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2024/06/17
辛淑玉さん講演
権力の暴走を抑えるために闘う
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 人材コンサルタントの辛淑玉(シン・スゴ)さんによる「『下心のレイシズム』に抗う」と題した講演が今月、東京都新宿区の高麗博物館で行われた=写真。辛さんは、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の番組での発言をめぐり、制作会社の旧DHCテレビジョン(現虎ノ門テレビ)などを相手取り提訴した「ニュース女子」訴訟で昨春、勝訴が確定した。「黙っていたら人種差別的な番組を認めることになる。この社会で声を上げるには闘うしかなかった」と5年余に及ぶ裁判闘争を振り返った。
 問題の番組は2017年1月2日に放送された。沖縄県の米軍ヘリパッド建設反対運動の現地リポートを放映した後、司会者は、辛さんが共同代表を務める「のりこえねっと」(正式名称は「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」)が「参加者に日当を払っている」などと根拠のない発言をした。
 「私がランドマークになったのは(デマの内容が)地上波で放送されたから」と辛さんは分析する。地上波に乗ると「テレビがお墨付きを与えた」となり、それを正しいと思い込む人が出てくるためだ。また、反戦の声を最も上げる「沖縄たたき」をするために「私がターゲットになった」とも。放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会が人権侵害を認定(18年3月)し、MXは謝罪(同7月)したが、制作会社や番組の司会者は認めようとせず、やむなく提訴に踏み切ったという。ネット上の「暴力」をはじめ深刻なハラスメントに遭い、一時期、ドイツに滞在するなど辛さんは苦しい日々を過ごした。
 「記録に残すために裁判を闘った。これからは人々の記憶に残していくために、権力の暴走を抑えるために闘っていきたい」と辛さんは言い、「理解し合える人たちとつながり、その輪を広げていくことでしか社会は変わらない」と語った。
(M・M)
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