点描
2023/10/08
放射性廃棄物の最終処分場問題題材
舞台「同郷同年」 東京・阿佐ケ谷で 10月9日まで
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「同郷同年」の1場面=東京都杉並区で
 放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の誘致をめぐる3人の男たちの葛藤を描いた舞台「同郷同年」が東京都杉並区のザムザ阿佐谷で上演されている。
 同じ年に同じ村に生まれた男性3人が登場する対話劇。農業、家業の薬局を継いだ薬剤師、電力会社の社員と仕事は異なるが、「町の再生のため」と放射性廃棄物の最終処分場の誘致に乗り出す。ところが、その是非を問う住民投票で惨敗したことを機に、それぞれの人生が変転する――。
 劇作家、精神科医のくるみざわしんさん(56)の戯曲(2015年完成)で、リーディングを経て大阪で初演され、3回目の公演となった。今回の舞台の演出を手がけた東憲司さん(58)は「同じ時代を同じ土地で暮らした者たちにしかわからない面倒くささと、それでも顔を突き合わせて生活していくしたたかさに、何かしらの原風景を感じた」という。
 核のごみの最終処分に関しては北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村を対象に、資料から地下資源や活断層の有無などを確かめる文献調査が実施されているが、長崎県対馬市は調査への応募を見送ったばかりだ。
 多額の交付金や地域振興策と引き換えに、最終処分場を地方に受け入れさせようとする国や電力会社の思惑が見え隠れする。「最悪を直視する力を持たないスピリッツに未来は託せない」とくるみざわさんは力を込める。10月9日まで。問い合わせは一般社団法人「Myrtle Arts(マートルアーツ)」(03・6279・9688)。
(M・M)
2023/09/14
韓国の詩人、尹東柱を描く
青年劇場の舞台「星をかすめる風」
17日まで東京で
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 戦時中、治安維持法違反容疑で逮捕され、獄死した韓国の国民的詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)(1917~45年)に光を当てた「青年劇場」の舞台「星をかすめる風」が東京のJR新宿駅新南口そばの「紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA」(渋谷区千駄ヶ谷)で再演されている=写真・村井夕さん撮影。
 旧満州(現中国東北部)の朝鮮族自治州で生まれた尹東柱は、ソウルの専門学校を経て24歳のときに日本に留学。京都の同志社大に在籍中、朝鮮語で創作した詩が「民族運動の扇動だ」と疑われ、特別高等警察(特高)に目を付けられたという。
 福岡刑務所に収監された尹が獄死したのは逮捕から2年後の1945年2月16日。死因は謎のまま27歳の生涯を閉じた。特高の押収を免れた2冊の詩作ノートに残された詩は、清らかで叙情性にあふれ、それらをもとに家族や友人らが編んだ詩集「空と風と星と詩」は韓国の人々の心をとらえた。英語や日本語などにも翻訳されている。
 今回の舞台は、韓国の作家、イ・ジョンミョンさんの同名の小説が原作で、尹の刑務所での日々を題材にした物語。劇団「温泉ドラゴン」代表のシライケイタさんが脚本と演出を手がけ、2020年に初演された。植民地支配下での抑圧を描くとともに、尹の感性とその詩作に引かれた刑務所の看守が地下の取調室を図書室にして囚人たちが本を読めるように努めるなど、文学や芸術の力に視点を置いている。
 9月17日まで。16、17日は上演後、イ・ジョンミョンさんの舞台あいさつがある予定。青年劇場(03-3352-7200)。
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