点描
2024/06/19
東京で2番目の「9条の碑」が府中に
「憲法を生かそう」の弾みに
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 「建設ラッシュ」といえば不謹慎かもしれませんが、今年になってから全国で「憲法9条の碑」が6か所もできました。元朝日記者のジャーナリスト・伊藤千尋さんはいわば「9条の碑」のナビゲーター。伊藤さんの集計では1985年に沖縄にできて以来、いま全国39か所に。

 ここでは私の住んでいる東京・府中市の事例を紹介したいと思います。

 40年以上続いている「けやきコンサートの会」は「音楽は世界が平和であってこそ」の思いから、歌とともに憲法問題での学習も重ねてきました。22年には3回連続で伊藤さんと憲法の勉強会を開きました。おりしも岸田内閣は「自民総裁任期の24年9月までには改憲を」と各種の準備を進めていました。会員のなかに危機感が広がり、改憲に抗する国民の運動をより具体的な形でという声が高まりました。

 こうして、市内を中心に団体にも呼びかけを広めて22年秋に「三多摩初の『9条の碑』を府中につくる会」が発足しました。用地は幸いなことに、市内のあるファミリーが「先祖からの土地を平和憲法のために使ってもらえるのは光栄」と50平方メートル余の敷地を無償供与してくださいました。「条文碑だけでなく、憲法と平和を愛する願いをより具体的に」と構想が広がり、市内在住の憲法愛にあふれる彫刻家に作品をお願いすることにしました。キャッチコピー的に言えば「憲法を愛するココロをカタチに。アートでも」というわけです。

 取り組みの期間はある意味では改憲勢力と「競争」です。24年の夏までには完成を--。経費は整地と碑と像で約1000万円。市内はもとろん、東京、首都圏、遠くは四国の方も。個人だけでなく各種団体からも(音楽関係の団体がかなりの数に)。こうして「つくる会」スタートから1年8カ月、今年5月7日(会場の関係で憲法記念日の4日後になりましたが)に「除幕式」と「完成のつどい」を実施することができました。ブロンズ像は「アヒルを抱いた女性」です。

 府中での取りくみは★改憲の策動に抗して「憲法とくに9条を守り生かそう」という人びとの熱い思い★音楽・文化団体が取り組みの提唱・リード役に★土地提供者と彫刻家がすぐそばに★像も含め多額の経費の募金をストレートに訴え-などが特徴といえるでしょうか。24年夏、「9月までに改憲を」という勢力の野望を、まずは打ち砕きました。今後もこうした攻防が続くでしょう。「憲法壊すな、9条守れ」の運動に、各地の「9条の碑」の広がりは確かな力となっていくことでしょう。
(寺)
2024/06/17
辛淑玉さん講演
権力の暴走を抑えるために闘う
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 人材コンサルタントの辛淑玉(シン・スゴ)さんによる「『下心のレイシズム』に抗う」と題した講演が今月、東京都新宿区の高麗博物館で行われた=写真。辛さんは、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の番組での発言をめぐり、制作会社の旧DHCテレビジョン(現虎ノ門テレビ)などを相手取り提訴した「ニュース女子」訴訟で昨春、勝訴が確定した。「黙っていたら人種差別的な番組を認めることになる。この社会で声を上げるには闘うしかなかった」と5年余に及ぶ裁判闘争を振り返った。
 問題の番組は2017年1月2日に放送された。沖縄県の米軍ヘリパッド建設反対運動の現地リポートを放映した後、司会者は、辛さんが共同代表を務める「のりこえねっと」(正式名称は「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」)が「参加者に日当を払っている」などと根拠のない発言をした。
 「私がランドマークになったのは(デマの内容が)地上波で放送されたから」と辛さんは分析する。地上波に乗ると「テレビがお墨付きを与えた」となり、それを正しいと思い込む人が出てくるためだ。また、反戦の声を最も上げる「沖縄たたき」をするために「私がターゲットになった」とも。放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会が人権侵害を認定(18年3月)し、MXは謝罪(同7月)したが、制作会社や番組の司会者は認めようとせず、やむなく提訴に踏み切ったという。ネット上の「暴力」をはじめ深刻なハラスメントに遭い、一時期、ドイツに滞在するなど辛さんは苦しい日々を過ごした。
 「記録に残すために裁判を闘った。これからは人々の記憶に残していくために、権力の暴走を抑えるために闘っていきたい」と辛さんは言い、「理解し合える人たちとつながり、その輪を広げていくことでしか社会は変わらない」と語った。
(M・M)
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