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2024/12/21
「企業献金は表現の自由」だと?
この半月ずっと気になっていることがある。石破首相の国会での「企業も表現の自由はある。献金禁止は憲法21条(表現の自由)に抵触する」という答弁(10日)である。私は1960年代、中学社会の授業で憲法を知り、以来さまざまな憲法論議を見聞してきたが、「企業献金も表現の自由」と言い切った憲法論は知らない。自民がよく持ち出す1970年の「八幡製鉄献金」についての最高裁判決もそこまでは言ってない。
さすがの石破首相も「言い方が足りなかった」(13日)と修正した。17日には国会で政府見解がでたが「政治献金禁止は憲法21条に違反しない」と言っている。政府の後ろ盾もなくなったわけだ。
私は大学の授業で憲法論を選択したことはない程度のものだが、石破首相に次のように言いたい、言える。
――選挙活動もある意味では表現の自由の一種と言えるでしょう。公選法の一定の制限があるにしても、法定ビラ、政見放送、街頭演説、個々面接と多くの面で自由に表現していい、つまりそれなりの言論の自由があります。しかしその公選法が厳しく禁じていること、それが『買収』です。つまり〝選挙は金で買えない〟からです。国民一人ひとりの政治信条、思想の自由を縛ること、ましてや金で動かそうとすることは絶対に許されない。これが憲法の精神です。企業が自民に巨額の金を与えて「表現の自由」だ、何でも使ってくれという、これは暴論を飛び越えて珍論と言えるのではないか。
政治献金・裏金問題で自民党は追い詰められている。自民の悪あがきともいえるのがこの石破発言だろう。われわれは憲法の精神を掲げてさらに包囲の輪を強めよう、広げよう。
(寺)
※ 参考=大久保賢一弁護士の18日のブログ「企業・団体献金は憲法上の権利なのか」
/赤旗日曜版12月22日号・山添拓日本共産党政策委員長(弁護士)インタビュー
2024/12/01
改憲勢力の執念の先には何が
石破首相の総選挙後初の所信表明演説の翌11月30日付の産経新聞。「改憲発議『任期中』消える」といら立ちを隠せぬ見出しだった。少なくとも安倍、岸田首相は「私の任期中に改憲を」と呼号し、石破首相も10月の就任直後は「任期中」と言っていた。しかし総選挙大敗後の今回は「国会による発議に実現に向け」とはいうものの、時期を示せなかった。
憲法が定める改憲発議の「3分の2」以上は衆議院では310。自公に国民・維新を加えても及ばない。自公だけでもまだまとまらない改憲案作成を、いちおう「野党」の位置にいる国民、維新を巻き込んでできるのか。もしできたにしても今国会の構成では発議できない。
しかししかし、改憲の本家本元、自民中枢はそれでは収まらない。小野寺政調会長は11月24日の改憲団体集会で「自衛隊の明記はもちろん、9条2項も含めてしっかり変えていく必要がある」とあいさつした。ある右派名誉教授は「この程度で意気消沈しているときではない」とはっぱをかけた。
その延長線上にあるのが「25年衆参同時選挙」論だといえる。「過半数突破から3分の2回復へ」との思いが一番強烈なのが改憲派だろう。われわれは改憲潮流を押しとどめ、総選挙ではいったんは打ち破ったといえる。そこに確信をもちつつ、同時に彼らの執念を甘く見てはいかないという思いを強くする。
(寺)
2024/10/31
過半数そして「3分の2」割れ
総選挙開票の27日深夜。もちろん最大焦点は自公過半数233割れかどうかだ。それとは別に「3分の2」を計算しているグループがいた。読売新聞である。28日付に「改憲議論 停滞の可能性」という2段記事がでた。「改憲に前向きな勢力は…総定数(465)の3分の2にあたる310議席を下回った」。この日付に出したのは読売だけではなかったか。読売といえば自らも04年までに3回にわたり改憲試案を発表し、自公国維の改憲潮流を後押ししてきた。彼らにとって「改憲勢力3分の2割れ」は自公過半数割れあるいはそれ以上のショックだったのだろう。「改憲反対、9条守れ」と訴えてきたわれわれは、21年総裁選のすべての候補、とくに岸田前首相が呼号していた「24年9月までの任期中に改憲を」を阻止し岸田を退陣させた。まずは一大勝利だ。その2か月後、それに続く第二次勝利だ。
もちろん自民党、中でも改憲最前線の石破首相はだまっていない。投開票の翌28日の記者会見で執念をあらわにした。「来年の自民結党70周年を控え、党是である憲法改正を前に進める。与野党の枠を超え、国会発議に必要な3分の2以上の賛成が得られるよう建設的な議論を行う」
これを受けたわけではないが毎日30日付は「自191,公24,維新38,国民28の計281議席」「公示前の338を大きく割り込んだ」と数字を出した。同紙は「憲法改正も大事なことだが、今はそれどころじゃない」という自民中堅議員の発言を伝えている。10月27日、国民は改憲勢力にも大きなハンマーを振りおろしたのだ。
日本国憲法には「過半数」のほかに、「4分の1以上」(臨時会の召集)、「3分の1以上」(会議の成立)などいろいろな分数がでてくる。しかし「3分の2以上」という最大値は改憲の国会発議96条と議員の資格を失わせる55条だけだ。「3分の2」は改憲勢力の命綱だった。しかしいま、憲法守れのわれわれにとっても「大きな武器」なのだ。
(寺)