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2025/06/16
<6月のまんが> 二代目の幕は上手に引けるやら    鈴木 彰

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 コメの価格が1年間で倍に跳ね上がって国民の暮らしを窮地に追い込んでいる。米価高騰を抑えようと政府備蓄米を「入札」で放出したが効果が見えない5月、この施策を担当する江藤拓農林水産大臣が佐賀市で開かれた政治資金パーティーで「私はコメは買ったことはない」と発言し、野党が内閣不信任決議案の提出・可決をチラつかせて批判を強める中で石破茂首相は21日、江藤氏を更迭し小泉進次郎農水大臣を任命した。政府米放出を「随意契約」に切り換えて大手流通企業とともに古米(七光り米)放出の「二代目小泉劇場」にマスコミも飛びついてその「効果」を吹聴すると、わずかながら内閣支持率がたかまったりもした。これに焦った国民民主党・玉木雄一郎代表が衆院農林水産委員会で放出米を「あと1年たったら動物のエサになるようなもの」と発言してSNSで謝罪する一幕も生じた。しかし、今日の米価高騰は、重化学工業中心の経済発展のために、長年にわたって減反や備蓄米で米作・農業・食料自給を破壊してきた経済・農業政策に原因がある。1955年に604万戸(3635万人)あった農家は2020年には何と174万戸(349万人)に激減させられたのだ。小泉氏は、2024年産の作況指数が「平年並み」で、「コメの生産量は足りている」と、備蓄米放出での価格操作で問題が解決するかのように言い切り、生産・流通の現場から「実態は異なり、収穫量は足りない」との指摘があっても「放出米が足りねば外米を輸入して放出するから大丈夫」「収穫量が足りないと言うなら作況指数などの生産統計を見直す」と語る。基本問題に触れず、彼特有のきっぱりした口調できっぱり語る「二代目劇場」の滑稽さを、今月は描いてみた。
2025/05/17
<5月のまんが> 戦後史を笑うと負けよアップップ      鈴木 彰

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 近年、集団的自衛権の行使容認、安保法制(戦争法)強行、安保3文書などが、国会軽視の「閣議決定」先行で強行されてきた。5年間で43兆円もの大軍拡(防衛費倍増)、長射程ミサイルの大量配備など、歴史を80年前の軍国主義の時代に逆行させる動きが国民を襲っている。暮らし・福祉・社会保障を破壊する以外に財源はないから、国民にこれを受け入れさせるために国民の中に「欲しがりません勝つまでは」「進め一億火の玉だ」という風潮を育て、これを押しつけるためにアメリカの軍事力、大企業の金権にすがって、強権・腐敗・裏金を駆使した国民と野党の分断・抱き込みを謀ってきた。しかし国民はいのちと暮らしを度外視して強行される自・公政治に抵抗を続け、ついに昨年の総選挙では与党議席を「半数割れ」に追い込んだ。
こうして迎えた「戦後80年」のいま、「少数与党」が頼りとするアメリカ帝国が、トランプ氏による国連憲章・国際法無視の「ガザの長期所有」「プーチンのウクライナ侵略容認」、「同時関税政策」など世界の安保・経済秩序の霍乱によって世界から孤立し、「少数与党」が命綱とする「日米同盟を基軸とする戦争国家づくり」も通用しない時代を迎えている。トランプの「関税アップ」攻撃が、中国の習政権の「反撃アップ」に遭遇して生じたアップ対アップの「にらめっこ」は、世界史の変わり目を象徴するように思われる。今月は、「少数与党」となってもなお大企業本位、アメリカ追随、金権腐敗にすがって、平和と民主主義、くらしと福祉の「おにぎり」を食い尽くそうとする身の程知らずの政治も視野に、過日「おにぎり」の食べ方で話題になった石破さんに解説役を担ってもらって、苦し紛れの戯作とする。
2025/04/13
<4月のまんが> トランプの作法をなぞる石破流   鈴木 彰

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 今年の1月にアメリカ大統領に就任したトランプ氏は、4年前の大統領選でバイデン氏に敗れたのを不当だと議事堂に乱入した時からの曲者だが、今期の就任以来「ガザ地区をアメリカが所有する」「鉱物へのアクセスと利益を得る提案をゼレンスキー氏が公に拒否した」「グリーンランドを購入する!」「カナダを51番目の州にする」「パナマ運河を取り戻す!」「日本は我々を守る必要がない」「DEI(多様性・公平性・包括性)政策をやめる」「パリ協定やOECDの国際課税ルールから離脱する」など、戦後の世界が築いてきた平和・安全・環境の国際ルールを踏みにじる動きを強めている。国際貿易機関(WTO)協定と貿易相手国の関税率や非関税障壁の成り立ちを無視して米国の関税を引き上げるという「相互関税」に一方的に踏み切った。このトランプ関税は「世界同時株安」を招き、巨額の損失を被った「政府効率化省」のイーロン・マスク氏が政策に意義を申し立て、慌てて政策の実施を90日間延期するなど大混乱が始まった。こうした暴走と混乱を前にして石破政権は、これらに抗議し、国際ルールに戻るよう働きかけるのではなく、かねがね日本の選択的夫婦別姓の実現を4回も勧告し、皇位継承を男系男子に限る皇室典範の改正を勧告してきた国連の女性差別撤廃委員会の資金封鎖をねらって、国連への拠出金を削減するという措置に出た。事前の話し合いも行なわず、いきなり相手に拳を振り上げる「トランプ流」の作法と、これに追随し無批判にこれをまねる「石破流」は、ともに大混乱から破綻の道をすすむに違いない。
2025/03/17
<3月のまんが> 金権の地金が出たね自民党        鈴木 彰

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 石破茂首相が3月3日夜、自民党衆院1期生との会食会を首相公邸で開いたそうな。会食には自民の1期生15人が出席したが、その出席者に首相事務所が「土産」と称して1人10万円分の商品券を配ったそうな。石破首相は「会食の土産代わりにポケットマネーで用意した」もので、政治資金規正法と公選法には抵触しないと言うが、明らかに個人から政治家に対する金銭等の寄付に当たり、これを禁じる政治資金規正法に抵触することは紛れもない。昨年8月、裏金問題で追いつめられて岸田首相が政権を投げ出したというのに、裏金の温床である企業・団体献金について自民党と石破政権は「憲法にもとづく企業・団体の権利だ」として、その禁止を求める世論に背を向けてきた。企業・団体献金、政党助成金、裏金によって金権・腐敗はもはや自民党の地金となっている。今度の石破首相による「お土産10万円」は、その地金がひょいと顔を出したものに他ならない。「月遅れの節分」ならぬ石破首相のバラマキを今月は描いた。
2025/02/12
<今月のまんが> 日米は「同盟基軸」で何処へ行く   2025/2/12 鈴木 彰

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 7日昼(日本時間8日未明)、米ホワイトハウスでトランプ大統領との初の首脳会談に臨み、緊張した硬い表情で頬を上気させて握手した石破茂首相。トランプ氏を「大統領閣下」と呼び、大統領選期間中の暗殺未遂事件直後のトランプ氏が星条旗を背に拳を突き上げる写真について「歴史に残る一枚」だと讃え、トランプ氏のが唱える「MAGA(米国を再び偉大に)」というフレーズを「忘れられた人々」に対する「深い思いやり」だと褒めたたえた。対米投資を150兆円に引き上げるなどと、国会で審議もしていないことを約束し、会談後の共同記者会見では「防衛費の増額などは米国に言われて日本がやることではなく、日本が自らの責任において決断すべきものだ」などと申し出た。トランプ大統領の機嫌を損ねず、その攻撃を回避したとして、100%評価するという野党もあるが、パリ協定離脱、核兵器禁止条約の敵視、「法の支配」の逸脱など、世界史を逆に戻すトランプ路線に一言の意見もいわず、日本国民に大増税・大軍拡を押しつける問題をサラリと受け入れて帰ってきた石破外交。アメリカ第一主義・覇権主義の古臭い鎧で身を固めたトランプ政権にべったりと貼りつく「日米同盟基軸」の外交は、いったいどこへ行くのだろう? 今月はそんな思いを描いてみた。

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