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2022/11/20
エジプトでのCOP27
「ロス&ダメージ(損失と被害)」資金支援
初めて正式な議題に
 エジプトのシャルムエルシェイクで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が、波乱の様相を示している。地球温暖化対策強化の方向性を示す決定文書案の内容などをめぐって協議は難航し、18日までだった会期が延長。19日も交渉が続いた。
 18日公表の文書案には、ロシア軍によるウクライナ侵攻後のエネルギー危機に触れたうえで、石炭火力発電の「段階的削減」や、非効率な化石燃料への補助金の「段階的廃止」に向けた努力を続けることなどを盛り込んだ。
 2021年のCOP26では、産業革命前からの気温上昇を「1・5度」に抑えるとの目標設定に合意したため、文書案に「1・5度に抑える努力を追求するという決議」を再確認するとの文言を入れたが、中国側が「1・5度」は努力目標で、気候変動対策の国際枠組みである「パリ協定」に基づいて「2度未満、できれば1・5度」と併記することを主張。温室効果ガス排出量の多い中国が、大幅な削減を求められることを警戒したのでは、との見方がある。
 日本では、岸田内閣の閣僚らの不祥事や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)などの問題で見過ごされがちだが、COP27は、自然災害の激甚化で苦しむ地域、人々のことを考えるうえで重要なことが話し合われている。
 その一つが、「ロス&ダメージ(損失と被害)」に対する資金支援の問題だ。台風や豪雨など自然災害の激甚化に伴い、途上国側が、新たな基金創設を求めており、COP27で初めて正式な議題になった。閣僚級の議論を踏まえて作成された新たな草案では、支援の対象は「気候変動の悪影響に特に脆弱(ぜいじゃく)な途上国」。具体策については(1)基金の新設(2)23年のCOP28での基金設立を視野に新たな仕組みを決める(3)COP28で仕組みを決める(ただし基金には言及せず)――の三つの案が併記された。これに対してパキスタンの代表団が(2)と(3)の選択肢はない、と反発。このほか「化石燃料の廃止」という方向性を打ち出すことについても19日現在、意見はまとまっていない。
 世界の平均気温が0・1度上昇するごとに、各地で海面上昇や生態系の変化などが起きている。ウクライナ戦争も、庶民の命が奪われているだけでなく、甚大な環境破壊をもたらしている。長引く新型コロナウイルス禍の下、格差や貧困の問題はますます深刻化しているが、それぞれの国で山積している社会問題と共に、私たちは大きな視点で物事をみていく必要がある。地球環境の悪化の原因のほとんどは、人間が引き起こしたものであることを忘れてはならない。
2022/11/13
政局打開に「岸田退陣」を
 昨年の自民総裁選で岸田氏ら4候補は「総裁任期3年のうちに改憲のめどをつける」と公約した。そのこともあって、「あと2年…」とあせる向きもあろうかと思う。しかし全くそうではない。改憲策動を打ち破る大激動がおこるかもしれない。「岸田退陣」である。

 8月の前倒し内閣改造から3カ月。国政選挙がない「黄金の3年」どころか「崩壊危機の3カ月」である。底なしといっていい統一協会問題の闇、なすすべがないようなコロナ対応、物価高騰・生活破壊、山際経済再生相に続いて葉梨法相の辞任(という名の更迭)。
何よりも問われるのは岸田首相その人の責任である。12日発売の「日刊ゲンダイ」の大見出しは「次に辞めるのは寺田総務相か岸田首相か」。

 「岸田退陣」なしとしないとの論調は週刊紙レベルでは出ていた。「アエラ」11月7日号でジャーナリスト星浩氏(朝日OB)がこう分析した。

 来年4月の統一地方選に向け、「『岸田首相の下で選挙が戦えるのか』という不満が高まったら、岸田氏はどうすのるか」⇒「一部野党との連立か衆院の解散・総選挙だろう」⇒「自民党が勝利すれば岸田政権は存続するが、敗れれば政界は大混乱だ」⇒「岸田首相が大胆な局面転換に踏み切れず、内閣支持率は低下し続け、新たな政策も進まないとなれば、退陣という選択しかなくなる」と。
 (週刊文春17日号は「岸田“逆ギレ解散”12・18総選挙」という見出しが躍った。「統一協会隠しだ」「物価高騰はどうする」という国民の声があふれるだろう。少々リアリズムに欠ける)

 冒頭の改憲策動の話に戻る。岸田退陣に追い込めば自民総裁選だ。各候補は言うだろう。「わが総裁任期のうちに改憲のめどを…」。タイムスケジュールはずれ込む。
 憲法問題のメカニズムは、基本的には改憲勢力とたたかい・押し引きだ。国民の意思と行動が自民や改憲勢力をじりじりと追いつめていく。改憲反対の運動もその大枠のなかにある。
 晩秋だ。「岸田政権の晩秋」をさらに追い込もう。

 葉梨(前)法相の更迭のもとになった9日の発言は、死刑問題もそうだが、「法務大臣はもうからない」という本音の吐露もいやひどい。自民の体質ここに極まれり。ただ翌日、一般紙の葉梨発言報道は社会面ネタだった(「東京」は10日朝刊に載せず、夕刊で)。

 山際更迭のあとだ。ちょっとのんきすぎないか。

2022/11/06
前川喜平さんをNHK会長に
「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」

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 来年1月に任期満了を迎えるNHKの前田晃伸会長の後任を、政府の勝手な人選に任せないで、市民の手で選ぼうという運動が広がり、後任に元文部次官の前川喜平氏を推薦する動きが始まった。11月4日、「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」(共同代表・小林緑元NHK経営委員、国立音楽大学名誉教授ら)が記者会見して発表。全国的な署名集めに入った。同会は、これに先立ち、NHK経営委員会に対し、推薦書と前川さんの経歴書を提出した。

 同会は、紙による署名集めと共に、署名サイト「Change.org」で賛同署名を募る活動も始めており、改めて12月1日にNHK経営委員会に前川氏を会長に推す申し入れ書と賛同署名を提出する予定。

 サイトによる署名は6日15時現在で既に1万筆を超え、10746筆。増え続けている。7日午前0時には12000筆に達し,10日午後には、16400筆を超えた。
また、紙の署名簿による取り組みも進み、大阪では、NHKとメディアを語る会(兵庫)、放送を語る会・大阪が会場扇町公園で243筆、名古屋でNHKとメディアを考える会が、研究会・朗読会・平和のつどいなどで103筆、弘前で、放送を語る会会員が50筆などが事務局の報告されているという。

 NHKの会長は、放送法の規定で、政府が任命し国会が承認するNHK経営委員会によって選ばれることになっているが、97年~2005年の海老沢勝二氏、05~08年の橋本元一氏とNHK出身会長が続いたあと、08~年11年はアサヒビール出身の福地茂雄氏、11年~14年のJR東海出身の松本正之氏、14年~17年日本ユニシス出身の籾井勝人氏、17年~20年、三菱商事出身の上田良一氏、そして現在のみずほフィナンシャルグループ出身の前田晃伸氏と、財界出身が選ばれ、政府の意向を受けた財界の「たらい回し人事」とさえ言われてきた。

 このため、「放送を語る会」「NHKとメディアの今を考える会」などが、「官邸主導でNHK会長が決められてきた流れを断ち切り、今後のNHKの舵取りを、政権の息のかかった財界人でなく、ジャーナリズムの見識を備えた会長に委ねたい」と、「NHKとメディアの今を考える会」を結成。前川氏の会長就任を呼びかけた。

 11月4日、同会と共に記者会見した前川氏は、「NHKは、憲法、放送法を軸として、単に経済合理性を求めるものではない。政府の言いなりになる改革はやるべきではない」と「NHKはあくまで自律的な組織であるべき」だと主張、「NHKの会長に就任した暁には、憲法と放送法を遵守して、市民とともにあるNHK、そして不偏不党で、真実のみを重視するNHKのあり方を追求していきたい。そのためには番組の編集、報道にあたって、完全な自由が保障されないといけない」と訴えた。
 同会の小滝一志事務局長は「市民の受信料で支えられる公共放送NHKを、公共の精神が希薄な人物にかじ取りを任せるのではなく、公共の大切さを心の底から理解する人に託したい」としている。
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