点描
2023/10/21
劇団青年座 「同盟通信」
「戦争報道」題材 記者たちの葛藤を描く
東京・新宿で
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「同盟通信」の1場面=坂本正郁さん撮影
 戦争報道に関わる記者たちの葛藤に視点を置いた、劇団青年座の舞台「同盟通信」が東京都新宿区の「新宿シアタートップス」で上演されている。劇作家の古川健さんの新作の戯曲で、軍部による政治への圧力が強まるなか、「米英の通信社に肩を並べるナショナル・ニュース・エージェンシーを」と設立された「同盟通信社」を題材にした。
 同盟通信社は、当時の新聞聯合(れんごう)社(聯合)を母体に1936年1月に発足。同年6月には日本電報通信社(電通)の通信部を合併し、本格的に始動した。国外にも支社、支局を設置して通信網を広げていくが、政府から助成金を受けた「国策遂行」の命に服する通信社だったため、戦時中は、軍が発表した戦果をそのまま配信した。さらに、連合国の通信社電やラジオニュースを傍受し、陸軍や外務省に情報提供していた。1945年の敗戦を機に解散を決め、9年の歴史に幕を閉じた。
 舞台では、「正確公平」「客観的な事実の報道」という理念を掲げた通信社が変貌していく様子を、記者たちの抵抗や苦悩を絡めて描く。記者の中にも、自己保身や忖度(そんたく)をする動きが出る。
 情報過多の現代においてインターネットに書き込まれるヘイトやフェークニュースなどが後を絶たないが、古川さんは「我々に必要なのは正しく情報を処理する能力だと思う」という。
 10月22日まで。詳細は劇団青年座のホームページ。
(M・M)
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