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2024/10/31
過半数そして「3分の2」割れ
 総選挙開票の27日深夜。もちろん最大焦点は自公過半数233割れかどうかだ。それとは別に「3分の2」を計算しているグループがいた。読売新聞である。28日付に「改憲議論 停滞の可能性」という2段記事がでた。「改憲に前向きな勢力は…総定数(465)の3分の2にあたる310議席を下回った」。この日付に出したのは読売だけではなかったか。読売といえば自らも04年までに3回にわたり改憲試案を発表し、自公国維の改憲潮流を後押ししてきた。彼らにとって「改憲勢力3分の2割れ」は自公過半数割れあるいはそれ以上のショックだったのだろう。

 「改憲反対、9条守れ」と訴えてきたわれわれは、21年総裁選のすべての候補、とくに岸田前首相が呼号していた「24年9月までの任期中に改憲を」を阻止し岸田を退陣させた。まずは一大勝利だ。その2か月後、それに続く第二次勝利だ。

 もちろん自民党、中でも改憲最前線の石破首相はだまっていない。投開票の翌28日の記者会見で執念をあらわにした。「来年の自民結党70周年を控え、党是である憲法改正を前に進める。与野党の枠を超え、国会発議に必要な3分の2以上の賛成が得られるよう建設的な議論を行う」

 これを受けたわけではないが毎日30日付は「自191,公24,維新38,国民28の計281議席」「公示前の338を大きく割り込んだ」と数字を出した。同紙は「憲法改正も大事なことだが、今はそれどころじゃない」という自民中堅議員の発言を伝えている。10月27日、国民は改憲勢力にも大きなハンマーを振りおろしたのだ。

 日本国憲法には「過半数」のほかに、「4分の1以上」(臨時会の召集)、「3分の1以上」(会議の成立)などいろいろな分数がでてくる。しかし「3分の2以上」という最大値は改憲の国会発議96条と議員の資格を失わせる55条だけだ。「3分の2」は改憲勢力の命綱だった。しかしいま、憲法守れのわれわれにとっても「大きな武器」なのだ。
(寺)
2024/10/21
首相と「憲法」
 27日が投票日だ。当メディアとして「石破と憲法」について改めて確認しておきたい。

 自民総裁選挙➡石破政権➡総選挙の流れで、石破首相の基本戦略は「手のひら返し」「豹変」、もう一つは「本音隠し」である。憲法問題は後者といえるだろう。

 「石破と憲法」の基本は2012年4月の自民改憲案(当時は野党)によく表れている。今年夏に刊行された自著『保守政治家』で石破はこれを「議論の出発点とすべき」と言っている。同案は「戦力不保持」の9条2項を廃止し、「国防軍」を保持するという内容だ。石破の原点といっていい。

 ところが2012年に首相に返り咲いた右派の安倍首相にしてみても、「国防軍」は国民の抵抗は大きく、これを押し通すまでにはいかなかった。そこで安倍自民党は2017年、いわゆる「加憲」論(9条の1項2項はそのままで3項に「自衛隊」を加える)を打ち出し、いちおういまはこれが自民の9条論となっているといっていい。ところが「国防軍」論者の石破は「加憲」論は気に入らない。上記本でも「杜撰」と批判している。

 では石破はいま「国防軍」を正面から掲げているのか。ここは「豹変」ではなく「本音隠し」を決め込んでいる。27日の総選挙結果を見たうえで次の言い方を考えているのだろう。(なお石破は総裁選中から、臨時国会要求があれば〇日以内に召集と憲法に定める…など「お試し」ともいうべき〝改憲〟案を口にしている)

 ただ上記本で石破は、総裁選に名乗りを上げる前ということもあって、安保分野についても本音も結構語っている。「地位協定」に関連して、「在日米軍と対になる『在米自衛隊』の存在を考える」(225㌻)と言っている。不平等というが、自衛隊を米国に置けば「対等」になるという論理だ。

 「1949年のNATO発足時にアジア太平洋値域にも類似の集団安全保障組織の構想があった」「NATO発足から75年を経た今、むしろもう一度この構想に立ち戻るべきではないか」(226㌻)。「時間はかかるにしても」(同)と言いつつ、ここまであからさまに軍事同盟の拡大・強化・変身をいう政治家はそうはいない。

 石破の「豹変」「本音隠し」の両面作戦を打ち破る絶好の機会、総選挙の投票日まで」あと1週間だ。上記の石破「憲法」スタンスも頭に入れておいていただくとありがたい。
(寺)
2024/10/05
平和への道に進め
 石破茂首相が10月4日午後、就任後、初めての所信表明演説を衆参両院の本会議で行った。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に関し、「国民の政治不信を招いた事態について、深い反省とともに触れねばならない」と陳謝したものの、政権基盤のもろさもあいまって多難な船出が予想される。9日に衆院解散に踏み切るが、「憲法9条の二項を削除」と言い放つ人が首相でいいのかと不安が膨らむ。
 まずは、劇的な結果となった9月27日の自民党総裁選を振り返ろう。第1回投票で、高市早苗前経済安保担当相は、石破氏を上回る最多の党員票を集めた。議員票では小泉進次郎元環境相に次ぐ2位。合計で最多181票を獲得した。ところが決選投票では、石破氏の票が高市氏を上回り、驚きの結果となった。
 票の分析をすると、党員票は、高市氏が最多で、とりわけ都市部が強かった。一方、地方は石破氏が強さを発揮。従来の都市部ではリベラルが強く、地方では保守が強いという傾向が変わって、都市部の住民が保守化している姿が浮かび上がる。高市氏は、安倍晋三元首相の路線を継承した経済政策が評価されたともいわれる。
 では、決選投票で石破氏が高市氏を逆転したのはなぜか。元自民党議員によると、超右派である高市が首相でいいのかという心配が国会議員の間に広がったという。高市氏の外交政策を危惧する声もあった。そうした不安や懸念が、1回目の投票の結果をひっくり返したとすれば、自民党の中にも極端な右傾化に危機感を抱く議員がいるということだ。
 所信表明の演説で、石破氏は在日米軍の活動ルールを定めた日米地位協定の改定などには言及しなかった。けれども、外交・安全保障政策では、従来の首相のように「日米同盟を基軸」とする姿勢を打ち出した。ということは、沖縄の米軍基地の縮小は望めず、自衛隊の拡張に力を注ぐということか。肝心の憲法については、首相在任中に発議を実現する考えを示し、改憲路線を踏襲する。
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 この日、パレスチナ自治区・ガザ地区の出身の医師で、来日中のイゼルディン・アブラエーシュ博士=写真=が、東京・内幸町の日本記者クラブで会見した。博士は2009年の戦争で娘3人とめいを失った。「私の娘たちが最後の犠牲者になりますように」と叫ぶ博士の姿がイスラエルのテレビ局で放映され、同国の市民はもとより、各国の人々に衝撃を与えた。博士は以後、「平和的共存」を唱え、ノーベル平和賞に5回、ノミネート。現在はカナダのトロントに拠点を移し、大学で教えながら、即時停戦を外側から訴えている。
 「日本のみなさんは、戦争がどのような苦しみをもたらすかを知っている。いまパレスチナはまさにそういう状態です」と博士はいい、「平和は善意と外交交渉でもたらされる」と日本政府に、「即時停戦」への協力を求めた。
 米国の傘の下で、防衛費の倍増を打ち出した前政権の後を継ぐのか、それとも平和外交に注力して国際社会での信頼を築くのか。どちらが「平和への道」につながるのか、答えは言うまでもない。
(M・M)
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