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2024/09/20
投票困難者へ、まず公助を
 きょうは9月20日だから自民総裁選の結果はまだ出ていない。そのなかで改憲問題はマグマのように激化の機会をうかがっている。で、少し違う角度で憲法を考えたい。私は7月22日に当欄で「都心でも高齢化で投票に行けない」(朝日「ひととき」7月6日)という投書を紹介し、憲法で保障されているはずの参政権が脅かされていると書いた。投書者は「ネットはできないので郵便投票の拡大を」と訴えていた。

 7月は私もその方向を強調した。しかしそれには法や条例改正も必要になるのではないか。視点を変えてみることが必要だ。高齢者・障害者が投票に行きやすいよう車を出せばいい。「自助(車がない)・共助(まわりで車を出せる状況にない)」が無理だからこんな投書がくるのだ。まず公助だ。自治体が車を出せばいいのだ。

 私はこの投書を乗せた「朝日」の鈍さに少々腹をたてていた。投書者の住所がわかっているのだからひざや腰が悪い高齢者がどれほど大変か、検証すればいいのだ。朝日は8月27日付に俳優・渡辺えりさんが前月の「ひととき」欄をふりかえる企画でこの投書をとりあげて「驚いた」とコメントしたが、「近所のボランティアは?」という「共助」思考どまりだった(私も似たようなものだ)。ところがその朝日は投書の20日後、26日のネット記事で若干フォローして、最後にさりげなく書いている。「自治体によっては投票所までのバスの巡回や無料乗車券の配布、移動が困難な人への送迎をしているところもある」。それを具体的に知らせるのがメディアだろうが、と思ったら、昨年の12月13日にNHKが「投票日にタクシー送迎」というウェブ記事を出していた。これだ。

 詳しくはウェブ記事を見ていただくとして、兵庫県南あわじ市では「投票所までの距離が1キロを超える歩行困難者」にタクシー券をだしている。愛媛県東温市では妊婦などすべての有権者を対象に移動支援をしている。

 参政権の第一歩、投票権の行使へ、まず「公助」を。そのために動こう。
(寺)
2024/09/09
「自民党総裁選を『軍拡・改憲キャンペーン』にさせるな」とマスコミ九条の会有志がアピール

 本来なら、党内でひっそり議論されて、政策を掲げて登場するはずの総裁を、大衆討議にかけるかのように、メディアを使って大宣伝し、民衆の任期で決めてしまおうという、ポピュリズム政治の極致、「自民党総裁選」が始まった。
 自民党内で自分たちの利益のために、どう言ったらいいか、議論し、その後の総選挙ではそこでの議論を既成事実にして進んでいこうという、大戦略。この、仕掛けについて、「マスコミ九条の会」のメンバーだった「有志」が、9日、メディアと国民に、「総裁選を改憲・軍拡のキャンペーンにさせるな」とのアピールを発表した。

 「有志として呼びかけ人に名前を連ねたのは、▽元岩波書店役員・今井康之▽JCJ運営委員・河野慎二▽映画監督・小林義明▽元毎日新聞労組書記長・杉山隆保▽マスコミ九条の会代表、元日本テレビプロデューサー・仲築間卓蔵▽デザインディレクター・元電通・畑泰彦▽JCJ運営委員・丸山重威▽ジャーナリスト、元赤旗・梁取洋夫▽JCJ運営委員、元読売広告社・山中賢司―の各氏。約100人の「賛同者」とともに、メディアと「受け手」の国民に訴えている。

 以下、その全文を紹介する。

自民党総裁選を『軍拡・改憲キャンペーン』にさせるな―自民党総裁選の「メディアジャック」に抗議し、メディアと国民に訴える

自民党総裁選は9月12日告示、27日投票で行われる。私たち「マスコミ9条の会・有志」は、「メディアジャック」と言われる現状の報道が、結果的に、総選挙を前にした「自民党の政策キャンペーン」になることを恐れ、メディアと広く国民に訴えます。

8月14日表明された岸田首相の総裁選不出馬は、11人とも12人とも言われる候補者を生み出し、あたかも自民党が自由で、民主的な政党であるかのような印象操作を生んでいます。メディアも、多数の「候補者」の言動を報じる中で、一般読者や視聴者に、批判され続けてきた自民党政治が、「清算」され「若返り」し、「刷新」されるかのような錯覚を与えています。
 私たち「マスコミ九条の会・有志」は、この状況についてメディアに、「自制」と「改善」を求めるとともに、メディアの「受け手」である全ての国民のみなさんに、報道に惑わされず、「金まみれ」「軍拡・戦争準備」の自民党政治に批判の声をあげていただくよう、呼び掛けます。

岸田内閣は、米国の強い要請の下で、一昨年の「安保3文書改定」以来、安倍政治を引き継いで、首相みずからが「戦後安保政策の大転換」とよぶ「軍拡・改憲」政策を、矢継ぎ早に進めてきました。具体的には、「拡大抑止」と呼ぶ「核廃絶」に背を向ける米戦略の下で、「専守防衛」は「敵基地攻撃」で突き崩され、日本を「西側の兵器廠」としかねない防衛産業の育成、強化や、自衛隊をも事実上米軍の指揮下に置こうとする指揮権合意によって、「米国とともに戦争する国」への障碍が次々と突き崩されています。「専守防衛」や「非核3原則」、「武器輸出の禁止」などの原則も、当然のように無視されています。

そしてこの「戦争路線」と憲法の矛盾は、これ以上ごまかしが難しくなり、「看板の掛け替え」で「改憲」を狙う「若い政権」を作らなくては乗り切れないと考えられています。岸田首相が8月7日「国民投票では、自衛隊の明記を入れて欲しい」と指示したのち、総裁選不出馬を表明したことはその現れで、「軍事国家」つくりは、早速、2025年予算の概算要求では8兆5389億円の防衛費が計上されたことも報じられています。

 私たちは、自民党総裁選の候補者、特に「世代交代」の対象とされる若手候補者が、「戦争の惨禍」と、平和憲法の「非戦・非武装」の精神と決意を学ぶことなく、「憲法改正は必要」「現状では自衛隊増強は必要」「核の傘なしに平和は守れない」など、間違ったプロパガンダに載せられていることを恐れています。ましてそれを「政見」と称して手放しで語るのを恐れます。メディアが、憲法の原則や戦後の精神を抜きに、「若さ」や「現代性」を報じ、評価することに、反省を求めます。

 今回の自民党総裁選では、自民党の宿弊でもある岸信介首相時代から始まる統一協会・勝共連合との「癒着」と、80数人の自民党議員が「連座」した「裏ガネ疑惑」についても、使途の解明、カネの流れなどについて、何の説明もないまま、競われています。
 メディアは、さすがに「裏金疑惑」については触れ、候補者たちに説明を求めていますが、いずれも答えはあいまいです。広く求められた「企業・団体の献金禁止」も、政治資金規正法の再改定もありません。候補者の中に「国民の要求」に応える回答は、軍事路線同様にありません。

 自民党総裁選は、報じなければならないテーマです。しかし、報じるなら「自民党政治の長年の誤り」をきちんと指摘し、自民党だけでなく一般国民が政治の歪みをどう正すかが必要です。 メディアと、国民に、改めて訴えるものです。

2024/08/18
総裁選キャンペーンにごまかされるな
 岸田首相が「総裁選不出馬」を表明したことで、政局は一挙に「自民党総裁選騒ぎ」に突入した。

 以前からポスト岸田を目指していると言われていた、河野太郎、小泉進次郎、石破茂、高市早苗、野田聖子などに加えて、林芳正、上川陽子、小林鷹之、加藤勝信、斎藤健、茂木敏充などの名前が出てきている。
 「コップの中の争い」であることに違いはないが、とりあえず、総裁戦後、次期総選挙の自民党のリーダーだとすれば、誰になるかは関心を集める。
 しかし、「総裁選」を契機に政策が論じられ、あたかもそれが、「日本の針路」の既定事実であるかのように論じられるとすれば、これは自民党政治の格好の「大宣伝」。実は自民党の大戦略に載せられたことになる。

▼何の総括もない諸懸案

 総裁選が始まった政局で、もっとも重要なことは、安倍政権から岸田政権に至る自民党政権が進めた「軍拡」や、「対米追従」の外交路線、「金金」、そして「改憲」などの問題は、何の総括もされていないことだ。
 
 首相が「裏金の責任を取った」というのは、確かに自民党員や派閥に対してはそうだったかもしれないが、国民に対して、これまでの「裏カネの使い道」とか、「政治活動費の使途」が明らかにされたわけで、政治資金規正法の改正は、議員の「監督責任」が決められただけで、現行制度は温存された。

 基本的な問題である「政党助成金」も「企業献金」も手つかず。これではとても、「責任を取った」ことにはならない。
 そればかりではない。憲法と国会を無視して進めてきた「軍拡」「対米追従」「改憲」については、何の反省もない。

戦後日本を支えてきた、「政府の行為によって再び戦争の惨禍をもたらさない」(憲法前文)という精神は、「非戦・非武装」の9条によって支えられ、「専守防衛」「非核3原則」「武器輸出の禁止」「防衛費GNP(GDP)1%枠」などで、辛うじて保たれてきた。

 しかし、岸田内閣は米国の対日政策に沿って、敵基地攻撃が可能な攻撃型兵器を持ち、防衛産業の育成、外国との戦闘機の共同開発まで推進し、自衛隊の活動領域も、韓国、オーストラリア、フィリピンからインドまで広げた。

 米国と日本を基軸にした「格子型」と称する軍事同盟で、中国封じ込めを狙う「戦後日本の安保政策の大転換」を成し遂げ、在日米軍との間に「共同司令部」をつくるところまで進んできた。

▼「戦後安保政策の大転換」

 バイデン米大統領は、安倍政権を引き継いで、日本の「対米従属・軍事強化」路線の岸田首相を賞賛してきた。
 「私は3度にわたって、防衛費の増額を働きかけ説得した」(昨年6月20日、カリフォルニアの支持者集会)
 「話す予定はなかったが、言わせてほしい。この男が立ち上がり、ウクライナを支援すると思った人は、欧州や北米にはほとんどいなかった。だが彼は防衛予算を増やし、日本を強化した。改めてこの公の場で感謝したい」(昨年7月12日リトアニア・ビリニュスのG7ウクライナ支援会議)
その結果、岸田首相は、米国に国賓待遇で招かれ、ことし4月11日議会の上下両院会議で演説した。

 「日本は長い時間を掛けて、内向きの同盟国から変化を遂げ、米国に対する地域のパートナーから、グローバルのパートナーになった」「あなた方は一国ではない。私たちがいるYou are not alone. We are with)」
日米は、ここで在日米軍と自衛隊の指揮体制の強化、一体化について協議し、7月には「核抑止」を含めた「拡大抑止体制」と、指揮体制についても確認している。

 岸田首相は、こうした「安保政策の大転換」を、国会も抜き、憲法も無視して、成し遂げた。米国にとって、岸田首相は、「ご苦労さん。交代して…」であり、こんどは、戦後の精神や反戦の空気を知らない、親米派の若い指導者に日本を託したいのだろう。

 岸田退陣表明を受けたホワイトハウスは8月14日、国家安全保障戦略の改定やウクライナへの支援を挙げ、日米韓3か国の協力について「新時代を切り開く歴史的な一歩を踏み出した」「日米同盟は、協力して新たな高みに引き上げた」と強調した。

 米国にとって、「日本を英国と同じ程度の同盟国にする」(2007年2月、第2次アーミテージ・ナイ報告)という路線は、岸田退陣―新政権誕生で間違いなく一歩進むことをめざす。自民党総裁選は「転換した日本・キャンペーン」のスタートにされかねない。

▼「看板掛け替え」にごまかされるな

 「どちらがいいか」「誰ならいいか」という程度の問題ではない。メディアは冷静に、自民党の政策を見詰め、報道、批判していかなければならない。
 自民党はこれまで、常に「改革」を掲げて「看板」を掛け替え、国民を欺いて、分断し、弱者をダシにした「反国民的政治」=「新自由主義政策」を貫徹してきた。

 今回も、国会での議論を避け、閣議決定を多用し、憲法に反する施策を積み重ねてきたが、いよいよ具合が悪くなって「看板掛け替え」が狙われている。

 「平和国家を捨てて、軍事国家造り」(米誌「タイム」昨年5月22、29日号「日本の選択」)を進める中で、「化けの皮」が剥がれて行き詰まり、裏金で国民の信頼を失った自民党の究極の「看板掛け替え」だ。

 しかし、投票権がない一般国民として、取り敢えず要求したいのは、野党とか反体制とか言わなくても、明らかに世論に背を向けた政策の是正だ。

 例えば、いまの自民党の政策を踏襲したにしても可能な具体策、「裏金議員の全額調査報告」、「核兵器禁止条約への参加」、「非核三原則・核廃絶の確認」、「原発依存からの脱却」、「企業団体献金の禁止」、「日米地位協定の改定」、「夫婦別姓」など。
 これらは、自民党としてはスルーしたとしても、新聞論調の多くで批判され、世論は認めていないし、日本の将来に直接関わる問題だ。

 現実的に日本の「革新」を進めるために、「看板掛け替え」にごまかされることなく、国民的要求を高めて、みんなが「自民党ノー」の声を出さなければならない。
(S.M)

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