2021/02/07
問われる日本社会
── 森喜朗会長の女性蔑視発言 ──

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相は、3日、JOC臨時評議委員会で挨拶、女性理事の増員に関連して、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。ラグビー協会は今までの倍、時間がかる」「女性は優れているところだが競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、みんな発言される。女性を増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制をしておかないとなかなか終わらない」「私どもの組織委員会にも、女性は7人くらいいるが、みんなわきまえている」などと発言した。
 発言が報道された4日朝から、批判が広がり、4日から5日夕方までに都庁にあった抗議電話は約500件、CHENGE・ORGで始まった「森会長の処遇検討・再発防止」を求める署名は5日夕までで7万9000に達した。ツイッターでは「わきまえろと言われても、声を上げ続けるのが私たちのやり方です」という「#わきまえない女」のツイートが共感を呼んだ。

 この状況に、森会長は4日、釈明会見を開き、「発言を撤回する。不愉快な思いをされた皆さまには、お詫びを申し上げたい」と述べ、「辞任」について聞かれ、「私は一生懸命、献身的にお手伝いして7年やってきたわけですので、自分からどうしようという気持ちはありません」と、「自分から辞任する考えはない」ことを表明。「辞めさせられるなら辞めさせてみよ」という「居直り姿勢」が強調された形になった。しかし、7日の毎日新聞によれば、森氏は5日「いったんは辞任する腹を固めたが、武藤敏郎事務総長らの強い説得で思いとどまった」と話したという。
 IOCのバッハ会長は、橋本聖子・五輪担当相からの電話に「よく理解した」と伝えたというが、批判は収まらず、国際的に広がっている。目立っているのは、欧州各国の駐日大使館などがツイッターで投稿、「#Don't Be Silent」(沈黙しないで!)、「#Gender Equality」(ジェンダー平等)=EU代表部=などのハッシュタグが広がっている。国連広報センターも「沈黙を打ち破ろう。誰かが一線を越えたら声を上げよう。家父長制への無言の迎合は受け入れてはいけません」とツイートした。

 なぜ、森発言が大問題になるのか。それは、単に女性が会議で発言するかどうか、という問題ではない。構成員の中の女性の数から、ポストや発言機会まで、スポーツ界の組織が、結局、「男性社会」に牛耳られてきた歴史やそれを認める風潮が今なおあるからだ。しかも、それを代表する日本政治の「ドン」、首相経験者で今なお自民党の有力派閥「清和会」(細田派)のボスで、政財界に隠然たる力を持った人物の発言は、日本社会の遅れた一面を見せることになったからだ。
 事実、菅義偉首相を初めとして、各閣僚とも発言は批判しても辞任を求めず、進退については「最後まで全うしていただきたい」などと擁護。「五輪強行」を諦めない姿勢。森会長問題は、日本社会がこれからの世界にどう向き合っていくか、の試金石にもなってきている。
2021/01/29
政府、政治こそ「改正」が必要
「緊急事態です。刑罰(懲役・罰金)だけでなく、「数十万円の過料」(制裁金)にも反対です」
 新型コロナウイルス対策の根拠となる特別措置法と感染症法の両改正案について、弁護士の毛利正道さんが1月29日、オンライン署名サイト「Change.org」を通じて反対のキャンペーンをスタートさせた。憲法研究者ら有志も30日に反対声明を発表。刑事罰や行政罰など強権的な国の態度に、各界から反対の声が相次いでいる。

 自民党の二階俊博、立憲民主党の福山哲郎両幹事長は28日、国会内で会談し、新型コロナウイルス対策のベースとなる、新型インフルエンザ等特別措置法案と感染症法の両改正案を修正することで合意した。政府案にあった、入院措置を拒否した人への懲役や罰金など刑事罰は削除されたが、前科のつかない行政罰の過料に切り替えられたため、結局、患者への罰則は設けられる。営業時間短縮の命令に従わなかった事業者への過料も、金額が引き下げられたとはいえ、依然として残ったまま。行政の権限強化に変わりはない。改正案は29日に衆院で審議入り。2月3日の参院本会議で、与党や立憲の賛成で可決、成立する見通しとなった。
毛利正道弁護士がスタートさせた
反対キャンペーンの画面
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 こうした事態に、ネット上で反対キャンペーンを始めた毛利弁護士は、「日本の感染拡大の主たる原因が感染者が入院しないことにありますか。市民が疫学調査に応じないことにありますか。事業者が営業時間短縮の要請を聞かずに営業したことによるものですか」と疑問をぶつけ、さらに、コロナ禍を収束させるために立場を超えて一致団結しないといけないときに「分断を生むような法律が有効だと思いますか」と政治家らの姿勢を追及する。
 一方、飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)、右崎正博さん(獨協大学名誉教授)、稲正樹さん(元国際基督教大学教授)ら憲法研究者は、有志で反対声明を出す準備を進めている。賛同者が29日現在、65人になった。
 生命に対する権利、健康で安全な生活を送る権利は、憲法(13条、25条)で認められ、その保障こそが政府に課せられた最も重要な役割だ。ところが、政府は感染防止のために必要な検査体制をきちんと整備せず、医療機関への支援、感染者の入院、療養施設は依然として不十分。声明文では、今回の改正法案は「不適切なコロナ政策の結果として生じた状況に刑事罰や行政罰、公表などの威嚇で強権的に対応することを可能にする、本末転倒な法案であり、政府の失策を個人の責任に転嫁するものだ」と厳しく批判する。
 改正案の罰則については、「社会的害悪が明確で悪質な行為だけを犯罪として法律で定めることができるという適正手続主義(憲法31条)からも問題がある」「憲法31条は刑事手続の規定であるが、刑事手続の規定も行政手続に準用されることは最高裁判所でも認められること、行政目的達成のために必要最小限の権利・自由の制約しか認められないという比例原則に照らせば、改正案に行政罰を設ける憲法上の妥当性には疑問がある」――など、憲法上の欠陥も詳細に指摘する。
 苦しんでいる患者、事業者らを罰するという発想。一体、誰のための何のための法律「改正」なのか。「改正」すべきは、政権、政府の考え方の根本ではないか。
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