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2024/06/17
一つの「決着」
6月、日本政治の焦点は、今国会閉幕までの「政治資金」問題の着地のありよう、それと東京都知事選だろう。当欄でS.M氏、M.M氏が取り上げた通りである。私はさらに当欄の主要テーマともいえる憲法について「9月の岸田任期までの改憲」の各種の猛攻を押しとどめたことを、この6月の重要な足跡としてあげたい。6月13日の衆院憲法審査会で自民党の中谷元・与党筆頭幹事は今国会中の改憲案審議は無理と見て「個人メモ」を出した。災害や感染症などを持ち出して「選挙困難時の任期延長」を提案した。改憲案であるかどうかも定かでない。国民民主の玉木代表はや維新議員はあからさまに不満を表明した。衆院審査会は6月20日が今国会最後の定例日だが、党首討論があり内閣不信任案提出も予想され、審査会は開かれないだろう。
「9月岸田首相(自民総裁)任期までの改憲」をわれわれはいったんは打ち破った。「9月まで」攻防に一つの決着をつけたのだ。自民は今年の大会決定でいう「今年中」となお言うだろうが、われわれも「今年中の改憲などとんでもない」とまた押し返せばいい。そういう闘いが続く。さらに岸田が9月までの解散という「奇手」を使うかの可能性はゼロではない。また誰であれ自民の9月以降の総裁が解散に打って出ることは考えられる。つまりわれわれの改憲阻止行動は「次の総選挙」と密接にからんでくる、いまはそういう時期なのだ。
4月の衆院補選は自民3議席がなくなり、いずれも野党第1党の立民党がとった。改憲自民が減り、国会憲法審査会で自民改憲案にノーといっている党が増えたのだ。次の解散が誰の手で行われるにせよ、巣選挙は改憲をめぐる一大激突の場でもある。改憲勢力を減らそう。その意味では今回の都知事選は小池支持の改憲勢力を打ち破るたたかいでもあるのだ。
最後に、岸田政治はいま「難破船」「断崖」などいろいろいわれているが、この時を狙って右派マグマが急膨張・爆発しないとも限らない。4月の自民憲法改憲実現本部(古屋圭司本部長)のあと、党や政府の要職を歴任した重鎮が、改憲作業が進まないことに業を煮やし「もうこんな自民党には愛想をつかした」と岸田首相おろしととれる発言をした(4月27日付産経)。今の自民の右バネの底流として警戒を怠ってはならない。
(寺)
2024/06/16
政策論争できるのか
東京都知事選 6月20日告示、7月7日投開票
小池百合子都知事の都知事選への立候補表明を伝える各紙
東京都知事選の告示が20日に行われる。これまで40人余が立候補の意向を示しているが、有力候補は立憲民主党に離党届を出した蓮舫(れんほう)参院議員(56)と現職の小池百合子知事(71)になるだろう。少子高齢化、首都直下地震にそなえる防災、神宮外苑など都心の再開発に伴う自然破壊――。都が直面する課題は山積するが、この二人がどんな公約を掲げるのかはいまだにあいまいだ。2期8年続いた小池さんの都政運営に関しては、待機児童の解消など「七つのゼロ」をめぐる評価が争点の一つになる。ところが、小池さんが立候補を表明したのは12日。その後、「選挙公約は大安の18日に」と会見で述べたが、選挙戦術だとしてもこれだけ遅いと、公約の準備や作成に影響が出るのは必至だ。しかも学歴詐称問題がきちんと解決していない。一方、「小池都政をリセットする」を合言葉にする蓮舫さんも、公約については、「小池さんの政策を見てから。出すのは同時期になる」といい、政策論争を深める状況になっていない。
都は今年から、東京都庁舎を「キャンバス」に巨大な「プロジェクションマッピング」の通年上映を始めた。「東京の夜を彩る新たな観光スポット」と銘打つが、その実施のために昨年度、計上された予算は7億円。「そんなお金があるのなら、福祉や失業対策に使ってほしい」と言いたい。
東京都の有権者数は全国最大の約1150万人(3月現在)。都の動向は国政に影響を与える。少なくとも、次の都知事には、いま、苦しんでいる人々のための施策を充実させ、未来の東京をみすえた政策を遂行してほしい。そして有権者は、立候補者に「公約をきちんと掲げて」と声を上げ、内容を見極めたうえで投票に行こう。
投開票は七夕の7月7日だ。
(M・M)
2024/05/29
「修正協議」というごまかしに妥協するな
終盤国会で、政治資金規正法の改正が問題になり、「与野党協議」なるものが行われる。何でも、「政策活動費」の扱いや、パーティ券の大量購入を5万円にするのか10万円にするのかなどが焦点なのだそうだが、最初から問題にされ、野党が要求している「企業、団体献金の禁止」と、国民の税金から強制的に取られている「政党助成金の廃止」は、論点にもならないらしい。しかし、それを抜きにした政治資金規正法改正などはありえない。適当に「修正」し、「改正」を通してしまおう、というのが、自民党のハラ。野党の一部も、「変えないより変えた方がいい」という理屈で「妥協」を模索。しかし、これだけ騒いでおいて、またも「ごまかし決着」というのは許せない。▼3年目の「裏金」騒ぎ
もともとの経過を振り返ってみよう。問題の発端は、一昨年11月の赤旗報道。自民党・派閥の政治資金報告書が政治資金パーティなどで過少申告なのを発見して報道した。一年間、じっくり捜査したのか、放っておいたのか分からないが、昨年10月、東京地検特捜部が捜査を始めた。神戸学院大学の上脇博之教授が刑事告発した中でのことだった。
「自己流軍拡」を進めるのに、問題すり替えに使えると考えたのか、岸田内閣もこれに乗って、ときの松野博一内閣官房長官、西村康稔経産大臣などを更迭して、「清和会」=元安倍派=を追い詰めた。
首相は自派については、早々と「解散」を宣言してやる気を見せたが、これが「自民党の危機」であることに気づくと、「派閥解散」や「政倫審」に逃げ、自ら最初の出席者になり、衆院80人、参院30人に及ぶ出席要請者が、頬被りして逃げようとするのを放置したままだ。
▼「不可解な憲法論」―最高裁判決
もともと、この問題は1990年代の「政治改革」からの流れがある問題。このときの「改革」では、企業・団体献金を廃止し、その代わり、政党助成金制度を創設してきた結果。この「企業・団体献金」は、現在も結局「野放し」になっている事実にあえて目をつぶって、ここまで来たのだ。
2月17日付本欄でも紹介したが、そもそも問題は、企業の政治献金は、本来、利益を追求するのが「会社・企業の論理」であることから、「できない」(違法)とされていたものを、1970年6月、「企業に政治資金寄付の自由がある」とする論理を最高裁がとって、現在まで続けられていることだ。
石村修専修大名誉教授は、雑誌「法と民主主義」(日本民主法律家協会・発行)5月号で、最高裁(石田和外裁判長)が争点ではなかった「法人の権利能力」にまで踏み込んで「憲法上は公共の福祉に反しない限り、会社といえども政治資金の寄付の自由を有する」と判示したことについて、「不可解な憲法論」と指摘している。
▼企業献金の見返りで政治が歪む
しかし考えてみよう。確かに、営利企業が非営利事業にカネを出すのは、慈善や文化活動を除けば、何かの賄賂か役員の使い込み、背任以外にない。会社、企業の存在も、現在は、戦後まもなくの時期とは大きく変わっている。実は見直しのチャンスである。
「週刊ポスト」5月17日、24日号は、「岸田(自民)が”集票組織”に補助金バラ撒き 内部報告書入手!」と題する記事を掲載。自民党には、各種企業団体の要望と、献金額、それに対する自民党の回答、そして、選挙に組織動員する票数を記録した文書があり、記事には、「令和6年版」の「要約版」からつくった一覧表を掲載している。
つまり、献金と動かせる「票」をもとに、政策が、企業団体の「ご希望通り」実行される。カネに「票」と見返りの「政策」がついてくる仕組み。これが「ワイロ」でないなら、それと「紙一重」。企業によって歪められている自民党政治の実態を示している。
<週刊ポストより>
(S.M)
(S.M)