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2024/04/09
これ以上の従属はやめさせたい 岸田訪米に
▼岸田首相は米国で何をするのか
岸田首相が「国賓待遇」で訪米…。「何をしに行くんだ?」という疑問から「息抜きか、ご苦労さん会か…」まで、あまり議論もされないままの出発だが、昨年来、米国に仕掛けられた、「新しい従属体制の確認」イベント。ごまかされないで見つめたい。岸田首相は、22年1月のテレビ会談、22年5月バイデン来日、23年1月岸田訪米、そして、広島サミットなどを通じて、米国との緊密化を図ってきたが、今回の訪米はいよいよ岸田第二次政権の「総仕上げ」の性格を持っている。
「3回にわたって防衛費増を説得した」と自ら語り(昨年6月)、わざわざ「この男が立ち上がり、ウクライナを支援するとは誰も思わなかった」と岸田首相を称賛(同7月)したバイデン大統領に、その「成果」を報告する「旅」は、一層、日本の軍事化を進める危険なエポックになりかねない。
▼「強固な日米同盟」
今回の訪米で、岸田首相は上下両院合同会議で演説、「日本は世界最大の対米投資国」だと強調しながら、日米両国が「自由で開かれた国際秩序」の構築に向けて、「グローバルパートナー」として活動していくことを表明するといわれ、首脳会談では、日米の防衛力強化に向けた取り組みを共有、「防衛装備品に関する新たな協議体の創設で合意する見通し」(毎日新聞)だという。「防衛整備品」とは言うまでもなく「兵器」。宇宙、半導体、人工知能(AI)、量子、通信規格などの開発でも協力を確認、「浮体式洋上風力発電」の技術でも協力を確認すると報じられている。
また、昨年8月、岸田訪米に合わせて日・米・韓の首脳会談が行われたのと同様、今回は、フィリピンのマルコス大統領も訪米、史上初の「日米比首脳会談」が開かれ、対中国で連携を強めることを確認する、という。
▼ますます強まる対米癒着関係
岸田首相は、一昨年(22年)2月、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、同年暮れ、「安保3文書」の改訂を実施、「戦後安保政策の大転換」を図った。つまり、①防衛費のGDP比2%を目指した防衛費の継続的増額」②防衛産業へのてこ入れ③「敵基地攻撃」「専守防衛」「武器輸出三原則」など、中身を勝手に変更した「解釈改憲」④港湾・空港などインフラの軍事化、南西諸島などの軍事基地強化―など。
この間、「政治資金パーティの裏金問題」という大事件が勃発したが、むしろそれを隠蔽材料に使って、国民が知らない間の「軍事国家造り」、日本の「軍事国家化」が進んできた。
今回の訪米では、米軍と自衛隊の指揮の統合をめざす「統合司令部」の設置が既に決まっており、これを確認することも決まっている。
国会では,防衛、外交などについての秘密を保護する体制を決めた「特別秘密保護法」の対象や、秘密内容を拡大する「経済安保秘密保護法」について、「国会報告」という形ばかりの「修正」をさせて立憲民主党を抱き込み,衆院内閣委員会を通過させた。
憲法を無視し、「米国とともに戦争する国家」への「ステップ」を阻止する声を広げなくてはならない。
(S.M)
2024/03/23
「改憲許すな」と「岸田退陣追い込み」
ともに進もう
2024年は年明けから「自民裏金」を主旋律としつつ、「岸田任期中の改憲、とんでもない」と「岸田を退陣に追い込もう」という2本の副旋律が絡み合って進行しているといっていい。そのなかで、自民党というのがいかにいいかげんでごまかしの極みの党かを如実に示す出来事があった。3月17日の自民党大会で決まった今年の方針案の憲法のくだりである。「憲法改正実現のため、国民投票を通じ、国民の判断を仰ぐことをめざす」のを「本年中」としたのだ。この3年間、岸田首相を中心に「総裁任期中(24年9月末まで)の改憲」と言ってきたのを、3カ月後ろにずらしてしれっとしている。自民内とそれを支える右派が抗議したという話も聞かない。
3月4日の「運動方針案」発表時も、改憲応援団の「産経」は、3カ月後退に怒るのではなく「期限を明記した」と喜んだ。その限りで言えば、やる気があるのかないのかわからない、奇妙な集団だ。
さてそのもとでの「岸田の命運」、われわれから言えば「岸田退陣への道」だ。新年からの超低支持率での「岸田長くない」ムードは、裏金問題での安部派5人衆切りや岸田後継の「人不足」という現実もあって、岸田の「9月再選戦略」はまだ壊れるまでには至っていないといえる。
しかし、裏金問題で岸田首相が自身の「処分」まで口にしたことで、事態はいささか複雑微妙になってきた。自民の処分は「除名」から「党則の順守勧告」まで8段階ある。「朝日」22日付に笑うに笑えない記事が出た。首相への処分が「戒告」か「党則順守」だったら「誰が総理に注意するのか」。「党の役職停止」なら総裁の資格を失う。「選挙での非公認」なら自民は「トップが無所属で衆院選をたたかう」のか。(23日のNHKや読売は「首相の処分はない方向」とフォローした)
冒頭のテーマに戻りたい。確かに「9月までに改憲」は自民自身が後ろにずらさざるを得なかった。これはわれわれの一歩前進であることは確かだ。では岸田の命運はどうか。「許すな!憲法改悪・市民連絡会」共同代表の高田健氏はいう。「岸田首相の退陣は時間の問題となった」(『週刊金曜日』3月22日号)。高田氏は「岸田再選なし」とみておられるようだ。確かに一刻も早く岸田政治を終わらせなければならないが、実際問題として「解散・総選挙」も絡んでくる。2009年の総選挙で自民はあの麻生が「選挙の顔」であったこともあって惨敗した。21年、菅首相は「選挙の顔にならない」と周りも本人も自覚して退陣した。
しかし今は「9月までの任期」前に重大な選挙がある。4月の衆院3選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)だ。「改憲期限ずらし」を口にせざるを得なかった自民と岸田をさらに追い詰める絶好の機会だ。
(寺)
2024/03/04
「平和国家」から遠のく日本
ひなまつりの日の3月3日、都心で行われた東京マラソンに、戦地で片足を失ったウクライナ人男性2人が参加した。義足で懸命に走る姿に、沿道から多くの声援が送られた。ロマン・カシュプルさん(27)とユーリ・コズロフスキーさん(41)。2人は、現在も続くウクライナ戦争以前に、地雷を踏むなどして足をなくした。今回は、ウクライナ戦争で負傷した兵士の治療費を募るチャリティー活動の一環ではるばる海を越えて日本に来た。
カシュプルさんは「妻や子ども、仲間の兵士のことを思って走った」といい、自己ベストの約4時間50分で完走。マラソン初挑戦のコズロフスキーさんは29キロ地点の関門を制限時間内に走り抜けることができずに失格扱いとなったが、時間をかけて最後まで走った。
◇ ◇
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をはじめ、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘で多数の市民の命が奪われるなか、国際NGO(非政府組織)ネットワーク「武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ(GPPAC=ジーパック)」の国際運営会議が1月下旬、東京で開かれた。各国のNGOをはじめ、紛争予防の実践や研究に関わる専門家ら約50人が参加し、平和構築のための行動や政策提言について議論した。
院内集会には日本のNGOの代表やメンバー、国会議員らも参加した
会議の終盤には、衆院第1議員会館で院内集会が開かれ、ウクライナ情勢については、ロシアからウクライナに移住し、現在は首都キーウを拠点に活動をするアンドレ・カメンシコフさん=非暴力インターナショナル・ウクライナ=が状況を解説した。GPPACの協力を得て行った調査によると、「ロシアの市民も政治的解決と『正常』への回帰、元の生活に戻りたいという願望が高まっている」といい、「G7のメンバーである日本もロシアの一般市民に対して平和や民主主義をうながすアピールができる」と話した。外務省からは国際平和・安全保障協力室長が出席し、停戦のために各国と連携を図っていく方針であることを示したものの、具体策はなかった。
◇ ◇
ウクライナ戦争が始まって2年。米国議会ではウクライナなどへの14兆円もの追加軍事支援と、移民流入制限の国境警備強化策を盛り込んだ法案が上院で可決、下院は未決となり、宙に浮いている。ロシアが有利になることに危機感を抱いたEU(欧州連合)首脳は、2月の会合で8兆円の対ウクライナ追加支援を承認した。
日本はどうか。ウクライナへ計1兆8000億円の支援を決めた。財政中心というが、本当に困っている人に役立てられるのだろうか。日本政府は、防衛装備移転三原則とその運用指針を改定(2023年12月)した。日本で生産された武器が他国の戦争に使用される可能性が浮上した。米国に売却された武器がウクライナに渡るというシナリオも想定される。
明らかに「平和国家」から遠のいている。この国の人々が真剣に政治に目を向けない限り、軌道修正はできない。
(M・M)