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2023/06/17
<6月のまんが> 戦争を止めてないのに「抑止力」?   鈴木 彰

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 岸田首相は安全保障問題を語るとき「自由・民主主義・人権・法の支配といった基本的価値を共有する国々との連携の強化」という安倍首相譲りの空疎な決まり文句を連発する。被爆地広島に各国首脳を招いた5月の「G7サミット」でも岸田首相は「基本的価値を共有する国々」とともに「核なき世界」に踏み出したかの印象をバラまき、低落が続いていた内閣支持率を一時的にとはいえ上昇させた。だが、このG7が、ロシアの10倍、日本の15倍もの巨大な軍事費を誇示しても、ロシアのウクライナ侵略を「抑止」できなかったことに頬かむりして、「核兵器は侵略を抑止し、戦争と威圧を防止する」との「核抑止論」を唱え、ウクライナへの軍事支援強化、ロシア・中国の封じ込めを確認した。日本国憲法の前文は「いずれの国家も他国を無視してはならない」として普遍的な「政治道徳の法則」に従うことを「各国の責務」と訴えている。世界の圧倒的多数の国々は「軍事でなく話し合いで平和を築こう」と、「核兵器禁止条約」の批准をはじめとする「国際平和」づくりに邁進している。これに対して、現実を見ない「核抑止論」やアメリカ仕様の「価値観」で世界の国々を敵と味方に選別し、味方すなわちNATOや日米同盟の核と軍事力の増強と「軍事ブロック」の強化をめざすというのは偏狭な世界観と言わねばならない。岸田首相の言う「自由・民主・人権」とは「アメリカの覇権と軍事力の自由」に追従する範囲でのものであり、「法の支配」とは「核兵器禁止条約」をはじめ国連憲章・国際法・憲法を蹂躙するものに他ならない。この道は90年も昔に先人たちが閉ざすことのできなかった「軍事優先」の暗黒の一本道ではないのか? 私たちはこのまま「いつか来た道」を辿っていいのか? こんな思いで今月は、「抑止力」はすでに破綻していることを描いてみた。
2023/05/13
<5月のまんが> 要するに「新自由主義」の焼き直し    鈴木 彰

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 アメリカの「タイム誌」5月22・29日号が、岸田文雄首相を表紙として「日本の選択」と題する特集記事を掲載した。5月3日に日本の憲法は施行76年を迎えた。世界では日本を巻き込もうとする数々の戦争があったが、戦力不保持・戦争放棄を宣言した憲法9条のもとで、日本は保守も革新も憲法9条と「非核・軍縮・専守防衛」を守り、紆余曲折はあっても平和と民主主義、暮らしと福祉を育ててきた。ところがいま岸田政権が、中国の軍事大国化、北朝鮮のミサイル乱発、ロシアのウクライナ侵略などを「安全保障の危機」として、世論にも国会にもはからず「戦後の安全保障政策の大転換」を閣議で決めて暴走を開始した。現在年6兆円の防衛費を倍増し「敵基地攻撃能力」も保有して侵略と戦争を「抑止」すると言うのだが、軍事費100兆円のアメリカがその10分の1しか軍事費を持たないロシアがウクライナに侵略するのを「抑止」できなかった事実の前では説得力がない。GDPの4%近い1兆円の軍事費を備えていたウクライナは、ロシアの侵略を「抑止」できず、侵略後にこれをGDPの30%近くに増やしたが戦争を「抑止」できていない。岸田政権の防衛費倍増も、軍事的な脅威に軍事的に対抗するという悪循環に陥るばかりか、相互の経済を軍事化し、戦争を利用して軍需を競い合う底なし沼に迷い込むだけだろう。こうした岸田政権の大軍拡は、教育・中小企業・農業・医療・介護・年金の削減、法人税・たばこ税・消費税の大増税など国民の大負担と暮らしと経済の破壊で調達され、「あらたな戦前」を招くものに他ならない。岸田政権は、安全保障・エネルギー・少子高齢化などの危機を克服する「新しい資本主義」を進めるとして、国民に理解を強要するが、これは「新自由主義」政策の繰り返しでしかない。冒頭で見た「タイム誌」は、これらの事実について、ずばり「岸田氏は数十年にわたる平和主義を放棄し、日本を真の軍事大国にすることを望んでいる」と断言した。今月はこれを描かねばなるまい。
2023/04/13
<4月のまんが> 支持率を上げる為ならエンヤコラ   鈴木 彰

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 岸田首相がウクライナのキーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と首脳会談を行なった。5月に広島で開くG7の議長国としての訪問だった言うが、ヒロシマ出身を名乗る岸田首相らしく、戦争終結のための和平を提案したかというとそうではない。NATOと同じ立場でウクライナを支援する、つまり軍事支援をするとの決意を示し、何と「必勝しゃもじ」をプレゼントして大統領を激励したというのだから情けない。それもその筈、岸田政権はいま、昨年末から今年初めにかけて相次いで閣議決定した「安保3文書」と「原発3文書」の具体化に余念がない。ロシア・中国・北朝鮮が「安全保障危機」と「エネルギー危機」を深刻にしていると大宣伝し、フクシマの復興予算、コロナ対策や物価・少子高齢化対策のための予算、医療・年金・介護・社会保障予算を徹底的に削って、エネルギー・軍事産業の育成と軍事費倍増に横流しする。予算を「敵基地攻撃能力保有」や「同志国軍の能力強化」に湯水のように注ぎ込む。その一方で、予算の手当て抜きの舌先三寸で「賃上げ」「異次元の子育て・少子化対策」を歌いあげる。これらに釣られて野党の一部が動揺し、4月の「統一地方選・前半戦」で野党共闘の足並みが揃わず、与党・翼賛勢力を利する場面も生まれていることは軽視できないが、戦後史を「新しい戦前」に後退させる「安保・原発・憲法」政策の大転換をやすやすと受け入れるわけに行かない国民は、一直線とは行かないけれど着実に内閣支持率を長期低迷に追い込んでいる。今月は、軍事対軍事に熱中する「必勝しゃもじ」と国民を欺く「異次元の打ち出の小槌」で奮闘する岸田首相の「雄姿」を描いてみた。
2023/03/13
<3月のまんが> 大見得の二番煎じは効くかしら?  鈴木 彰

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 3月2日に小西洋之・立民参議院議員が、2015~16年に磯崎氏の働きかけで放送法の政治的公平性をめぐり解釈が変更された経緯そ示す総務省の内部文書を公表した。当時の総務大臣としてこれに関わった高市早苗経済安保担当相がこれを「捏造だ」と言い切った。昨年末から今年初めにかけて、アメリカとの約束を先行させ、国会での審議も国民世論への説明も行なうことなく、戦後安保政策の大転換を宣言する「安保3文書」と、フクシマ以降の原発依存度低減政策を転換する「原発3文書」という「2つの閣議決定」を行なった岸田内閣は、フクシマの復興予算もコロナ・物価・少子高齢化の対策費や医療・年金・社会保障費も、エネルギー・軍事産業の利益と軍事費倍層に流用することへの国民世論の批判の高まりに苦しんでいる。これをかわそうと4人の閣僚の首を切ったが内閣支持率は2割台に落ち込んでいる。そこに襲いかかった放送法解釈をめぐる「検閲疑惑」と、これを「捏造だ」と大見得を切ってあくまでも強情を張り続ける高市経済安保相。問題は、故安倍首相と磯崎陽輔首相補佐官、高市総務相が放送法解釈を変更して民間放送の特定番組に権力介入した事実を検証することなのだが、総務省の記録文書が捏造かどうかという問題に捻じ曲げて、そうでなければ「私は議員を辞める」と脅して担当者に忖度を押し付ける高市氏のやり方は、かつて「モリカケ桜疑惑」を棚上げするために安倍元首相のやり方の二番煎じに他ならない。だが、安倍氏ではなく、旧安倍チルドレンの1人だっただけの高市氏に誰が忖度するだろうか? 困り果てた岸田首相と自民党はどうするのだろう? 今月は、こんな野次馬根性で描いてみた。
2023/02/12
<2月のまんが> 閣僚の首のようには斬れないぞ!   鈴木 彰

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 福島第一原発事故発生から12年目の春を迎えたが、強制避難地域だけでもまだ8万2千人余が故郷に戻れず、小・中学校の通学生徒は10分の1に減少している。ところが岸田内閣は2月10日、これまで「可能な限り依存度を低減」としてきた原発政策を「再稼働・新増設」「60年超の運転容認」「積極推進」に転換する「閣議決定」を強行した。23年度の政府予算案は再生可能エネルギー関連予算を261億円に抑え、原発推進には22年度第二次補正予算と合わせて合計1・6兆円、将来は20兆円を投じるという。これは昨年末に国会での審議を避けて「閣議決定」し、今年早々に国民より先に米大統領に報告した「安保3文書」が、憲法九条も「専守防衛」も何のその、敵基地を攻撃できる軍事能力を持つため、軍事費を5年間で43兆円増やして2倍にするというのと一体の「乱暴狼藉」だ。これら「2つの閣議決定」による大軍拡と原発推進は、福島の被災地・被災者にも、コロナ禍・物価高騰・差別・貧困にあえぐ国民全体にも、核汚染と戦争の惨禍を押し付けるもの。今ほんとうに必要とされているコロナ・物価対策、少子・高齢化対策、医療・年金・社会保障対策などの財源は徹底して削られ、足りない分は国債や大増税で国民のふところに押し付けられる。しかし、国民が戦後78年にわたって築き固めてきた「平和と民主主義」、76年にわたって育ててきた「憲法9条」は、決してヤワなものではない。政権・利権を維持するために反社会的団体との癒着、政治と権力の私物化を重ねてきた政権への国民の批判は高まっており、岸田内閣もこれをかわそうとすでに4人の閣僚の首を切ったが、内閣支持率は2割台に落ち込んでいる。戦後、憲法9条を掲げて平和と民主主義を求めてきた歴史はしっかりと根を張っている。これを「2つの閣議決定」によって「大変革」できるわけはない。こういう確信と若干の祈りを込めて今月は描いた。

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