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2022/10/02
福島の現実と「国葬」
■柳美里さん、米国の「バークレー日本賞」受賞。
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  「この作品は、福島の沿岸部から東京に出稼ぎに行き、帰る場所がなくなった一人の登場人物を追った物語」「日本の中に福島という場所があることを知るきっかけになれば」――。
 在日韓国人の作家で、東日本大震災後、福島県南相馬市に移住した柳美里(ユウ・ミリ)さん(54)が、米国の「バークレー日本賞」に選ばれ、授賞式が9月30日午後(日本時間10月1日午前)、同大で行われた。米国からオンラインでの会見に臨んだ柳さんは、受賞に結びついた作品の一つ、「JR上野駅公園口」(2014年刊、英語版は20年の全米図書賞)に触れながら、津波や原発事故で被災し、その後も台風、豪雨などの災害やコロナ禍で困難が続く福島の現状を語った=写真。
 カリフォルニア大学バークレー校日本研究センターが主催するバークレー賞は、「生涯を通して世界における日本の理解に重要な貢献を行った人」に対して贈られ、柳さんは、村上春樹、宮崎駿、坂本龍一、梶田隆章の各氏に続く5人目の受賞者だ。会見で柳さんは「地元では2011年3月11日のことは語り合わない。(福島のことを)ノンフィクションでは書けない。沈黙の層が自分のなかで厚くなっている」と述べ、「3月11日の災害だけではない。事業者はたくさんの借金をし、立ち直ろうとした矢先、(16年に)福島県沖地震があり19年の台風19号、その翌年からはコロナ禍。今年3月16日にも(震度6強の)地震があった。絶望に近い状況の方もいると思います」。
 そして、ロシア軍によるウクライナ侵攻など、「いま、あちこちで内戦や戦争が起き、居場所をなくす人が生み出されている」と海外に目を向けた。
 「天皇制という一定の権力がありつづけるこの国のありようを米国の学生たちはどうとらえたと思うか」との質問には、同日本研究センター長を務める羽生淳子教授が代わりに「そのことを、普遍性とどう結びつけるかが大事。アメリカの大学ではダイバーシティ、インクルージョンという言葉が切実に浮かび上がっている」と答え、アフリカ系米国人の学生から「(柳さんが在日韓国人として)苦しんできたことを、黒人と言い換えてもまったく同じでは、という質問があった」と報告した。
 柳さんは、「窓は家の中にあり、扉がふさがれた場合に出入りができ、風を招きいれることもできる」と言い、自身を「窓のような存在」として、これからも作品を書き続けると話した。
■困難の中で生きる市民から目を背けて「国葬」強行
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 安倍晋三元首相の「国葬」を伝える各紙
 相次ぐ災害で生活や事業の再建に追われ、コロナ禍がその苦難に追い打ちをかける。おそらく海外の人には思いもよらない事態に追い込まれているこの国で、9月27日、安倍晋三元首相の「国葬」が強行された。
 戦前にあった日本の国葬令は、戦後の1947年に失効され、法的根拠はなくなった。だが、首相経験者の吉田茂氏は国葬(67年)となり、このときは自民党が野党に合意を取り付けた。今回は、森友・加計問題など疑惑の渦中にあり、首相時の評価が分かれる人物について、「人の意見をよく聞く」はずの岸田文雄首相が、国会に諮らず、人々が納得する説明もせず、「国葬」を決めた。多額の費用が使われ、原資はもちろん市民の血税だ。「民主主義の崩壊」と人々が声を上げるのは当然と言える。
 今月の臨時国会で、野党は国葬問題を厳しく追及し、検証作業をしなければならない。私たち市民も、政権の横暴、暴走をこれ以上、許してはならない。
2022/09/23
「安倍国葬やめろ!」の声は
広がり続けています!

▼ 朝日新聞(9月22日)の川柳欄にこんな句が載っていました。
「自民にも骨のある人おるんやな」(岐阜県 清水朋文)
 自民党のどなたかと思っていましたら、わかりました。かねてから「骨のある人」と注目していた村上誠一郎さんでした。村上さんは自民党所属の衆議院議員(12期)、自民党愛媛県連の会長、元行政改革担当大臣。9月21日、安倍元首相の国葬を欠席することを明らかにしましたよ。ついに自民党現職議員から、国葬欠席の声が上がりました。
村上議員のことば、「国民を代表する立法府の議員としてはこの際、国葬は欠席するしかないではありませんか」。いいですねえ。普通の言葉で普通にお話しなさっています。

▼ 23日の東京新聞一面。自民党内からも「国会決議を」「国会の関与必要」というタイトルで “安倍晋三元首相の国葬に関し、国会の関与がないのはおかしいとの批判がやまない。岸田政権は国葬実施を内閣の一存で閣議決定したが、自民党内からも疑問の声が出ている。法律の専門家である衆院法制局と衆院憲法審査会事務局は、憲法の趣旨を踏まえ「国会関与が求められている」との見解を示しました。

▼ 27日国葬実施への批判は大きくなるばかりです。国葬中止!今からでも遅くはありません。60年安保に対する「7社共同宣言」の轍をふんではなりませんね。
 27日は各地で「国葬中止!」の行動が展開されます。ぼくは14時、国会正門前にいきまーす。

▼ マスコミ各社に「国葬出席の説明を求めます」という意見書が出されました。ぼくも署名人の一人でした。注目していましたが欠席する社はゼロでした。
 ところがどっこい、朝日新聞と東京新聞が「社長の参列を断念」したそうです。各社横並びで、まるで60年安保のときの「7社宣言」の再現かと思わせられていましたが、ここでも「骨のある社おるんやな」。 後に続く社は……?

▼ ぼくの住む鎌倉でも「国葬」撤回求めた意見書。鎌倉市議会が可決です。
意見書は「国葬に明確な法的根拠がない以上、国会で議論が尽くされるべき」「政府が国葬を国費で行うことは、一方的な評価、価値観を国民に強いることになる」と批判し、「国葬」撤回を求めていました。提出したのは16の市民団体の連名。提出日は8月26日。
 結果は議長を除く市議25人中、日本共産党の3人を含む12人が賛成し、自民、公明両党の5人が反対。8人が退席。9月11日に可決されました。

▼ ポイントは党派を超えた市議のみなさんが「ふらふらしている市議」にねばり強く説得したことです。その議員の感想は「8人が賛成に回っていれば可決できなかった」「まさに市民と市議のタックルで可能になりましたね」です。
鎌倉でも、市民とこころある市議さんたちの共同を実感できた一瞬です。
 ロシアでも市民が動き始めたようですね。秋から冬、おもしろくなりそうです。
(仲)

2022/09/17
再び「この際、解散・総選挙を」考える
── 統一協会問題のいま

 「調査」ではなく「点検」だそうだが、これでお茶を濁し、収めようとした、岸田首相や自民党幹部の思惑と違って、世の中はますます「統一協会・国葬政局」の様相を深めつつある。点検結果がどうであろうと、今まで公然と、広く宣伝して、積極的にやってきたことなのだから、脱落した話がぞろぞろ出てくるのは当たり前で、メディアもここで名を上げるチャンス。まだまだ広がるのは確実だ。

 本欄は、ちょうど1カ月前、8月17日付「この際、解散・総選挙を― 統一教会と手を切れない自民党」で、「国民の信頼は回復するのかどうか? そこまでメディアは追及を続けていけるのかどうか? そして、信頼をなくした自民党はどうするのか? ここまで来た以上、岸田首相は、衆院解散・総選挙で、国民の信を問うべきではないか。自民党議員を中心とした問題議員に『退陣』を求め、人心一新、国政刷新を図るためには、この際、選挙しかないのではないか」と主張した。
 さすがにこのときは「いま解散などしたら、問題解明どころか、疑惑にフタをする」という意見も強かった。だが、1カ月後、サイトにも、解散・総選挙案がチラホラし始めた。
 「もはや打開策は、ひとつしか残されていない。総理大臣だけが持つ、政界唯一にして最強の『宝刀』を抜く―国葬直後に衆院解散・総選挙に踏み切って、すべてをリセットするのだ」
https://gendai.media/articles/-/99653?imp=0

 自民党は9月8日、党所属国会議員と統一協会(現・世界平和統一家庭連合)と関連団体との関係について「点検結果」を発表した。それによると、379人の議員中、団体との接点を認めたのは179人で、全体の47%。「関連団体の会合で挨拶」96人、「講演」20人、「会合への祝電、メッセージなどの送付」97人などの数字は公表されたが、問題になっている「秘書の派遣」や「海外の集会への招待」「選挙での票割り当て」などは明らかにされないまま。かえって疑惑を深めることになった。
 選挙応援は,要員派遣や票の割り当てなど,個別に明らかにされているが、大っぴらにもされていた。9月16日付毎日新聞によると、ことし6月13日の「日本・世界平和議員連合懇談会総会」では、「参院選地方区で応援を希望する議員が居られればお書きください」と希望者を募るアンケートも配られていた。

 何しろ、半世紀にわたって日本の政治と社会に大きな影響を与えてきた組織・仕組みだ。
 文鮮明が統一協会(世界キリスト教統一神霊協会)を創立したのが1954年、日本の宗教法人設立が1964年7月、全国大学原理研も続いて誕生、60年安保後の大学で活動が始まった。「親泣かせの『原理運動』学生間に広がる学業放棄や家出」と朝日が報じたのが67年7月だ。
 翌68年国際勝共連合結成。70年には「アジア勝共連盟総会」「世界反共連盟大会」が開かれた。各地の革新自治体誕生や自民党の衰退に、選挙の街頭演説に信者、会員を動員して圧力をかけたりした。この辺りから、「政治」への関わりが見えてくる。
 そして、資金集めを露骨に見せた、壷、多宝塔、霊感商法が問題になったのは、80年代の初め。全国弁護団も結成され活動を続けてきたが、被害者自身、マインドコントロールされた中で、自覚がないところでの救済は困難の極み。いま「二世問題」がテーマになりつつある。9月16日行われた集会では、統一教会に「宗教法人の解散命令」を求める声明を採択した。

 ただ、統一協会問題とは一体何なのか? メディアによる報道競争は続いているが、依然として、この問題が解明されたとは、とても言えない。考えてみれば、理想を掲げた明治維新から、富国強兵・軍国主義に走り、敗戦まで誤りを直せなかった歴史に匹敵する「思想」と「価値観」が、復活し、問い直されているとも言える。
 それをじっくり考え、「政治」というものの考え方も含めて、この際、全国民のレベルで総決算する。「統一協会問題救国統一戦線政府」くらいの発想が必要ではないだろうか。そのための解散・総選挙で、政治体制の総決算を図りたい。
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