、修正を施された7項目改正案(以下「7項目修正改正案」という。)は、衆議院本会 議に送られることとなった。
改憲問題対策法律家6団体連絡会は、これまで7項目改正案に対して重大な問題点があると指摘して採決に反対してきたが、7項目修正改正案についても、問題は何ら解決されていない欠陥法案のままである。私たちは、明文改憲への途を開くだけの7項目修正改正案の衆議院憲法審査会での採決に強く抗議し、7項目修正改正案の廃案を求めるものである。

2 7項目修正改正案は根本的な問題が何一つ解決されていない欠陥法案である

7項目改正案とは、2016年に累次にわたり改正された公職選挙法(名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰延投票、投票所への同伴)の7項目にそろえて改憲手続法を改正するという法案である。
7項目修正改正案の問題点を要約するならば、第1に、憲法改正国民投票(憲法96条)は、国民の憲法改正権の具体的行使であり、最高法規としての憲法の正当性を確保する重要な手段であることから、公選法「並び」でよいとする乱暴な議論は憲法上許されないこと。第2に、7項目の中には、国民投票環境の後退を招く項目があり、さらに、このままでは国民投票ができない国民が出るなど、違憲の疑いのある欠陥法であること。第3に、そもそも改憲手続法は、2007年5月、第1次安倍政権において強行採決により成立した時から数多くの問題が未解決のまま10数年にわたり先送りとされてきた。とりわけ運動資金の規制がなく、CM規制が不十分で、最低投票率の定めがないなど、国民投票の結果の公正を担保しないという根本的致命的な問題点がある。7項目修正改正案は、これらの「国民投票を金で買う」などの根本的問題が何ひとつ解決されていない欠陥法案である
(本年4月20日付改憲問題対策法律家6団体連絡会緊急声明参照)。
国民の投票機会が十分に保障されず、結果の公正が担保されていない欠陥修正改正法案を急ぎ成立させる必要性も正当性も存在しないことは明らかである。

3 7項目改正案は、自民党の4項目改憲案提示のための道具に過ぎないこと

2017年5月に、当時の安倍首相が2020年までに改憲を成し遂げると宣言し、2018年3月に自民党は4項目の改憲案(素案)を取りまとめ、同年6月に、公選法並びの7項目改正案が提出された。もともと7項目改正案は、安倍自民党改憲を進める便法として提出されたものである。そのことは、本年5月3日、菅首相が、憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の創設などを盛り込んだ自民党の改憲4項目をたたき台にして、「それを基に議論を進めてもらう」と述べるとともに、7項目改正案について「憲法改正議論の最初の一歩として成立を目指さなければならない」としていることからも明らかである。
国民は、今、憲法改正議論など望んでいない。政府と国会が、何をおいても全力で取り組むべきことは、新型コロナ対策であり、市民の命と生活を守る施策である。コロナ禍に乗じて自民党の改憲4項目を提示することなど論外である。憲法審査会を仮に開くとしても、そこで議論されるべきは、安倍・菅政権によって蹂躙されてきた憲法状況の調査と審査であり、改憲手続法の抜本的改正の議論のはずだ。立憲主義も民主主義も理解せず、新型コロナ感染症対策もままならない現政府・与党に、コロナを口実にした改憲を言う資格はない。

4 参議院は、「良識の府」として徹底的に審議を尽くせ

 7項目修正改正案は、ただちに廃案とされるべきものであるが、5月11日の衆議院本会議で採決が強行されれば、審議の場は参議院に移ることになる。
 日本国憲法で二院制が採用された意義は、「数の政治」に対する「理の政治」を実現し、審議や立法権限の行使を慎重かつ適切なものにすることにある。前述のとおり、7項目修正改正案には、憲法改正国民投票の機会を十分に保障していない問題や、CM規制、最低投票率、ネット規制、運動資金の規制の問題など、主権者意思の適切かつ公平な表明を阻害しかねない根本的欠陥があるにも関わらず、衆議院での審議は極めて不十分であった。参議院は、いまこそ、「良識の府」としての役割を自覚し、これらの問題点につき、徹底的な審議を尽くすべきである。
 14年前の2007年5月11日、第一次安倍政権のもとで強行された改憲手続法に対して、有料広告の規制、最低投票率、公務員と教育者の地位利用による国民投票運動などについて検討や措置を求める18項目の附帯決議を突きつけたのは、ほかならぬ参議院の憲法調査特別委員会であった。改正案の送付を受けた参議院は、自らが附帯決議で突きつけた問題を含む改憲手続法と本改正案をめぐるすべての問題について、慎重かつ全面的な審議を行わなければならない。
 また、制定の際には参考人陳述や公聴会で80名を超える専門家や市民の意見を聴取し、2014年の改正の際にも参考人陳述で16名の専門家の意見を聴取しているにもかかわらず、衆議院は本改正案の審議に際して意見聴取をまったく行っていない。専門家や市民の意見を幅広く聴取し、審議に反映させることは参議院の責務と言わねばならない。
 良識の府である参議院には、徹底した審議によって問題の解明と解決にあたることが求められているのであり、「通常国会で成立させる」などという国民無視・国会無視の確認に縛られたアリバイ的な「審議」に堕することは、憲法と国民に対する冒とくであるばかりか、参議院の存在意味を失わせる自殺行為である。
 参議院はかかる愚挙を断じて行ってはならない。
                                    以上


「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」の採決に反対し、
                           改憲手続法抜本改正の慎重審議を求める声明

2021年4月20日

                  改憲問題対策法律家6団体連絡会
                    社会文化法律センター共同代表理事   宮里邦雄
                    自由法曹団団長            吉田健一
                    青年法律家協会弁護士学者合同部会議長 上野格
                    日本国際法律家協会会長        大熊政一
                    日本反核法律家協会会長        大久保賢一
                    日本民主法律家協会理事長       新倉修

はじめに

 4月15日、衆議院憲法審査会において、「日本国憲法の改正手続きに関する法律の一部を改正する法律案」(いわゆる公選法並びの7項目改正案)(以下「7項目改正案」という。)の審議が行われた。7項目改正案は、2016年に累次にわたり改正された公職選挙法(名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰延投票、投票所への同伴)の7項目にそろえて改憲手続法を改正するという法案である。
 与党議員らは、審議は尽くされたなどとして、速やかな採決を求めている。これに対し、立憲民主党、共産党の委員からは、7項目改正案は、期日前投票時間の短縮や、繰延投票期日の告示期限が5日前から2日前までに短縮されているなど投票環境を後退させるものが含まれていること、憲法改正国民投票は、国民が国の根本規範を決める憲法制定権力の行使であり、本当に公選法並びでいいのかという基本的な問題があること、7項目改正案は、たとえば、洋上投票、在外投票、共通投票所、郵便投票の問題など、国民に投票の機会を十分に保障するという点で問題があり、また、CM規制、資金の上限規制、最低投票率の問題など、憲法改正国民投票の公正を保障する議論がなされていないのであるから、審議は不十分であり、採決には程遠いという意見が相次いだ。

 改憲問題対策法律家6団体連絡会は、以下の理由により、7項目改正案の採決には強く反対する。

1 憲法改正国民投票(憲法96条)は、国民の憲法改正権の具体的行使であり、最高法規として の憲法の正当性を確保する重要な手段である。参政権(憲法15条1項)の行使である選挙の投票 と同列に扱えば済む、公選法「並び」でよいとするような乱暴な議論は憲法上許されない。

 2016年の公職選挙法の改正は、選挙を専門とする委員会で審議され、「憲法改正国民投票の投票環境はどうあるべきか」との観点での議論は全くなされていない。
 そもそも、憲法96条の憲法改正国民投票は、国民の憲法改正権の具体的行使であり、最高法規としての憲法の正当性を確保する重要な手段である。狭義の参政権である選挙の投票(憲法15条1項)とすべて同列に扱えば足りるとする議論は性質上許されない。ことは国の根本規範である憲法改正にかかわる問題であり、「公選法並び」などという本質を見誤った議論で法案採決を急ぐことは、国民から付託された憲法審査会の任務を懈怠し、その権威を自ら汚すものというべきである。

2 7項目改正案は、国民投票環境の後退を招き、また、そのままでは国民投票ができない国民が出 るなどの欠陥があること

 法案提出者によれば、7項目改正案の目的は、2016年の公選法の改正法と並べることで「投票環境向上のための法整備」を行うこととされる。しかし、7項目改正案の審議は、始まったばかりであり、7項目の内容には以下に例をあげるとおり、投票環境の後退を招き、あるいは国民投票の機会が保障されない国民がでてくるなどの重大な問題がある。憲法改正国民投票は、上記の性質上、できる限り多くの国民に投票の機会が保障されなければならないし、投票環境の後退を招くことは許されない。
 (1)法案自体が、投票環境を後退させるもの
 繰延投票の告示期日の短縮や、期日前投票の弾力的運用は、それ自体、投票環境を後退させるものである。「投票環境向上のための法整備」という立法目的にも明確に違反する。
 (2)投票できない国民が出てくるもの
 洋上投票制度や在外投票制度は、並びの改正によって投票機会の一部については向上が図られるものの、結局、このままでは国民投票ができない国民が出てくるため、国民投票は実施できない。一定の国民について国民投票の機会を保障しないままの法案は、憲法違反の疑いすらある。この不備を修正しないままで7項目改正案を急ぎ成立させる必要性も合理性もないことは明らかである。
 (3)公選法の改正時には、予期できなかった事情や、公選法改選時の附則や附帯決議で必要な措置の検討などが課されている事項で投票環境の後退のおそれがあるもの
 例えば「共通投票所」の設置は、「投票所の集約合理化」=削減をもたらしているという実体がある。「共通投票所」を設けたことによって本当に「投票環境が向上」したのか、「利便性が向上」したのか、総括が必要である。また、在外投票についても、在外投票人名簿の登録率は減少している(2009年は9.54%に対して2019年は7.14%)ことを踏まえれば、その原因を解明した上で、その対策を施した改正が必要である。

 また、2016年改正後、「投票環境研究会」は郵便投票の対象者を現行の要介護5から要介護3の者に拡大することを提起している。「利便性の向上」というのであれば、主権者である国民の意思が広く適切に国民投票に反映されることが必要であり、とりわけ新型コロナの感染が拡大する中「郵便投票制度」の拡充は投票機会を保障するうえで喫緊の課題の一つである。
 以上の事項については、事情変更により新たな改正や見直しの検討が必要であり、2016年の公選法改正並びの改正を行うだけでは、「投票環境の向上」にはならないか、むしろ後退させる危険性がある。これらの問題を無視して7項目改正案を成立させることは、国会議員としての怠慢以外の何ものでもない。

3 憲法改正国民投票の結果の公正を担保する議論がなされていないこと

 日本弁護士連合会は、2009年11月18日付け「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」において、①投票方式及び発議方式、②公務員・教育者に対する運動規制、③組織的多数人買収・利害誘導罪の設置、④国民に対する情報提供(広報協議会・公費によるテレビ、ラジオ、新聞の利用・有料意見広告放送のあり方)、⑤発議後国民投票までの期間、⑥最低投票率と「過半数」、⑦国民投票無効訴訟、⑧国会法の改正部分という8項目の見直しを求めている。とりわけ、(ⅰ)ラジオ・テレビと並びインターネットの有料広告の問題は、国民投票の公正を担保するうえで議論を避けては通れない本質的な問題である。また、(ⅱ)運動の主体についても、企業(外国企業を含む)や外国政府などが、費用の規制もなく完全に自由に国民投票運動ができるとする法制に問題がないか、金で改憲を買う問題がないかについての議論が必須である。
 7項目改正案は、以上のような国民投票の公正を担保し、投票結果に正しく国民の意思が反映されるための措置については全く考慮されていない欠陥改正法案である。結果の公正が保障されない国民投票法のもとで、国民投票は実施できない以上、7項目改正案を急いで成立させる必要性も合理性も全くないことは明らかである。

4 憲法審査会における審査の在り方

 憲法審査会(前身の調査会も含めて)の審議は、政局を離れ、与野党の立場を越えて合意(コンセンサス)に基づき進めるというのがこれまでの慣例である。憲法審査会では、多数派による強行採決は許されない。また、国民の意思とかけ離れて議論することももとより許されないはずである。
 2017年5月に、当時の安倍首相が2020年までに改憲を成し遂げると宣言し、2018年3月に、自民党4項目の改憲案(素案)を取りまとめ、その後2018年6月に、公選法並びの7項目改正案与党らが提出している。同法案が、安倍改憲のために急ぎ間に合わせで作られたものであることは、経過から明らかである。7項目改正案を成立させることは、自民党改憲案が憲法審査会に提示される道を開く環境を整えるだけである。
 今、国民は憲法改正議論を必要と考えていない。7項目改正案を急ぎ成立させることは、国民の意思ではない。
                                       以上
2021/04/22
今夏の東京オリンピック・パラリンピックは開催すべきでない
世界平和アピール七人委員会は、4月20日、「今夏の東京オリンピック・パラリンピックは開催すべきでない」とするアピールを発表しました。同委員会の一四六番目のアピールです。以下全文です。

今夏の東京オリンピック・パラリンピックは開催すべきでない

世界平和アピール七人委員会                
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進
2021年4月20日
 開会式まで100日以内になり、オリンピック・パラリンピックの日本代表選手全員の最終的な決定をすべき時期となり、聖火リレーも始まった。ところが代表選考ができていない種目では、代表を過去の成績で決めるという異例のことが起きている。聖火リレーでは公道でない場所で関係者だけで形ばかりを行ったことにする府県が出始めている。
 これは、新型コロナウイルス感染症COVID-19とその変異種の感染まん延が急速に広がっているためである。政府は、「まん延防止等重点措置」を次々に指定しているが、感染拡大に歯止めがかかっていない。政府が委嘱した専門家が科学的データに基づいて第4波到来とみているのに、政府は科学の軽視・無視を繰り返している。ワクチン接種は遅れていて、変異種に対する効果も解明中で結論に達していない。検査体制も広げられないままである。
 国内の医療体制は、すでに限界を超えた地域がではじめており、必要不可欠な病床・医療関係者の確保もできていない。世界の感染状況を見ても、ワクチン接種は進んでいるものの、依然として各地で感染拡大が続いていて収束に向かっていない。
 1万5000人という選手、その他審判、役員、スポンサーが世界の感染まん延地からまん延状態が急速に拡大している日本に集まり、非常に多くの大会ボランティアを動員する渦中において、市民と接触させないでオリンピック・パラリンピックを安全に行える実効案は何ら示されていない。
 オリンピックを開催するとすれば多くの医療関係の人員や資源をさかなくてはならないが、それが国内の医療従事者のいっそうの過重負担を招くことは明らかである。そうなれば人命を犠牲にした開催となる可能性が十分にあるが、それは言うまでもなく平和の祭典であるはずのオリンピック・パラリンピック開催の趣旨に合致しない。
 リスクが否定できない以上、安全の側にたって、今夏の東京オリンピック・パラリンピックを行わないという決定を速やかに下すのが当然である。
                
2021/04/22
ミャンマー取材の記者を釈放せよ!
 日本ジャーナリスト会議(JCJ)は4月21日、ミャンマー国軍が北角裕樹記者を拘束したことに抗議し、釈放を求める声明を発表しました。日本政府の断固たる措置を求めています。

ミャンマー軍の日本人記者拘束に抗議し、断固たる対応を日本政府に求める

 ミャンマーで取材中の北角裕樹氏が4月18日夜、軍・治安当局によって逮捕・拘束された。
 国軍による残虐な弾圧とそれに対する民衆の不屈の抵抗を報道してきた北角氏に対し、当局は「偽情報を流布した」という根拠のない罪名をかぶせて氏をインセイン刑務所に監禁した。この行為は、武力クーデターを起こしたミャンマー軍が真実の報道をどれほど恐れているかを示したものである。氏は日本経済新聞社を退社後フリー・ジャーナリストとしてミャンマーの取材を行なってきた。2月末にも一時拘束されたがその後もSNSを通じて「国軍側の悪辣さ」を発信し続けてきた。

 ユネスコによれば2月1日のクーデター後、71人のジャーナリストが不法に逮捕され、半数以上がいまだに拘束されたままとなっている。ドイツの通信社記者は3月に13日間拘留の後、国外退去となった。だが訴追・有罪となれば禁錮3年となる可能性もある。
 国内のメディアに対する免許取り消しや記者拘束は今も続く。主要な新聞は3月17日までに発行が止まった。ネットによる情報も遮断されたが、軍による過酷な弾圧を記録した動画はすでに世界中に流出した。国民が職場を放棄する不服従運動のなか、殺された市民は18日までに737人にのぼっている。
 ミャンマー軍は2007年9月にも取材中の映像ジャーナリスト長井健司氏(50)を至近距離から銃撃して殺害している。
 こうした不法行為はミャンマーの内部問題ではなく、人権と民主主義、報道の自由が蹂躙されるという点で明白な国際問題となっている。日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、ミャンマーの国軍・治安当局が行った北角氏逮捕に強く抗議するとともに、氏を直ちに釈放するよう求めるものである。

 菅義偉首相は19日、北角さん拘束問題に対して「現地大使館で全力で事実関係を確認中だ。邦人保護には万全を尽くす」と、通り一遍の発言を行なった。ミャンマー国軍とは政治的にも経済的にもつながりの深い日本がいつまでも傍観者でいてよいはずはない。ミャンマーの民主化を逆行させないためにも、北角氏の生命の安全のためにも、日本政府がただちに国軍に対する断固とした行動を開始するよう要求する。
         2021年4月21日
                         日本ジャーナリスト会議
2021/05/16
デジタル法についての抗議声明
 デジタル監視法案は、あまり議論がないままに衆院を通過し、5月12日、参院でも可決、成立した。「デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク」は、4月6日、抜本的改正を求める緊急声明につづいて、「デジタル監視法案の参議院本会議の可決・成立に強く抗議する」との抗議声明を発表した。


デジタル監視法案の参議院本会議の可決・成立に強く抗議する
法律家・法律家団体の抗議声明


2021年5月12日
デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク
共謀罪対策弁護団 共同代表 海渡雄一
             秘密保護法対策弁護団 共同代表 海渡雄一・中谷雄二・南 典男
             社会文化法律センター 共同代表理事 宮里邦雄
             自由法曹団 団長 吉田健一
             青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 上野 格
             日本国際法律家協会 会長 大熊政一
             日本反核法律家協会 会長 大久保賢一
             日本民主法律家協会 理事長 新倉 修
             三宅 弘 元総務省行政機関等個人情報保護法制研究会委員 弁護士
             平岡秀夫 元法務大臣・元内閣官房国家戦略室室長 弁護士
             青井未帆 学習院大学教授
             池本誠司 元消費者庁参与 弁護士
             右崎正博 獨協大学名誉教授
             白藤博行 専修大学教授
             晴山一穂 専修大学名誉教授

1 デジタル改革関連法(デジタル監視法)の成立に強く抗議する
本日、参議院本会議において、デジタル改革関連6法案(デジタル監視法案)が、自民党、公明党、維新の会、国民民主党の       賛成多数により可決・成立した。
デジタル監視法案は、そもそも1000頁を超える64本の膨大な束ね法案であり、しかも、その法案の内容が、本年2月9日に国会 に提出されるまで、政府内部で秘匿されて一切不明であった。法案提出後も資料の誤りが多数発覚するなど不備が続いたが、衆・参両院の審議時間は、あわせて50数時間に過ぎず、新型コロナ感染症拡大による緊急事態宣言のもとで苦しむ市民が、国会審議により、法案の全体像や問題点を十分に理解しその採否を判断する暇さえ与えなかった。
かかる法案提出の仕方や審議経過は、国権の最高機関で唯一の立法機関とされる国会(憲法41条)のはなはだしい軽視であり、民主主義の原理に悖るものであって、強く批判されなければならない。
さらに、デジタル監視法案の内容自体も、個人情報の保護を後退させ、憲法の保障するプライバシー権(憲法13条)を侵害し、三権分立や法律による行政の原理に違反して官邸によるデジタル独裁にも繋がりかねない危険があることから、我々法律家は、当初よりこれに反対してきた。
アジャイル型組織としてデジタル庁を通じての内閣総理大臣によるデジタル情報の国家独占管理体制となる危険や、自己情報コントロール権の確立には程遠い不十分な内容であることは、以下のとおり、この間の国会審議でも明らかとなっており、我々は、デジタル監視法の成立に、強く抗議する。

2 情報コントロール権が明記されず、個人情報保護を後退させる危険があること
人は監視されていると感じると、自らの価値観や信念に基づいて自律的に判断し、自由に行動して情報を収集し、表現することが困難になる。すなわち、プライバシー権(憲法13条)は、個人の尊重にとって不可欠な私的領域における人格的自律を実現するとともに、表現の自由の不可欠な前提条件となっており、立憲民主主義の維持・発展にも寄与する極めて重要な人権である。高度な情報化社会でデジタル化を推進するためには、プライバシー権の保障を徹底し、自己情報コントロール権を確立し、個人情報の取得、保有、利用、提供、廃棄のすべてに情報主体である個人の同意原則を徹底することが不可欠である。
今回成立したデジタル監視法は、情報コントロール権を明記せず、個人情報保護を後退させて、市民のプライバシー権を侵害し、国家による監視を強化し、表現の自由を萎縮させて民主主義を危機に陥れる危険のある欠陥法である。
共通仕様により、国の諸機関や地方自治体からデジタル庁に集積された膨大な個人情報が、権利主体の同意なく、企業や外国政府を含む第三者に提供され、目的外使用に供される危険がある。我々が特に危惧するのは、警察がデジタル庁・内閣情報調査室を経由して、内閣総理大臣としての権限でアクセスすることができ、パソコン操作によるわずかな手続のみで、自由に個人情報を取り出せる仕組みができるのではないかということだ。
改正個人情報保護法69条(利用及び提供の制限)の規定によれば、必要性、相当性があれば、個人の同意なく情報の利用・提供が可能である。この条文は改正前と同じであるから、我々の危惧は杞憂であると政府は答弁する。しかし、政府は、相当の理由や特別の理由ありとする個人データ共同利用について、個人情報保護法の要件を限定する野党修正案にすら応じなかった。個人情報の利用・提供が、厳格に制限される保証は全くない。また、すべての情報が共通仕様化されて一元管理が可能となる前と後では、同じ条項の意味合いは大きく変わるであろう。
参議院審議の中で、与党側が推薦した参考人宍戸常寿東大教授は、「データの利活用によって監視に使われやすい仕組みには危惧がある。公共の場所での顔認証などは全面的に禁止するなどの措置が望ましい」との意見を述べている。しかし、センシティブ情報の保有を禁止するなどの措置は取られておらず、個人の同意なく政府や警察が取得できる個人情報の種類や範囲を限定する規定も存在せず、むしろ、保護の対象となる個人情報を、「容易に」特定の個人を識別できるとする定義に統一改訂することにより後退させている。
政府・警察による違法な個人情報の収集・保有、プロファイリングや利用などの怖れはないと、政府は答弁しているが、これまでも、内閣情報調査室が文科事務次官であった前川喜平さんや望月衣塑子記者らの行動を監視していたことが明らかになっている。今後、市民や法律家がプライバシー権の侵害が本当にないか不断に監視し、後述する独立の監視機関の設置を求めていくことが必要である。

3 地方自治体による個人情報保護の為の取り組みを後退させてはならない
デジタル監視法は、これまでの分権的な個人情報保護システムの在り方を根本から転換し、国による統一的な規制を行おうとするものである。このような制度は、各公共団体において、住民との合意のもとで構築してきた独自の個人情報保護の在り方を破壊し、公共団体による先進的な個人情報保護制度の構築を後退させるものになりかねない。
デジタル担当大臣によって、「リセットする」と曖昧に答弁された個人情報保護条例の共通ルール化について、政府は、「法令委任事務以外は、別途アドオンして、必要に応じて標準準拠システムと情報連携が可能となる標準仕様とする。それでも独自サービスが提供できない場合、標準準拠システムの必要最小限度のカスタマイズはやむを得ないが、できるだけそのようなカスタマイズがなくても独自サービス提供可能となる対応をしたい。」と答弁された。しかし、自治体の独自の規制を維持するための財政的な裏付けも示されていない。
今後、個人情報保護委員会を通じて、自治体を指導監督するとされたが、自治体において収集した個人情報をどのように管理するかは、自治事務の一環であり、国がこれを一方的に支配・統合することは、地方自治の本旨(憲法92条)、条例制定権(憲法94条)に違反するものである。委員会による指導監督が自治体の優れた個人情報保護政策を抑制することになれば、条例制定権を侵害するものとして、厳しく弾劾されなければならない。

4 強大な権限を持つデジタル庁は独裁機関の危険がある
デジタル庁設置法によれば、デジタル庁は内閣直属の組織とされ、その長は内閣総理大臣である。このほかにデジタル大臣や特別職のデジタル監等を置くとされている。
しかし、最初からこのような組織が構想されていたわけではない。昨年10月1日の朝日新聞記事によれば、デジタル庁の位置づけは①復興庁のような内閣直轄②内閣官房③内閣府④内閣官房に司令塔部分、内閣府にシステム構築部分を並立、の4案を検討していたことが明らかになっている (2020年10月1日朝日新聞記事「首相の目玉「デジタル庁」の準備室発足 調整事項は山積」より)。トップを役人出身の長官にするか、大臣を置くかどうかすらもが議論されていたのである。
また、政府答弁によれば、デジタル庁は、発足時は500人程度で、非常勤職員が128人、その多くは民間企業からの出向だとされる。しかも、庁内には、局も課も置かれないアジャイル型組織とされる。必要に応じて活動内容を迅速に変えていくことができるとされるが、行政組織としてきわめて特殊で不透明な組織構成だ。構成員がトップと直接的につながるアジャイル型組織は、内閣総理大臣によるデジタル情報の国家独占管理体制につながる危険性については、国会審議によっても払拭されなかった。
また、このような体制で、本当に情報の漏洩が防げるのか、行政と巨大IT企業の癒着によって行政が歪められるおそれはないのか、国会審議によって多くの疑問が解消されたとは到底言えない。
デジタル庁は内閣府ではなく、内閣に置かれ、トップは総理大臣である。そして、デジタル大臣は、特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、勧告することができ、行政機関は、当該勧告を十分に尊重しなければならないとされている。これは時限組織である復興庁にしかなかった規定であり、全省庁の中で抜きんでた権限が与えられている。デジタル庁が独裁機関化する危険性は国会審議でも払しょくされなかった。
先にあげた準備段階の議論を見る限り、デジタル庁と内閣総理大臣に、かかる異質で強大な権限を与える必要性は存在せず、普通の組織にし、独裁機関化させないためには、金融庁や消費者庁などと同様に、内閣ではなく内閣府(の外局)に置き、デジタル庁の長は内閣総理大臣ではなく特命担当大臣であるデジタル大臣とし、デジタル大臣の勧告についての尊重義務の規定はなくすよう、改正を求めていくべきである。

5 個人情報保護委員会の権限と組織の強化が不可欠である
このような強大な権限を持つデジタル庁の創設によって、プライバシー侵害が現実のものとならないようにするために、民間だけではなく、行政機関や地方自治体も一元的に管理することとなった個人情報保護委員会の組織を、少なくとも公正取引委員会並みに、常時800名程度の職員と各地方事務所を有する組織に拡大強化することが必要である。
権限についても抜本的に強化されなければならない。まずは犯罪捜査と外交防衛分野について、どのような個人情報ファイルが作られているか、個人情報保護委員会に事前に通知する必要がないとする規定を改めることが必要である。
附帯決議によれば、相当の理由や特別の理由による個人データ共同利用ついては、個人情報保護委員会が行政機関を監督するとされているが、個人情報保護委員会の権限が勧告に留まるならば、適正な監督は不可能である。個人情報保護委員会による指導監督は、地方警察をも含む警察情報全般に及ぶことになる。それゆえ、特定有害活動(スパイ行為等)や共謀罪捜査の名の下に行われる個人情報の収集やプロファイリングに対しても、不正を糺す徹底した指導監督がなされるべきである。指導監督が勧告権限の行使を持ってしては不十分であることが明らかとなれば、個人情報保護法の更なる改正による個人情報保護委員会における行政機関に対する立入調査権や命令権限が認められるべきなのである。
個人情報保護委員会の国会に対する年次報告も、従来のものでは全く不十分である。すべての行政機関、警察、地方自治体を対象とする厳格適正な調査とその結果の詳細な報告が、国会に対してなされる必要がある。
6 情報機関の監督強化のための新たな機関の設立が必要である
アメリカには、特定秘密の指定を是正する複数のシステムが機能しており、いったん特定秘密に指定された情報の多くが、一般に公開されている。また、ドイツやオランダには、情報機関の集めた情報を見て、不適切な情報が秘密指定されていればこれを公開させ、あるいは、誤った個人情報が収集されていればこれを訂正させる権限を持ったさまざまな国家機関が活動している。
わが国においては、特定秘密保護法に関連して設立された政府・国会の機関は十分機能しているとはいえない。国家公安委員会と地方公安委員会の監督は、公安警察活動に対しては機能していない。内閣情報調査室、公安調査庁や自衛隊情報保全隊の活動についての監視システムは存在しない。日弁連などは、これまでも、情報機関(日本には CIA のような中央情報機関はまだないが、公安警察、自衛隊の情報保全隊、法務省の公安調査庁、内閣情報調査室などの情報機関がある。)の活動、特定秘密指定などについて、政府から独立した監視機関を設立する必要があることを提唱してきた。公安警察や自衛隊情報保全隊などの情報機関の活動については、法律により厳格な制限を定め、また個人情報保護委員会とは別個に、独立した第三者機関による監督が必要である。この機関が、職権で、特定秘密や情報機関の集めた情報、デジタル庁に集約された情報等の中身まで見て、是正の勧告や命令までできる機関であることが必要である。

最後に
今回成立してしまったデジタル監視法は、以上のとおり、日本の民主主義と人権保障の未来を大きく左右する法律である。デジタル独占監視体制となっていないか、個人情報保護委員会の活動が適切に行われているかなど、市民と法律家の監視を強め、必要な法改正を要求し、必要な改正がなされないときは、法律の廃止を求めていく粘り強い運動が重要である。法律家と市民の協力により、政府によるデータの恣意的濫用を許さず、引き続き自己情報コントロール権の確立を要求し、この法律をデジタル「監視法」にさせない運動を継続していく決意を述べて、抗議声明の結びとする。
以上







デジタル監視法案の衆議院本会議採決に強く抗議するとともに
   参議院での慎重審議と抜本的修正を求める法律家・法律家団体の緊急声明
              2021年4月6日


                        デジタル監視法案に反対する法律家ネットワーク

 本日、衆議院本会議において、デジタル改革関連5法案(デジタル監視法案)が、自民党、公明党などの賛成多数で採決された。私たちは、個人情報の保護、プライバシー権の保障を徹底し、国家による市民監視を許さない立場から、デジタル監視法案に断固として反対するものである。今回の採決は、市民の反対や慎重審議を求める多くの声を完全に無視する暴挙であり、強く抗議する。

1 拙速な審議と採決に強く抗議する

 デジタル関連5法案は63本の束ね法案からなるにもかかわらず、審議時間はわずか27時間であり、圧倒的に審議が足りていない。法案提出後に資料の誤りが多数発覚し、国会への報告も遅れるなど手続き的にも不備があった。憲法13条(個人の尊重、プライバシーの権利)、同92条、同94条(地方自治)、国家行政組織上の問題など、基本的人権と民主主義の基盤に関わる重要な問題が山積みであり、それが28項目にも及ぶ附帯決議に象徴されている。
 政府は、月内の成立を目指すとされているが言語道断である。参議院における審議は、衆議院で審議が尽くされていないデジタル監視法案の数多の問題点について、国民の疑問に答えるためにも、ひとつひとつ十分な審議を慎重に尽くし、特に以下に述べる重大事項について抜本的な修正を施すことを強く求める。与党らがこれらの抜本的修正に応じない限り法案は、廃案にすべきである。

2 個人情報の保護・プライバシー権(憲法13条)と知る権利(憲法21条)の保障が不可欠である

 法案は、個人情報の利活用を優先し、個人情報の保護を後退させるものである。
 法案には、自己情報コントロール権を明記するともに、EU一般データ保護規則(GDPR)に準拠して個人情報の取得、保有、利用、提供のすべてに情報の主体である個人の同意原則を徹底保障することが必要である。目的外利用、第三者提供について同意を不要とする例外規定(整備法による改正後の個人情報保護法69条2項2号、3号及び4号)の見直しは必須である。インターネット、監視カメラ、顔認証システム、GPSシステム等により大量の個人情報が集積される現状において、公権力が個人情報を収集、検索、利用するには、その範囲を必要最小限にするとともに、個別に法的権限を明記し要件を厳格に定める法整備が不可欠である。
 また、自己のいかなる情報が公権力により収集され利用されているのかについて市民の知る権利が保障されなければならない。行政機関個人情報保護法10条2項1号2号の改正をはじめとして情報公開制度の実効性を高めるとともに、公文書管理のさらなる徹底を図ることが、デジタル化推進の前提である。森友加計学園や南スーダンPKO日報問題等々の教訓から、公文書管理と情報公開制度の充実が、デジタル化推進の本来の目的の一つであったにも関わらず、法案はこの点について何も触れていない。
 さらに、法案は、個人情報保護委員会に監督を一元的に委ねているが、政府から独立した機関ではなく、個人情報については特定個人情報に関して認められている省庁への命令権限が付与されておらず、組織の規模や人員の確保、予算措置等は不明であって、監督・監視機関としては決定的に不十分である。特に公安警察、公安調査庁、内閣情報調査室の活動に対する監視は、秘密保護法が制定された後も、現行制度では機能していない問題がある。その点も含めて政府から独立した強い権限を持つ個人情報保護のための監督・監視機関の設置が必須といえる。 

3 国家・警察による市民監視を厳格に禁止し又は規制する立法措置が不可欠であること

 デジタル監視法案のもとでは、各省庁と地方自治体の情報システムが、すべて共通仕様化され、デジタル庁に一元管理される。さらに、マイナンバーによって、健康情報、税金情報、金融情報、運転免許情報、前科前歴情報などが今後紐づけされて一覧性の高い形で利用が可能となる。これは、市民のセンシティブ情報を含むあらゆる情報を政府が「合法的に」一望監視できる国家、すなわち「監視国家」の体制整備を意味する。内閣総理大臣を長とするデジタル庁は、内閣情報調査室と密接な関係を持ち、デジタル庁が集約した情報は、官邸・内閣情報調査室を介して警察庁・各都道府県警察と共有されることが強く疑われる。
 これらの監視国家化を禁止又は厳格に規制するための法的措置が不可欠である。

4 デジタル庁は、内閣総理大臣に強大な権限を与え統治のシステムを歪め、IT等企業と行政の癒着、利権の温床となるおそれがあること

 内閣総理大臣を長とする強力な総合調整機能(勧告権等)を有するデジタル庁は、内閣に設置され、ガバメントクラウドを統括管理し、予算配分を担うことになり、他方で、各省庁、地方自治体、教育機関、医療機関等は、デジタル庁の勧告に対して尊重する義務を負う。このような異質な統治システムがなぜ必要なのかについて、議論が尽くされていない。 
 また、デジタル庁の職員は民間企業から多く採用されており、行政と企業の癒着によって行政が歪められるおそれがある。

5 地方自治の侵害

 デジタル監視法案は、これまでの分権的な個人情報保護システムの在り方を根本から転換し、国による統一的な規制を行うとするものである。このような制度は、各公共団体において、住民との合意のもとで構築してきた独自の個人情報保護の在り方を破壊し、公共団体による先進的な個人情報保護制度の構築を後退させるものになりかねない。自治体において収集した個人情報をどのように管理するかは、自治事務の一環であり、国がこれを一方的に支配・統合することは、地方自治の本旨(憲法92条)、条例制定権(憲法94条)に違反する。

6 結語

 デジタル監視法案は、上記の点以外にも、そもそも誰のためのデジタル化推進かという立法事実の議論をはじめ、転職時における使用者間での労働者の特定個人情報の提供を可能とする、国家資格をマイナンバーに紐づけて管理するなど、極めて問題が多い法案である。
 慎重にも慎重な審議が必要である。特に、個人情報保護の徹底とプライバシー権侵害の危険の払しょく及び警察権力の規制をはじめ監視国家化防止策が徹底されない限り、デジタル監視法案は、廃案にすべきである。 
                                       以上 

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