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2025/01/23
産経がいま一番おそれているのは
新聞の元日号トップは各紙がスクープを放ったり、その年に特に力をいれる課題を打ちだしたりしてしばしば話題になる。今年の産経がそうだろう。「別姓 小中生の半数反対 『自分はしない』6割」。そのために初の2000人調査をした、という。昨年の総選挙での「自公過半数割れ」「改憲勢力3分の2に達せず」について、自民応援新聞がいま何に最もおびえているかを浮き彫りにしているといえる。
24日から通常国会が始まったが、閉会後に都議選・参院選だ。産経は参院でも自公過半数割れしないか心配ではあるだろう。でも率直に言って「日米安保破棄」の政府ができるわけではない。天皇制だってまだ当分は続くだろう。では何が心配か、選択的とはいえ夫婦別姓が法的に認められることなのだ。それが産経の新年からのキャンペーンにあらわれているのではないか。
現に自民・産経の旗色は悪い。ざっくり言って「選択的夫婦別姓賛成」派明らかに固執派より多数である。(昨年7月の朝日世論調査では7割が選択的夫婦別姓に賛成だ。1月の毎日世論調査では「賛成46%、「反対」23%)
これを何としても阻止したい自民のコア部分(右派といってもいい)の不安を、産経がすくいあげたといえるだろう。「ごまかしの選択的夫婦別姓議論」と銘打った企画が続く。3日付「別姓 年内成立に現実味」、6日付「出生時の姓 裁判が決めるのか」。
8日付は右派のシンボル的存在と言える高市早苗氏が登場した。ただしいまは彼女とて「そもそも日本民族伝統の家庭という…」などとは言わない。見出しは「子の氏巡り親族争い懸念」といういわば小さなところにスポットを当てている。選択的夫婦別姓になって何が心配か。「夫婦双方の実家が子の氏を決める協議に介入する可能性」というのだ。それは夫婦の相談・協議にゆだねればいいだけのことではないか。天下の高市氏がそんな心配をしなくていい。
さらに高市氏は「通称(旧姓)使用求める声」というところに着地点を求めようとしている。それが広まっていることはみんな知っている。だからさらに「選択的夫婦別姓に」進もうという流れが多数になっているのだ。
改めて日本国憲法を引こう。9条とともに多くの人が好きだ、愛するという13条だ。「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」。そして24条「⓵婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」
23日のNHKテレビ7時のニュースは「今国会の焦点の一つ」として「選択的夫婦別姓」を取り上げていた。世論の関心も高い。憲法の精神を大きな武器・後ろ盾として、自民党右派、産経などの応援メディアの論と攻撃を打ち破っていこう。
(寺)
2025/01/03
国会前で無言の意志表示
作家の澤地久枝さんら250人
「NO!WAR」のプラカード を手にする澤地久枝さん =東京都千代田区で1月3日 |
東京・永田町の国会議事堂正門前で年明けの3日、作家の澤地久枝さん(94)ら約250人が「無言のスタンディング」を行った。軍事費の大幅な増額を打ち出すなど、「戦争への道」を進もうとする現政権への抗議の意志表示。澤地さんは「NO!WAR」のプラカードを手にしながら、鋭いまなざしを国会議事堂に向けていた。
◇ ◇
「アベ政治を許さない」。こんなスローガンを掲げた澤地さんが、国会前の歩道に立ったのは2015年7月18日。安倍政権が強行しようとしていた安全保障関連法案に異議を唱えて立ち上がった。成立すれば、集団的自衛権の行使が可能になるなど、戦後日本の安全保障政策の根本を揺るがす重大な局面。ジャーナリストの鳥越俊太郎さん、作家の落合恵子さんが賛同し、5000人(主催者発表)以上が国会前に駆けつけた。
澤地さんの呼びかけは、全国一斉の行動だった。このスローガンを俳人、金子兜太さん(18年2月、98歳で他界)が揮毫(きごう)してインターネットのサイトに掲載。参加者がそれぞれ印刷すれば、どこへでも持ち歩くことができる。当日はメイン会場の国会前をはじめ、各会場で有志が「アベ政治を許さない」と記された大判の紙を掲げた。当初は一回だけの予定だったが、その反響は大きく、4カ月後の11月3日の「文化の日」に再開され、以後、毎月3日、国会前での行動が続いている。
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「アンポをつぶせ!ちょうちんデモ」 に参加するメンバーら =東京都武蔵野市で1月1日 |
デモはベトナム戦争中の67年7月15日、数学者でもある社会運動家、もののべながおき(物部長興)さんの提唱でスタート。当初は「ベトナム反戦」を訴えて月2回実施していたが、戦争終結(75年4月)後は、毎月15日と元日に行っている。もののべさんは96年に亡くなり、現在は元私立高教師の川手晴雄さんらが継続している。
◇ ◇
昨秋の総選挙で、自公は大きく過半数割れをした。石破茂政権は少数与党政権であるとはいえ、それに対抗する野党が「平和憲法」に軸足を据えて力量を付けなければ、政治は変わらない。日本に大きな影響を与える米国はトランプ政権の再来で、このまま対米過剰依存が続けば沖縄の米軍基地の縮小は遠のき、自衛隊の南西諸島への配備が拡張され、日本は「戦争をする国」へと近づいていく。
そして忘れてはならないのは、自然災害や原発事故の問題だ。能登半島地震に関していえば、発生から1年を経過してもなお被災した人々は過酷な状況に置かれている。
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「2025年。戦後80年の年始めはどんな思いで国会前に立ちましたか」。国会前でのスタンディングを終えた澤地さんは、記者の問いかけに「戦争をしてはいけない。この一念です」と答えた。その後のミニ集会では、「(新春は)私たちが自分たちの手でお酒をつぎたい。日本の政治というものは混迷を極めていてこのままではろくな方向に行きません。せめて自分の意思というものをどこかにはっきりさせたい」と話した。
困難な課題が山積しているなかで迎えた正月。私たち市民こそ、この国の行方を真剣に考え、行動しなければならない。
(M・M)
2024/12/21
「企業献金は表現の自由」だと?
この半月ずっと気になっていることがある。石破首相の国会での「企業も表現の自由はある。献金禁止は憲法21条(表現の自由)に抵触する」という答弁(10日)である。私は1960年代、中学社会の授業で憲法を知り、以来さまざまな憲法論議を見聞してきたが、「企業献金も表現の自由」と言い切った憲法論は知らない。自民がよく持ち出す1970年の「八幡製鉄献金」についての最高裁判決もそこまでは言ってない。
さすがの石破首相も「言い方が足りなかった」(13日)と修正した。17日には国会で政府見解がでたが「政治献金禁止は憲法21条に違反しない」と言っている。政府の後ろ盾もなくなったわけだ。
私は大学の授業で憲法論を選択したことはない程度のものだが、石破首相に次のように言いたい、言える。
――選挙活動もある意味では表現の自由の一種と言えるでしょう。公選法の一定の制限があるにしても、法定ビラ、政見放送、街頭演説、個々面接と多くの面で自由に表現していい、つまりそれなりの言論の自由があります。しかしその公選法が厳しく禁じていること、それが『買収』です。つまり〝選挙は金で買えない〟からです。国民一人ひとりの政治信条、思想の自由を縛ること、ましてや金で動かそうとすることは絶対に許されない。これが憲法の精神です。企業が自民に巨額の金を与えて「表現の自由」だ、何でも使ってくれという、これは暴論を飛び越えて珍論と言えるのではないか。
政治献金・裏金問題で自民党は追い詰められている。自民の悪あがきともいえるのがこの石破発言だろう。われわれは憲法の精神を掲げてさらに包囲の輪を強めよう、広げよう。
(寺)
※ 参考=大久保賢一弁護士の18日のブログ「企業・団体献金は憲法上の権利なのか」
/赤旗日曜版12月22日号・山添拓日本共産党政策委員長(弁護士)インタビュー