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2023/11/14
<11月のまんが> 「戦前」に戻る軌道をたどるだけ    鈴木 彰

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 11月3日に国会正門前で、九条の会主催の「11・3憲法大行動」が開催され4000人が参集した。
 長引くロシアのウクライナ侵略戦争に加えて10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃、これを契機に1か月で1万人近い市民と子どもの命を奪うパレスチナ攻撃が行われているさ中での行動となった。昨年末にロシア・中国・北朝鮮・台湾の動向を口実に「安保3文書」と「原発推進」を閣議決定し、防衛費倍増・軍事経済化・軍事大国日本復活への暴走を開始した岸田内閣が、パレスチナ情勢をも利用して軍拡財源の確保(そのための暮らし・福祉の蹂躙、マイナンバー制度の押し付け)、原発汚染水の海洋投棄、憲法改悪を具体化しようとする鼻先での行動でもあった。
 岸田内閣は、軍拡への批判を反らそうと、所得税の定額減税や低所得者世帯への7万円給付などの「経済対策」を掲げたが、内閣支持率は下落を続け過去最低を更新している。世論が経済対策を評価しないのは「増税が予定されている」「経済対策より財政再建を優先すべき」「政権の人気取り」との批判があるからであり、東京都江東区長側の公選法違反事件を巡り法務副大臣を辞任した柿沢未途氏や、女性問題で文部科学政務官を辞任した山田太郎氏(13日には税金滞納が発覚して財務副大臣を辞任した神田憲次氏も加わった)への首相の任命責任は重大だとの意見が高まっているからだ。11月7・8日に東京で開いたG7外相会議を終えて上川外務大臣が「今回の会合はG7として初めて戦闘の人道的休止やその後の和平プロセスを含め、一致したメッセージをまとめ」たとして、「日本がG7議長国として、精力的に取り組んできた結果だ」と誇って見せたが、ロシアのウ国侵略には民間人や学校・病院への攻撃を「国際法違反」と厳しく非難してきたG7が、ハマスへの批判の一方でイスラエルの「自衛権を強調」してガザ侵攻そのものの停戦は求めないという「外相声明」は、世論にいっそう深刻な疑問を投げかけ、その後の内閣支持率はいっそう沈下している。
 「11・3大行動」は、悪政と世論の緊迫したせめぎ合いの渦中で、十分な規模を果たしたとは言えないが、問答無用の暴走を押しとどめ、新たな方向に転じる決意とエネルギーを現した行動となった。それは、政府のその場限りの「説明」ではだまされない国民世論が、内閣支持率を低下させ続けているのと同じ軌道に立つものに他ならない。
 今月は、イスラエルの「自衛権」擁護、日本の「防衛力倍増」の推進という、岸田政治の軌道の上で、内閣支持率浮上のために空しく走る「岸田外交のヴィーナス」の姿を描いてみた。
2023/10/15
<10月のまんが> 異次元の「八奸政治」ゆるすまじ    鈴木 彰

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 10月11日に藤井聡太名人・竜王が将棋界初の八冠独占を達成した。同じ日に時事通信が10月世論調査で岸田内閣支持率が3か月連続2割台26・3%となったと発表した。次元は違うが陰陽を分かつ2つの報道を受けて翌12日、岸田首相は藤井八冠に内閣総理大臣顕彰を行なうと発表した。内閣支持率の低迷は、切実な国民の願いには耳を貸さず、財界とアメリカの求めには素早く対応する岸田政治への怒りと怨嗟の表明だが、これを素早い「八冠顕彰」決定で反らそうとの思惑が漂う。思惑の有無はどうあれ私たちは、首相自らが「戦後安全保障政策の大転換」「次元の異なる少子化対策」と標ぼうする常軌を逸した岸田政治から目をそむけるわけにはいかない。いま世界では、ウ国侵略などの戦争と紛争に煽られて核軍拡・経済軍事化競争に傾斜し、各国のくらし・福祉・平和を棚上げして核兵器禁止・戦争回避・気候危機打開の国際的・歴史的な努力に逆行する動きが強まっている。日本でも、物価高騰、年金の連続切り下げ、後期高齢者医療への窓口2割負担導入(昨年10月~)・コロナ感染症の検査・治療への公費負担の縮小(この10月~)、後期高齢者保険料の段階的引き上げ(年1万円ていど来年度~)、介護保険利用者負担2割の対象拡大(計画)等が、国民のいのち・健康・くらし・福祉を空前の危機にさらしている。これら内外の緊迫した情勢に対して岸田政権は、福島原発の放射能汚染水の海洋投棄と原発推進、防衛費倍増・軍需産業支援・武器輸出三原則と専守防衛の放棄、軍拡財源確保のための医療・年金・介護財政の横流し、マイナンバー制度の推進と健康保険証の廃止など「異次元の政策」の推進に余念がない。まさに常軌を逸した無数の奸計(悪だくみ)を強行する岸田政治を、彼らが「顕彰」する藤井名人の「八冠」にからめれば「八奸(たくさんの悪だくみ)政治」と呼びたい。「平和・人権・福祉・自治をうたう日本国憲法」を持つ日本の私たちは、内閣支持率26%まで追い込んできた「八奸政治」をさらに追い詰め、憲法の軌道に戻さなくてはならない。今月はそんな思いを描いてみた。
2023/09/16
<9月のまんが> 処理水と呼び名変えても汚染水   鈴木 彰

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 岸田首相は、今月5日からASEAN=東南アジア諸国連合との首脳会議やG20サミットに出席するため、インドネシアとインドを訪問した。岸田首相は、これらの会議に「G7議長国」として、ロシアによる「ウクライナ侵攻」がもたらしている地球規模の食料危機に向けて国際社会の協調を促す立場で臨んだというが、首相の頭の中は、8月24日に強行した「福島第一原発の処理水放出」に対する国際的非難をどう避けるかということでいっぱいだったようだ。海洋投棄を開始した「放射能汚染水(アルプス処理水)」の「安全性」とやらを説明し、理解を求め、帰国直前の記者会見では「国際社会の理解は一層広まった」と鼻をふくらませた。会場で中国の李強首相との短時間の立ち話で日本産の水産物の全面的輸入停止措置を即時撤回するよう求めたとも語った。しかし、海水で薄めた「アルプス処理水」がどう「安全」なのか、それが海洋に放出されても、長い年月の内に生体濃縮や環境汚染・複合汚染をもたらすことはないのかなど、私たち国民にさえ得心の行く説明は行われていない。放射能の拡散を根元で止める対策や、汚染水の保管方法の改善など、他に求められている手だてを打つこともせずに、大急ぎで海洋投棄に踏み切ったのは、原発推進、防衛費倍増、マイナンバーによる暮らしと福祉の抑制などが狙いであることは見え見えだ。11日の朝に帰国し、13日には女性5人、新人11人、派閥均衡などを「目玉」として「内閣改造」を行なったが、つい「汚染水」と言ってしまった農相の首は挿げ替え、原発・マイナ保険証や大軍拡・大増税を推進する態勢は一歩も譲らない。直後の日経新聞が「内閣支持率横ばい、改造効果乏しく 『派閥均衡』評価せず」との世論調査結果を発表した。阪神の岡田監督の「アレ」は18年ぶりの達成をみたが、13年半にわたる事故原発のデブリ汚染水は「安全な処理水だ」と内外に宣伝しても簡単に「アレ」できるもんじゃない。今月は、いかがわしい「水売り」の姿を描いてみた。
2023/08/13
<8月のまんが> 世論こそ「反撃能力」持っている  鈴木 彰

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 岸田首相が「自由・民主主義・人権・法の支配といった基本的価値を共有する国々との連携の強化」という空疎な決まり文句を連発して、去る5月の「G7サミット」であたかも世界の平和をリードしているかのような印象を振りまいて、低落が続いていた内閣支持率を一時的に上昇させたことを思い出すと、権力が振りまく欺瞞への憤りとともに、欺瞞を見抜く材料が少ないために、権力の思い通りに踊らされる世論への歯がゆさがよみがえる。
 しかし世論は騙されっぱなしではいない。続く国会で、①5年間で43兆円もの大軍拡のために年金や医療の積立金まで流用する「軍拡財源法」、②健康保険証廃止など医療・福祉の抑制を狙う「マイナンバー法」、③難民の強制送還を強化する「改悪入管法」、④「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」の名で世論を欺く「原発最大限活用法」などの稀代の悪法を相次いで強行成立させた事実を通して、これらが広島サミットの「核抑止」礼賛、ロシア・中国の「封じ込め」と関連しあっていることに気づき、軍事ブロック強化・防衛費倍増・専守防衛放棄・敵基地攻撃能力保有が「いずれの国家も他国を無視してはならない」と普遍的な「政治道徳の法則」に従うことを「各国の責務」と訴える日本国憲法の前文に違反していることを見抜くことになる。
 8月に入って麻生副総裁が台北での「国際フォーラム」(8日)で、有事を未然に防ぐには日本や米国、台湾の「戦う覚悟」が必要だと講演した。まさに岸田内閣は、軍事費倍増に踏み切り、その財源調達と軍事経済をめざして、健康保険証の廃止や、原発の積極活用によって「戦う覚悟」を固めたいのだろうが、いまわれらの世論は、円安・物価高、実質賃金低下など、暮らしと福祉を犠牲にする岸田内閣への支持率を26・2%(8月時事通信)まで低下させ、大軍拡・大増税を阻もうとしている。騙されても、踏みにじられても、世論の持つ「反撃能力」は不滅なのだ。今月は、さあ「どうする、岸田内閣?」と問いかけてみた。
2023/07/17
<7月のまんが> 軍拡にすがって活路を探すとは!  鈴木 彰

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 6月21日に閉会した国会は、最終盤、悪法が相次いで強行される異常な国会だった。5年間で43兆円もの大軍拡をすすめるために年金や医療の積立金まで流用する軍拡財源法、健康保険証を廃止するマイナンバー法、難民の強制送還を強化する入管法改悪などが、岸田政権と自民・公明・維新・国民の「悪政4党連合」によって次つぎに強行された。そのもとで、この内閣の防衛費倍増がバイデン米大統領の「説得」によるという情報や、平和統一家庭連合のハン・ハクチャ総裁が「岸田を呼びつけて教育を受けさせなさい」と述べたという情報が、この内閣のアメリカや旧統一協会に対する従属性を浮き彫りにし、格差是正や所得再分配をうたった「新しい資本主義」も有名無実、アベノミクスの踏襲による円安・物価高の常態化、実質賃金の14カ月連続マイナス、生活保護の申請件数の増加、マイナンバーカードのトラブル続出などが深刻化している。だから当然のことだが、岸田内閣の支持率が、ふたたび30%割れに向かっている。これに対する岸田首相の対応が振るっている。去る5月に岸田首相は、議長国として「地元」で開いたG7広島サミットにウクライナのゼレンスキー大統領の電撃参加を演出し、長期的な安全保障を約束する共同宣言や、日本が総額76億ドル(約1兆円)超の支援を表明するなどして、世界平和のリーダーであるかのような印象を振りまき、内閣支持率を反転させることに成功したものだから、岸田首相は、マイナンバー制度への国民の不信が高まり、九州北部や東北を襲う記録的な大雨被害を放置して、米欧の軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議と日米同盟の軍事ブロック化をすすめ、タッチ&ゴーで中東、続けてサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールを歴訪。8月下旬にはワシントンで日米韓首脳会談を開き米韓の「核協議グループ」とともに核抑止力を強化するという。これは「大軍拡・大増税にまっしぐら」という他はなく、いわば「軍拡外交」で政権浮揚をめざすものに他ならない。今月はこれを笑ってやりたい。

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