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2022/02/17
歴史学協会が「建国記念の日」と「歴史教育」で声明
 日本歴史学協会は、このほど、「建国記念の日」と「歴史教育」について、次のような声明を発表しました。


「建国記念の日」に関する声明

 日本歴史学協会は、一九五二年一月二五日、「紀元節復活に関する意見」を採択して以来、「紀元節」を復活し ようとする動きに対し、一貫して反対の意思を表明してきた。それは、私たちが超国家主義と軍国主義に反対するからであり、「紀元節」がこれらの鼓舞・浸透に多大な役割を果たした戦前・戦中の歴史的体験を風化させてはならないと信じるからである。しかるに、政府は、一九六六年、「国民の祝日に関する法律」を改定して「建国記念の日」を制定し、政令によって戦前の「紀元節」と同じ二月一一日を「建国記念の日」に決定して今日に至っている。

 私たちは、政府のこのような動きが、科学的で自由な歴史研究と、それを踏まえるべき歴史教育を困難にすることを憂慮し、これまで重ねて私たちの立場を表明してきた。

 一昨年一〇月、菅義偉前首相は、日本学術会議の第二五期の活動開始に先立って、六名の会員の任命を拒否した。政府の方針に賛同しようとしない研究者を排除しようとした菅内閣の姿勢はその後も継続され、多くの研究者の批判にもかかわらず、六名の会員への任命は行われることはなかった。菅内閣の退陣後、岸田文雄氏が内閣総理大臣に就任したが、この問題については「一連の手続きは終了した」として依然として六名の方の日本学術会議会員への任命を拒否し続けており、日本学術会議法に定める会員数に欠員のある違法な状態が継続している。菅内閣から岸田内閣に継承された一連の対応が、日本国憲法において保障された学問の自由への重大な侵害であることは言を俟たない。私たちは、科学的で自由な歴史研究とそれに立脚した歴史教育を今後も堅持していくために、会員任命拒否を続ける岸田内閣に対して改めて抗議するものである。

 また、昨年一二月に、「安定的な皇位継承」のあり方をめぐって、政府の有識者会議の報告書が提出されるなど、天皇制の将来についての議論の必要性がメディアを動員して喧伝され、今後は国会の場での議論も進められようとしている。これからの天皇制のあり方を議論するに際しては、現行の天皇はそもそも日本国憲法において定められている国民主権の原則の下、その国民統合の象徴としての存在であることを前提とすべきであり、学問的にとうてい容認できない復古的な歴史観・国家観に依拠した議論であってはならない。   
 議論の展開に当たって過去の歴史上の天皇や天皇制を参照する場合にも、あくまで科学的な歴史学の成果を踏まえるべきであって、八世紀の編纂史料である『日本書紀』を根拠に「神武天皇以来の男系」云々といった議論を持ち出すようなことは、多くの国民の支持するところではないと私たちは考える。ひいては、日本国憲法のもとに成立する「日本国」の「建国」を記念しようとする場合、本来それはいつであるべきなのかという根本的な問題も、改めて再考されるべきであろう。

 さて、この四月から、高等学校における新しい学習指導要領が学年進行で実施され、多くの教育現場で「歴史総合」の指導が開始される。近現代史を中心に探究型の歴史教育が高等学校において本格的に導入されることは歓迎されるべきことである。いっぽう、日本近代史に関わって、昨年、一部国会議員が提出した質問主意書を受けて出された閣議決定を経た内閣の答弁書により、これまで学界で認識が深化・共有されてきた「従軍慰安婦」や朝鮮人を対象とする「強制連行」「強制労働」等の学術用語が、すでに検定に合格して教育現場で使用されている教科書の叙述から削除されざるを得なくなるという看過しがたい事態が起こった。
 現在検定が進行している「日本史探究」「世界史探究」の教科書においても、同様のことが危惧される。私たちは引き続き、歴史学はあくまで事実に基づいた歴史認識を深めることを目的とする学問であり、歴史教育もその成果を踏まえ、自国中心の歴史認識を排し、適切な教育方法に基づいて行われるべきであって、政治や行政の介入により歪められてはならないことを主張するものである。


   二〇二二年一月二二日


                    日本歴史学協会会長                   若尾 政希

                    同会学問思想の自由・建国記念の日問題特別委員会委員長  横山百合子
2022/02/03
9条改憲の流れを絶て! 法律家団体が集会

 総選挙後、改憲の動きが急ピッチに出て来ていることに対し、「改憲問題対策法律家6団体連絡会」は、2022年2月3日、議員会館で「9条改憲の流れを絶て! 自民党改憲を許さないキックオフ集会」を開催した。愛敬浩二・早稲田大学教授、飯島滋明・名古屋学院大教授が講演した後、立憲民主党、日本共産党、社民党代表が挨拶、夏の参院選勝利と改憲阻止を訴えた。zoom方式で参加者は約170人。最後に次のアピールを採択した。

九条改憲の流れを絶て 自民党改憲を許さないキックオフ集会アピール

1 はじめに
 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」と「改憲問題対策法律家6団体連絡会」は、これまで、憲法9条改憲などの自民党改憲4項目案に強く反対し、立憲主義・平和主義に反する「安保法制」などの法律の廃止を求めてきました。
 通常国会が開かれている今、市民が望まない無用な改憲への流れを絶ち、市民の命と暮らし、平和と自由を守る政治を実現する運動をあらためてスタートすべく、本日、この集会を開催しました。

2 今取り組むべきは改憲ではない
 岸田総理は、所信表明演説で「いわゆる敵基地攻撃能力も含めて、防衛力を抜本的に強化していく」と語り、自民党の憲法改正実現本部においても、「(憲法9条改憲などの自民党改憲4項目は)きわめて現代的な課題であり、国民にとって早急に実現しなければならない」「自民党の総力を結集して憲法改正を実現する」と強い意欲を示しました。
しかし、新型コロナウィルス感染拡大をはじめとした、日本が抱える多くの課題の解決に改憲は全く必要ないばかりか、市民が現在、改憲を求めている状況にもありません。

 自民党改憲4項目案などの改憲勢力が示している改憲案は、法律で対応可能なために憲法を改正する必要がないもの(教育無償化、参議院合区解消など)や、戦争や市民の弾圧につながる危険なもの(自衛隊明記、緊急事態条項など)ばかりです。
 また、改正改憲手続法(国民投票法)には投票環境や広告規制など国民投票の公平・公正を欠く多くの欠陥があり、現行法のままでの改憲発議は、国民主権の原理に照らし憲法上許されません。

3 いまこそ憲法を活かす政治を
 オミクロン株による感染が急拡大する現在、政治に求められているのは、医療体制の拡充や生活困窮者への支援です。すなわち、生存権(憲法25条)や個人の尊重(憲法13条)といった、憲法に立脚する政治こそが最優先で行われる必要があります。
 また、米中の緊張関係が高まる中で日本がすべきことは、敵基地攻撃能力の保有などによって徒に対立を深めることではなく、憲法の平和主義に基づいてあらゆる外交的努力を行って戦争を回避することです。
 今の日本に必要なのは、憲法改正ではなく、立憲主義・平和主義に基づく憲法が活かされた政治の実践です。

4 まとめ
 現在、私たちは憲法と平和の危機に直面しています。しかし、2020年には検察庁法改正案を、2021年には入管法改正案を、市民が作り出した広範な世論の力で廃案に追い込んだように、私たち市民には政治を変える力があります。
 私たちは本集会を皮切りに、「戦争する国」につながる9条改憲を始めとする不要な改憲論にあらためて強く反対し、署名など世論喚起に取り組むととともに、今年の参議院選挙で改憲勢力の議席数が3分の2を大幅に下回るようにすべく、市民と野党の共闘を一層拡大し強化するため奮闘することを宣言し、本集会のアピールとします。

                                       集会参加者一同
2022/02/01
読売・大阪府の連携連携協定に反対広がる

 読売新聞は昨年暮れ、大阪府との間に、包括連携協定を結び、教育・人材育成、情報発信、安全・安心、子ども・福祉、地域活性化、産業振興・雇用、健康、環境など8分野で相互に狭量することを約束した。
 イベントや、主催行事、地域の問題などで、新聞社が行政と協力し合うことはもちろんあり得るが、「包括的」ということになるとわけが違う。メディアが行政を監視することなどできなくなってしまうのではないか、との危惧は強い。
 ここでは、日本ジャーナリスト会議(JCJ)の声明を紹介しよう。

読売大阪本社と大阪府の「包括連携協定」についてJCJ声明
    万博・カジノ推進へ、新聞が広報機関になる恐れ

 読売新聞大阪本社が昨年12月27日、大阪府とパートナーとなる「包括連携協定」を結んだ。
「府民サービスの向上、府域の成長・発展を図る」ことを目的とし、教育・人材育成、情報発信、安全・安心、子ども・福祉、地域活性化、産業振興・雇用、健康、環境など8分野で連携を進めるという。大阪府はこれまでに50を超える企業や大学などと包括連携協定を結んでいるが、報道機関との協定締結は初めてだ。

 言うまでもなく、ジャーナリズムの役割は権力の暴走をチェックすること。そのためには公権力と対峙し、十分な距離感を保つことが求められる。報道機関が、それも国内最大発行部数を誇る読売新聞が行政と協力関係を結ぶことは異常な事態だ。ジャーナリズムの役割を放棄した自殺行為に他ならない。
 ましてや、大阪では10年以上にわたって「大阪維新の会」による府政・市政が続いている。吉村洋文知事は大阪維新の会代表であり、松井一郎市長は国政政党「日本維新の会」の代表だ。取材する側が自らの立ち位置を見誤れば、維新にとって都合のいい広報機関になってしまう。

 協定締結後の記者会見で、読売新聞大阪本社の柴田岳社長は「大阪府としては読売新聞に取材、報道、情報に関して特別扱いは一切ない。読売新聞も取材報道の制限は一切受けない」と強調した。だが、連携事項の一つ、「情報発信」の取り組みについて「生活情報紙『読売ファミリー』や『わいず倶楽部』などの読売新聞が展開する媒体や各種SNSなどを活用して、大阪府の情報発信に協力する」と記載されている。

 さらに、「地域活性化」の取り組みには「2025年大阪・関西万博の開催に向けた協力」も盛り込まれている。維新の府政・市政は、万博の会場となる大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)に、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の誘致を目指している。松井市長は「夢洲にカジノをつくるときには税金は使わない」と言った舌の根も乾かぬうちに「汚染土壌が出てきたので790億円を払う」と言い出した。万博を隠れ蓑にした夢洲へのインフラ整備費用は今後も膨れ上がっていくことだろう。

 柴田社長は「万博に関しても問題点はきちんと指摘し、是々非々の報道姿勢を貫いていくつもりだ」と述べたが、「万博開催に向けた協力」を約束した読売新聞が万博やカジノ反対派の主張を果たして取り上げるだろうか、大いに疑問だ。
 今後、読売新聞に続くメディアが出ないとも限らない。すでに在阪テレビ局は連日のように吉村知事を出演させ、吉本芸人らが無批判に持ち上げる「維新礼賛」報道が続いている。
 「誰が泣いているのか、泣いている人に寄り添え」。大阪読売の社会部長だった黒田清さんの言葉だ。市民の信頼を失ったメディアは衰退する。ぜひとも、ジャーナリズムの原点に立ち返ってもらいたい。
   
     2022年1月31日
                   日本ジャーナリスト会議(JCJ)
                   JCJ関西支部         
2022/01/10
2022年を日本政府が核兵器廃絶に踏み出す年に!

  世界平和アピール七人委員会は、2021年12月27日、「2022年を日本政府が核兵器廃絶に踏み出す年に!」
 と題するアピールを発表しました。
  同委員会の150番目のアピールです。


「2022年を日本政府が核兵器廃絶に踏み出す年に!」
                           世界平和アピール七人委員会
                     大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進

 2022年に入るとすぐ、1月4~28日に核兵器不拡散条約(NPT)の第10回運用検討会議が予定されており、続いて核兵器禁止条約の第1回締結国会議が3月22~24日に開催されることになっている。

 核兵器不拡散条約は、国連加盟国193カ国のうち、189カ国が参加している普遍的な条約である。これまで核兵器保有国は、第6条の「各締結国は、核軍備競争の早期停止及び核軍備の縮小 に関する効果的な措置につき、・・・誠実に交渉を行うことを約束する」との規定の交渉を全く実施してこなかった。2015年の第9回会議では、議長の最終文書案を、中東非大量破壊兵器地帯構想に反対する米国ほか数カ国が拒否して、採決できないまま終了した。

 核兵器使用が非人道的であることは、日本政府も含めて、世界で認められている。核兵器の使用を確実に防ぐ唯一の方法は核兵器の廃絶である。日本政府は 核兵器の廃絶を目指し、核兵器国と非核兵器国の橋渡しの役を果たすと繰り返し言明してきた。岸田文雄首相は、『核兵器のない世界へ』と題する著書まで出して、「核兵器のない世界」に向けて国際的な取り組みを主導していくという固い決意を表明している。
 そうであれば、現実がむずかしいといって何もしないのではなく、自らが核兵器に依存して安全を求める政策と決別し、双方と積極的な対話を行い、解決への糸口を探し、解きほぐしていくことから進めるべきである。

 私たちは、今回の会議においては、「締結国が次回の運用検討会議までに誠実にかつ積極的にこの第6条の約束に従った交渉を行い、成果報告を行う」ための具体的な合意が得られるよう、日本政府が主導することを求め、会議が必ず最終合意に達することを求める。

 また、3月の核兵器禁止条約締結国会議にはNATO加盟国であるノルウェーとドイツがすでにオブザーバー参加を表明しており、対話が始まることは明らかなのだから、橋渡し役を自認する以上、日本もオブザーバーとして参加しなければならない。

 私たち世界平和アピール七人委員会は、新しく迎える年を、核兵器廃絶を確実に進める節目の年とするよう呼びかける。


註 イスラエル、インド、パキスタンは、NPTに加盟していない。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、2003年1月に脱退の自動的且即時発効を通告した。
2021/11/19
法律家6団体も声明
私たち法律家は、憲法に基づく政治を実現するために
市民と野党の共闘を支持し、9条などの改憲に反対する
    2021年11月19日
改憲問題対策法律家6団体連絡会

社会文化法律センター   共同代表理事 海渡 雄一
自由法曹団        団長     吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 上野  格
日本国際法律家協会        会長 大熊 政一
日本反核法律家協会        会長 大久保賢一
日本民主法律家協会       理事長 新倉  修

 本年10月31日投開票の衆議院総選挙は、自民党が絶対安定多数の261議席を獲得し、立憲民主、共産両党はともに議席減となり、自民・公明に維新を加えた改憲推進勢力の議席が、3分の2を超える結果となった。

 メディアは、野党共闘不発と論じ、連合の芳野友子会長は、共産党との候補者調整を見直すよう立憲民主党執行部に注文したと報道されている。しかし、市民連合の共通政策を基礎に候補者一本化が全国289小選挙区のうち214小選挙区で成立し、62小選挙区で野党共闘候補が勝利したほか、31小選挙区で1万票以内の接戦に持ち込んだ。野党が候補者を一本化できなかった72小選挙区では、野党は6小選挙区の勝利にとどまることからも、野党共闘が一定の成果を上げたことは疑いがないことを確認する必要がある。現在の選挙制度を前提とする限り、与党に対抗するためには、立憲野党が共闘する以外に道がないことは明らかである。

 立憲野党は、接戦区で勝ちきれなかったこと、市民連合との「共通政策」が有権者に浸透しきれなかったこと、投票率が55.93%にとどまったことや、比例区の共闘のあり方など、今回の選挙結果を真摯に総括すべきである。そして、来年の参議院選挙に向けて、速やかに32の1人区での候補者一本化を図り、野党共闘を発展させ強化することが緊急に求められている。

 自民党は、選挙公約で日本国憲法の改正をあげ、岸田文雄首相は、「敵基地攻撃能力」など防衛力の強化を図り、「任期中に改憲のメドを付けたい」と言明している。維新の松井一郎代表は、総選挙後、「来年参院選と同日に改憲国民投票を」と踏み込み、与党、維新ら改憲勢力は、臨時国会における憲法審査会での改憲案討議入りを数の力で押し切ろうとしている。改憲派は、自民党4項目改憲案をもとに、とりわけ、コロナ対策を理由とする緊急事態条項の創設と中国に武力で対抗するための9条改憲を狙っている。

 しかし、コロナ対策のために改憲をする必要は全くない。また、米中の緊張関係が高まる中、日本が行うべきは、「敵基地攻撃能力」を高めることでも、アメリカと一体となって中国を武力によって威嚇することでもなく、ましてや9条の改憲でもない。憲法の平和主義の理念に基づき、国際世論をリードして戦争の危険性を回避するため、あらゆる政治的な努力をすることが最優先されるべきである。いま必要なのは「憲法の改正」ではなく、立憲主義の本義に立ち返り、権力に憲法を遵守させて、憲法に基づく政治を実践させることである。

 私たち改憲問題対策法律家6団体連絡会は、これまでも自民党4項目改憲案に強く反対し、立憲主義・平和主義に反する「安保法制」などの法律の廃止を求めてきた。来年の参議院選挙が終わると2025年までは国政選挙がない可能性がある。憲法と平和の危機に直面する今、私たち法律家は、あらためて命と平和と民主主義を守る憲法に基づく政治への転換を強く求め、その実現のために、来年の参議院選挙に向けて市民と野党の共闘を一層広げかつ強化するよう強く後押しをし、奮闘することを誓う。

以上

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