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2022/02/11
フェイク報道 NHKさん あなたもか
記憶している人も多いだろう。2017年1月2日放送の東京MXテレビ『ニュース女子』。沖縄の基地反対運動について特集した「沖縄リポート」で、「反対運動の中の高齢者の映像に「逮捕されても生活に影響がないシルバー部隊」とか反対派は日当をもらっている!?」と疑問を呈した極端な偏向番組を放送した。「反対運動への資金援助」は大衆運動攻撃の常套フェイクだからだ。大問題になった。BPO(放送倫理・番組向上機構)は「重大な放送倫理違反」という判断を示した。番組『ニュース女子』はなくなった。▼ 「日当をもらって」というフェイクは、またいずれどこかでと思っていたら、起きた。こんどはNHK。
12月26日に放送されたNHK・BS1スペシャル『河瀬直美が見つめた東京 五輪』。NHKはここで「五輪反対デモの参加者」という人物をインタビューし、「金をもらって動員された」と字幕で表示した。ウソだった。
12月26日に放送されたNHK・BS1スペシャル『河瀬直美が見つめた東京 五輪』。NHKはここで「五輪反対デモの参加者」という人物をインタビューし、「金をもらって動員された」と字幕で表示した。ウソだった。
▼ 制作したNHK大阪放送局・堀岡淳局長代行は「(担当者の)思い込みによるもので事実を捏造するやらせではない」と釈明。正籬聡・放送総局長も「ジャーナリストとしての基本の事実確認が不十分」と謝罪した。
▼ はいそうですかと引っ込むわけにはいかない。
2月7日、NHKとメディアの今を考える会、NHKとメディアを語ろう・福島、放送を語る会が連名で NHK宛てに以下の要望書を提出した。
2月7日、NHKとメディアの今を考える会、NHKとメディアを語ろう・福島、放送を語る会が連名で NHK宛てに以下の要望書を提出した。
踏み込んだ調査と納得できる説明で視聴者の信頼回復を
―BS1スペシャル虚偽字幕問題に対して-
NHKは、昨年12月26日放送のBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」で、五輪公式記録映画製作チームの映画監督・島田角栄氏が取材対象の男性にインタビューするシーンに「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕をつけて放送しました。
この字幕について角秀夫専務理事・大阪放送局長は1月12日に経営委員会で、「一部に不確かな内容があった」とお詫びしました。そのうえで「制作担当者は取材の後、男性が五輪反対デモに参加したと思い込んで事実関係の確認が不十分なまま、不確かな内容の字幕を付けて放送してしまいました」「事実確認とチェック体制が不十分だったことが原因です」と説明しています。13日の記者会見でも同様の説明を行いました。
五輪反対運動に取り組んできた市民団体は、「デモ参加者にお金を払うなどありえない」「字幕は事実に反し、市民運動を貶めるものだ」と抗議の声を上げました。字幕情報が「不確か」であったことを認めたNHKの謝罪は、市民団体のこうした主張の正しさを裏付けるものと理解されます。
今回の問題で、制作担当者も試写に立ち会った管理者も、「デモにお金をもらって参加している」という字幕を付けることに違和感を覚えず、事実関係を厳正に確認する必要性を軽視したのは、番組制作現場に「デモは、お金をもらって動員される“プロ市民”の行動」という考え方、五輪に反対する市民への偏見があるのではないかと疑わせます。
また、同番組中では「プロの反対側もいてるし」という島田監督の発言も挿入されています。島田監督によれば、問題の男性は島田氏が取材中に探し出し、インタビューを設定したとのことです。島田氏が何を根拠に「プロの反対側」なる言葉を用いたのか、この島田氏の市民運動に対する歪んだ見方と男性へのインタビュー設定、虚偽字幕とは関係があったのか、NHKは何を裏付けとして島田氏のこのインタビューを敢えて入れ込んだのか、字幕のチェックの「甘さ」にとどまらない根深い背景を憶測させます。
番組には、河瀬監督がデモの現場に立ち会っているカットは登場しますが、デモの参加者・主催者へのインタビューはありません。字幕や島田監督のインタビューについても、デモを企画した市民団体は「NHKからの取材・確認は一切なかった」と言明しています。「金でデモ動員」という重大な問題について当事者に事実関係や見解を確認しないのは、取材・報道の基本を蔑ろにする、あってはならないことであり、放送法第四条の三「報道は事実を曲げないですること」、あるいは「意見が対立している公共の問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱う」とした国内基準にも大きく違反しています。
さらに、記者会見でも河瀬、島田両監督や視聴者にはお詫びしたものの、偏見を流布され最も傷つけられた五輪反対運動の人々への直接の謝罪はありませんでした。また「不確か」という説明は、「確認できないだけで、男性は本当に反五輪デモに金をもらって参加していたかもしれない」という含みを残しており、「事実無根」を正面から認めたものとは言えません。このようにNHKの対応は、「市民の反対運動を極力無視・否定する」姿勢に貫かれています。
1月24日、NHKはこの問題で「BS1スペシャル調査チーム」を設置したと発表しました。私たちは、調査チームに対し以下のように要望します。
- 調査チームは、通り一遍の事実経過の調査や原因分析でおわらせることなく
- 製作者が十分な事実確認も行わないまま字幕を付けた「思い込み」の原因は何か 「思い込み」は映画製作チームにも共有されていたのか
- 管理者が試写で、強く事実確認を求めなかったのはなぜか
- 担当ディレクターが、上司の指示を受けながら、男性本人や島田監督に字幕の確認をしなかったのは事実か。だとすればそれはなぜだったのか
- 「プロの反対側」という島田監督のインタビューはなぜノーチェックで使われたのか
- なぜ反対運動の側に一度もきちんとした取材・確認をしなかったのかなど、踏み込んだ調査で視聴者の疑問に応え、視聴者に納得のいく報告を行うことを求めます。
- 調査チームには第三者を加え、視聴者から「身びいき」「真相隠蔽」との疑義を持たれないよう、公平性・公開性を担保したメンバー構成を求めます。
- 事実経過と汲み取りべき教訓、再発防止策を視聴者に丁寧に説明する検証番組を制作することを求めます。
以上
2月10日 舞台は回った・・が
▼2月10日、NHKニュース
NHKは取材・制作の基本的な指針を定めた「NHKガイドライン」を逸脱していた」として、いずれも大阪拠点放送局に所属する30代ディレクターと40代のチーフ・プロデューサーを停職1か月、二人の上司で50代の専任部長を出勤停止14日の懲戒処分にすることを決めました。
このほか大阪拠点放送局の局長代行ら幹部3人をけん責の懲戒処分としました。
また大阪拠点放送局長の角英夫専務理事が役員報酬の10%を2か月自主返納することになりました。
このほか大阪拠点放送局の局長代行ら幹部3人をけん責の懲戒処分としました。
また大阪拠点放送局長の角英夫専務理事が役員報酬の10%を2か月自主返納することになりました。
今回の問題を受けてNHKは再発防止策として
▽ 取材、制作時に事実の確認が十分にチェックするルールをてっていするとともに
▽ 番組制作にかかわるすべての部局に、リスクマネジメントを含めた品質管理を担う責任者を配置し
▽ 全国の放送現場で勉強会を実施することにしています。
NHKは「関係者や視聴者のみなさまにおわびいたします。チェック体制の強化や研修の徹底など再発防止に取り組み4,信頼回復に努めてまいります」とコメントしています。
これで「信頼回復」ができる?
今回の問題はコロナ禍の最中にありながら「まずオリンピックありき」の方向がもたらしたものではないか!
最優先すべきは 官邸からの独立だ!
BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理憲章委員会は10日、この番組について放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯などについて検証する必要があるとして審議することを決めた。
最優先すべきは 官邸からの独立だ!
BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理憲章委員会は10日、この番組について放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯などについて検証する必要があるとして審議することを決めた。
2022/02/06
都立病院、公社病院の独法化計画
今夏にも法人設立
新型ウイルス、COVID-19の感染再拡大のさなかに、東京都が都立病院、公社病院の独立行政法人化を進めている。「法人化されれば民間が参入しやすくなり、医療に市場原理が持ち込まれる」「黒字化のために人件費が削減され、正規雇用から非正規雇用への切り替えが増える」など医療関係者らから反対の声が上がっている。外部の有識者による経営委員会の提言を受け、都が独法化の方針を打ち出した。8つの都立病院、6つの公社病院・がん検診センターの運営を一体化することで、柔軟な人事、医療機器の迅速な整備などを目指すという。7月をめどに100%都が出資の地方独立行政法人を設立する準備が進んでいる。
独法化の問題点の一つに、民間企業が経営に入りやすくなることが挙げられる。財政を黒字化するために人件費の削減、ベテラン看護師、スタッフらの離職、正規雇用から非正規雇用に切り替えることなどが懸念され、患者の立場から言えば、病院の個室の料金が値上されるなどの負担増が心配される。
公立病院が独法化された例はこれまで40ほどあるが、新型ウイルスの感染拡大で対応に追われ、通常の医療に支障が出ているときに、独法化問題がのしかかれば、都立病院、公社病院などで働く人々の心労が増すことになるのは想像に難くない。
日本は国際的にみて医師数が少ないことはかねてから指摘されている。
OECDの調査(2019年発表)では、1000人あたりの医師数は2・4人で、G7では最下位。OECDの加盟国の平均(3・5人)よりも少ない。
労働環境はどうか。全国の勤務医の4割(約8万人)が「過労死ライン」といわれる年960時間(月80時間)以上、残業し、約1割が過労死ラインの2倍を超えているというデータがある。24年からの「医師の働き方改革」は医師の労働時間の短縮が主な目的だが、いまの医療を維持するため、地域医療を担う勤務医に、残業は年1860時間までという特例水準を設けることになった。
慢性的な医師不足に悩む都立病院の院長は、独法化によって人事や会計が法人の裁量になれば「優秀な医師を招くことができる」と賛成するかもしれない。けれども、医療や福祉に、収益や採算、黒字化という言葉は似合わない。足りないところは公的資金で補てんする仕組みにすることが必要だ。
物事には優先順位がある。ここは、いったん白紙に戻して感染防止や患者の治療、医師や看護師の労働環境の整備に全力を注ぐことが重要だ。そしてウイルス禍が終息した後、改めて医療従事者、市民、患者の声を聞き、望ましい病院経営のあり方を考えるべきだ。
2022/01/30
いま、対中外交で果たすべきこと
▼報道されなかった共同作戦計画
「自衛隊と米軍が、台湾有事を想定した新たな日米共同作戦計画の原案を策定したことが分かった。有事の初動段階で、米海兵隊が鹿児島県から沖縄県の南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置くとしており、住民が戦闘に巻き込まれる可能性が高い」―共同通信が昨年12月24日朝刊用で配信した特ダネだ。沖縄2紙をはじめ、地方紙には数多く載ったが、全国紙などは無視した。1月7日の日米安保協議委員会(2+2)でも、21日の岸田・バイデン・テレビ会談でも承認されたはずだが、ほとんど報道されていない。
日米共同作戦計画は、米国との間では自衛隊が創設以来、次々作られてきた。しかし、「台湾有事」といい「南西諸島に臨時拠点」「40のサイト」となると、穏やかではない。テレビ会談では岸田首相は、米国の要求そのまま、「防衛力強化」を表明し、大統領は「防衛分野での投資を持続させる」と応じた。
昨年来、中国についての体制批判をベースに、「台湾危機」「米中衝突」の戦争宣伝が進んでいる。街頭では、「衝突時にはどちらに付くのか」と論争を吹きかける勢力もある。
▼戦争の根拠がない米国・中国
ことしは米中、日中ともに正常化50年。特に2月は、米中関係で、ニクソン米大統領が中国を訪問した月だ。ニクソン大統領は、前年、秘密裏に訪中したキッシンジャー国務長官のお膳立てで71年2月21日、北京を訪問、毛沢東主席、周恩来首相と会談して米中正常化の道を開いた。日本も9月に田中角栄首相が北京を訪問。共同声明を発表した。
ここで重要なのは、以来50年、米国も日本も「台湾は中国の一部」と認め、領土保全の相互尊重、平等互恵,内政不干渉を原則に関係を築いてきたことだ。仮に中国が台湾を「武力統一」しても、それは「内政」問題で、日本も中国も、干渉できないのがルールだ。
中東で「自衛権」を理由に介入を続けてきた米国も、バイデン大統領は昨年8月、「他国を立て直すための、大規模な軍事作戦の時代を終わらせる」と宣言してアフガンから撤退し、11月の米中会談でも「米国は中国の体制を変えるつもりはない」と明言した。
中国が台湾を武力統一する危険も語られる。しかし、台湾で「統一支持」はわずか数%。「民意」に逆らって武力統一しても、国際的な非難を浴びるだけで、「果実」は得られない。まして中国も、「経済成⾧」を求める時代から、人々の生活の質的向上を目指す「共同富裕」を求める時代。習近平指導部が無理をして武力統一する必然性は全くない。
▼あくまで「戦争はしない」決意を
こうした中で大切なのは、日本は「危機」を煽るのではなく、どんな場合も自衛隊は動かさない。「応戦」は認めないことを確認し、宣言していくべきだということだ。
憲法9条は、戦争と武力による威嚇、武力の行使を放棄、非武装と交戦権の放棄を決めた。これは世界と日本との誓約でもある。
中国とは数千年前からの関係を持つ日本なのに、日中戦争で日本は、非武装の住民に「殺し尽し、焼き尽し、奪い尽す」(三光作戦)という残虐な攻撃で全土に部隊を展開した。それからもう80年になる。中国は日中共同声明で戦争賠償の請求放棄を宣言。日本は賠償問題から「解放」された歴史もある。
「非戦」を宣言し「人権を訴える」―。いま、それが、中国に対する日本の歴史的責任ではないだろうか。