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2024/12/01
改憲勢力の執念の先には何が
石破首相の総選挙後初の所信表明演説の翌11月30日付の産経新聞。「改憲発議『任期中』消える」といら立ちを隠せぬ見出しだった。少なくとも安倍、岸田首相は「私の任期中に改憲を」と呼号し、石破首相も10月の就任直後は「任期中」と言っていた。しかし総選挙大敗後の今回は「国会による発議に実現に向け」とはいうものの、時期を示せなかった。
憲法が定める改憲発議の「3分の2」以上は衆議院では310。自公に国民・維新を加えても及ばない。自公だけでもまだまとまらない改憲案作成を、いちおう「野党」の位置にいる国民、維新を巻き込んでできるのか。もしできたにしても今国会の構成では発議できない。
しかししかし、改憲の本家本元、自民中枢はそれでは収まらない。小野寺政調会長は11月24日の改憲団体集会で「自衛隊の明記はもちろん、9条2項も含めてしっかり変えていく必要がある」とあいさつした。ある右派名誉教授は「この程度で意気消沈しているときではない」とはっぱをかけた。
その延長線上にあるのが「25年衆参同時選挙」論だといえる。「過半数突破から3分の2回復へ」との思いが一番強烈なのが改憲派だろう。われわれは改憲潮流を押しとどめ、総選挙ではいったんは打ち破ったといえる。そこに確信をもちつつ、同時に彼らの執念を甘く見てはいかないという思いを強くする。
(寺)
2024/10/31
過半数そして「3分の2」割れ
総選挙開票の27日深夜。もちろん最大焦点は自公過半数233割れかどうかだ。それとは別に「3分の2」を計算しているグループがいた。読売新聞である。28日付に「改憲議論 停滞の可能性」という2段記事がでた。「改憲に前向きな勢力は…総定数(465)の3分の2にあたる310議席を下回った」。この日付に出したのは読売だけではなかったか。読売といえば自らも04年までに3回にわたり改憲試案を発表し、自公国維の改憲潮流を後押ししてきた。彼らにとって「改憲勢力3分の2割れ」は自公過半数割れあるいはそれ以上のショックだったのだろう。「改憲反対、9条守れ」と訴えてきたわれわれは、21年総裁選のすべての候補、とくに岸田前首相が呼号していた「24年9月までの任期中に改憲を」を阻止し岸田を退陣させた。まずは一大勝利だ。その2か月後、それに続く第二次勝利だ。
もちろん自民党、中でも改憲最前線の石破首相はだまっていない。投開票の翌28日の記者会見で執念をあらわにした。「来年の自民結党70周年を控え、党是である憲法改正を前に進める。与野党の枠を超え、国会発議に必要な3分の2以上の賛成が得られるよう建設的な議論を行う」
これを受けたわけではないが毎日30日付は「自191,公24,維新38,国民28の計281議席」「公示前の338を大きく割り込んだ」と数字を出した。同紙は「憲法改正も大事なことだが、今はそれどころじゃない」という自民中堅議員の発言を伝えている。10月27日、国民は改憲勢力にも大きなハンマーを振りおろしたのだ。
日本国憲法には「過半数」のほかに、「4分の1以上」(臨時会の召集)、「3分の1以上」(会議の成立)などいろいろな分数がでてくる。しかし「3分の2以上」という最大値は改憲の国会発議96条と議員の資格を失わせる55条だけだ。「3分の2」は改憲勢力の命綱だった。しかしいま、憲法守れのわれわれにとっても「大きな武器」なのだ。
(寺)
2024/10/21
首相と「憲法」
27日が投票日だ。当メディアとして「石破と憲法」について改めて確認しておきたい。自民総裁選挙➡石破政権➡総選挙の流れで、石破首相の基本戦略は「手のひら返し」「豹変」、もう一つは「本音隠し」である。憲法問題は後者といえるだろう。
「石破と憲法」の基本は2012年4月の自民改憲案(当時は野党)によく表れている。今年夏に刊行された自著『保守政治家』で石破はこれを「議論の出発点とすべき」と言っている。同案は「戦力不保持」の9条2項を廃止し、「国防軍」を保持するという内容だ。石破の原点といっていい。
ところが2012年に首相に返り咲いた右派の安倍首相にしてみても、「国防軍」は国民の抵抗は大きく、これを押し通すまでにはいかなかった。そこで安倍自民党は2017年、いわゆる「加憲」論(9条の1項2項はそのままで3項に「自衛隊」を加える)を打ち出し、いちおういまはこれが自民の9条論となっているといっていい。ところが「国防軍」論者の石破は「加憲」論は気に入らない。上記本でも「杜撰」と批判している。
では石破はいま「国防軍」を正面から掲げているのか。ここは「豹変」ではなく「本音隠し」を決め込んでいる。27日の総選挙結果を見たうえで次の言い方を考えているのだろう。(なお石破は総裁選中から、臨時国会要求があれば〇日以内に召集と憲法に定める…など「お試し」ともいうべき〝改憲〟案を口にしている)
ただ上記本で石破は、総裁選に名乗りを上げる前ということもあって、安保分野についても本音も結構語っている。「地位協定」に関連して、「在日米軍と対になる『在米自衛隊』の存在を考える」(225㌻)と言っている。不平等というが、自衛隊を米国に置けば「対等」になるという論理だ。
「1949年のNATO発足時にアジア太平洋値域にも類似の集団安全保障組織の構想があった」「NATO発足から75年を経た今、むしろもう一度この構想に立ち戻るべきではないか」(226㌻)。「時間はかかるにしても」(同)と言いつつ、ここまであからさまに軍事同盟の拡大・強化・変身をいう政治家はそうはいない。
石破の「豹変」「本音隠し」の両面作戦を打ち破る絶好の機会、総選挙の投票日まで」あと1週間だ。上記の石破「憲法」スタンスも頭に入れておいていただくとありがたい。
(寺)