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2021/11/19
法律家6団体も声明
私たち法律家は、憲法に基づく政治を実現するために
市民と野党の共闘を支持し、9条などの改憲に反対する
    2021年11月19日
改憲問題対策法律家6団体連絡会

社会文化法律センター   共同代表理事 海渡 雄一
自由法曹団        団長     吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 上野  格
日本国際法律家協会        会長 大熊 政一
日本反核法律家協会        会長 大久保賢一
日本民主法律家協会       理事長 新倉  修

 本年10月31日投開票の衆議院総選挙は、自民党が絶対安定多数の261議席を獲得し、立憲民主、共産両党はともに議席減となり、自民・公明に維新を加えた改憲推進勢力の議席が、3分の2を超える結果となった。

 メディアは、野党共闘不発と論じ、連合の芳野友子会長は、共産党との候補者調整を見直すよう立憲民主党執行部に注文したと報道されている。しかし、市民連合の共通政策を基礎に候補者一本化が全国289小選挙区のうち214小選挙区で成立し、62小選挙区で野党共闘候補が勝利したほか、31小選挙区で1万票以内の接戦に持ち込んだ。野党が候補者を一本化できなかった72小選挙区では、野党は6小選挙区の勝利にとどまることからも、野党共闘が一定の成果を上げたことは疑いがないことを確認する必要がある。現在の選挙制度を前提とする限り、与党に対抗するためには、立憲野党が共闘する以外に道がないことは明らかである。

 立憲野党は、接戦区で勝ちきれなかったこと、市民連合との「共通政策」が有権者に浸透しきれなかったこと、投票率が55.93%にとどまったことや、比例区の共闘のあり方など、今回の選挙結果を真摯に総括すべきである。そして、来年の参議院選挙に向けて、速やかに32の1人区での候補者一本化を図り、野党共闘を発展させ強化することが緊急に求められている。

 自民党は、選挙公約で日本国憲法の改正をあげ、岸田文雄首相は、「敵基地攻撃能力」など防衛力の強化を図り、「任期中に改憲のメドを付けたい」と言明している。維新の松井一郎代表は、総選挙後、「来年参院選と同日に改憲国民投票を」と踏み込み、与党、維新ら改憲勢力は、臨時国会における憲法審査会での改憲案討議入りを数の力で押し切ろうとしている。改憲派は、自民党4項目改憲案をもとに、とりわけ、コロナ対策を理由とする緊急事態条項の創設と中国に武力で対抗するための9条改憲を狙っている。

 しかし、コロナ対策のために改憲をする必要は全くない。また、米中の緊張関係が高まる中、日本が行うべきは、「敵基地攻撃能力」を高めることでも、アメリカと一体となって中国を武力によって威嚇することでもなく、ましてや9条の改憲でもない。憲法の平和主義の理念に基づき、国際世論をリードして戦争の危険性を回避するため、あらゆる政治的な努力をすることが最優先されるべきである。いま必要なのは「憲法の改正」ではなく、立憲主義の本義に立ち返り、権力に憲法を遵守させて、憲法に基づく政治を実践させることである。

 私たち改憲問題対策法律家6団体連絡会は、これまでも自民党4項目改憲案に強く反対し、立憲主義・平和主義に反する「安保法制」などの法律の廃止を求めてきた。来年の参議院選挙が終わると2025年までは国政選挙がない可能性がある。憲法と平和の危機に直面する今、私たち法律家は、あらためて命と平和と民主主義を守る憲法に基づく政治への転換を強く求め、その実現のために、来年の参議院選挙に向けて市民と野党の共闘を一層広げかつ強化するよう強く後押しをし、奮闘することを誓う。

以上

PDFは↓こちらから
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2021/11/13
総選挙後の改憲問題の新たな局面を迎えて 九条の会が声明
 総選挙が終わった。その結果をどう考えるか。憲法問題に取り組んできた団体が「総括」の声明を発表している。順次紹介する。
 

  総選挙後の改憲問題の新たな局面を迎えて

            2021.11.12 九条の会

 10月31日に衆議院議員選挙が行われ、自民党は議席を減らしたものの単独過半数を維持し自公政権の存続が決まりました。維新の会の大幅議席増により自公と維新を合わせた改憲勢力は334議席となり、衆議院の3分の2を超える議席を獲得した結果、改憲問題は、新たな局面を迎えました。

 岸田文雄首相は、自民党総裁選の最中から「任期中の改憲実行」、「敵基地攻撃能力」保有の検討を繰り返し表明しました。それを受けて総選挙に向けての自民党公約も、「敵基地攻撃能力」保有、防衛力の大幅強化と並んで、「早期の憲法改正」の実現を明記していましたが、総選挙の結果を踏まえて、岸田政権は、安倍政権以来の改憲策動の強化に踏み切る構えです。
 岸田政権がまず手をつけようとしているのは、安倍・菅政権が推進した9条破壊の加速化です。対中国の軍事同盟強化を目指した「国家安全保障戦略」と「防衛計画の大綱」の改定を来年末までに強行し、中国を念頭においた「敵基地攻撃能力」の保有、日米共同演習の強化、そして辺野古基地建設強行などを推し進めようとしています。
 同時に、岸田自民党は、憲法9条明文の改憲にも踏み込むべく、臨時国会における憲法審査会での改憲案討議入りを狙っています。維新の会松井一郎代表の「来年参院選と同日に改憲国民投票を」という発言や国民民主党との憲法審査会毎週開催合意は、こうした自民党の明文改憲への策動を応援するものです。
 しかし、日米軍事同盟強化と改憲という途は、米中の軍事対決・挑発を激化させ、日本と東北アジアの平和の実現に寄与するどころか、それを遠ざけるものです。明文改憲、9条破壊の策動を阻止しなければなりません。

 9条の会をはじめとした市民の草の根からの運動は、自民党などによる改憲の企図を阻み続けてきました。とりわけ、安倍政権の下、衆参両院で改憲勢力が3分の2を占めて以降も、市民と野党の共闘の頑張り、幾次にもわたる全国統一署名運動、それに鼓舞された立憲野党の奮闘により憲法審査会での改憲案審議を行わせず、19年参院選では改憲勢力3分の2を打ち破って安倍改憲を挫折に追い込みました。来年の参院選に向けた新たな改憲の動きに待ったをかけるのも、この市民と野党の共闘の力以外にはありません。
 この力に確信を持って、市民の皆さんが、改憲と9条破壊の阻止のため、決意を新たに立ち上がられることを訴えます。

2021/10/26
自民党の選挙公約、ここが問題!~『自民党政策BANK』を検証する
 法律家団体で組織する「改憲問題対策法律家6団体連絡会」は26日、自民党が発表している総選挙公約「自民党政策BANK」を検証する文書をまとめ発表しました。



   自民党の選挙公約、ここが問題!~『自民党政策BANK』を検証する
                                          2021年10月26日
                                      改憲問題対策法律家6団体連絡会    

はじめに

 今回の総選挙は、岸田政権だけでなく、2017年総選挙以降の安倍・菅政治を問う選挙でもあります。安倍・菅政権は何だったのか、安倍・菅政治を完全には断ち切れない岸田政権を続けてもいいのか、が問われています。
 そこで、今回の総選挙に向けて自民党がまとめた詳細な選挙公約である『自民党政策BANK』を検証したいと思います。
 これは「1 感染症から命と暮らしを守る。」
    「2 『新しい資本主義』で分厚い中間層を再構築する。『全世代の安心感』が日本の活力に。」
    「3 国の基『農林水産業』を守り、成長産業に。」
    「4 日本列島の隅々まで、活発な経済活動が行き渡る国へ。」
    「5 経済安全保障を強化する。」
    「6 『毅然とした日本外交の展開』と『国防力』の強化で、日本を守る。
    「7 『教育』は国家の基本。人材力の強化、安全で安心な国、健康で豊かな地域社会を目指す。
    「8 日本国憲法の改正を目指す。」
 の8つの大項目から構成され、各項目毎に細かい政策が○で列記されています。
 以下、『自民党政策BANK』を大項目毎に分け、大項目の各○項目からいくつか選び、検証していきたいと思います。
まず○項目を「」で引用し、ここが問題以下に太字でこの問題点を挙げていきます。

 今回総選挙の参考にしていただければと思います。

『自民党政策BANK』全文はこちら
→ https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/20211011_bank.pdf

1 感染症から命と暮らしを守る。
 「○今回の新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ感染症」)の経験を踏まえ、国の司令塔機能を強化しつつ、国と地方の役割分担の見直し、感染症有事における病床・医療人材の確保、保健所・検査・水際対策等の対応力の確保を実効的に行う枠組みを整備
します。」
⇒ここが問題
 全国の保健所が1991年に852か所あったのに、今年(2021年)は470か所、30年間で約半減しました。厚労省の多めに出す計算方法でも、日本の人口10万人当たりのICUの数は14.4床で、アメリカの34.7床、ドイツの29.2床と比べ大変少ないです。人口1000人当たりの医師の数もOECD平均3.5人に対して日本は2.4人、OECD諸国の中では36か国中32番目にすぎません。これは憲法25条1項で国民の生存権を保障し、2項で国に公衆衛生などの責務を課しながら、新自由主義改革を行ってきた自民党政治の結果です。この間の新自由主義改革を反省しない自民党の主張は信用できません。

2 「新しい資本主義」で分厚い中間層を再構築する。「全世代の安心感」が日本の活力に。
⇒ここが問題
◆労働者保護
 自民党の選挙公約には、「労働者の権利を守る」の項目がありません。非正規労働者が40パーセントを越え、不安定雇用、賃金格差と低賃金、長時間労働など労働者の権利が切り崩されてきました。失われた労働者の権利を取り戻し、厚く保護することこそが、日本の活力を取り戻すために必要です。自民党は、資本の要求に従い、労働者を保護する気は一切ないのです。
◆科学技術
「○脱炭素社会、安全・安心な社会に向け、核融合や半導体を含む環境・エネルギー分野、地震津波観測網等の防災・減災分野、原子力施設の安全確保や試験研究炉の整備を含めた原子力分野、素粒子物理分野の研究開発を推進するとともに、学術研究基盤の整備・共用を図り人材の育成・確保を行います。」
⇒ここが問題
 2011年の東日本大震災による福島原発事故を受け、ドイツやスイス、イタリアは脱原発を決めたのに、事故を起こした日本が原発をやめず、原子力分野の研究開発を推進することは問題です。10月22日に閣議決定した政府の「第6次エネルギー基本計画」でも、総発電量に占める電源構成が2019年度実績原子力が6%に対して、2030年度目標を20~22%にしています。早く脱原発に向かうべきです。

 「○安全保障や経済社会で宇宙の重要性が高まる中、小型衛星コンステレーション等“衛星・ロケット新技術”の開発や、政府調達を通じたベンチャー支援、衛星データの利活用促進、産業を含めた“月面活動に必要な技術”の開発等により、宇宙産業市場の倍増を目指します。また、各国の先頭で宇宙デブリ対策に取り組み、世界に貢献します。」
⇒ここが問題
 2021年度の予算で、アメリカを中心に進められているミサイル防衛のための衛星コンステレーション計画との連携を念頭に置きつつ、衛星コンステレーションによるHGV探知・追尾システムの概念検討や先進的な赤外線センサーに係わる研究を行うとしており、宇宙空間における軍拡競争にもなりかねない危険性があります。

◆グリーン・カーボンニュートラル・エネルギ-
「○東京電力福島第一原子力発電所事故への真摯な反省を出発点に、国民の原子力発電に対する不安をしっかりと受け止め、二度と事故を起こさない取組みを続けます。何より安全性を優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減します。」
⇒ここが問題
 原発事故当事国が脱原発に踏み切らず、「可能な限り原発依存度を低減」するとはあきれます。「二度と事故を起こさない」ためには脱原発しかありません。

◆経済・財政運営
「○財政の単年度主義の弊害是正に向け、科学技術の振興や経済安全保障などの国家課題に中長期的・計画的に取り組みます。」
⇒ここが問題
 単年度会計主義は、後の政権を拘束しないためにあり、特に日本においては戦前の軍事費増大の反省からも大事な原則です。ここでは「防衛費」を明示していませんが、警戒が必要です。

3 国の基「農林水産業」を守り、成長産業に。
「○将来にわたって国民に食料を安定的に供給するため、国民が求める多様な農産物の需要に応じた生産の拡大を進め、食料自給率・食料自給力の対策を強化し、農業・農村の所得増大を目指します。」
⇒ここが問題
 1965年度には食糧自給率(カロリーベース)が73%もあったのに、昨年(2020年)度は37%。それなのにさらに食糧自給率を下げかねないTPPへの承認案と関連法を強行したのが自公政権です(2016年)。そんな自公政権が食糧自給率対策の強化などできるのでしょうか。

4 日本列島の隅々まで、活発な経済活動が行き渡る国へ。

5 経済安全保障を強化する。
「○いかなる状況下においても、国民生活の基盤を維持するために、基幹インフラ産業(情報通信、エネルギー、医療、金融、交通・運輸等)の自律性を高め、強靭化を図ります。」
⇒ここが問題
 福島原発事故後、計画停電を行ったとおり、エネルギーの原発依存は危険です。また、「交通・運輸の強靱化」を言うなら、中曽根政権による1987年の国鉄分割民営化は誤りだったと認めるべきです。民営化によってJRは利潤追求を重視するようになり、多くの赤字ローカル線が廃止されてしまいました。ローカル線に対する具体的な国の支援をうたうべきです。

「○公安調査庁の情報収集・分析に係る能力・体制を拡充し、経済安全保障分野の政策判断に必要なインテリジェンスの能力を強化します。」
⇒ここが問題
 菅政権は強大な権限を持つデジタル庁設置などのデジタル関連6法を成立させて、国民監視をデジタルにより行うことを狙っています。そのかなめにいるのが公安調査庁などの警察権力・政府情報機関です。公安調査庁は、1952年制定の破壊活動防止法(第1条「この法律は、団体の活動として暴力主義的破壊活動を行つた団体に対する必要な規制措置を定めるとともに、暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定を補整し、もつて、公共の安全の確保に寄与することを目的とする」)に基づいて活動する組織ですが、具体的には日本共産党や市民団体なども監視の対象にしています。議会主義政党の共産党を破壊活動防止法に基づいて監視することは全く不当であり、そもそも公安調査庁自体不要です。

「○インテリジェンスの能力及び連携の強化を進めるとともに、経済安全保障に係る各省庁の体制強化を図ります。また、機敏な技術を保有する企業や大学等との連携を強化します。」
⇒ここが問題
 慶応大学(出身)の憲法研究者のように、警察とテロ対策問題で共同研究する動きもありますが(研究成果として、大沢秀介・小山剛編『市民生活の自由と安全』成文堂、大沢秀介・小山剛編『自由と安全』尚学社)、広く理系含め学問はインテリジェンスのためにあるのでしょうか。

6 「毅然とした日本外交の展開」と「国防力」の強化で、日本を守る。
◆外交
「○国益に即したODAを質・量両面で拡充し、民間投資との有機的連携により、日本企業の海外進出を一層後押しします。脱炭素化など世界の環境改善、防災、教育、貧困撲滅など、SDGs達成への取組みを加速します。」
⇒ここが問題
 ODAについて、外務省はホームページで「政府または政府の実施機関はODAによって、平和構築やガバナンス、基本的人権の推進、人道支援等を含む開発途上国の『開発』のため、開発途上国または国際機関に対し、資金(贈与・貸付等)・技術提供を行います」と説明しています。ODAを「国益」や「日本企業の海外進出」のために利用することは、飢えや貧困に苦しみ、教育や医療を満足に受けられない人を救うことに繋がらない可能性があります。

◆安全保障
「○自らの防衛力を大幅に強化すべく、安全保障や防衛のあるべき姿を取りまとめ、新たな国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画等を速やかに策定します。NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、防衛関係費の増額を目指します。」
⇒ここが問題
 日本の防衛費(「防衛関係費」)は民主党政権の2012年度に4兆6453億円まで減ったものの、安倍政権の2013年度から毎年増え、今年度は5兆1235億円に達しましたが、それでもGDP比1%以内に収まっていました。しかし、今、優先的に予算を回すべき対象はコロナ対策費であり、防衛費ではありません。にもかかわらず、現在の2倍にまで防衛費を増やす必要があるのでしょうか。

「○周辺国の軍事力の高度化に対応し、重大かつ差し迫った脅威や不測の事態を抑止・対処するため、わが国の弾道ミサイル等への対処能力を進化させるとともに、相手領域内で弾頭ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取組みを進めます。」
⇒ここが問題
 これはいわゆる「敵基地攻撃論」のことです。しかし、「敵基地攻撃」は政府がこれまで憲法9条から説明してきた専守防衛や海外派兵の禁止に反するものです。しかも、ここでは「相手領域内で弾頭ミサイル等を阻止する」と表現しており、「敵基地」に限定されていません。これは他国と地理的に限定的ではない戦争をすることを意味し、許されません。

「○抑止力を維持しつつ、沖縄等の基地負担軽減を実現するため、普天間飛行場の辺野古移設や在日米軍再編を着実に進め、自治体への重点的な基地周辺対策を実施します。米国政府と連携して事件・事故防止を徹底し、日米地位協定のあるべき姿を目指します。」
⇒ここが問題
 沖縄の基地負担を軽減するなら、普天間飛行場を辺野古に「移設」するのではなく、本土か海外に移転しなければ「軽減」とはなりません。また、「日米地位協定のあるべき姿を目指します」といった抽象的なスローガンではなく、日米地位協定の不平等規定などの改定を実現していくべきです。

7 「教育」は国家の基本。人材力の強化、安全で安心な国、健康で豊かな地域社会を目指す。
◆教育・文化・スポーツ
「○学制発布150年を踏まえ、『教育は国家の基本』『学びの継続保障』『個別最適で協働的な学び』の考えのもと、1人1台の端末を最大限活用し、小学校における35人学級を計画的に推進し、その効果検証を踏まえ、中学校での対応を検討します。小中一貫校の加速、10歳位までの基礎基本習得、小学校高学年への教科担任制の導入など、学習環境や学校規模の確保等を実現します。」
⇒ここが問題
 戦前の軍国主義教育・皇民化教育といった国家主義的教育の反省から憲法26条で国民の教育を受ける権利を保障したのであり、国家のために教育を行うのではありません。2018年に自民党がまとめた4項目改憲案でも、26条3項は「国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものである」としているように、国家主義的な教育観があります。「教育は国家の基本」を第一に掲げる教育観は間違っています。

8 日本国憲法の改正を目指す。
◆憲法改正
「○『現行憲法の自主的改正』は結党以来の党是であり、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原理は今後とも堅持し、国民の幅広い理解を得て、憲法改正への取組みを更に強化します。」
⇒ここが問題
 憲法9条1項の戦争放棄の規定は、学界でも①「侵略戦争」を放棄したもの、②「自衛戦争」をも放棄したものと解釈が分かれ、①は国連憲章と同じ立場の解釈です。この1項に対して、2項の戦力の不保持の規定が世界的に見て独特のものです。政府は2項で禁止する「戦力」を「自衛のための必要最小限度の『実力』を超えるもの」と解釈することで、自衛隊は「戦力」ではない、「実力」にすぎないから他国軍隊と違って海外派兵はできない、集団的自衛権行使はできない、専守防衛に徹すると説明してきました。しかし、2012年の自民党の「日本国憲法改正草案」は、9条を改正して全面的な集団的自衛権の行使ができる国防軍を保持しようとするものであり、日本独特の平和主義の基本原理を今後とも堅持するものではありません。

「○わが党は憲法改正の条文イメージとして、①自衛隊の明記、②緊急事態対応、③合区解消・地方公共団体、④教育充実の4項目を提示しています。衆参の憲法審査会を安定的に開催し、憲法の本体論議及び国民投票法について積極的に議論を進めます。」
⇒ここが問題
 この自民党の4項目改憲案ですが、①は自衛隊違憲論による制約(専守防衛、海外派兵の禁止、かつての集団的自衛権行使の否認)の解消と「安保法制」(戦争法)の合憲化が狙いです。昨年から②に関して、憲法に緊急事態条項があればコロナ対応ができるという議論が自民党から出てきていますが、イギリスには憲法典がそもそもありませんし、アメリカ憲法に緊急事態条項はなく、ドイツ・フランスは緊急事態条項があっても発動せず、多くの国でコロナ対応は法律で行なってきました。憲法を変えて緊急事態条項を入れれば、コロナ対応できるというものではありません。③は参議院選挙区の定数不均衡や合区解消のためには改憲ではなく、選挙区をやめて比例代表制1本にすれば解決できます。④も改憲ではなく法律で対応できる問題です。こういう改憲案にだまされてはいけません。

「○憲法改正に関する国民意識を高め、憲法改正原案の国会発議、国民投票の実施、早期の憲法改正を目指します。」
⇒ここが問題
 今、最優先すべきことは改憲ではなくコロナ対策です。憲法99条に国務大臣・国会議員など公務員の憲法尊重擁護義務があるのですから、まずは憲法理念の実現に努めるべきです。
2021/10/21
自主・自律を貫き、公正・公平な選挙報道を
 日本ジャーナリスト会議と放送を語る会による「NHKとメディアの今を考える会」は、今回の総選挙に当たって、自主、自立を求める要請をまとめ、各社に申し入れました。


報道各社 御中  2021年10月16日
                       NHKとメディアの今を考える会

 2021年衆議院選挙に際し、自主・自律を貫き、公正・公平な選挙報道を求めます

2021年9月の自民党総裁選の各メディアの報道、特にテレビのニュースやワイドショー番組は自民党総裁選の話題が大半を占め、「お祭り騒ぎ」「メディアジャック」との批判を招いています。
新型コロナウイルス対策・政府与党の臨時国会の召集拒否・アフガニスタン問題などの重要なニュースを押しのけ、自民党党員投票選挙人110万人が関係するだけで一般有権者は一切関わる余地のない自民党総裁選という一政党内の話題ばかりを頻繁に長時間放送し、自民党総裁選の4候補のみにテレビの画面を独占させました。また、番組内容も、4候補者の主張をそのまま垂れ流し、有権者が最も知りたい肝心の事は質問していません。このため、自民党だけがクローズアップされた事になり、次期衆議院議員選挙の“事前運動”になりかねない事態になりました。

 以上の経過を踏まえ、衆議院選挙報道において以下の事を要望します。

 1)政党、政治家の動きばかりの政局報道に偏らず、各政党の政策・主張を丁寧に伝え、選挙の争点を明らかにして、有権者の判断に資する、政策中心の報道を充実させること。
 その際、単に政党の主張を伝えるだけでなく、市民の視線に立った暮らしと命を守るためのコロナ対策・貧困と格差の是正・消費税減税・沖縄の辺野古新基地建設・学術会議会員任命拒否・脱原発・気候危機・ジェンダー平等・改憲といった諸問題について、有権者の理解を助ける解説番組、記事を充実させること。

 2)政党の政策・主張を紹介するにあたっては、現在の議席数の多少にしたがって放送や記事の量を配分するのではなく、少なくとも選挙期間中は、各政治勢力に公平に主張の機会を与えること。

 3)選挙報道を、従来の報道の延長線上ではなく、その量と質を抜本的に拡充すること。
 特に放送メディアでは、政策論議中心の番組を、長時間、数多く放送すること。
NHKでも民放でも、オリンピック放送では日夜膨大な時間量の番組が組まれました。今回の選挙の、国民にとっての重要性はこれとは比較になりません。
社会の公器としての放送には特に、民主主義の発展に資する公正・公平な選挙報道を強く求めます。とりわけ、公共的な放送機関であるNHKに、この努力を期待します。
                                   以上
(賛同団体)
   NHKとメディアを語ろう・福島
   NHKとメディアを考える会(兵庫)
   NHKとメディアを考える東海の会
   NHK・メディアを考える京都の会
   NHK問題大阪連絡会
   NHK問題とメディアを考える茨城の会
   NHK問題を考える岡山の会
   NHK問題を考える会・さいたま
   NHK問題を考える奈良の会
   NHKを考えるふくい市民の会
   言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会
   ジャーナリズムを考える市民連絡会とやま
   政府から独立したNHKをめざす広島の会
   時を見つめる会  
   日本ジャーナリスト会議
   日本ジャーナリスト会議東海地区連絡会議
   放送を語る会
   メディアを考える市民の会・ぎふ

2021/10/18
民主主義の危機克服を 7人委がアピール
世界平和アピ-ル7人委員会は、18日の19日の総選挙公示を目に、次のようなアピールを発表した。



「民主主義の危機」を克服するために 2021年10月18日
世界平和アピール七人委員会
大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進


 岸田文雄首相は9月29日の自民党総裁選挙で勝利が決まった直後の記者会見において、「今まさにわが国の民主主義そのものが危機にある」と述べた。果たして、この発言は彼の真意からのものであろうか。

 2012年以来の安倍政権、菅政権では、首相が不正に関わっていても疑惑をはらすことができず、公共的な組織に対する不当な抑圧や、公私をわきまえない利益誘導をおこなう暴挙が相次いだ。そして、それらに対する説明は拒否し、批判には応答しないということが繰り返された。何より、国会においてその都度論議すべきであったのに、開催自体を拒否し続けた。このように政治の最高責任者が、意思決定の根拠を説明して国民に理解を求めることを拒否するのは民主主義の基本的条件を否定するものである。「国民の声が政治に届かない」事態が繰り返されたのである。

岸田新首相の10月8日の所信表明演説では、これまでの政権に問われてきた問題・疑惑に一切触れなかった。「丁寧な対話」といいながら、総選挙を前にして、国会においては代表質問だけにとどめ、与野党間の論議を行う姿勢を見せなかった。これでは「民主主義の危機」にまともに向き合っていく意思があるとは思えない。9年間に及んだ安倍政権、菅政権が繰り返し強権を振りかざし、異論を無視してきたことに対する国民の批判に、首相は正面から応えて、名目だけにとどまらない「民主主義の危機」の克服に努めるべきである。

国民の国政参加の重要な機会である総選挙における投票率の低迷とその背後にある無関心は、民主主義の危機をもたらしている重要な要因の一つである。国民一人一人が、現在問われている国政のあり方に思いをいたし、投票を通して積極的に意思表示されることをわたくしたちは願っている。
連絡先:http://worldpeace7.jp

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