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2023/09/16
<9月のまんが> 処理水と呼び名変えても汚染水   鈴木 彰

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 岸田首相は、今月5日からASEAN=東南アジア諸国連合との首脳会議やG20サミットに出席するため、インドネシアとインドを訪問した。岸田首相は、これらの会議に「G7議長国」として、ロシアによる「ウクライナ侵攻」がもたらしている地球規模の食料危機に向けて国際社会の協調を促す立場で臨んだというが、首相の頭の中は、8月24日に強行した「福島第一原発の処理水放出」に対する国際的非難をどう避けるかということでいっぱいだったようだ。海洋投棄を開始した「放射能汚染水(アルプス処理水)」の「安全性」とやらを説明し、理解を求め、帰国直前の記者会見では「国際社会の理解は一層広まった」と鼻をふくらませた。会場で中国の李強首相との短時間の立ち話で日本産の水産物の全面的輸入停止措置を即時撤回するよう求めたとも語った。しかし、海水で薄めた「アルプス処理水」がどう「安全」なのか、それが海洋に放出されても、長い年月の内に生体濃縮や環境汚染・複合汚染をもたらすことはないのかなど、私たち国民にさえ得心の行く説明は行われていない。放射能の拡散を根元で止める対策や、汚染水の保管方法の改善など、他に求められている手だてを打つこともせずに、大急ぎで海洋投棄に踏み切ったのは、原発推進、防衛費倍増、マイナンバーによる暮らしと福祉の抑制などが狙いであることは見え見えだ。11日の朝に帰国し、13日には女性5人、新人11人、派閥均衡などを「目玉」として「内閣改造」を行なったが、つい「汚染水」と言ってしまった農相の首は挿げ替え、原発・マイナ保険証や大軍拡・大増税を推進する態勢は一歩も譲らない。直後の日経新聞が「内閣支持率横ばい、改造効果乏しく 『派閥均衡』評価せず」との世論調査結果を発表した。阪神の岡田監督の「アレ」は18年ぶりの達成をみたが、13年半にわたる事故原発のデブリ汚染水は「安全な処理水だ」と内外に宣伝しても簡単に「アレ」できるもんじゃない。今月は、いかがわしい「水売り」の姿を描いてみた。
2023/08/13
<8月のまんが> 世論こそ「反撃能力」持っている  鈴木 彰

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 岸田首相が「自由・民主主義・人権・法の支配といった基本的価値を共有する国々との連携の強化」という空疎な決まり文句を連発して、去る5月の「G7サミット」であたかも世界の平和をリードしているかのような印象を振りまいて、低落が続いていた内閣支持率を一時的に上昇させたことを思い出すと、権力が振りまく欺瞞への憤りとともに、欺瞞を見抜く材料が少ないために、権力の思い通りに踊らされる世論への歯がゆさがよみがえる。
 しかし世論は騙されっぱなしではいない。続く国会で、①5年間で43兆円もの大軍拡のために年金や医療の積立金まで流用する「軍拡財源法」、②健康保険証廃止など医療・福祉の抑制を狙う「マイナンバー法」、③難民の強制送還を強化する「改悪入管法」、④「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」の名で世論を欺く「原発最大限活用法」などの稀代の悪法を相次いで強行成立させた事実を通して、これらが広島サミットの「核抑止」礼賛、ロシア・中国の「封じ込め」と関連しあっていることに気づき、軍事ブロック強化・防衛費倍増・専守防衛放棄・敵基地攻撃能力保有が「いずれの国家も他国を無視してはならない」と普遍的な「政治道徳の法則」に従うことを「各国の責務」と訴える日本国憲法の前文に違反していることを見抜くことになる。
 8月に入って麻生副総裁が台北での「国際フォーラム」(8日)で、有事を未然に防ぐには日本や米国、台湾の「戦う覚悟」が必要だと講演した。まさに岸田内閣は、軍事費倍増に踏み切り、その財源調達と軍事経済をめざして、健康保険証の廃止や、原発の積極活用によって「戦う覚悟」を固めたいのだろうが、いまわれらの世論は、円安・物価高、実質賃金低下など、暮らしと福祉を犠牲にする岸田内閣への支持率を26・2%(8月時事通信)まで低下させ、大軍拡・大増税を阻もうとしている。騙されても、踏みにじられても、世論の持つ「反撃能力」は不滅なのだ。今月は、さあ「どうする、岸田内閣?」と問いかけてみた。
2023/07/17
<7月のまんが> 軍拡にすがって活路を探すとは!  鈴木 彰

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 6月21日に閉会した国会は、最終盤、悪法が相次いで強行される異常な国会だった。5年間で43兆円もの大軍拡をすすめるために年金や医療の積立金まで流用する軍拡財源法、健康保険証を廃止するマイナンバー法、難民の強制送還を強化する入管法改悪などが、岸田政権と自民・公明・維新・国民の「悪政4党連合」によって次つぎに強行された。そのもとで、この内閣の防衛費倍増がバイデン米大統領の「説得」によるという情報や、平和統一家庭連合のハン・ハクチャ総裁が「岸田を呼びつけて教育を受けさせなさい」と述べたという情報が、この内閣のアメリカや旧統一協会に対する従属性を浮き彫りにし、格差是正や所得再分配をうたった「新しい資本主義」も有名無実、アベノミクスの踏襲による円安・物価高の常態化、実質賃金の14カ月連続マイナス、生活保護の申請件数の増加、マイナンバーカードのトラブル続出などが深刻化している。だから当然のことだが、岸田内閣の支持率が、ふたたび30%割れに向かっている。これに対する岸田首相の対応が振るっている。去る5月に岸田首相は、議長国として「地元」で開いたG7広島サミットにウクライナのゼレンスキー大統領の電撃参加を演出し、長期的な安全保障を約束する共同宣言や、日本が総額76億ドル(約1兆円)超の支援を表明するなどして、世界平和のリーダーであるかのような印象を振りまき、内閣支持率を反転させることに成功したものだから、岸田首相は、マイナンバー制度への国民の不信が高まり、九州北部や東北を襲う記録的な大雨被害を放置して、米欧の軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議と日米同盟の軍事ブロック化をすすめ、タッチ&ゴーで中東、続けてサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールを歴訪。8月下旬にはワシントンで日米韓首脳会談を開き米韓の「核協議グループ」とともに核抑止力を強化するという。これは「大軍拡・大増税にまっしぐら」という他はなく、いわば「軍拡外交」で政権浮揚をめざすものに他ならない。今月はこれを笑ってやりたい。
2023/06/17
<6月のまんが> 戦争を止めてないのに「抑止力」?   鈴木 彰

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 岸田首相は安全保障問題を語るとき「自由・民主主義・人権・法の支配といった基本的価値を共有する国々との連携の強化」という安倍首相譲りの空疎な決まり文句を連発する。被爆地広島に各国首脳を招いた5月の「G7サミット」でも岸田首相は「基本的価値を共有する国々」とともに「核なき世界」に踏み出したかの印象をバラまき、低落が続いていた内閣支持率を一時的にとはいえ上昇させた。だが、このG7が、ロシアの10倍、日本の15倍もの巨大な軍事費を誇示しても、ロシアのウクライナ侵略を「抑止」できなかったことに頬かむりして、「核兵器は侵略を抑止し、戦争と威圧を防止する」との「核抑止論」を唱え、ウクライナへの軍事支援強化、ロシア・中国の封じ込めを確認した。日本国憲法の前文は「いずれの国家も他国を無視してはならない」として普遍的な「政治道徳の法則」に従うことを「各国の責務」と訴えている。世界の圧倒的多数の国々は「軍事でなく話し合いで平和を築こう」と、「核兵器禁止条約」の批准をはじめとする「国際平和」づくりに邁進している。これに対して、現実を見ない「核抑止論」やアメリカ仕様の「価値観」で世界の国々を敵と味方に選別し、味方すなわちNATOや日米同盟の核と軍事力の増強と「軍事ブロック」の強化をめざすというのは偏狭な世界観と言わねばならない。岸田首相の言う「自由・民主・人権」とは「アメリカの覇権と軍事力の自由」に追従する範囲でのものであり、「法の支配」とは「核兵器禁止条約」をはじめ国連憲章・国際法・憲法を蹂躙するものに他ならない。この道は90年も昔に先人たちが閉ざすことのできなかった「軍事優先」の暗黒の一本道ではないのか? 私たちはこのまま「いつか来た道」を辿っていいのか? こんな思いで今月は、「抑止力」はすでに破綻していることを描いてみた。
2023/05/13
<5月のまんが> 要するに「新自由主義」の焼き直し    鈴木 彰

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 アメリカの「タイム誌」5月22・29日号が、岸田文雄首相を表紙として「日本の選択」と題する特集記事を掲載した。5月3日に日本の憲法は施行76年を迎えた。世界では日本を巻き込もうとする数々の戦争があったが、戦力不保持・戦争放棄を宣言した憲法9条のもとで、日本は保守も革新も憲法9条と「非核・軍縮・専守防衛」を守り、紆余曲折はあっても平和と民主主義、暮らしと福祉を育ててきた。ところがいま岸田政権が、中国の軍事大国化、北朝鮮のミサイル乱発、ロシアのウクライナ侵略などを「安全保障の危機」として、世論にも国会にもはからず「戦後の安全保障政策の大転換」を閣議で決めて暴走を開始した。現在年6兆円の防衛費を倍増し「敵基地攻撃能力」も保有して侵略と戦争を「抑止」すると言うのだが、軍事費100兆円のアメリカがその10分の1しか軍事費を持たないロシアがウクライナに侵略するのを「抑止」できなかった事実の前では説得力がない。GDPの4%近い1兆円の軍事費を備えていたウクライナは、ロシアの侵略を「抑止」できず、侵略後にこれをGDPの30%近くに増やしたが戦争を「抑止」できていない。岸田政権の防衛費倍増も、軍事的な脅威に軍事的に対抗するという悪循環に陥るばかりか、相互の経済を軍事化し、戦争を利用して軍需を競い合う底なし沼に迷い込むだけだろう。こうした岸田政権の大軍拡は、教育・中小企業・農業・医療・介護・年金の削減、法人税・たばこ税・消費税の大増税など国民の大負担と暮らしと経済の破壊で調達され、「あらたな戦前」を招くものに他ならない。岸田政権は、安全保障・エネルギー・少子高齢化などの危機を克服する「新しい資本主義」を進めるとして、国民に理解を強要するが、これは「新自由主義」政策の繰り返しでしかない。冒頭で見た「タイム誌」は、これらの事実について、ずばり「岸田氏は数十年にわたる平和主義を放棄し、日本を真の軍事大国にすることを望んでいる」と断言した。今月はこれを描かねばなるまい。

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