2021/04/12
なぜ? 汚染水海洋放出
── ウソに縛られる日本の政治
 菅義偉首相は7日夕、首相官邸で全国漁業協同組合連合会の岸宏会長と会談し、東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の処分方針について意見交換した。会談後、岸会長は「絶対反対との考えはいささかも変わらない」と述べたが、首相は「近日中に判断したい」と表明、13日にも関係閣僚会議で海洋放出を決める方針だと伝えられる。風評被害も含めて、地元の漁協に大打撃となるだけでなく、「海を汚す日本」を、世界に宣言する国家的犯罪。みんなで反対の声を広げなければならない。

 そもそもこの時期になぜ海洋放出か、といえば、かつて安倍首相が東京五輪の誘致に当たって、「原発事故の放射能は完全にコントロールされている」とウソを言ったことの後始末。何が何でも「原発事故など、なかったこと」にして、オリンピックを開催するための施策で、「決断」を見せたい思惑からだとしか思えない。
 放出する汚染水は、基準以下のトリチウムを含んでいるが、他の核種は取り除いた後のもので、「環境には影響はない。漁業者がいう『海の汚染』は『風評被害』だ」というのが政府の主張だが、実際には、以前、セシウムやストロンチウムを含んだまま貯蔵されているものも残っており、被害は『風評』だけではない、とも言われている。

 いずれにしても、絶え間なく出る汚染水への対策は、装置による完全な処理と、時間による減衰が行われるまで貯蔵しておくしかないのではないか、というのが漁業者や専門家の意見だが、それを知りながらの「海洋放出決定」は、いかにも乱暴な方法だ。

そしてさらに、ここで重要なのは「国際世論」であり、「世界はどう見るか」だ。世界中が地球環境に関心を持ち、「みんなで地球を守ろう」という中でのこの決定は、徹底的に日本の信用を失わせることになるだろう。

 そもそも原子炉の冷却水は循環して使うために、増えないはず。ところが、事故で破損が生じ、溶け落ちた核燃料に触れた冷却水などが事故当初は毎日約500トン、現在も140トン位は増えているという。『アンダー・コントロール』のウソに縛られ、公然たる海洋汚染に踏み出すとすれば、いかにも情けない日本の政治、ということではないか!

なお、この問題に長い間取り組んできている「原子力市民委員会」は11日、海洋放出すべきでない理由を7つにまとめて発表している。

(なお、同委員会の「緊急声明」を「仲間から」の欄に全文紹介)

 「ALPS処理水」を海洋放出すべきでない7つの合理的理由
2021.4.11 原子力市民委員会
1. 処理水は安全ではない。
→ トリチウムは有害な放射性物質である。海に流した場合の環境影響について確定した科学的知見はない。
→ 処理水にはトリチウム以外の放射性物質も含まれている。
2. 廃炉作業と処理水放出は関係がない。
→ 処理水を放出しても燃料デブリは急には取り出せない。廃炉計画は見直しが必要である。
3. 実行可能な現実的代替策がある。
→ 現在の技術で安全・安価に保管できる。(モルタル固化案、大型タンク案)
4. 「濃度」を下げても貯蔵されている放射性物質の「総量」は非常に多い。現段階でその総量は示されていない。
→ タンクに貯蔵されているトリチウムの総量は、事故前に放出していた量の400年分以上に匹敵する。
→ トリチウム以外の放射性物質の総量は、現段階で不明である。
5. 福島県民、漁業関係者、国民の多くが反対している。
→ 福島県内自治体の多くが反対決議を出している。海外からの懸念の声がある。
→ 福島県内57%、国民の55%が反対している。(『朝日新聞』2021年1月3日、2月27日)
6. 福島県漁連との約束を反故にする。
→ 東京電力は、関係者の合意なく放出しないと約束していた。
7. 新たな被害、再汚染をもたらすべきではない。
→ 政府自身、風評被害発生を認めている。カネで環境と人の心は買えない。
2021/04/03
ミャンマーの平和をつくるための支援とは
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集会に駆けつけた在日ミャンマー人ら=4月1日、外務省前で
 国軍に利する経済協力を停止して――。
 東京の外務省前で4月1日夜、ミャンマーの平和と民主主義を求める集会が開かれた。日本で暮らすミャンマーの人々も参加し、国軍に拘束されているアウンサンスーチーさんの写真やプラカードを掲げて日本政府による政府開発援助(ODA)などの公的資金が国軍に流れないよう訴えた。ミャンマーでは2月に国軍によるクーデターが起き、若者を中心に抗議のデモが続いている。
 集会は「メコン・ウォッチ」など日本のNGO(非政府組織)や仏教関連の団体が呼びかけ、約200人が参加した。
 日本政府は、ミャンマーでの民政移管を受け、これまでの債務を帳消しにして1兆円以上の経済援助を行っている。クーデター以後も事業は継続されているが、日本の企業や政府系金融機関が関与する国防省の土地での大型都市開発事業が、国軍に利益をもたらしているという疑惑が現在、浮上しているという。このためメコン・ウォッチなどは、国際協力機構(JICA)が実施中の対ミャンマーODA事業や、国際協力銀行(JBIC)、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がミャンマー関連で融資、出資している事業をいったん停止し、国軍に経済的な利益をもたらさないよう早急に調査するよう日本政府に要求。緊急人道支援以外の支援はしないことを国際社会に表明することを求めている。
 同国のクーデター問題については、元毎日新聞記者で神田外語大名誉教授の永井浩さんが、ニュースサイト「日刊ベリタ」で随時、リポートしている。
 半世紀以上に及ぶ軍事独裁政権下で疲弊した経済の再建のため、民政移管後のミャンマー政府が日本の経済支援を歓迎した。とはいえ、「日本政府の対ミャンマー政策や企業の活動がミャンマー国民にどのように受け止められているのか、『親日』かどうかは別問題」と永井さんは指摘する。日本の企業は、民政移管前もビジネスチャンスがあると判断すれば、どんどん同国に入り込んでいった。永井さんは、今回の国軍のクーデターと、それをめぐる日本政府、経済界の動きに疑問を呈している。
 ◇           ◇
 「これまで日本国内の抗議デモは在日のミャンマー人が中心だった。日本のみなさんがこのような会を開いてくれたことに感謝している」。日本の企業に勤めながら大学院に通うナンモープインピューさんは、1日の集会でこう話した。
 ミャンマーの平和をつくるために、できることは何か。ミャンマーに対する日本政府の動向を監視することも、その一つだといえる。

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